『三好in戦極姫』   作:零戦

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毛利家との戦いは終わり


第三十三話

 

 

 

 

 

 

 

「撤退!! 急いで!!」

 

 元就が力一杯、自軍に叫ぶ。しかし、返答は飛んでくる自軍の足軽達であった。

 

「いてまえ!! カラクリ左近!!」

 

 左近は『カラクリ左近』を操り、毛利の前線に突撃する。振りかぶって地面に叩きつける衝撃波が風圧を呼び、毛利軍の足軽達を次々と吹き飛ばしていくのである。

 

「今や!! 玉投げェェェッ!!」

 

 『カラクリ左近』の後方に待機していた島隊500は中程の玉に2尺程の縄に火を付け火が勢いよく燃焼していく中で500の島隊は一斉に毛利軍へ投げたのである。

 投げられた玉は毛利軍の陣地に投擲され一瞬の間を置いて次々と爆発したのである。

 

「なッ!?」

「あれは……焙烙玉!?」

 

 元就と隆景は陣営から爆発していく味方を見てそう叫ぶ。毛利ーー引いては味方である村上水軍が使用する焙烙玉を三好軍が使用しているのだ。

 

「……焙烙玉の技術が漏れた……というわけね……ッ」

 

 悔しそうに元就はそう絞るような声を出すが、実際は焙烙玉の存在を知っているチート野郎こと将和が焙烙玉を量産していたからだ。なお、この焙烙玉はこの合戦以後には三好軍の野戦、城攻めには重要兵器と位置付けられるのである。

 それはさておき、島隊500の乱入は前線の秀包隊16000を混乱に陥れる事に成功する。

 

「落ち着くんだ、敵はたかが500ばかりだ!!」

 

 秀包はそう激を飛ばして戦線を持ち直そうとするが、凶報も次々と舞い込んできた。

 

「桂広繁様討死!!」

「な、何!?」

「敵のカラクリなモノに吹き飛ばされ、頭が……」

「………クッ!?」

「申し上げます!! 井上有景様、敵将藤堂高虎に討たれました!!」

「ク、有景までもがか!?」

 

 二武将の討死に秀包は顔を歪めるがそれは一瞬の事であり、顔を背けるとその空間に矢が飛んできた。

 

「あれ~、外れましたね~」

「……三好家武将とお見受けするよ」

「三好三人衆の岩成友通です~」

「三好三人衆……相手に取って不足は無い!!」

 

 そう言って秀包は友通と戦闘を開始するのである。そして元就の本陣でも撤退が開始されていた。

 

「先に母様を逃がします、早く!!」

「駄目よ隆景、まだ秀包達も……」

「毛利の繁栄を担った母様を此処で死なすわけにはいきません!!」

「ッ!?」

 

 隆景の叫びに元就はグッと堪える。繁栄をしてきたのは幼い子達の為であり毛利が繁栄したのはたまたまだった。だが子達は元就を逃がす事を選択したのだ。

 

「さ、早く!!」

「……すみませんッ」

 

 隆景に促され、元就は馬に移乗し駆けようとした瞬間、本陣に複数の焙烙玉が放物線を描いて降ってきた。それは『カラクリ左近』から投げられた焙烙玉であった。

 

「ッ!?」

「母さーーー」

 

 焙烙玉は地面に着地して転がった瞬間に爆発、その爆風は元就を襲ったのである。爆風に馬が驚き暴れ、元就はそのまま落馬したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「将和君、毛利の本陣がざわついている。元就が負傷したみたいだ」

「お、それは吉兆かもな。なら俺達も突撃しようか」

 

 そして将和率いる6000の兵は突撃を開始する。

 

「突撃ィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

『オオオォォォォォォォォォォォッ!!』

 

 それに連れて吉備津神社で待機していた久秀の騎馬隊9000も突撃を開始した。

 

「突撃よ!! 毛利軍を蹴散らすのよ!!」

『オオオォォォォォォォォォォォッ!!』

 

 2個隊は混乱している毛利軍の本陣に突撃し激しく斬り合いとなる。

 

「和夏!!」

「了!!」

 

 和夏は毛利軍の真ん中を開けるためクナイを投げ、焙烙玉を投げ込む。クナイで足軽は倒れ、焙烙玉の爆発で更に足軽が薙ぎ倒される。そこに穴が空いた。

 

「穴が空いたぞ、突っ込めェェェッ!!」

 

 空いたのを見た将和は馬を走らせて空いた穴に突撃する。そこへ槍兵の足軽が将和を刺そうとするが、将和は咄嗟に腰に装備していた三好式騎銃一型を足軽に向けた。

 

「ヒッ!?」

「悪いな、弾は装填されているんだ」

 

 引き金を引くと火縄が火薬皿に入り火薬が爆発し弾が発射、弾は足軽の喉を貫き足軽はそのまま地面に倒れる。

 

「此処が正念場だ!! 全てを掛けろォ!!」

 

 将和はそう叫びつつ奥を目指すのである。そして本陣の奥では隆景が元就をおぶって逃げようとしていた。

 

「母様……しっかり……」

 

 元就は落馬の衝撃で右足を骨折して気絶しており隆景がおぶるしかなかった。そして馬に元就を乗せた時、陣幕を破る音が聞こえ振り返るとーー将和らがいた。

 

「……毛利の将と見る」

「毛利元就が三女、小早川隆景!! 皆!!」

『オォッ!!』

 

 隆景の叫びに残っていた足軽らが集まり元就と隆景を守る。しかし、三好の鉄砲隊が鉄砲を放つ。

 

「グェッ!?」

「ギャッ!?」

 

 二人を守っていた足軽達は瞬く間に銃弾に倒れ伏した。これにより二人を守る者はいなくなった。

 

「クッ」

「まだやるか?」

 

 隆景はそれでも刀を抜き将和に刃を向ける。将和も刃を隆景に向け、雰囲気が変わる……が、そこへ声を発したのは馬に乗せられ気絶していた元就であった。

 

「……隆景……刃を…仕舞いなさい……」

「母様ッ!? ですがッ!!」

「良いのです……私を降ろしなさい……」

「は、はいッ」

 

 元就の言葉に隆景は刃を納めて元就を抱えて馬から降ろす。将和が元就を見ると右足が有らぬ方向に向いていたので和夏に視線を向ける。

 

「和夏、直ぐに応急手当だッ」

「構わないが……向こうは良いのか?」

 

 和夏は隆景に視線を向ける。隆景は警戒していたが、将和が刀を納刀したのを見て警戒を解いたのである。それを見て和夏も元就に駆け寄り右足の応急手当をする。

 

「ウグッ」

「今は安静にした方が良いぞ」

「……そうはいきません。私も毛利の頂点に立つ者、栄光と沈む時は立ち会わなければなりません」

 

 元就はそう言って地面に座り頭を下げる。

 

「……斯様な姿で申し訳ありません。毛利は……降伏致します」

「ッ」

 

 元就の言葉に隆景は涙を流す。自分達は負けたのだと実感してしまったのだ。

 

「……分かりました。ですが一先ずはこの戦いを終わらせましょう」

 

 将和は頷くとまだ戦っている両軍に向かって叫んだ。

 

「聞けェェェッ!! 三好・毛利両軍に告げる!! 只今、毛利元就殿が毛利の降伏を受諾した!! 双方、直ちに武器を収めよ!! 戦は終わったァ!!」

 

 将和の叫びが戦場に響き渡る。斬り合いをしていた長慶も将和の声を聞いて安堵の息を吐いたのである。

 

「元就殿、一先ずは担架に乗られよ。そのまま野戦病院に収容します。もしかしたら骨折の他にも痛めているところがあるかもしれんからな」

「感謝致します三好殿……」

「それと……無闇になって自害はお薦め出来ません。子達らが悲しむでしょう」

「………………」

「無論、私もですがね」

「……えっ?」

「貴女(の謀略の腕)が欲しいですから」

「………………………ッ!?」

 

 元就は将和の言葉を最初は首を傾げたが次第に言葉の意味を理解して顔を真っ赤にするのであった。ちなみにそれを見て久秀は深い溜め息を吐いた。

 

「貴方……馬鹿なのかしら?」

「ん? 何がだ?」

「………長慶様にチクっておくわ」

 

 ボソッと呟く久秀であった。その後、吉備津神社にて両軍が集結し長慶は毛利の降伏を正式に受諾した。それに伴い、水攻めにした備中高松城の水抜き、備中高松城の降伏も認められた。高松城への降伏には隆景が赴き清水宗治に説明し宗治も頷いた事で高松城も降伏したのである。

 それから数日後、再び吉備津神社にて毛利家の今後が話し合われる事になる。

 

「では三好家が天下統一するまでは領土の削減も大幅には無い……と?」

「と言ってもあれだな。天下統一後は三国の予定だな」

「ちなみに場所は?」

「安芸、周防、長門の三国だな。だがまだ分からん、毛利の働き次第だな」

 

 久秀に長慶に事の顛末をチクられ戻ってから長慶に涙目で右ストレートを喰らって右頬が腫れている将和はそう言う。その光景に隆景と秀包は笑いそうになるが我慢していた。

 

「石見銀山は手放さなくても良いのですか?」

「まだ暫くは良い。生野銀山の他にも因幡と摂津、但馬にも銀山はあるからな」

(成る程。それまでに採掘しても構わないと……)

 

 ちなみに将和が言っているのは因幡銀山、多田銀山、神子畑鉱山の事である。生野銀山も含めて四ヵ所の鉱山は灰吹法が導入されているので産出量は多かった。

 

「取り敢えず、これでいこう」

 

 毛利家の処遇は以下の通りになった。

 

 ・毛利家の領土は『安芸』『周防』『長門』『石見』『備後』の五か国

 ・石見銀山の譲渡は三好家の天下統一後

 ・毛利元就は嫡女毛利隆元に実権を全て渡す事

 ・人質の意味も兼ねて毛利元就は三好家の家臣とする

 

 

 

 

 

「……元就をウチに?」

「兄様が元就が欲しいと言ったらしいですからねッ。兄様が欲しいと!!(私にはそんな事言わないのに……)」

 

 将和の問いに長慶は多少拗ねながらそう言う。なお、元就本人は悪い気はしていない模様である。

 

「本当に良いの母様?」

「良いのですよ隆元」

 

 三好家に降伏したという事で博多に守備兵だけを残して慌てて戻って来た毛利隆元と吉川元春は元就の人質に不満げだったが元就は笑みを浮かべていた。

 

「本当だったら隆元に全てを譲って隠居しているべきだったのです。それが今、漸く叶いましたからね」

「そうなの?」

「えぇ……それにあの告白は間違いだったとしても私の胸には響きましたわ♪」

「うわッ!? お母さんが女の表情をしてる!?」

「母様にこんな表情をさせる三好将和……何て凄いんだろう……」

 

 ウットリとする元就に元春は驚愕の表情をし、隆元は驚いていた。それは兎も角として、三好家と毛利家の戦いは終わりを告げるのであった。

 

 

 

 

 

 




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