『三好in戦極姫』   作:零戦

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第二十六話

 

 

 

 

「相も変わらず義輝は将軍職を返上はせぬ……ですか」

「まぁ麿らもそれは予想していたでおじゃる」

 

 飯盛山城で将和と近衛前久は茶を共にしていた。なお、茶を点てているのは久秀である。

 

「伝家の宝刀の件については畏きところも承諾済みじゃ、骨が折れたぞい」

「真に感謝致します」

 

 前久の言葉に将和は頭を下げる。その様子に前久は笑う。

 

「ほほほ、構わんのじゃ。朝廷は今後も『三好家』とは贔屓にしていきたいと思うておる」

「……………」

 

 前久の言葉に将和はピクリと眉を動かす。

 

「前久殿、その意味は……」

「無論。長慶殿らも含まれておる」

「……感謝致します」

 

 ニコニコと笑う前久に将和は深く息を吐く。朝廷は義輝側に付いている長慶達元三好側は許すとしてくれたのだ。

 

「畏きところも長慶殿らが義輝らによって操られている事は承知しておる。御主のやりたいようにやれば宜しいでおじゃる。御主には今回世話になったしのぅ」

 

 将和は長慶達の罪軽減のために朝廷にかなりの援助をしていた。三好家の資金がかなり低下はしたがその分、援助により多くの貴族達が救われたのは言うまでもない。

 なので貴族達もそれに報いるために色々と動いていたのだ。今回の三好家騒動で尼子と毛利が味方を表明してきた。

 どうやら朝廷側が官位を渡す事に同意した事で二家も将和側に味方を表明したのだ。だが義輝側も負けてはいない。

 関東管領の上杉は義輝側に味方を表明していたがどうやら前回の朝倉との一件もあったので義輝側に味方したのだ。

 なお、敵として認定した将和は上杉に書状を送ったが書状を読んだ謙信が思わず書状を破り捨てる程だったらしい。

 

「それで……いつやるのでおじゃる?」

「少なくとも三月以内には」

 

 将和の言葉に茶を飲んでいた久秀の目が見開いた。つまりは決戦をやる気なのである。それは前久も同じであり思わず前屈みになる。

 

「そ、それは真で……」

「おっと、そこから先は内密に。いつ義輝側の間諜がいるか分かりませんからな」

 

 続けて喋ろうとした前久に将和はニヤリと笑う。将和の表情に前久は将和に勝つ自信があると理解したのかニヤリと笑い返しその後は茶を共にして京へ帰った。

 

「本当に三月以内に挑むの?」

 

 前久が帰った後、茶器を片付けている久秀がポツリと将和に呟いた。問われた将和は茶菓子を口に入れた。

 

「まぁな」

「勝算は?」

「あるから挑むんだよ」

「成る程ね。なら作戦は?」

 

 久秀の言葉に将和はニヤリと笑う。

 

「卑怯な事をして奴等を山崎に誘い出す」

「……もしかして……」

「そう、そのもしかしてだ」

 

 それから数日後、京の義輝が居城とする二条城では義輝が幽斎からの報告に目を見開いた。

 

「何じゃと? 三好将和が出兵したと?」

「はい。河内飯盛山城から凡そ7000。更に岸和田城の十河、若江城の藤堂、信貴山の松永らもそれぞれ3000ずつが出兵しています。行き先は此処京です」

「都合16000か……」

「此方も20000は揃える事は可能です」

「良い、ならば我等も出兵じゃ。此処で三好将和の息の根を止めてやる。幽斎、合戦場は何処になろう?」

「恐らく……山崎です」

 

 義輝からの問いに幽斎は扇子を持って地図に指した。その場所は西国から京への道である山崎だった。幽斎はそこで決戦となると踏んでいた。

 

「相分かった。幽斎と椿は直ぐに軍勢を整えよ」

「「はっ」」

 

 義輝の言葉に二人は頭を下げ退出する。

 

「……何が狙いじゃ三好将和め……まぁ良かろう、今度こそ貴様の首をかっきってやる」

 

 義輝は庭を見ながらニヤリと笑みを浮かべるのであった。斯くして足利側も軍勢を整えた。

 主力は洗脳された三好長慶、三好政康、岩成友通、三好長逸等々でありその武勇、戦力に嘘偽りはなかった。

 だからこそ義輝には勝利する自信があったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、将和は想定以上の事をしでかすのである。

 

「山崎に布陣したら後はお茶するだけな」

「何でお茶なんだよ将兄……」

「まぁそこは何か理由あるんやろ」

 

 山崎へ行軍中、将和は一存や左近らとそう会話をしていた。

 

「というかあいつら、京から出ようとしても出れないからな」

「出れない……? どういう事ですの?」

 

 同じく乗馬していた順慶が首を傾げて将和に問う。

 

「京の東西って何処の勢力に囲まれていると思う?」

『………あっ……』

 

 そう、京の東西は反足利派である浅井と赤井が展開しているのだ。無論、義輝らが出陣すれば両家は直ぐにがら空きの京を狙うだろう。将和もそれを指示している。

 

(まぁ出てきたら出てきたで……奴等は死兵となるやもしれんな……)

 

 日本人が大好きな『乾坤一擲』という言葉。それはどの時代にも当てはまるだろう。

 桶狭間しかり関ヶ原しかり鳥羽・伏見しかり……真珠湾しかりである。

 

「さて……どう出る義輝? 俺達はどれでも盛大に迎えてやるぞ」

 

 将和は京の方向を見ながらニヤリと笑みを浮かべるのである。そして義輝はというと……。

 

「構わぬ。三好将和を討てれば問題は無い」

「ですが……」

「心配はいらぬよ幽斎」

 

 心配する幽斎を他所に義輝はそう言う。その様子に幽斎も最早何も言うまいと頭を下げるのである。そして足利軍は総勢二万で京を出陣し山崎へ向かうのである。無論、その出陣の様子は和夏らの忍びも確認している。

 

「そうか、義輝は来るか」

「うん。それと長慶様らの軍勢も確認出来たよ」

「……そうか」

 

 和夏の言葉に将和はゆっくりと頷く。

 

「久秀らを集めてくれ。作戦を説明する」

 

 そして久秀ら諸将らが集められて将和の口頭による作戦が説明された。

 

「マジか将兄……」

「おぅとも」

「やっぱ貴方馬鹿ね」

 

 驚く一存に呆れる久秀である。

 

「馬鹿は嫌いか?」

「……でも嫌いではないわね」

「だろう?」

 

 苦笑する久秀の言葉に将和にニカッと笑い改めて皆と向き合う。

 

「この一戦に俺達の全てを掛ける。……『三好家の荒廃、この一戦に有り!! 各員一層奮励努力せよ!!』」

『オォォォォォ!!』

「あ、それと高虎だが……」

「お、私に美味しい役か」

 

 そして将和らは準備に取り掛かり翌日、両軍は山崎の地で激突するのである。

 

「掛かれェ!!」

『オォォォォォ!!』

 

 先に仕掛けたのは足利軍であった。足利軍は数に物を言わせての突撃である。対して三好軍はやや遅れての突撃だった。

 

「突撃ィィィ!!」

『ウワアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!』

 

 だがそれでも士気は三好軍が上だった。先に激突したのは三好政康隊3000と十河一存隊3000である。場所は山崎より下ーー今で言う京都線島本駅で激突していた。

 

「目を覚ませ政康!!」

「目を覚ますのは其方よ十河一存!! 足利家のために何故分からないの!!」

「くっ、これが洗脳ってヤツか……クワバラクワバラ……けど、正義があるのは此方なんでな!! 悪いが全力で対峙して捕縛するぜ!!」

(それって案外難しいと思いますぞ……)

 

 一存の叫びに十河隊の副将である七条兼仲は思わず心の中でツッコミを入れるのであった。

 次に激突したのは三好長逸隊3000と筒井順慶・島左近隊3000であった。場所は山崎から対岸の岩清水八幡宮付近、今で言う京阪線橋本駅付近で激突していた。

 

「無闇な突撃はしませんわ。気を待つのです」

「そらそうやけど持久戦になりそうやな」

「あら、案外そうはならないかもしれませんわよ」

「なしてですの?」

「だって将和様の指揮ですのよ?」

「あー……確かに」

 

 順慶の言葉に左近も思わず納得してしまうのである。その一方で井尻付近ーー今で言うイオン高槻店辺りーーで陣を構えていた将和は久秀と共に5000の兵を率いて出陣していた。

 

「狼煙、一本だ」

「はい!!」

 

 陣前で狼煙が一本挙げられる。狼煙を見た義輝は思わず床几から立ち上がる。

 

「馬を引くのじゃ!! 三好将和が来るぞ!!」

「やはり来ますか?」

「そうじゃ、妾の直感じゃがヤツは来る!! 妾の元へな!!」

 

 幽斎の言葉に義輝は連れて来られた馬に乗る。その後ろは幽斎は元より椿、洗脳された長慶と岩成友通がいた。

 

「全軍で突撃するのじゃ!! 見よ、政康隊らのあの隙間を!!」

 

 義輝の指指す先には絶妙に空いた空間があった。将和と久秀の軍勢はそこに向かっていた。

 

「ならばこそ、妾達も突撃する。乱戦に持ち込めばヤツなど妾の刀の錆びにしてやる!!」

 

 そして義輝は発した。

 

「突撃!! 者共突っ込めェ!!」

『オォォォォォ!!』

 

 斯くして義輝の本隊14000が将和隊5000に襲い掛かろうと駆け出した。それを隠密行動中の和夏は確認し部下の忍びに命じて狼煙を挙げた。その数は三本であった。

 

「狼煙です!!」

「数は!?」

「三本です!!」

 

 家臣からの報告に十方山に潜伏していた藤堂高虎はニヤリと笑う。

 

「まさか将和のヤツ……本隊も囮にして私を突っ込ませるとはな……」

 

 十方山に潜伏していた藤堂高虎隊は主力の本隊に匹敵する5000でありそれこそが将和の『乾坤一擲』だった。

 

「旗竿を掲げろ!! 雄叫びを上げろ!! 足利義輝の後方に回り込んでヤツらを挟み撃ちだ!!」

『オォォォォォ!!』

「藤堂隊、突撃ィィィ!!」

『ウワアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!』

 

 斯くして将和の策は整ったのである。

 

 

 

 

 

 




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