『三好in戦極姫』   作:零戦

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第四話

 

 

 

 

 

「今日は少し暑いな……」

 

 将和は新しく居城とする河内国の飯盛山城の一室にて政務をしていた。

 

「農民達の様子はどうだ?」

「はい~、皆は口々に将和様を讃えておられます~」

 

 のんびりとした口調の姫武将ーー岩成友通はニコニコしながら将和に告げる。

 

「むぅ、あまり俺が目立つと孫次郎が苦労するな。流言を流して孫次郎の指示に従っているからと徐々に流してくれ」

「でも~将和様が考えた案ですけど宜しいのでぇ

?」

「構わん構わん。当主は孫次郎なんだし孫次郎の成果にしておけば良い」

 

 将和は苦笑しつつ休憩をとるため飯盛山から見下ろせるところに赴く。

 

「……うむ……」

 

 眼下はところどころに沼地等が点在している。

 

(やはり元地元だから大体は見分けがつくなぁ)

 

 これでも最初の設定は大阪出身という将和である。(メタ発言)なお、作者はここら付近出身である。(だからメタ発言)

 

(新田開発しつつ深野池と新開池の治水をしないとな……後は特産品とか作って……)

 

 休憩と言いつつも頭の中は政務をしている将和であった。そんな日々が続いたがそれを打ち消したのは将軍義晴であった。義晴は氏綱と政国らと連携しつつ晴元排除に動き出したのだ。

 晴元は将和と孫次郎に援軍を要請し孫次郎は堺に入るも将和は飯盛山城から動かなかった。何故なら大和国の筒井氏が義晴側に便乗して河内へ侵攻しようとしていた。

 

「筒井を大和に追い返す」

 

 そのため将和は飯盛山城から出て堺に行く振りをして太平寺方面に南下、飯盛山城から出て行ったと判断した筒井がノコノコと大和から出てきたのを将和の軍勢は側面から突撃、筒井の軍勢は崩れて大和に引き返す羽目になるのである。

 堺に立て籠った孫次郎だが四国から一存らの軍勢が到着した事で形勢は逆転、義晴は近江に逃亡して将軍の職を娘の義輝に譲るのであった。

 なお、義晴が逃亡した事で氏綱らは戦意を喪失し六角定頼に仲介を頼り両軍は和睦するのである。

 しかし、此処で何故か長教が裏切り氏綱側へと付いてしまう。勢い付いた氏綱らの連合軍は決戦を挑もうとするが相手は将和・孫次郎らが率いる約二万の軍勢だった。そして両軍は摂津国の舎利寺付近にて激突、今回の戦いで一番目立ったのは孫次郎の采配だった。

 孫次郎は巧妙に兵を代え氏綱らを押し切り大敗させる事に成功、氏綱らは死者2000弱を出して撤退するのである。この後に両軍は和解する事になるが政長の進言により池田信正が切腹させられこれに不信を抱いた孫次郎が晴元に政長暗殺を具申も受け入れて貰えなかった。

 このように晴元と三好側でも徐々に関係が崩れていく事になる。

 

「ほぅ、長慶に改名か(漸く俺が知る長慶か……)」

「はっ、それと兄様に内密の儀があります」

「……聞こう」

 

 飯盛山城にて将和と長慶は面会をしていた。

 

「……晴元と手を切ろうと思います」

「……それは長慶個人としての思いか? それとも三好家当主としてか?」

「……ッ……」

 

 将和の急な変わり様に長慶は目を見開く。将和はこれまで長慶に対して温厚に接していた。何せ彼女は三好家当主なのだから、自身は公式では庶子であるから立場を弁える。しかし、この場での将和は温厚を無くしかつて一個の国を率いた将へと仮面を脱いでいた。

 

「改めて問おう。三好筑前守長慶、細川晴元と手を切るのは三好家のためか? それとも個人の名誉か? 答えろ三好筑前守長慶ィ!!」

 

 将和はそう言いながら床に拳を叩きつけた。将和の睨みに長慶は幾分か息を飲んだがやがては意を発した。

 

「……三好家のためです」

「その言葉……嘘偽りではないな?」

「如何にも……このままでは三好家は細川の子飼いで終わる人生であり我々はまだ父上の仇を全ては討っていません」

「………」

「……長慶、それだけか?」

「……えっ?」

「細川と手を切り、義父殿の仇を全て討ったとしよう……その後はどうする?」

「そ、それは……」

「……ま、それは課題にしてやる」

 

 将和はそう言って茶を啜る。

 

「兄様……?」

「まだ不合格に近いが……合格の線は越えているから良しとしてやる」

「そ、それでは……」

「……あぁ、策を練るぞ」

 

 長慶の言葉に将和はニヤリと笑うのであった。

 

「しかし、長慶も晴元と手を切ろうなどとよく言う気になったな?」

「はい、新しく加入した松永の具申によります」

「……そうか(久秀……来たか)」

 

 そう思う将和だった。そして作戦は開始された。まずは政長・政康親子の討伐を晴元に訴えたが晴元は訴えを拒否、そのため長慶はかつての敵である細川氏綱と遊佐長教と手を結び晴元に反旗を翻して三好政康が籠城する榎並城を包囲した。

 

「己れ!? 裏切ったな長慶!!」

 

 六角定頼経由で長慶謀反を聞いた晴元は直ちに軍勢を整えて政長と共に政康救援のため摂津に進軍する。

 しかし、京への出入口とも言える山崎にて三好軍が展開していた。

 

「敵将は三好将和!!」

「己れェ!! 庶子の分際でェ!?」

 

 報告を聞いた晴元は軍配を地面に叩きつける。

 

「ククク……甘いな晴元……行動が遅いんだよ」

 

 そして両軍は山崎にて激突する。

 

「掛かれェ!!」

「三好なんぞ蹴散らせェ!!」

 

 榎並城救援のため短期決戦で挑もうとする晴元、しかし伝令の報告に驚愕した。

 

「鳩ヶ峰後方から別の軍勢が我が軍勢の後方に回っています!!」

「何!?」

 

 その軍勢は十河一存と三好実休、それぞれ1000ずつの部隊だった。

 

「へっ、将兄の読み通りだな」

「うむ、では参ろうか」

「おぅ!! 掛かれェ!!」

 

 2000の軍勢は晴元の後方から突撃を開始、突然の事で晴元の軍勢は態勢が乱れた。それを見た将和は更に部隊を投入させた。

 

「長政、行け」

「御意!!」

 

 自身が当主代行となった時から支えてくれた家臣に全てを託す将和である。長政の突撃で晴元の軍勢は敗走へと転じたのであった。

 

「三好政長討ち取ったァ!!」

 

 一存の怒号が戦場に響く。一存の槍で政長は討たれたのである。

 

「………」

 

 それを聞いた将和は馬上からホッと安堵の息を吐いた。一方で榎並城を包囲していた長慶の軍勢も政康が降伏した事で榎並城に入城した。

 

「政康だな?」

「はっ、如何様にも。されど、城兵の命は助けてもらいたいです」

 

 長慶の前に出された政康はそう言って長慶に頭を下げるが長慶は苦笑した。

 

「フフ、大丈夫だ政康。貴様の命も取らんよ、既に兄様が政長を討ったからな」

「父を……」

 

 長慶の言葉に政康は目を見開く。

 

「親の罪は子には無かろう……という兄様の具申だ。確かに政康の武勇は惜しい。少し猪突猛進なところがあるがな」

 

 苦笑する長慶に政康は頬を紅く染める。

 

「政康、その武勇……三好家のために使ってはくれぬか……?」

「……感謝致します」

 

 そう言って頭を下げる政康であった。京に逃げ帰った晴元は義晴、義輝らを連れて近江へ逃走するのである。そして残る晴元派の伊丹親興が籠城する伊丹城を包囲するも長教の仲介で開城、これにより摂津国を平定する事が完了するのである。

 また細川政権は事実上崩壊し新たに三好政権が誕生するのであった。

 

 

 

 

 

 

 


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