『三好in戦極姫』   作:零戦

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やっぱ高橋椿も参戦√に行きます
その方がネタが浮かびやすかったので……


第二十四話

 

 

 

 

北畠家が伊勢から出た事で伊勢に侵攻していた織田家がそのまま伊勢を領有する事になった。これで織田家は尾張・美濃・伊勢の三国を保有する事になる。

 

「信長が東海の覇者で満足してくれるならいいけど……まぁ此方に来るわな」

 

 河内国飯盛山城に戻った将和は茶を飲みつつそう呟く。

 

「それで飯盛山城の増築をしているわけね」

「まぁ浸け刃に過ぎんかもしれんがな」

 

 茶に誘われてやってきた久秀は茶を啜りながらほぅと息を吐く。

 

「石垣で増築や普請しているみたいね」

「あぁ、石垣であれば地形に拘らずに自由に作れるからな」

 

 将和は飯盛山城の改築には高虎も関わっており飯盛山は元より麓の讃良郡(ささらぐん)の各村々等にも雇った常備軍の足軽達が住み着き、城下町は大規模に形成しつつあった。そこに水堀等を築き総構えの形成をしていたのだ。

 むしろ何処まで増築する気なのだと言いたい。

 

(だって地元やから地元有利にしたいやん)

 

 それは作者の話だろぅい!?

 

 

 

 

 

 

 とまぁそれはさておき、飯盛山城を久秀監修の下で魔改装中に将和は芥川山城での軍儀に参加した。

 

「やはり義輝が何か嗅ぎ回っているようです」

「とすると北畠の件で……?」

「それもあるようですが……腹心の細川幽斎が何度か若狭へ入国していると……」

「若狭に?」

「はい」

 

 将和の問いに長逸は頷く。

 

(むぅ……若狭に何かあったか……?)

 

 考える将和だったが答えが出てこなかったので和夏に探ってもらう事にした。

 

「和夏、義輝と幽斎の動向だけでいい。何か分かれば直ぐに報せてくれ」

「よしきた。報酬は弾ませてくれよ将和君」

 

 和夏はそう言って数人の忍びと共に若狭へ向かうのである。それから数週間、義輝は何のアクションも起こしては来なかった。

 

「むぅ……何を企んでいるやら……」

「今は二条御所に戻ってはいるようだけど、家臣の細川はいないみたいね」

 

 飯盛山城で将和は久秀と茶を供にしていた。和夏からの報告も忍びからの定時報告のみであり目立った動きはなかった。

 

「うーん……」

 

 唸る将和だったが解決案は出てこなかった。それから更に数日後、和夏が若狭から戻ってきた。

 

「……調べてはいたが義輝は若狭から兵の抽出の協力をしていたみたいだ」

「フム……対三好家の兵力かもな……分かった、ありがとう和夏」

「あぁ……」

「ん? どうした和夏? いつもなら「なら報酬の銭をくれ」と言ってくるのに……」

 

 飲み屋のツケがー、貢いでいる娘がーといつもなら言っている筈の和夏だが今日は大人しかった。

 

「まぁ……そういう日もあるさ」

「そうか、まぁゆっくり休んでくれ」

「分かったよ将和君……」

 

 そう言って忍びと部屋を退出する和夏だった。この時、将和は気にするべきだったろう。傍らにいた忍びは『将和が見た事無い忍び』だったから……。

 その日の夜、長慶は居城である芥川山城の寝室にて休んでいた。

 

「長慶様」

「ん、どうした?」

 

 宿直らしき近習が長慶に声をかけてきた。何かあったのかと長慶は襖を開け近習を見た瞬間だった。

 

「うっ………………」

 

 長慶は急に立ち眩み、そのまま廊下に倒れたのであった。その様子を和夏と見た事無い忍びが見ていた。

 

「……気絶したわね。なら運びましょう」

「……………」

 

 忍びの言葉に和夏は無言で頷き長慶を何処かに運んだ。その時の和夏の表情は無表情とも言えるモノだったのである。

 それから数日後、芥川山城で軍儀が開かれた。

 

「義輝に……将軍に兵を挙げようと思う」

『……………』

 

 長慶の開口一番の言葉に将和は違和感があった。今までの長慶ならまず相手の出方を探るからだ。珍しく将和が慎重論を唱えようとした。しかし、それを遮る者がいた。

 

「賛成です。今のままでは現状を打破出来ません」

「長逸……」

「そうですね~。将軍が京にいるならいっそのこと追い出してみましょうよ~」

「友通……」

 

 三好三人衆の長逸と友通がまさかの賛成を表明したのだ。驚く将和を他所に最後の一人である政康も口を開いた。

 

「アタシも賛成かな。政にはからっかしだけどこのままじゃあね……」

 

 政康の言葉に将和は頭を抱えた。今、此処にいるのは三人衆の他に将和と実休くらいだった。一存は淀城で義輝の出方を見るため待機していたのだ。それでも将和は反対を表明した。

 

「待て、やるのは構わないが既成事実というのが必要だ。それからでも遅くはない」

「だが兄上、今までそうしてきたがいつも先手を取られていたではないか」

「しかしだな長慶……(何だこの違和感は……)」

 

 結局、長慶のゴリ押しで義輝に兵を挙げる事になってしまった。

 

「兄貴、姉さんはどうしたんでしょうか……?」

「分からん……取り敢えず長慶と会ってくる」

 

 軍儀後、実休らが将和に心配の声をかけてきたので将和は長慶の部屋に向かったが近習から返ってきた言葉は面会拒絶だった。

 

「申し訳ありません。長慶様は今は誰にも会いたくないと……」

「……そうか……」

 

 近習の言葉に更なる疑惑が生じる将和だった。そして数日後、義輝が兵を挙げた。若狭国の兵が主力となる4000だった。義輝は再び天王山の麓に陣を構え三好家の出方を待った。

 

(たかが4000で……何を企んでいる?)

 

 将和も飯盛山城で兵7000を整えて長慶の軍勢と合流。再び天王山ーー山崎で合戦が始まったのである。

 

「……分からん。義輝は何を考えている……?」

 

 将和の部隊は長慶の本陣の右翼に展開していた。義輝は先方の政康の部隊と激突していたが一進一退の攻防をしていた。

 

「どうするの?」

「……考えていては埒があかん。此処は攻めに回ろう」

 

 久秀の問いに将和はそう答えて馬を用意させ乗り込んだ。

 

「俺は長慶の本陣に行って俺の部隊を出すようにしてくる。久秀も直ぐに出せるようにしておいてくれ」

「……分かったわ(……何かしらこの胸騒ぎは……?)」

 

 将和は馬を走らせ本陣に向かった。本陣でも兵はざわついていた。

 

「長慶!!」

「……おぉ兄上」

 

 将和は馬から降り床几に座る長慶の前に置かれた床几に座る。

 

「長慶、一進一退の攻防だが此処は攻めに回ろう。俺と久秀の部隊が先に突撃して義輝の部隊に圧力を掛ける。その隙に軍を左右に展開してくれ」

「分かった。なら先に『貴様の頸を取る』」

「えっ……」

 

 一瞬、長慶から何を言われたのか分からなかった。だが『何か』に気付いた瞬間、将和は床几から離れた。離れた刹那、数本の矢が床几に突き刺さった。

 

「どういう事だ……長逸!?」

「…………………」

 

 将和に矢を射掛けたのは長逸だった。だが長逸は無言であり将和は長慶に視線を向けた。

 

「何をしたいんだ長け……」

 

 軽い衝撃があった。その次には右脇腹からの激しい痛みが生じた。右脇腹に視線を向ければ長慶が脇差しで将和の右脇腹を突き刺していた。

 

「グっ……この……馬鹿野郎がァ!!」

 

 将和は左ストレートを長慶の左頬に叩き込み長慶を地に伏させた。

 

「あらら、まだそんな力があるのね」

「何……?」

 

 後ろからの声に振り返ると一人の女性が立っていた。その女性は将和の記憶が正しければ足利ルートで登場をする……。

 

「高橋……椿ッ!?」

「あら、私の名前を知っているのね。義輝から話は聞いていたけど、中々侮れないわね」

「へっ、そいつは有難いこった……どうせお前の事だ、催眠術でも駆使して長慶達を操っていたわけか!?」

「大正解……やっぱり貴方は脅威ね。私の力まで知っているなんてね……貴方は何者かしら?」

「人魚の肉を喰っていても分からんだろうよ……」

「……そこまでとはね……益々貴方は脅威だわ……」

 

 椿はそう言って持っていた槍を構える。対して将和は刺さっていた脇腹をゆっくりと抜いて倒れている長慶の目の前の地面に突き刺した。

 

「深く刺さってはいない……咄嗟に捻っていたのね」

「不意討ちはしないようにしていたからな……ッと!!」

 

 先手必勝、将和は短銃を椿に向け放った。弾丸は椿の額に命中、そのまま地面に倒れるが数秒して椿は立ち上がる。

 

「フフ、人魚の肉を喰らっているから死ぬ事は……あら?」

 

 椿が起き上がれば将和は正面にはおらず馬に乗っていた。

 

「バーカ、バーカ!! こういうのは逃げるが勝ちだ!!」

 

 将和はそのまま自分の部隊まで逃走したのである。

 

「あらら。だけど……逃がしはしないわよ。長慶?」

「……全軍に通達!! 三好家は此れより将軍家に味方する!! 敵は三好将和だ!!」

 

 三好軍はいきなりの混乱に訳が分からず立ち往生していた。

 

「ちょっと!? 何が本陣で遭ったのよ!!」

「話は後だ!! 部隊は飯盛山城へ撤退!!」

 

 本陣から帰ってきた血だらけの将和(応急手当済み)に久秀らは驚きつつも追撃してくる他の三好軍に攻撃しつつも飯盛山城へ撤退を開始したのである。

 将和らが飯盛山城へ逃げ込んでから数日後、三好家ーー長慶は将和を三好家からの除名及び将軍家の忠誠を誓い飯盛山城に立て籠る将和の討伐を宣言するのである。

 後の歴史家達からは「三好家の大内紛」と呼ばれる戦いであった。

 

 

 

 

 




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