『三好in戦極姫』   作:零戦

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第五話

 

 

 

 

 

「おぅ、漸く来たか」

 

 飯盛山城にて将和は新しく購入した鉄砲を見学していた。

 

「撃ちますか?」

「無論だ」

 

  堺から来た鉄砲商人が将和に撃ち方を教えて将和は的に当てる。

 

「一発でど真中とは……」

「たまたまだ(久しぶりに撃つのは良いな)」

 

 驚く商人を尻目に将和はそう思っていた。

 

「それで、どないでっしゃろ?」

「これからの戦のやり方を変えるには十分な代物だ。10丁で一先ず購入しよう」

「あんがとさんですわ」

 

 商人が帰ると新たに長慶の家臣入りした久秀が近寄る。

 

「何故購入されたので?」

「さっきも言ったがこれからの戦のやり方を変える戦法になる。そのためだ」

「成る程……」

 

 あまり納得はしていない様子の久秀であった。今の三好家は運が向上している途中だった。元長の仇とも言える細川晴元、三好政長を討ち果たし更には細川政権を崩壊させて新たに三好政権を樹立させたのである。

 当初は味方の細川氏綱がある程度反発するかと思われたが氏綱は長慶の実力を認めて素直に頭を下げ三好家に協力していたからだ。

 

「それと久秀、貴様の伝手で国友か日野に連絡を入れたい」

「……成る程。国友と日野は鉄砲の生産地となりつつあるからこそ三好家に鉄砲の導入を押し強く進めると……」

「うむ。謝礼は十分にしよう」

「あら、何でしょう?」

「大和国の大名、これでどうだ?」

「……成る程。大和なら私を監視するには近くて便利と……」

「人聞きが悪いな、俺はお前を信用しているからこその大和国保有の認知だぞ」

「フフ……そうしておきましょう」

 

 そう言って久秀は頭を下げて退出するのであった。それと入れ替わりに長慶もやってきた。

 

「兄様。今、廊下で久秀と擦れ違ったのですが何かあったので?」

「なに、久秀の実家の力を借りようと思ってな。それに今日はどうした孫次郎?」

「はい……漸く一息ついたので堺見物はどうかと……」

「ふむ……(今日は政務の終わったしな……)分かった、支度して堺に赴こうか」

「は、はい!!」

 

 将和の言葉に長慶は嬉しそうに頷くのであった。それから数刻、将和と長慶は僅かな護衛と共に堺を見物していた。

 

「おぅ、この反物は良さそうだな」

「おっ、旦那。良いのに目を付けやしたね?」

 

 呉服屋で将和は白の反物を見ていた。

 

「おや、夫婦ですかい?」

「め!? 夫婦だなんて……」

 

 呉服屋の店主に言われたのを長慶は頬を紅く染める。そのうち湯気が出そうな雰囲気である。

 

「お暑いこったね。よっしゃ、値段はこれにするからどうよ?」

「おいおい、こんな安くて大丈夫か?」

「良いってよ、女も男の前なら綺麗にしなくちゃな!!」

「そうか、なら一つ貰うよ」

「あいよ!!」

 

 その後、購入した反物は長慶の寝間着へ姿を変えたのは言うまでもない。一行が茶屋でのんびりと団子と茶を食していると何やら胸元を開かせた派手な服装を着た女性が将和の横に座る。赤髪かかった長髪が風で将和の頬に当たるが将和も悪い気はしなかった。

 

「お、一つ貰うぞ」

 

 女性は更に置いてた団子を一つ取り、それを口元に入れモグモグと食べる。

 

「の、のぶな……」

「今はお農だ五郎左。あー済まんな、代は払う」

(……あっ(察し))

 

 二人の会話で何となく察した将和であるが一方で急に来て団子を頬張る女性に唖然とした長慶だが我に返り立ち上がる。

 

「い、いきなり団子を取るとは何事だ!?」

「だから謝ったし代は払うと申したであろう」

 

 顔を真っ赤にして怒る長慶に女性はそう言い返す。

 

「ハッハッハ、元気な人だ。地方の方かな?」

「うむ。朝方、堺に到着してな。今は堺を見物しているところだ」

 

 女性はそう言いつつも団子をバクバク食べる。後ろでは熟年の男性が茶屋の店番にペコペコと頭を下げながら銭を渡している。

 

(不憫だな……)

 

 そう思うが言わない事にした将和であった。

 

「さて、団子も食って腹も膨れたし行くとするかな」

「もう出立か?」

「何分忙しい身であるからな、ではな」

 

 ハッハッハと笑う女性。女性はそう言って将和に手を振り後にするのである。

 

「……フ、面白い吾人だな」

「………」

 

 苦笑する将和にそれを横目で見る長慶は物凄く機嫌が悪くて将和が機嫌を治すのに一苦労したのは言うまでもない。堺からの帰り道、先程の女性と男性は馬で東海道方面に移動していた。

 

「ですが信長様、今回は良きものでしたな」

「ふん、鉄砲は200丁しか注文出来なかったがな」

「いやいや、それでも上出来でございます」

「上出来……か。あの男と会ったのが最大の収穫かもしれんぞ?」

「は? あの男……がですか?」

「フフ、まぁ何れ分かる……なぁ三好将和よ?」

 

 最後に呟いた言葉は男性の耳には入らなかったのである。堺見物から数日後、将和は京に来ていた。

 

「ホホホ、久しいですなぁ将和殿」

「山科殿もお変わりなく」

 

 初夏に入ろうとしていた季節、将和は公家の山科言継の屋敷を訪れていた。

 

「帝への献上としまして米三千石、麦千石、金銀をそれぞれ用意してあります」

「ほんに御苦労さんどす。今や何処の大名も帝のために米や麦を寄越さんようなって何十年……あんさんだけやで、しっかりと麿らにも施しをしてくれはるのわ」

「……ハッハッハ、いやなに我らが戦場で働くように公家も都で働く……そうでござろう?」

「……ほんに感謝しますわ。それで今回はどのような頼みを?」

「実は関白、左大臣、右大臣の連名を頂きたく」

「ふむ……その三人となるとよっぽどの事……成る程」

 

 山科は納得したように頷いた。

 

「今度は大和を頂くわけやな」

「如何にも。そのため障害となるのが興福寺です」

「んー、んー。分かったで将和殿、三人の耳には必ず入れましょ。ところで将和殿、三好家はこれからどうするつもりや?」

 

 不意に山科はそう聞いてきた。

 

「あんさんらの仇であった細川晴元は逃亡し三好政長も討死したわ。それで……どないする気なんや?」

「……当主の長慶は迷っている。俺だったら即断していたけどな」

「その特技はあんさんだけやで将和はん」

「ハハハ、かもしれませんなぁ……」

 

 山科の言葉に将和は苦笑しながら茶を飲む。

 

「将和はん、気を付けなはれや。細川はんはまだ諦めてはいまへんで」

「でしょうな。最悪、刺客を放って来そうですからな」

「でしたら……」

「そのところについては大丈夫とだけ言っておきましょう。準備はしております故」

「成る程。流石は将和はんやな」

 

 将和の言葉に笑う山科であった。その後、京散策をして飯盛山城に帰ろうとした将和だったが道端で行き倒れている女性を見つけた。

 まぁこの時代の京は戦乱で荒れ果てているので至るところに老若男女の死体が転がっているが将和が目を引いたのは行き倒れている女性の服装は忍び装束だったからだ。

 

「……ま、何かの縁だな」

 

 将和は女性を介抱する事にした。

 

「いやー助かった助かった。銭も無くなって腹も減ってどうしようかと思っていたところだったよ」

 

 飯屋に連れ込んで女性は大いに飯を食べて一服していた。

 

「それで行き倒れていた私に手施しをした理由は何かな?」

「まぁ……服装を見ただけの判断なんだけど、お前は忍びでいいのか?」

「如何にも。ただし今は抜け忍でね」

「抜け忍か。伊賀? それとも甲賀?」

「いや、北条からだ」

「……て事は風魔か」

「おや、風魔を知っているとは君も中々通だね」

 

 女性は豪快に笑いながら食後の湯を啜る。

 

「それに連れている者も中々の強者と見えるが……君は今を馳せ参じている三好家の家臣かな?」

「……確かに家臣といやぁ家臣だなぁ……」

 

 女性の言葉に将和は苦笑し護衛の者もどう反応すれば良いか分からない表情をしている。

 

「ふむ、では私を雇うというのはどうかな?」

「ほぅ、主をか。確かに忍びは情報を収集するには欲しい人材だからな」

「おや、なら尚更じゃないかな」

「ふむ……では一つ任務を課してやろう。それで見事に成功したら雇う。報酬は年間5貫でどうだ?」

「5貫もくれるのかい?」

「あぁ。仕事の成功具合によっては臨時の報酬も出そう」

「了解した。なら任務を言ってくれ」

「そうだな……そうだ、なら一つーーーーーで」

「……君は最低だな」

 

 若干引いてる女性である。

 

「何を言っている? 場合によっては暗殺も命じるかもしれないんだ。それくらいは容易い事だろ?」

「まぁ……それは……で、何処に持って行けばいい?」

「河内国の飯盛山城に来てくれ。話は通しておく」

「……君は重臣?」

「城に来るまでは秘密だな」

 

 ニヤリと笑う将和だった。そして数日後、女性は飯盛山城に現れた。

 

「これが言われた任務のだよ」

 

 女性はそう言って将和の前に一枚の褌を置く。

 

「まさか三好長慶の褌を盗んでこいだなんて……」

「なに、あいつの警備をどうにかしないといかんと思っていたからな」

「あいつ……?長慶をあいつ呼ばわりなんて……あっまさか……」

「そのまさかよ」

 

 驚愕する女性に将和はニヤリと笑う。

 

「三好元長の庶子で長慶の兄である三好将和だ。お前を雇うよ」

「……これは参ったね。なら私も本名で相対しないとね」

 

 女性は頭をかいてそう言う。

 

「風魔小太郎。そう呼ばれる筈だった名だよ」

「ふむ。後継争い?」

「そ。私が争いに勝っていたんだが髪が金で天狗の血筋じゃないかと疑われてね、結局は殺されそうになったけど上手く逃げて抜け忍となったわけさ」

「成る程……なら名前を付けてやろうか?」

「お、嬉しいね。新しく仕える主人から貰えるなんて栄誉だね」

「そうだな……風間和夏」

「ふむ、由来は?」

「風間って風魔を捩ったと聞いた事あってな、和は俺の将和からで夏は初夏に会ったからだがどうだ?」

「……風間和夏、この身を主君である三好将和に捧げます」

 

 表情を変えた風魔小太郎こと風間和夏は将和に頭を下げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ところでこの褌はどうする?」

「可哀想だから戻してきてくれ」

 

 

 

 

 

 




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