『三好in戦極姫』   作:零戦

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第二十八話

 

 

 

 

 長慶が意識を回復してから数時間後には義輝も意識を回復し取り敢えずは二人とも命に別状無しとまでは分かった。

 一先ずは長慶らと話しをしようと翌日に改めて二条城の一室で場を設けた。

 

「……何で白装束なの?」

「……今の私達にはこれくらいしか浮かびません故……」

 

 将和と正対した長慶らは白装束で並んで頭を下げての土下座をしていた。そんな長慶らに将和は溜め息を吐きながら近くによりーー扇子で長慶らの頭をペチペチと叩いた。

 

「俺からの仕置きはそれで勘弁してやるよ」

「で、でも兄様!?」

「三好家当主なら!!」

『ッ………』

「……三好家当主なら受け入れろ。お前は悪くない」

「……兄様ぁ」

「風評については近衛殿や二条殿が動いている。心配はするな。それと長逸、政康、友通」

『はいッ』

「逸って死ぬなよ? お前達は三好家三人衆なんだからな?」

『……はいッ!!』

 

 将和の言葉に三人は涙を流し平伏するのであった。そして場の解散しようとした将和だが長慶に止められた。

 

「どうした長慶?」

「……目が覚める前に夢を見ていた……」

「夢を?」

「空一面に鳥……? いや『ひこうき』と言っていたかな。その草原にいたんだ」

「『飛行機』……だと……?」

 

 長慶の言葉に将和は目を見開いた。この時代、飛行機は存在しない。何故長慶は知っていたのか?

 

「そこに数人の女性がいたんだ。その女性達と話しをしていた」

「………」

「その女性が兄様に伝言をと……『私達の事は気にせず嫁を多くこさえても良いわよ。日ノ本にまだ暫くは頑張ってね』と……」

「………」

 

 長慶の言葉に将和はカッと目を見開いた。その様子にただならぬ雰囲気だと一存や久秀達は思った。だが、将和は身体を震えさせると大笑いをした。

 

「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!」

「兄様……?」

「アッハッハッハッハッハッハ………そうか……そうか……『夕夏』達にそう言われたら仕方ないわな」

 

 将和は笑いながらも涙を流していた。そして長慶は将和の『夕夏』という単語を聞き逃さなかった。

 

「兄様、その女性達を知っているのですか!?」

「おぅ……その女性達は俺の嫁達だな」

『よ、嫁達!?』

 

 将和の言葉に反応したのは長慶や久秀、所謂将和組に属する者達だった。

 

「ど、どういう事だ兄様!? 兄様は婚姻をしていなかったではないか!!」

「そうよ!! 確かに遊女とかそういった遊びにも手を出してはいなかったのに……」

「もしや男色かと思い稚児を近習に出したのに一切手を出さない程でしたのに……」

「……取り敢えずお前らが俺をどう思っていたのかよーく分かったぞ、特に長逸」

 

 最後の言葉は長逸でありジロリと睨まれた長逸は視線をそらしたのである。

 

「まぁ前世……此処だと未来になるかな……」

「前世……未来……?」

 

 将和の言葉に首を傾げる長慶である。

 

「まぁ……いいや。そろそろ話す時が来たのかもしれんな。紙と筆を貸してくれ」

 

 将和は紙と筆を取りサラサラと何かを書いた。

 

「記載した者達を近日中にこの二条城に集めてくれ。そこで俺の正体を明かそう」

 

 斯くして文が三好家の領地に飛び7日以内に二条城に主要人物達が集まったのである。

 集まったのは以下の通りである。

 

 ・三好家

 ・三好長慶

 ・十河一存

 ・三好実休

 ・安宅冬康

 ・野口冬長

 ・三好長逸

 ・三好政康

 ・岩成友通

 ・松永久秀

 ・筒井順慶

 ・島左近

 ・藤堂高虎

 ・小少将

 ・和夏

 

 ・浅井家

 ・浅井長政

 ・遠藤直経

 

 ・雑賀衆

 ・鈴木重秀

 

 ・足利家

 ・足利義輝

 ・細川幽斎

 ・高橋椿

 

 なお、義輝らも呼ばれ刀は取り上げられた状態ではあるが拘束もしていなかった。

 

「本日集まってもらったのは他でもない。俺の正体を明かそうと思ってな」

「正体?」

「そういう事だ」

 

 そこへスッと手を挙げたのは両頬の腫れも漸く引いてきた義輝だった。

 

「その前に……何故妾達もいるのじゃ?」

「まぁ……取り敢えずは関連する事だからな」

「何じゃと?」

 

 そして将和は改めて口を開いた。

 

「……これから語る事は俺が体験した事だ。お前らが信じるも信じないもお前ら次第だ」

 

 将和は一拍を置いて再度を口を開いた。

 

「俺はこの時代の人間じゃない。元は未来に生きていた日ノ本人だ」

 

 そして将和は語り出す。将和自身が体験した事を、将和が生死を懸けて日ノ本の荒廃を阻止するために自身が行ってきた事を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまぁこんなところだな」

 

 将和は酒を飲みながら話し終えた。昼間から話したのに気付けば夜中に時刻が変わろうとしていた。

 

『……………………』

 

 話し終えた将和は酒をチビチビと飲むが長慶達はまた信じられそうになかったがふと左近が口を開いた。

 

「ウチは信じるで」

「左近……」

「将和はんが作った種子島改にはウチも関わっていたんや。そら疑問はあったで。でも此処で謎は解けたからウチは信じるわ」

 

 ニカッと笑う左近。技術者である左近も前々から不審に思ってはいたが将和の説明で納得したのだ。そして次に声をあげたのは高橋椿だった。

 

「そうなると私の催眠がバレていたのも納得出来るわね」

「しかし……人魚の肉を食べての不老不死とは……私の周囲にはいませんでしたね」

「藍は鳥羽上皇の時じゃないか」

「言っていませんでしたか? 九尾の狐なので長寿ですよ?」

「……もしかして『山海経』の時から……?」

「フフフ……」

 

 妖怪バレしてる藍はいつもの黒色の髪から狐と同じ金に近い色に戻しており細目は笑っていたが背筋に何かを感じた将和は話題を変える事にした。

 

「それで他に何か質問は?」

 

 その言葉に反応したのは久秀だった。

 

「貴方の歴史では私達は男……だったけども、どうなったのかは知っているのかしら?」

「あぁ知っている。聞きたいか?」

「……別に興味無いわ。どうせ私の最期なんて平蜘蛛に関連する事でしょうね」

「あ、それ正解」

「……聞かなかった事にするわ」

 

 そう言う久秀であった。

 

「それで……貴方はどうするの?」

「どうもこうもしない。俺は三好家の筆頭家老だ」

 

 久秀の言葉に将和はニヤリと笑いその言葉を聞いた長慶は安堵の息をコッソリと吐いていた。

 

「あら、貴方の事だから天下統一でもするんじゃないかしら?」

「よせよせ。俺は一度、日ノ本の頂点になってしまったからもういいさ」

「帝の次に偉くなったと言ってましたね」

「……ならば何故妾の邪魔をした?」

 

 義輝がポツリと呟いた言葉は部屋の温度を変えた。義輝は将和に視線を向けるがその眼には涙が溜まっていた。

 

「未来を知っているなら……何故……何故妾に協力をせんのじゃ!!」

「違うな。未来を知っているこそ室町幕府は終わらせねばならないんだよ」

 

 将和は義輝に歩み寄って座りポンポンと頭を撫でる。

 

「延元元年(1336年)に足利尊氏が幕府を成立させたが後醍醐天皇の南朝方と争っていた。三代義満の時に南朝と再度合体したけど嘉吉の乱で六代の義教が暗殺されてからは権威も著しく低下した。此処までは分かるな?」

 

 将和の言葉に義輝は無言で頷く。

 

「幕府が何とか態勢を建て直そうとしたが応仁の乱が約11年続いてしまいその余波が日ノ本全国にまで飛び火した……」

「……………」

「歴代の将軍は建て直そうとしたのは知っている。だが幕府の機能はほぼ喪失しているんだ。汚職の腐敗だらけだったしな」

「……妾の努力は無駄だと言いたいのか?」

「率直に言えばそうだな。無駄だな」

「ッ……………」

 

 将和の言葉が義輝の身体に重圧となって重くのし掛かった。

 

「時間が無かったとはいえ鎌倉幕府の機構をそのまま流用していてもな……まぁ後世からの意見だがな」

「だからこそ……壊すべきと?」

「壊すじゃないな。新しくするんだ」

 

 破壊と再生に似たようなモノであろう。

 

「妾は……どうすべきじゃった……?」

「そこは自分で考えて答えを出すべきだな」

 

 将和は肩を竦める。

 

「俺は答えを見つけてその答えのために走った。だからこそお前も答えを見つけるんだよ」

「妾の答え……」

 

 義輝は将和の言葉をぶつぶつと言うのであるが隣にいた幽斎は将和に頭を下げるのであった。

 

「取り敢えず今日は解散解散。夜中だし聞きたい事は明日でもいいぞ」

 

 将和の言葉に一存達も取り敢えずは解散する事にしたのである。将和も自室に戻り寝支度をしていた時、誰かの足音がした。

 

「誰か」

「兄様、私です」

「長慶か、どうした?」

 

 襖を開けると寝間着姿の長慶がいた。取り敢えずは部屋に通し長慶と正対する。

 

「どうした長慶?」

「……その……だな……」

 

 将和の言葉に長慶は顔を紅くしモジモジとする。

 

「ゆ、夢の話なんだが……」

「あぁ……確か夕夏の伝言か。んで?」

「その……夕夏さんに嫁の事を頼まれたのだが……わ、私じゃ駄目……かな……兄様?」

 

 長慶はその言葉を言い終えると顔を更に紅くし顔がゆでダコ状態になる。なお、その言葉を聞いた将和は目を見開いたままである。

 

「そ、その……兄様は庶兄だから三好家の血筋を少なくとも引いてはいないから……わ、私と祝言をしても……」

 

 だが長慶が言い終える前に将和は長慶を抱き締めた。そして頭をポンポンと撫でる。

 

「そうか……」

「あ、兄様。やはり……私では……ンムッ!?」

 

 長慶が何かを言う前に将和は長慶の唇を自身の唇と重ねた。将和の行動に長慶は目を白黒させるがやがて長慶は両手を将和の首に巻き付け口吸いを堪能する。

 5分はしたであろうか、将和は口吸いをしながら布団に長慶を誘導をし長慶はそれに従う。

 そして互いに離れるが二人が口吸いをした証拠である互いの唾液が橋となって布団に向かって落ちていく。

 

「兄様……」

「祝言に関してはちょっと待ってくれないか? ある程度の戦いを終わらせてからのが良いと思うからな」

「ッ!? じゃ、じゃあ……」

「お前に先を越されてしまったよ。俺も好きだぞ……孫次郎」

「~~ッ兄様ァ!!」

 

 将和の言葉に長慶は涙を流して再度将和と口吸いをする。そしてそのまま布団を掛けーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、股をヒョコヒョコさせながら歩く長慶が多方面で見られた。その表情は幸せそうだったと一存が語る。

 

「ちょっと!? 長慶様を朝から再起不能にさせないでよ!? 政務が溜まるじゃない!!」

「ふ、不可抗力というヤツなんだよ……」

 

 なお、起きてこない事に不審に思った久秀が将和の自室に赴くと裸で寝た状態の将和と長慶を見てしまい朝から久秀の癇癪が大爆発をしてしまい長頼に当たる回数が増えてしまうのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 




そろそろ長慶とくっつかせても良いかなと判断したのでやりました。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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