『三好in戦極姫』   作:零戦

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戦極姫3の『月影-つきかげ-』を聞いてたらあっという間に出来た件


第十八話

 

 

 

 

 

 義輝の挙兵に将和は元より三好家は驚愕した。

 

(やっぱりやりやがったけどさ……嘘だと言ってよバーニィ……)

 

 将和も思わず頭を抱える程だったのが挙兵したのが『義輝だけではない』からである。

 

「摂津の本願寺に紀伊の畠山、若狭の武田、備前の浦上で安芸の毛利……え、毛利ってマジで?」

「本当のようだぞ将和君。他にも因幡の山名とかな」

「宗全入道以降は負い目しかねぇ山名と言われても知らん」

 

 和夏の報告にフッと笑う将和である。

 

「それで当の発起人である義輝の行方は?」

「若狭だ。若狭の武田信豊の元に身を寄せて兵を借りた模様だな」

「所謂三好包囲網……だが網は一部を除き貧弱だな」

「将和君が警戒していた織田は今回参戦していないようだ」

「むしろそのまま参戦しないでほしいわ」

 

 将和は和夏の報告書を纏めると立ち上がる。

 

「早速軍儀をせんとやべぇぞ。特に本願寺相手にはな」

「本願寺には既に何人かを出して内部の事情を探らせている」

「頼む」

 

 将和はそのまま部屋を出て長慶達と軍儀に移行する。

 

「若狭への備えだが……」

「越前の朝倉と北近江の浅井に文を送ろう。両家の兵力なら若狭武田は簡単だろう」

「分かった。西への備えは?」

「播磨に軍を置く事で陸は大丈夫だろう。海は伊予の村上と冬康を使う。それで毛利は良い」

「やっとか兄さん」

 

 将和の言葉に冬康はニヤリと笑う。

 

「じゃあ本願寺は……?」

「長慶らの主力で包囲してくれ。俺は義輝の軍勢に当たる」

「兄様……」

「これまでの因果……断ち切る必要はある」

 

 心配そうな表情をする長慶に将和はそう応えた。

 

「故に俺が出向かねばならん」

 

 斯くして三好家は軍勢の準備を行い準備出来た軍から出陣するのである。

 

 

 

 三好軍第二部隊 15000

 総大将

 三好将和 1000

 配下武将

 三好政康 2000

 松永久秀 2000

 筒井順慶 2000

 島左近  2000

 藤堂高虎 2000

 赤井直正 2000

 

 

「政康は今回は此方で良いのか?」

「えぇ、本願寺に当たる事になれば近くにあるので」

「まぁいいけど。それで義輝の居場所は?」

「天王山の麓に陣取っているよ」

「……何?」

 

 行軍中、和夏からの報告に将和は思わず和夏の方向を見る。

 

「それは本当か?」

「あぁ。だが……(例の場所は見つかってない)」

 

 ボソッと将和に耳打ちをする和夏である。その言葉を聞いてホッとする将和である。

 

「分かった。ならこのまま山崎まで進軍しよう」

 

 将和の軍勢はそのまま山崎まで進軍するのであるがその一方で天王山の麓に陣を構えた足利義輝は挙兵に参加した大名の一覧を書状で見ていた。

 

「チッ、上杉や武田は参戦せねなんだか……」

「両家を参戦するなら両家の和睦が必要です」

「空手形では無理だったか……」

 

 義輝は上杉と武田に書状を出してそれぞれ能登、信濃の所有を認める事で参戦を促していた。

 また織田にも書状を出していたが信長も無視をしていた。

 

「颯馬……包囲網には反対、それで良いのだな?」

「はい信長様。今、織田家は伊勢の攻略真っ最中であり兵力の分割は避けるべきです」

 

 岐阜城で織田家の軍師である天城颯馬は主君である信長に説明をする。

 

「それに竹千代の三河で一向一揆も発生している……成る程、援軍の必要があれば直ぐに駆けつける事が出来ような」

「……結果論ですね」

「ククッ……デアルカ」

 

 信長は笑いながら立ち上がる。

 

「三好包囲網への参戦は取り止めだ。このまま伊勢を食らうぞ!!」

『オオォォォォォ!!』

 

 織田家は包囲網に参戦せず伊勢攻略に専念するのである。そして義輝の軍勢と将和の軍勢は山崎で衝突する。後の歴史家達からは『第一次山崎の戦い』と呼ばれる戦いである。

 永荒沼の四方を政康・高虎・直正・左近の隊を囲み、天王山には順慶隊がその麓に将和の本陣があった。その一方で義輝の軍勢は鶴翼の陣形を取りつつも義輝の本陣はその後方にあった。

 戦いの幕を開けさせたのは政康隊だった。0530頃、朝日が登ろうとしていた時、政康隊2000は真っ直ぐ突っ込んだ。

 

「掛かれェ!! 三好家の興廃はこの一戦にあるわよ!!」

 

 政康自ら馬上して先頭に立ち突撃する。無論、2000の兵は大将自らの突撃に士気がうなぎ登りなのは言うまでもない。

 政康隊は若狭衆の宇野弥七の陣に突っ込んだ。

 

「前の敵だけを殺して突き進むのよ!!」

「政康殿に遅れるな!! 藤堂隊も突っ込むぞ!!」

 

 次いで突撃したのは高虎隊である。高虎隊は同じ若狭衆の山県盛信の陣に突撃をして激しい斬り合いを展開する。だがその側面を摂津国人の池田・伊丹衆が突っ込んで両隊の動きを止めようとする。

 が、いざ足軽達が突撃すれば銃声が響いて足軽達は次々と倒れていく。

 

「しまった、鉄砲か!?」

 

 報告を聞いた伊丹親興は叫ぶ。直正隊の鉄砲隊と天王山に陣取る順慶隊が鉄砲を撃って池田・伊丹隊の足を止めさせたのである。

 足が止まった池田・伊丹隊に突っ込んだのは左近隊である。

 

「いてまえカラクリ左近!!」

 

 騎馬が中心の左近隊はただ一通過する。後はカラクリ左近の一撫でにより敵兵は吹き飛ばされる。

 

「押し返せェ!!」

 

 それでも将軍側は三好軍の正面を突破しようとするが戦闘は膠着状態になる。義輝も更なる兵を投入して膠着状態を打破しようとしていたがそれでも打破は出来なかった。

 苛立ちが募る義輝の元に凶報が舞い込んでくるのは程なくの事である。

 

「敵将三好将和の軍勢が桂川の畔から進軍中!! 行き先はこの本陣に向かって来ています!!」

「何じゃと!?」

 

 物見の報告に義輝は床几から立ち上がる。戦線が膠着状態になった瞬間、将和は久秀と共に動いた。

 

「義輝の本陣に突っ込むぞ」

「楽しい事になるわね」

 

 将和の言葉に久秀は笑い乗馬する。将和も馬に乗り槍を持つ。

 

「狙うは足利義輝の頸ただ一つ!! それは以外は捨て置けェ!!」

『オオォォォォォ!!』

「突撃ィィィィィィィィィ!!」

 

 斯くして将和隊と久秀隊の3000は義輝の本陣目掛けて突撃する。義輝側も防御をするが前線に予備兵力を投入させてしまったので本陣の守りは少なかった。

 

「突き進めェ!!」

 

 将和は槍を振り回したり群がろうとする足軽の胸に突き刺したりと義輝の元へ向かう。そして将和は二人の女武将を見つける。一人は金髪、もう一人は黒髪、戦極姫を知る将和にとって義輝は直ぐに分かった。

 

「あ・し・か・が・よ・し・て・るゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「ぬゥッ!!」

「させません」

 

 黒髪ーーー細川幽斎は自身の弓を構えて将和に放つ。放たれた矢は将和の左腕二の腕付近にグサリと突き刺さる。

 走る痛みに将和は耐えつつも槍を投擲する。投擲した槍は避けられたが牽制でなら十分だった。

 近くで馬から降りて将和は太刀を抜き中段の構えをする。対して義輝も太刀を抜き同じく構える。

 

「「………」」

 

 動かしたのは政康の怒号だった。

 

「敵将宇野弥七!! 三好政康が討ち取ったァ!!」

「ッ!?」

 

 怒号に反応したのは義輝だった。味方が討たれた事にピクリと肩を動かしたのだ。

 

「アアァァァァァ!!」

 

 将和が動く。中段から一気に突きを入れて義輝の太刀を破壊しようとする。

 

「小賢しい!!」

 

 それでも義輝は刃を滑らして袈裟斬りをしようとするが将和は鍔で受け止めて鍔迫り合いとなる。

 

「くっ……」

「ッ……」

「らァ!!」

「ゴホッ!?」

 

 将和は右足で義輝の腹を蹴る。義輝は態勢を崩すも後ろに飛んで将和との距離を開き両者は再度構える。

 

「「………はァァァァァァァァ!!」」

 

 一瞬だった。互いに駆け抜け袈裟斬りをしようとしたが鍔迫り合いとなるがそれは一瞬であり将和は義輝の目前に迫る。

 

「なッ!?」

 

 将和が喰らわせたのは右肘による肘打ち(エルボー)であった。それを義輝は鼻にマトモに食らったのである。

 

「………」

「義輝様!?」

 

 フラフラと後ろに下がり膝から地面に付き、幽斎が駆け寄る。地面には鼻血が垂れて赤い池を形成する。よっぽどマトモに食らったのだろう。

 かなりの出血であり恐らくは脳震盪もしているかもしれない。

 幽斎とその手勢は将和に殺気を出して警戒しつつも義輝を抱き上げて退避する。

 

「全軍引きなさい!!」

 

 足利軍は敗走状態となる。将和はあえて追撃を出す事はしなかった。

 

「出さないのかしら?」

「後々がめんどいからな」

「それもそうね」

 

 斯くして第一次山崎の戦いは三好軍の勝利となるのである。

 

 

 

 

 




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