「うーん、美味いな。やはり平蜘蛛で入れてもらうと味も変わるのか?」
「変わるわけないでしょ」
あれから半年、将和は政務の殆どをサボっていた。いや、飯盛山城での公務はほぼ終わらしているが長慶への具申等は殆ど行っておらずそのためサボっているとの言い方である。
軍議には参加しているが何も意見を言わずに終わっているので長慶達も何かあったのかと不安になっているが将和は「いや、特に意見は無いし」と言って飯盛山城に戻るのが最近の日々である。だがそれでも和夏達には情報収集で動いてもらってはいる。
この日も朝から政務を終わらせた将和は暇を見つけて信貴山城の久秀の元に茶をしに来ていた。
「あれから半年……大きな変化は無いわね」
「内だと常備兵が漸く5000に到達したくらいだな」
なお、常備兵を一ヶ所に集めるのではなく現時点では芥川山城、飯盛山城、そして阿波の三ヶ所に常備兵を集めて城下町が形成され始めていた。
「信長の美濃攻めは苦戦しているようね」
「当主の一色龍興は愚息だがその配下は優秀な武将達が勢揃いしているからな」
将和は和夏達忍びを通じて竹中半兵衛に接触しようとしたが半兵衛は三好家の傘下入りを拒否していた。それでも将和はめげずに複数忍びを通じて三好家入りを打診したがなしのつぶてだった。
「後もうちょい半兵衛を勧誘してみるよ」
謝る和夏に将和は苦笑するのであった。そこへ話題の和夏が現れた。
「将和君」
「どうした和夏?」
「済まない、私達の失態だ。竹中半兵衛が織田家入りをした」
「あらあら……よっぽど織田家のが魅力に感じたのかしらね」
「いや……もしかしたら武将かもな(やはり秀吉の引き抜きか。歴史の修正力というやつか)」
クスクス笑う久秀を他所に将和はニヤリと笑う。
「まぁ来ないなら仕方ない。それでもう一人の引き抜きはどうだ?」
「此方も今一つ、色好い返事はもらってはいないな」
「ふむ……まぁ気長にでいいよ」
そう言う将和だった。そして芥川山城にて軍議が開催される。
「四国から連絡が来た。……長政が病で先頃亡くなった……」
「長政殿……」
長慶の報告に皆を目を伏せる。将和も幼少の頃から長政には世話になっていた。
(大敵の政長を自身の手で討てたし感無量だったろうな……)
将和は長政の冥福を祈るのであった。
「それと、阿波国守護の細川持隆も病で亡くなった」
「あん? 細川持隆が?」
長慶の言葉に将和は首を傾げた。
(確か持隆って史実だと実休が暗殺したとか言われてだろ。何で病死……?)
「理由は分からないが病死だそうだ」
「……ちょっと臭いな」
「兄様?」
「……阿波に戻って調べてみる。たまたまの偶然ならそれで良いが……三好家を貶める罠とは言い切れんからな」
「分かった。兄様に任せる」
そして軍議も領土攻略に移行する。
「最近、陶を討った毛利の躍進が凄まじい」
「あっという間に周防・長門を抑えたもんな……」
「毛利への対策が急務かと思います」
一存達が議論を交わすが将和は特に議論の中に入ろうという気配はしなかった。それを見た長慶が将和に視線を向ける。
「兄様、何かあるか?」
『………』
長慶の言葉に皆が視線を向けるが将和は特に動じなかった。
「ん? まぁ毛利対策での防波堤は必要だろう」
将和はそう言って扇子を地図の一ヶ所にトントンを叩く。
「最低でも播磨・但馬は取って毛利と尼子への対策は必要だろうな」
「成る程」
「でも但馬を取るとなると丹後とかも……」
「まぁそうなる必要はあるな」
その後も軍議は続いたが将和はそれらしい具申もなく普通に終わった。軍議後、久秀は将和が宛がわれた部屋を訪れた。
「あれで良いの?」
「ん?」
久秀が来た時、将和は四国情勢の報告書を見ていた。
「あぁあの軍議か?」
「えぇ」
「まぁ、毛利が中国地方で台頭してきたら播磨・但馬を防波堤とするのは構想していたからな」
「……そう。でも最近、素っ気ない気がすると何かと話題よ」
「……んー、素っ気ないか……」
将和は腕を伸ばして伸びをする。
「むしろさ、依存させまくったかもしれんのよな」
「依存ですって?」
「あぁ。何かと具申してその方向に上手く成功していたから多分、皆俺を知らぬうちに依存しているんだと思う」
「……確かに。その線はあるわね」
「だから少し距離を置こうと思ってな」
(凶と出ない事を祈るだけね)
そう思う久秀である。
「ところで……織田家との対決はあると思うのかしら?」
「まぁあるだろ」
将和は久秀に座るよう促し茶菓子を久秀にあげる。
「織田家も天下を取ろうとしているからな。少なからず対決になるのはあいつと堺で会った時から想定していた」
「堺で……? 以前に会っていたの?」
「長慶と偶然な。ま、今のところ防衛線は山崎だな」
「山崎……成る程ね」
久秀は将和の言葉を聞いて納得した表情を見せる。
「天王山を取られたら厄介なわけね」
「一応、天王山には極秘で砦を築いてはいる……長慶にも秘密だ」
「そこまでの事なのね」
「あぁ、そこまでの事だからだ」
将和はそう言って肩を竦めるのであった。そして将和は久しぶりの四国へ渡るのである。
「これは将和様、わざわざ父上のために申し訳ござらん」
「おぅ長房。長政には幼少の頃から世話になっていたからな」
将和は長政の位牌に焼香をして改めて長政の冥福を祈るのである。そしてその足で細川持隆の屋敷へと訪れた。将和を出迎えたのは当主を継いだばかりの細川真之だった。
「将和殿、此度は真にありがとうございます」
「いやいや。持隆様には生前、お世話になりもうした」
真之と将和はそう挨拶をするが、将和は何か気になっていた。
(……人より目が異様に細いなぁ……)
真之は他の人より目が異様に細かった。将和も細目の人間は見ているが真之はほんとに細かった。
「ハハハ、私は人より目が細いでしょう」
「いや……気分を害したのであれば申し訳ありません」
「いえいえ、我が家系は細い目の者が多くいるようで……遺伝と思われます」
そう言って真之は笑う。そこへ襖が開かれた。
「母上」
「三好殿、此度はありがとうございます」
「えっと……」
「あぁ申し遅れました。私は真之の母、小少将でございます」
真之の母……小少将はそう言って将和に頭を下げるが小少将も真之同様に細目だった。
(成る程。小少将の家系の遺伝か……)
将和は一人納得する。が、頭を下げる小少将は畳を見ながら笑みを浮かべる。
(三好将和……か。なら標的はこの男にするか)
人知れずペロリと唇を舐める小少将だった。その日の夜、真之との会談で遅くなったこともあり将和は真之の屋敷で一泊する事にしていた。
「……誰か?」
「夜分遅くに申し訳ありません。小少将にございます」
「小少将殿? 入られよ(何かあったのか?)」
「失礼します」
襖が開けられ、寝巻き姿の小少将が部屋に入る。その手には盃と銚子があった。
「将和殿、私と一献……致しませぬか?」
「(……何か裏がありそうだが……)構いませぬ、
さぁさぁどうぞ」
将和は小少将を招いて二人での飲みが始まる。飲みが始まって鶏鳴の時、動いたのは小少将だった。
「ふぅ……少し酔いました……」
小少将はそう言って将和の右肩にコロンと頭を寄せた。その時、将和の鼻を小少将の匂いが性欲を擽る……が、将和は耐えた。
「(未亡人とかAVだよなぁ……)小少将殿……」
「将和殿……」
しかし、小少将のが若干上手だった。小少将はゆっくりと着物をはだけさせ、その乳房を少しずつ見せようとする。
(ククク……所詮は男よの……)
小少将は将和の手を取り己の乳房に添えようとした……が、将和はその手を抑えた。
「将和殿……?」
「止めた方がいいですぞ小少将殿……貴女は妖の類いでしょう?」
「………ッ!?」
将和の言葉に小少将はパッとその場を離れる。小少将の姿が少しボヤけ頭から狐の耳、尻から尻尾が九本現れた。
「御主……知っていたのか?」
「いや……半信半疑だったがな(烈女とは聞いていたけど……まさか妖とはな……)」
「……殺してみるか?」
小少将は構えを見せるが将和は気にしなかった。
「いや……三好家に害しなかったら別に普通にしてていい」
「……害したら?」
「叩き潰す」
(……この男…)
将和は殺気を出しながら小少将を見るが小少将は扇子で口元を隠していたがその口は笑みを浮かべていた。
「(……やはり正解だな)では……」
小少将は将和の肩に身体を預ける。
「私を傍に置きませぬか? そうすれば将和殿は私を近くで監視出来ますよ?」
(こいつ……)
頭が回る小少将に将和は苦笑する。
「分かった。なら傍に置こう」
斯くして小少将が将和の傍で世話になるのであった。
小少将はモチーフとして東方の八雲藍です。てか八雲藍です
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