『三好in戦極姫』   作:零戦

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お久しぶりです


第三十話

 

 

 

 

 

「それで丹後の状況は?」

「直正らの軍勢は上手くやっているようだ。今は建部山城を包囲している」

 

 但馬国を播磨国の神崎郡から侵攻を開始して朝来郡で休息中の将和らはそう話していた。丹波国からは赤井直正ら率いる12000が丹後に侵攻していた。

 丹後を治めていたのは守護大名から戦国大名になっていた一色義道だった。一色義道は直ぐに兵を集めようとしたが、悪政を敷いていた義道に味方する国人は少なく僅か3200しか集まらずしかも士気は低かったりとやむを得ず籠城をしていた程である。

 そのため落城も後少しと思われたのである。そして但馬攻めには将和らの部隊である約25000が侵攻していた。

 

 三好軍

 総大将 三好将和(本隊 5000)

 一番隊 藤堂高虎(5000)

 二番隊 島左近(5000)

 三番隊 筒井順慶(5000)

 四番隊 松永久秀(5000)

 

 また本隊の中には足利義輝が同行しその配下には細川幽斎、高橋椿も参戦し将和から2000の兵力を指揮出来るようされていた。

 

「つい先日まで敵だった妾に兵を貸すのか?」

「構わん、此方は猫の手も借りたいところだしな。それに……お前は裏切らんだろ?」

 

 ニヤリと笑う将和に義輝は一瞬呆気に取られるも直ぐに笑みを浮かべるのである。

 翌日には進軍を開始し将和の軍勢に山名祐豊は此隅山城で籠城の構えを見せた。

 だが山名四天王の太田垣氏、八木氏等は将和側の調略で既に山名に見切りを付けていた。

 そのため、籠城準備中だった祐豊はあっという間に捕縛されるのである。

 

「三好家に味方をするなら。このまま但馬を治めても構わない」

「……三好家に味方致します」

 

 将和の言葉に祐豊は地獄にも仏はいたとばかりに感謝しながら頭を下げるのである。下がる祐豊を久秀は視線で追う。

 

「……あれで良いの?」

「味方になるなら生かす。その後はどう生きるかは当人に決めてもらう」

「寝首を掻かれないかしら?」

「さて……そこまでの度胸と覚悟があるならどうぞ……だがな」

 

 久秀の言葉に将和はニヤリと笑い久秀は溜め息を吐いた。

 

「ま、そうなるわね」

「んで以て……隣の因幡に侵攻する気配を見せんとな……」

「けど尼子は出てくるかしら? 毛利と争っている最中じゃないかしら?」

「まぁ出てきたら出てきたで決戦だわな」

 

 将和はそう言いながら和夏から夜食用である竹の皮で包んだ三つの握り飯と沢庵を貰う。

 

「ま、取り敢えずは腹ごしらえだな」

 

 そう言って将和は握り飯にかぶりつくのである。そして播磨では…………………。

 

「………………」

(ちょっと、どうにかしなさいよ)

(ちょっと無理ですね~)

(あれは私にも……)

 

 三好長慶の主力軍は播磨国の姫路城にて備前の宇喜多を支援していたが……肝心の長慶の表情が沈んでいた。

 

(確か将和さんと分かれて一月と半……そろそろ限界かもしれませんね)

(でも将和殿はまだ暫くは但馬にいるんでしょう?)

(因幡にいる尼子軍の情勢次第じゃないですかね~)

(何にせよ……早く将和殿に戻ってきて貰わないと……)

 

 長慶の表情が沈んでいるが……何の事はない。将和にここ最近会えてないから気分も下降気味であり家臣達にも影響を与えているのである。

 

(何とかなりませんかね……)

 

 長逸らはそう思うのであるがそんな話題の将和はというと……。

 

「あら……久秀さんではありませんか」

「……何であんたが此処にいるのよ」

 

 此隅山城を攻略してから二日後の深夜、将和の寝室の前には久秀と順慶が鉢合わせをしていた。共に服装は白の寝衣を着ていたが、手には日本酒が入った徳利と銚子を持っていたのである。

 

「……考える事は同じ……ですわね」

「………………」

 

 順慶の言葉に久秀は視線を逸らす。『そういう事』を考えたわけではないがたまたま寝付きが悪かったので将和も交えて飲もうとしていただけであるが理由を言えば言い訳にしか聞こえないので言うのはやめるのである。

 そうとは知らない順慶は久秀のは図星だったと思い口角を少しだけあげる。

 

「天下の数奇者も欲には勝てないモノですわね」

「言わせておけば……」

 

 ホホホと笑う順慶を無視して久秀は将和の寝室の襖を開ける。隣の部屋にいる宿直には飲む事は告げていたので宿直が乗り込んでくる事はない。

 

「ふぁっ……?」

 

 寝ていた将和だが久秀の襖を開ける音に眼を覚まし置いていた刀に手を取るが直ぐに二人と気付いて刀を置いた。

 

「何だ……どうした夜中に?」

「寝付きが悪いから飲みに来たのよ。こいつもその口と言いつつ夜這いでもしに来たのよどうせ」

「夜這っ……!?」

 

 久秀の指摘に順慶は顔を赤らめるが順慶は負けじと久秀に言い返す。

 

「あーら、なら久秀さんもそうじゃありませんこと?」

「フッ子どもじゃあるまいし」

「な、何ですって!?」

「………………」

 

 言い争いをしそうになる二人。なお、将和はまだ寝起きでありそんなに理解していなかった。が、言い争う二人に欠伸をしつつも抱き寄せる。

 

「んなッ!?」

「ケキョッ!?」

 

 抱き寄せられた二人は急速に頬を紅く染めるが将和はお構い無しに布団に潜り込ませる。

 

「眠いんだ……寝るぞ……」

『……………………』

 

 二人が黙り込むのを尻目に将和は再び寝るのであったが二人は眠れず寝不足になったのは言うまでもなかった。そして因幡国の丸山城にて尼子経久らの尼子の軍勢約二万が入城していた。

 

「フム……三好将和め、但馬を落としたかの」

 

 部下からの報告に経久は地図を見ながらそう呟き扇子でポンポンとある地域を叩く。

 

「恐らく決戦は此処じゃろな……」

「お婆様、そこは……」

 

 経久が叩いた地域は千代川だった。経久は千代川を挟んでの決戦になると踏んでいた。

 

「ですがお婆様、千代川で決戦となるとそれまでに点在する城は……」

「見捨てるか引き揚げるしかないの」

「引き揚げるのは城代の者達が反対しまする」

 

 尼子晴久はそう反対意見を出すが経久はあくまでも冷静だった。

 

「今戦は乾坤一擲じゃ。無駄な出費は抑える事が重要、引き揚げさせるのじゃ。それでも城代が反対するなら見捨てるしかあるまい」

「しかし……」

「晴久、心を鬼とせよ。それでは尼子の当主は無理じゃ」

 

 過去の一件もあったが晴久だが経久は晴久の成長のためにあえて非情を取らせた。しかし、晴久の胸中は如何なる程だっただろうか……?

 軍儀を終えた後、晴久の元に旧新宮党の者達が集まる。

 

「晴久様、見捨てる城代達は旧新宮党の者達です」

「恐らく経久様は我々新宮党を此処で抹殺する気なのでしょう」

「……………………」

「晴久様、経久様を隠居させましょう」

「しかしそれは些か早すぎるのでは?」

「遅いばかりです。幾ら過去の一件があるからと言って我々には最早……後はありません」

「始末するのではなく再度の隠居か……」

「血を見ないのであればこそ……晴久様、何卒ご決断を!!」

「…………………やむを得ない…………」

 

 晴久はそう決断をし直ぐに経久の元に向かった。しかしーーー経久は部屋にて事切れていたのであった。

 

「お婆様!? お婆様!?」

「誰ぞあるか!?」

 

 経久の死因は卒中であったと伝えられている。だが当初は晴久と旧新宮党の者達が謀殺したと噂され急遽尼子を指揮する事になった晴久はそれらに掛かり切りとなってしまい結局は戦にならず尼子軍は出雲に引き揚げるのであった。

 これ以後、尼子の拡大は急速に衰退していき結局は尼子は毛利に滅ぼされるのである。

 

「鬼が漸く死んだか……」

「鬼だから中々死ななかったしな……」

 

 芥川山城に戻った将和や長慶達はそう話す。

 

「但馬方面は暫くは直正に任せよう」

「ウム、妥当だな。そんで以て毛利だが……」

「あー……それなんだがな兄様……」

「どうした?」

 

 言いにくそうにする長慶だったがそれを長逸が補佐するように口を開いた。

 

「それが我々が播磨を退陣してから……別所長治が裏切り毛利方に付きました。また、別所氏の影響下にあった東播磨の諸勢力がこれに同調し浄土真宗の門徒を多く抱える中播磨の三木氏や西播磨の宇野氏がこれを支援して情勢が一変しました」

「……………………」

 

 長逸の言葉に将和は頭を抱えたが直ぐに犯人は分かった。

 

「やはり毛利元就か」

「恐らくは……」

「……俺が出るか」

「しかし、それでは将和殿に頼りきりになります」

 

 ポツリと呟いた将和の言葉に長逸はそう反論する。確かに将和が動けば戦局は動くかもしれない。だが頼りきりなるのも三好家の足枷になっていたのは事実だった。

 

「……なら俺も出つつ長慶も出るというのは?」

「……成る程。長慶様当主も出れば元就も出てきて将和殿も動きやすくなりますね」

「私が囮になっても構わない」

 

 そう発言したのは長慶だった。

 

「長慶……」

「当主が時には囮になるのも必要……そうじゃないかな兄様?」

「……面白い。長慶の案に乗ろうか」

 

 将和はクックックと笑いつつ頷く。これにより東播磨再攻略が決定されたのであった。

 

 

 

 

 

 




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