「大内義隆が陶隆房に討たれたか」
「うん、逃亡先の寺で自害したそうだよ」
飯盛山城で将和は和夏からの報告を読んでいた。
(義隆は女武将と聞いていたが……死ぬ事実は男同様か。なら他の女武将も……)
何がとは思わない事にする将和である。
(それに三好側に協力していた遊佐氏も暗殺されている……ちと嵐が来るかもしれんなぁ……)
そう思う将和だった。そして将和の予想通りに事態が動き出す。
「丹波の波多野が細川と協力関係に?」
「あぁ、それに合わせて晴元も丹波入りをしたそうだ」
和夏からの報告に将和は舌打ちする。
(確か史実だと長慶が丹波八上城を包囲したら芥川孫十郎が裏切って波多野に味方してたな……だが孫十郎は既に政康に討たれているし後方の心配は無い……か)
将和はそう思い即決する。
「長慶のところに赴く」
将和は直ぐに芥川山城に出向き長慶と面会をする。
「兄様、細川と波多野の件は既に此方も聞いている」
「なら話は早い。俺としては出ようと思うが……どうだ?」
「うむ、私としても異論はない。此処で細川の息の根を止めねばならない」
話は決まった。直ちに長逸達を軍儀に呼び出して丹波攻略が決定された。
「四国からも兵を出してもらう。勿論、余力を残してな」
四国からは篠原長政が9000の兵を率いて出陣し更に長慶と将和、久秀が5000、政康・長逸・友通がそれぞれ4000ずつの計36000が丹波攻略に赴いたのであった。だが将和は六角の動きを警戒し友通と久秀が京に残って警戒する事となる。
「さて、三好家での初陣だが頼むぞ二人とも」
「はい、お任せください」
「はいな、カラクリ左近があれば鎧袖一触やで!!」
順慶と左近も将和の配下としてそれぞれ1500の兵を率いていた。斯くして三好軍は丹波ーー亀山方面から侵入すると亀山に丹波攻略の城である亀山城を築いた。
「この城を丹波攻略の拠点とする」
長慶は将和達に告げる。
「一当てしてみるか?」
「まずは敵の戦力を知りたい。それに破壊工作をして向こうが出てきたら野戦に持ち込みたい」
「……和夏達を出すか。行けるか?」
「勿論だ。任されたよ」
控えていた和夏がシュパッと消える。
「それと長慶、軍をーーー」
「成る程、それは厄介だな。兄様のに従おう」
その日の夜半、和夏達の忍び隊は波多野家の居城である八上城へ侵入した。
「隊長」
「首尾は?」
一人の忍びが和夏の前に現れる。
「波多野は凡そ7000。細川は凡そ6000かと思われます」
「二人の寝床を襲えるか?」
「それは難しいかと。小姓が大勢見張りをしており襲えるものではありません」
「ふむ……よし、なら食糧庫を燃やす」
「はっ」
斯くして和夏達は八上城の食糧庫を放火して離脱した。一方で食糧庫を燃やされた波多野晴通は怒り狂っていた。
「おのれ三好長慶めェ!! 正々堂々と城攻めをすればよいもののを……」
「ですが殿、これは向こうが野戦に引きずりこもうとする寸法でしょう。しかし、我々には丹波の赤鬼が味方しておりまする」
「お、おぉ。そうだったな」
波多野は三好家が丹波に侵攻すると国人である赤井直正に救援を依頼、赤井直正もこれを承諾して八上城に向かっていたのである。
「晴元殿、直正が来るまでに籠城し直正が来たら一気に城を駆け降りて三好軍を殲滅しましょうぞ」
「おぅおぅ。それは良い案じゃな」
二人はそう言って笑いあうが、救援に赴いた赤井直正は予想外な事に出くわしていた。
「駄目です直正様。突破出来そうにありません!!」
「くっ、救援を読まれていたか……」
赤井軍5000は居城の黒井城から進軍を開始するも丁度黒井城と八上城の中間まで来た辺りで陣を張っていた三好軍ーー将和と十河一存の軍勢と対陣、八上城救援をしたい赤井直正が強引に突破しようとしたが将和は左右側面に種子島隊を配備したりと赤井軍の出鼻を挫いたりした。
そこへ満を持して一存の軍勢が突撃したので赤井軍の軍勢は軒並み崩れて敗走したのである。
「このままでは済まさんぞ三好!!」
直正は捨て台詞を吐きながら黒井城へ撤退するのである。赤井軍敗走の報を偶然(伝令を和夏達がわざと見逃した)聞き付けた波多野晴通と細川晴元は大いに狼狽した。
まさか丹波の赤鬼が負けるとは思わなかったのだ。
「いかん、このまま三好の包囲が長引けば我々は飢死してしまう」
「では戦を……?」
「馬鹿な、直正でさえ三好の軍勢に破れたのだぞ!!」
「……降伏しますか?」
「それこそ論外じゃ!!」
延々と進まぬ議論に三好家は躊躇しない。将和らが直正の軍勢を破る二日後には八上城攻めを開始した。
「いてまえカラクリ左近!!」
島左近のカラクリ左近が大手門を破壊しようと丸太を使って門を抉じ開けようとしそれを波多野家の兵達が抉じ開けまいと中から抵抗する。しかし、和夏達忍び隊が一人、また一人と影から仕留めていきやがては大手門は破壊され破壊した大手門から三好の軍勢が突撃するのである。
「い、如何なさる晴通!?」
大手門の破壊に狼狽する晴元、戦況を見ていた晴通は一つの賭けに出た。
「晴元殿、どうやら攻め手の一ヶ所は手薄なようです。そこに兵力を集中して突破しそのまま黒井城に逃げましょう」
「おぉ。それが良い!!」
晴通も腐っても一大名でありその戦況を見抜いた。晴通も直ぐに兵力を集中して手薄なところを突破、城を駆け降りたところまでは良かった。
だがそれも三好軍は読んでいた。
「し、しまった!?」
慌てる晴通と晴元に遭遇という名の待ち伏せをしていた将和と一存は笑っていた。
「そう、全包囲から攻撃を仕掛ければ八上城の全将兵は死力を尽くして我々の被害も大きくなる。だが一ヶ所を手薄にすれば?」
「逃げやすくなるってわけだな将兄」
「そういう事だ一存。そして伏兵を伏せておくってな」
ニヤリと笑う将和。
「さて、俺の授業料は二人の命としようか細川晴元に波多野晴通!! 全軍掛かれェ!!」
『ウワァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
将和隊と一存隊の約7000は種子島隊の援護射撃の元、突撃を開始。散り散りになっていた波多野・細川軍に突撃を防ぎ切れる事はなくあっという間に支離滅裂の敗走となる。そしてーー。
「いたぞォ!! 波多野晴通だ!!」
「グォ!?」
晴通は追い付いた一存の槍を胸に一突きされ落馬、そのまま首を取られたのである。
「細川晴元ォ!!」
「貴様は三好将和!!」
将和は細川晴元と斬り合っていた。
「貴様がいなければ!!」
「長慶に手を出そうとするからだ!! 長慶を貴様なんぞに渡してたまるか!!」
「グッ!?」
晴元の槍をかわした将和が右斜め上からの袈裟斬りをして左腕を斬り落とす。その衝撃で晴元は落馬、将和も馬を降りて組み伏せる。
「たかが三好家の分際が……!?」
「あの世で義父に詫びて地獄に落ちろォ!!」
将和は短刀を晴元の喉に突き刺し将和は晴元の返り血を顔面に浴びる。
「お……の……れぇ……………」
晴元は大量に血を出しながら息絶えたのであった。
「………細川晴元を三好将和が討ち取ったァァァァァァ!!」
『ウワァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
三好家と細川晴元との争いは一応ながらの決着はついたのであった。
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