『三好in戦極姫』   作:零戦

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思ったよりも早く出来たので投下


第三十二話

 

 

 

 

 

 毛利元就率いる5万の援軍が到着したのは将和が高松城を包囲しての一月後、梅雨の最中であった。それでもかなりの強行軍であり毛利軍は高松城近くの岩崎山・日差山に布陣するのである。

 

「さて、まずは高松城の状況ですが……」

 

 元就と隆景は高松城が見える場所まで来ると眼下にはーーーーーー湖が存在していた。

 

「湖……いえ、あの湖の真ん中に『小さく浮いて見える』のが高松城………ッ!?」

「ッ!?」

 

 元就の驚愕する表情、それは隆景も同じであった。そして優秀な二人は瞬時に高松城が持ちこたえられない事を理解したのである。

 

(三好将和……何という男だ……)

(クッ……やはりあの高松城からの使者は謀略だったという事か……)

 

 元就はワナワナと怒りに震えながら扇子をバキッと二つに折る。それは今から一月前、元就らが軍勢の準備をしていると『高松城』からの使者が来たのだ。

 

「我が城主、宗治以下の奮戦で宇喜多及び三好の軍勢は備前の国境に引き上げました。その為急遽の援軍は現時点では不要となりました」

 

 確かに物見からの報告でも軍勢が引き揚げていたのは確認していた。だからこそ様子見で動いていたのだ……それが急報が入ったのが3日前だった。

 

「高松城が包囲され高松城城主宗治以下は動けない様子でございます。直ちに出陣を願います!!」

 

 使者が来たのは高松城付近にあった宮地山城からの急報であった。元就と隆景は秀包らを従えて慌てて出陣してきたのである。

 

(謀られた………ッ)

 

 謀将と崇められていたのに油断していた。いや、油断というよりも慢心かもしれない。三好家にそこまで頭が回る人物が……。

 

「やはり……三好将和か………ッ」

 

 いた。尼子の時にも絡んでいた筆頭家老である。奴なら二重三重の謀略を仕込んでいるのは間違いないだろう。

 

「お母さん、この5万の援軍で堤を切れば!!」

「無理です秀包。三好軍が易々と堤を切らせてくれる筈がありません」

 

 隆景は秀包の具申をそう否定する。

 

「じゃあどうするの姉さん!? 高松城を見捨てるというの!!」

「落ち着きなさい秀包。隆景もそこまでは言っておりません」

「……ごめんなさい姉さん」

「良いのです秀包」

「兎も角は善後策を考える必要はあるわ。秀包は周辺の城に増援を」

「分かったよお母さん」

 

 そして元就と隆景は陣を固めると善後策を探る事になる。その一方で石井山に陣を構えた将和は安堵の息を吐いていた。

 

「フー、間一髪だったな……。左近のカラクリ左近が無ければまだ数週間は堤を築堤している最中に毛利軍が襲来していたな」

「どうやどうや、これがウチのカラクリ左近の力やでェッ!!」

 

 天幕の中で将和は活躍した左近達と話していた。今回の築堤には機械であるカラクリ左近が土俵を多く運び土を掛け築堤の時間を早める事に成功したのだ。そして梅雨の時期を見込んで雨乞いをしたり(官兵衛らがやっていた)して大雨の時に大量の舟を用意して更に石を積載、そのまま船底に穴を開けて着低させ足守川の流れを無理矢理変えさせ大量の水が高松城周辺に押し寄せたのである。

 無論、堤が高松城を囲んでいるので水が抜ける事なく高松城は湖の島如くに小さく浮いてしまうのである。この水攻めにより高松城内では井戸は泥水に浸かり、肥溜めからは汚物が流れ出した。これにより飯を炊く事も水を飲む事も容易ではなくなったのだ。

 

「宮地山城は?」

「義輝殿と幽斎殿の7500の兵力が入城して北方の睨みを効かせています」

「ん」

「さて……これで王手かしら?」

「いや……高松城は王手だが、元就はまだ思っていないだろう」

「というと?」

「簡単な事だ……戦局を打開するなら俺を討てば良いからな」

 

 久秀の問いに将和は笑みを浮かべるがその笑みはどう見ても何か思い付いた表情である。

 

「今度は何を思い付いたのかしら?」

「なに……決戦だな」

 

 そして将和は全員を集めるのである。

 

「毛利に野戦を仕掛ける」

「野戦をッ!?」

「しかし場所は……」

「此処だ」

 

 将和が指揮棒を指したのは庚申山付近の足守川であった。(上加茂神社付近)

 

「幸いにして冠山城、宮地山城、加茂城は此方が攻略しているからな。これらを利用する」

「利用とは?」

「それぞれ三城には義輝、幽斎、順慶が7000を率いて入城して毛利の気を引いてくれ。そしてーーー」

「……相変わらずえげつないわね」

「褒めても何も出んぞ久秀」

 

 話を聞いて乾いた笑みを浮かべる久秀に将和は笑みを浮かべるのである。それは兎も角として作戦は実行に移された。

 義輝ら三人はそれぞれ7000の兵力を率いて三城に入城し毛利への睨みを効かせる事になる。そして将和や長慶らの主力隊は上加茂神社付近に陣を張り、宇喜多勢は兵を半分ずつに分けて水取口跡と蛙ヶ鼻に陣を張り堤の警戒をする。そして久秀の騎馬隊7000は吉備津神社に陣を張るのである。

 

(……何を考えている……)

 

 物見からの報告に元就と隆景は頭を悩ます。

 

「お母様、三好将和の狙いは明らかにお母様です。お母様の首を討てば……」

「そうね……だからこそこういった策を出してるわけ……か……」

「ですがお母さん、三好軍は上加茂神社に陣を張ってはいますがその兵力は此方の5万を下回る1万と少しばかりです。此処は一気に出陣して叩くべきではないですか!!」

 

 秀包はそう主張する。確かにそれも一理はある。だが攻めれば冠山城から援軍が来て逆に此方が包囲殲滅される可能性もある。元就と隆景はその疑心に駆られていたのだ。

 

(何を考えているの……三好将和ッ)

 

 元就はそう叫ばざる得なかった。そして上加茂神社に陣を張る将和達だが将和はニヤリと笑っていた。

 

「謀略に謀略を重ねて領土を拡大してきた元就と隆景は俺がする動作の一つ一つを見て謀略と疑ってしまい疑心暗鬼に陥る。だからこそ策は一つしか使わない」

「一つしか……?」

「そう。謀略に謀略を重ねた者から見れば俺達の布陣を見れば俺達が粘れば左右から挟撃されると踏むが……果たしてそれだけか? 高松城を水攻めで包囲した俺達なら二重三重の罠を仕掛けているのではないか?と勘繰ってしまう……そこを狙うッ」

「成る程……では川を渡って布陣するのも予定通りと兄様?」

「そゆこと。それに上加茂神社には左近が見つからないようにしているからな」

「……アレですか?」

「アレだな」

 

 床几に座りながらそう話す将和と長慶であった。そして翌日、毛利軍は決戦に挑む事にした。毛利軍は二つに分けていた軍勢を造山古墳の北方で一つに再編成をし足守川に布陣した三好軍と対峙したのである。

 

「敵は背水之陣のようね……」

「そのようです。確かに兵力を見ればそれを選択すると思われますが……」

「それを思わせる策かもしれません。如何せん備えはしましょう」

 

 斯くして三好軍と毛利軍は激突する。後に『足守川の戦い』と呼ばれる戦いである。最初にぶつかったのは秀包の配下にいる桂広繁と藤堂高虎の部隊であった。両者の兵力は共に3000であり均衡していたが広繁と高虎の腕を見れば高虎のが上だった。

 しかしそこへ増援として井上有景の軍勢4000が到着し高虎の軍勢を飲み込もうとする。

 

「駄目です高虎様!! このままでは押し切られます!!」

「分かっている!! もう少しで援軍が来る!! それまで粘れ!!」

 

 高虎はそう叫ぶ。それは事実であり高橋椿の軍勢2000が到着し半壊していた高虎の軍勢を救出しつつ本陣に後退する。勢い付いた桂広繁と井上有景の軍勢は三好軍の本陣に向けて突撃する。

 

「臆するな!! 掛かれ掛かれェ!!」

 

 広繁はそう叫び本陣に斬り込む。更には秀包の軍勢9000も増援に追加され三好軍の本陣はジリジリと後退するのである。

 

「このままでは支えきれません!!」

「仕方あるまい。作戦『乙』だ」

「はッ。法螺貝!!」

 

 長慶は作戦『乙』を発令し退却の法螺貝を鳴らす。本陣は崩れて足守川を渡って退却する。

 

「敵三好軍は退却していきます!!」

「崩れるのが早い……」

「しかし、攻め込んだのは我等です」

「何かの策を労して……」

「申し上げます!! 敵三好軍、足守川を渡りました!!」

「………渡りましょう」

「お母様!?」

「但し、渡るのは秀包ら軍勢のみです。我等本隊は伏兵に備えるのです」

「御意。直ちに渡河をさせます」

 

 そして秀包ら1万6000の軍勢は足守川を渡河し上加茂神社に迫る。

 

「掛かれ掛かれェ!!」

 

 突撃する秀包らの軍勢であった。しかし、上加茂神社に迫ろうとした時、ズシンと地面が揺れた。

 

「な、地震か!?」

 

 答えは違っていた。上加茂神社の後方からズシン、ズシンと地響きが鳴り、折って擬装していた木々を払い除けて立ち上がる巨大な物体がそこにいたのだ。

 

「お前ら待たせたなァ!! カラクリ左近の登場や、冥土の土産によぅ見とけやァ!!」

 

 立ち上がるカラクリ左近の傍らには操縦者である島左近が叫んでいた。そしてカラクリ左近は用意してあった岩石を掴み、それを上手投げで秀包らの軍勢に投石したのである。

 

「いてまえ、カラクリ左近!!」

 

 島左近隊500の参戦は元就の戦略を大きく狂わせたのであった。

 

 

 

 

 




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