『三好in戦極姫』   作:零戦

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第十五話

 

 

 

 

 尾張国小牧山城。尾張を統治する織田上総守信長は美濃を攻略するためにこれまでの居城だった清洲城から小牧山城に居城を移していた。

 

「西美濃三人衆が此方に付いたからと言って龍興め、それでも諦めがつかんか」

 

 美濃国内の情報の報告を受けていた信長はポツリと呟いた。報告をしている軍師である天城颯馬は肩を竦めた。

 

「斎藤側からの離反は相次いでいますが、やはり堅牢な稲葉山城がありますので……」

「御主の策通りに竹中半兵衛に加治田衆の調略、岸信周は残念だったが……斎藤側を支えていた西美濃三人衆も此方に付いた」

「はい、もう少しでございます」

「デアルカ」

 

 それでも信長は日ノ本の地図を見ていた。それに気付いた颯馬は口を開く。

 

「三好が気になりますか?」

「ならないとは言わんな。元々の差はあったとはいえ、桶狭間で道は開くとは思っていたがな……」

「いえ、道は開いております」

「ククク……謙遜は良い。では天城よ、貴様とサルでやってもらいたい事がある」

「は、何でしょう?」

「墨俣に城を築け。これまでに柴田、佐久間が失敗している。三度目は成功させろ」

「ははッ!!(これは大変な事だな……)」

 

 頭を下げつつ颯馬はそう思い、彼は木下藤吉郎と共に作業に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「では軍議を行う」

 

 ところ変わって河内国飯盛山城では将和を筆頭に諸将が集まっていた。

 

 総大将 三好将和

 武将 三好実休

    松永久秀

    赤井直正

    筒井順慶

    島左近

 

 以上の武将が集まっていた。特に三好実休等は久々の戦の出番であり四国から意気揚々と来る程だった。それを見た将和も苦笑する程である。

 

「集まってもらったのは他でもない。南近江攻めを我々で行うためである」

「おぅ!! 腕がなるぜ兄貴!!」

「うむ……と言いたいところだが今回は思ったより早く片がつくかもしれん」

「あらぁ……」

 

 意気揚々していた実休は将和の言葉に膝から崩れ落ちた。

 

「六角家の内部がゴタゴタになってきた……というわけね」

「まぁそういうわけだな。六角家の筆頭家老を務めていた後藤賢豊が主君六角義賢に謀殺された。その謀殺で家臣団はガタガタになってきた。いやなっているだな」

 

 久秀の指摘に将和は頷く。

 

「そこを掠め取る……そういう戦法ね」

「まぁそういうこった。既に一部の敵将には降るよう交渉はしている」

「あら手の速いことで……」

「フ、俺の中では合戦とはそれまで積んだ事の帰結だ。合戦に至るまで何をするかが戦だと思っている」

 

 これは将和が前世で経験した事だった。大国アメリカと戦うにはアメリカより一歩、いや二歩三歩とその先を見なければならなかった。

 そのために将和は航空機(零戦改良型)、戦艦(大和型・河内型)空母(翔鶴型・雲龍型)戦車(九七式中戦車)を開発し開戦までに配備させる事に成功、その後の戦いでもこれらの兵器は日本を支えたのである。

 

「成る程ね……合戦までにどれだけの準備を労するかで勝負は決まる……良いじゃない」

「うーん、分からん!!」

 

 久秀はカラカラと笑うが実休と直正は首を捻るだけだった。

 

「ま、今は前に進めば良い。それだけの事だ」

 

 将和はニヤリと笑うのである。そして軍勢を整えた三好軍は飯盛山城から出撃するのである。各国の大名は三好軍が動いた事に動向を見守っていたが行き先を南近江と判明した瞬間、大いに慌てたのは南近江の戦国大名ーー六角義賢である。

 

「直ちに兵を集めよ!!」

 

 義賢は檄を飛ばすが観音寺騒動から立ち直っていない六角家はガタガタであった。南近江に三好軍が侵入した時に観音寺城に集まった兵力は僅か3600でありとても戦える状態ではなかった。その間にも将和は観音寺城の支城である箕作城等を次々と攻略し義賢を包囲しようとしたが寸での差で義賢は観音寺城を脱出し、三雲定持の三雲城に逃げ込む事に成功したのである。

 

(チッ、逃げ足が速いのは歴史通りか)

 

 逃げられた報告を受けた将和は顔を歪めながらも南近江の大半を攻略したのである。

 

「山岡、山崎」

「「はっ」」

 

 調略で将和に降伏して列席に加えられていた山岡景隆と山崎賢家(後の山崎片家)が御前に出て頭を下げる。

 

「二人は今まで通り自身の領地を統治せよ。その代わり、六角義賢は何としても探して捕らえよ」

「「ははッ!!」」

 

 なお、大津はちゃっかりと三好家が直轄地として抑える事にしているのである。

 その一方で長慶らも播磨攻略に動き出していた。

 

「まずは別所だ」

 

 長慶は播磨国の別所氏に狙いを定め、総勢25000の兵力を率いて越水城から進軍を開始した。

 

「おのれ三好め、直ちに迎え撃つぞ!!」

 

 報告を受けた別所安治は兵を集めて三木城に立て籠り長慶の軍勢と激突したのである。

 

「ふむ……三木城は播磨三大城と呼ばれていますから流石に堅固ではありますが……やはり数には勝てないでしょう」

 

 先鋒の三好長逸は無理な城攻めはせずに三木城の支城を次々と攻め落とし長慶が到着する頃には三木城の包囲は成功していたのである。そのため長慶も兵糧攻めを選択、三木城への糧食は一つも届く事はなく安治は降伏を決断した。

 この降伏により播磨国の東部は三好家が切り取る事になる。

 そして三好家の躍進に気に食わない者がいた。

 

 

 

 

 

「フン、南近江と播磨東部を取りおったか……」

 

 京の二条御所武衛陣の御構えにて室町幕府第13代将軍である足利義輝は面白くなさそうに顔を歪めた。

 

「義輝様……」

「将軍職に就いたというのに三好を筆頭に妾を無視する……将軍職として仕事が出来たのは大友と毛利の停戦くらいなものだけじゃな」

 

 将軍職に就いた義輝は幕府を建て直そうと積極的に書状を出したりして和平を薦めたりして幕府の権威を甦らそうとしていた。

 だがそれでも効果は芳しくなく殆どの大名からは無視されたりしたが大友、長尾等の一部大名は従ったりしている。

 

「まずは三好じゃ。三好の行動を何とか抑えれば諸大名らも順次従うじゃろう」

「確かに……ですが懸念はあります」

 

 義輝の傍らに控える細川幽斎は意を決して義輝に告げるが義輝も分かっていた。

 

「分かっておる幽斎……あやつじゃろう?」

「はい……三好家の中心的人物と言ってもいい……三好将和です」

 

 躍進を進める三好家を支える将和は幕府にも警戒されていたのである。

 

「……暗殺……はどうじゃ?」

「成功したしても怒り狂った三好長慶らにこの二条御所が攻められて燃やされます」

 

 幽斎はピシャリと告げて暗殺計画を止めさせる。

 

「うぬぅ……難しいのぅ……」

(素直に頭を下げたら良いんですけどね……)

 

 幕府の体制上、それは絶対に出来ないと思う幽斎だった。

 

 

 

 




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