『三好in戦極姫』   作:零戦

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第二十七話

 

 

 

 

「旗竿を掲げろ!! 雄叫びを上げろ!! 足利義輝の後方に回り込んでヤツらを挟み撃ちだ!!」

『オォォォォォ!!』

「藤堂隊、突撃ィィィ!!」

『ウワアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!』

 

 十方山から一斉に藤堂の旗竿が挙がるとそのまま雄叫びを上げながら山を降りていく。向かう先は将和の軍勢に向かって突撃した足利軍の後方であった。

 

「じ、十方山から謎の軍勢が!?」

「何!?」

「報告!! 謎の軍勢は藤堂高虎の軍勢です!! 凡そ5000!!」

「5000!? やられた、おのれ三好将和め。やりおったな!?」

 

 伝令からの報告に義輝は叫ぶ。だがその間にも挟み撃ちの包囲網は形成されつつあったのだ。

 

「後方の藤堂には岩成友通を当てよ!! 我等は将和に当たれ。将和さえ討ち取ればこの戦、妾達の勝ちじゃ!!」

『オォォォォォ!!』

 

 義輝は後方の藤堂隊5000には急遽編成された岩成友通隊7000で足止めをする事にし残り7000は将和の本隊5000と激突したのである。

 

「足利義輝ゥゥゥゥゥ!!」

『ッ!?』

 

 将和の叫び声に義輝達は身体を震わせる。その叫びの先に将和はいた。それを見た義輝も震わせていた身体を叩いて発散させ刀を抜刀する。

 

「三好将和ゥゥゥゥゥ!!」

 

 義輝は叫びながら馬を走らせる。対して将和も馬を走らせーー激突する。

 

「貴様さえ……貴様さえいなければ!!」

「残念無念また来週っと。どうせ幕府の限界はそこまで来ていたぞ義輝!!」

「だからこそ幕府を再興させるのじゃ!! 妾の手によってな!!」

「それが妖怪の洗脳でもか!!」

「そうじゃ!!」

 

 つばぜり合いをする両者に幽斎と椿は加勢をしようとするがそれを止めるのが久秀と和夏であった。

 

「和夏、貴女……」

「私を操り将和君を殺させようとした罪……許してはおけないな」

「フン、解けたなら再度操ればいいわ。それよりも一人忘れていないかしら?」

「三好将和ゥゥゥゥゥ!!」

 

 将和の後方から迫るのは双刀を持つ長慶だった。椿らにしてみれば長慶を当てれば勝機はあると思っていた。

 そう『思っていた』のだ。

 

「じゃかましぃわゴラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

「ガァッ!?」

 

 迫り来る長慶を見た瞬間、つばぜり合いをしていた義輝の腹に右足での蹴りを入れてからその反動で走ってくる長慶に正対し長慶の太刀筋を何とか避けてそのまま右ストレートを長慶の右頬に叩き込んで地面に叩き伏せたのである。

 

「なッ!? い、幾ら兄弟でもそれはやり過ぎじゃろう!!」

「合戦場においてそのような情けは不要だ!! しかも貴様らが洗脳しておいてなら初めから正面から正々堂々と掛かってこい!!」

 

 長慶を叩き伏せた将和は義輝に正対して叫ぶ。

 

「それとも貴様……死ぬ覚悟はしてないから助けてほしいとでも?」

「な、何じゃとぉ……」

 

 将和の言葉に義輝は怒りで身体をワナワナと震わせる。

 

「その言葉、直ちに撤回せよ!!」

「なら掛かってこい、相手になってやる!!」

 

 そして互いに斬り合いが始まる。その数、30合は数えた。

 

(埒がアカンな……ならば決着をつけてやる!!)

 

 将和は蹴りで牽制を入れる。それを見た義輝は左腕で防ごうとしたが将和は好機と捉えた。

 

「おらァ!!」

「なッ!?」

 

 そのまま将和は右腕でのラリアットを義輝にかましたのである。義輝は勢い余って地面に叩きつけられた。

 将和は馬乗りになって拳を使って左右の頬を殴るのを始める。

 

「ガ、や、やめ……」

「止めると思ったら大間違いだ」

 

 両腕で防ごうとした義輝だが将和は鼻に拳を叩きつけてまたしても義輝は鼻の骨が折れる。だが将和は義輝の鼻の骨が折れようが殴る事はやめなかった。

 

「グェッ、ギィッ、ギュッ……」

「ちょっとやめなさいよ!!」

 

 殴る事を止めない将和に椿は何とか久秀の突破をしようとするが突破は出来なかった。むしろ三好実休、安宅冬康らに阻まれて近づく事が出来なかったのだ。更には将和の周囲には将和側の兵士が辺りを睨みを効かせていたので中々足利側は近づく事が出来なかったのだ。

 

「グィッ……」

「ちっ、意識を手放したか」

 

 頬が全体的に赤く腫れ上がり義輝本人かさえ分からないような姿だったが義輝が意識を手放した事で将和は漸く殴るのを止めた。

 

「降伏しろ」

「……分かりました」

「ちょっと幽斎!?」

「無駄です椿。それにこれ以上抵抗していては義輝様のお命にも関わります」

「うっ……分かったわ」

 

 幽斎の言葉に椿は抵抗を止めて槍を地面に置くのである。だが、まだ抵抗を止めない者もいたのである。

 

「義輝様ァ!!」

 

 気絶から回復した長慶(洗脳中)が再び将和に襲い掛かろうとしたのだ。

 

「このっ……馬鹿野郎がァ!!」

 

 将和は寸でで避けて再度右ストレートを長慶の顔に叩き込んで地面に叩き伏せたのである。今度こそ長慶もノックアウトであった。

 

「うへぇ……将兄、姉さんが相手でも容赦無いな……」

「それが命取りになる時もあるからな……」

 

 将和は駆け付けた一存の言葉に砂埃を叩きながらそう答える。

 

「各部隊の報告」

「一存隊、何とか政康は捕縛には成功したぜ。身柄は小少将に任せている」

「ん」

「順慶と左近隊も長逸殿の捕縛に成功しましたわ。今は小少将の元に移送中ですわ」

「ん。足利軍の雑兵どもは?」

「大半は合戦場から離脱しているわ。今、此処にいるのは降伏の雑兵を含めて約19000程度ね」

「よし……なら翌日に一存隊を先頭に京へ進軍する。戦には勝ったからな、凱旋をしないとな」

 

 将和はニヤリと笑うのであった。その後、足利軍を蹴散らした三好軍は合戦の翌日に軍勢を整えて京へ進軍し無事に入城したのである。

 

「ホホホ、此処で将和殿を迎える日をどれだけ待ち望んでいた事か……」

「左様左様」

「なに、運が良かった……それだけです」

 

 二条城で将和は近衛前久と二条晴良と茶をしていた。なお、茶を点てているのは久秀である。

 

「それで……御主はどうするつもりでおじゃる?」

「……一先ずは二人の意識が回復してから……それになるでしょうなぁ」

 

 前久の言葉に将和はそう答えるが嘘偽りではなかった。将和にボコボコにしばかれた義輝はまだ意識は回復していないし長慶もまだ寝たままである。ちなみに洗脳は藍によって解除されている。

 

「京では将和はんが鬼になったとまで言われとるからのぅ。お気をつけなはれや」

「肝に銘じておきます」

 

 晴良の言葉に将和は頭を下げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処は……」

 

 長慶は夢の中で草原に立っていた。その空では多くの何かが飛行していた。

 

「あれは……?」

「あれは飛行機って言うのよ」

 

 不意に声をかけられた。その方向に視線を向ければ数人の女性が立っていた。

 

「貴女方は……」

「そうねぇ……将和(あの人)のお嫁さんね」

「そうだなぁ」

「なっ……将兄に嫁がいたなんて聞いた事が……」

「まぁ『この時代』ではね」

「この時代……?」

 

 長慶はその言葉に首を傾げるが女性達は何も言わなかった。

 

「あの人に伝えておいて……私達の事は気にせず嫁を多くこさえても良いわよ。日ノ本にまだ暫くは頑張ってねと……」

「……よく分かりませんがしかと」

「それと……貴女は操られていたからあの人を傷つけた責任は無いわよ」

「ッ!?」

 

 女性の言葉に長慶の顔が歪む。が、女性は微笑んで長慶を抱き締める。

 

「大丈夫よ、あの人が愛してくれてるもの。だから貴女はあの人を愛してあげてね?」

「そ、それは勿論です!!」

 

 そこで長慶は急速に引っ張られる感触がありまたそこで意識を手放したのであった。

 

「………」

 

 目を覚ますとそこは知らない天井だった。長慶は周囲を見ようとした時、部屋の扉をガラッと開けられた。

 

「おっ目が覚めたか」

「ま、将兄……」

 

 入ってきたのは丁度見舞いに訪れた将和だった。長慶は将和を確認した瞬間、込み上げてきたナニカを堪える事が出来ず涙を流しながら将和に抱きつくのである。

 

「将兄……将兄……ッ!?」

「……よしよし、よく頑張ったな」

「……ウワアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

 頭をポンポンと撫でられた長慶は堰を切ったかのように泣き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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