『三好in戦極姫』   作:零戦

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第六話

 

 

 

 

「ふむ……大分纏まったな」

 

 将和は飯盛山城にて和夏が収集した情報を整理していた。

 

「今度の軍議の時に持っていくか」

 

 数日後、将和は長慶が新たに居城とした芥川山城に赴いた。芥川山城は元々芥川孫十郎が城主だったが晴元派に走ったので芥川孫十郎は政康に討たれていた。なお、芥川山城は細川政権が政務の拠点としていた事もあり長慶が芥川山城を新しい居城とした事で内外に細川政権の後継が三好政権だと伝える事に成功している。

 

「集まったな」

 

 芥川山城の一室にて長慶を筆頭に三好一族、その家臣等が集結していた。

 

「では軍議を始める」

 

 長慶の言葉に皆が頭を下げ軍議が開始される。

 

「今の懸念すべき事項は近江に逃げた細川晴元と元将軍の義晴・義輝親子です」

 

 長逸はそう主張する。

 

「何れ、六角等の力を借りて京へ進出するのは目に見えています。ならば、今のうちに……」

「然れど私は将軍家に逆らうつもりはないのだがな……」

「晴元の手元にいますからねぇ……」

「ならばいっその事、両者とも討ってみては?」

『………』

 

 久秀から放たれた言葉に長慶達は押し黙る。手っ取り早くの方法としてはそれが無難ではあろう。しかし、将和はそれを否定した。

 

「いや、将軍家も討てばかつての義教を討った赤松が如くの運命になり変わるだろう」

 

 かつて、万人恐怖をしていた六代将軍足利義教は嘉吉の乱にて赤松満祐に暗殺されていた。その再来を将和は警戒した。

 

「この件に関しては俺がやる」

「兄様が……?」

「……策はある」

「……分かりました、兄様に任せます」

「うむ」

「では次に諸国の状況だが、この資料を見てくれ」

 

 将和は纏めた資料を人数分を書き写しており、それを皆に配る。

 

「これは現時点での状況だが刻一刻と変わる可能性がある事を考慮してくれ」

「……よく出来ておりますわね」

 

 資料を見た久秀は感心するように頷く。

 

「まずは四国からだが……特に心配は無いな、伊予と土佐も上手く統治はしている」

「河野と長宗我部は上手くやっているな……」

「次に中国地方、瀬戸内側はまだ大内が支配しているが毛利も徐々に頭角を現している」

「大内が伊予に侵攻する事は?」

「十分にある……が最近、大内義隆と家臣団の中で不和が出始めている」

「不和が……?」

「あぁ、義隆の貴族保護が原因と見ている(大寧寺の変になりそうだな……)」

 

 そう思う将和である。

 

「それと中国地方でも山陰方面は……まぁ尼子が台頭しているな。他は丹後の一色くらいか……」

「次」

「東海道方面は……尾張で織田信長とやらが尾張を統一したくらいか。美濃では斉藤道三と斉藤義龍が争っているし駿河の今川が怪しい動きをしている」

「……今川が上洛すると?」

「断定は出来んがな。まぁ警戒は必要だろうな」

「うむ、次」

「九州はまだ大友強しだ。だが南から島津が押し上げてきている」

「以前言っていた島津支援ですか?」

「あぁ。大友の力を削げば伊予の影響を減少させるだろうな」

「分かりました、島津支援の方向にしましょう」

「そして最後に……畿内だ」

 

 将和の言葉に長慶らは空気を一変させた。

 

「紀伊、摂津、河内は特に問題無しだ。摂津も本願寺とは上手く協調している」

「ですが奴等がいつ掌を返すか分かりません」

 

 長逸の主張に長慶も僅かながら頷いた。

 

「まぁ警戒は必要だろう。だが此方から仕掛けるのは下策だ、向こうからは存分に叩いても構わんけどな」

「まぁ無闇に敵を増やすのはお薦めしませんわね」

「となると今まで通りの現状維持……ってか?」

「いや、俺はそれには反対だ」

 

 一存の言葉に将和は首を横に振り将和は長慶に視線を向けた。

 

「孫次郎、いつかの返答……聞かせてはくれんか?」

『………』

 

 返答? という一存らの首を傾げる行動を尻目に長慶は真っ直ぐに将和を見つめながらも口を開かないでいた。

 

「……孫次郎、まだ迷っているか?」

「……済まない兄様。私は父の仇を討つという目標のために細川晴元と戦ってきた。晴元を追いやり、目標が無くなって私はどうしたらいいのか分からなくなってきた……」

 

 ポツリポツリと語る長慶には三好家という重い重圧があった。

 

「あら、なら天下という目標を作れば良いではありませんか」

「久秀!?」

 

 久秀はクスクスと笑い、政康に咎められると扇子で口元を隠す。

 

「失礼ながら長慶様、今や三好家は一番天下への道に近い武家でございます。それを易々と他の大名に取られるか……それとも細川に返しますか?」

『………』

 

 久秀の『細川』の言葉に長逸達は表情を変える。細川に天下を返すなら我々三好家がやる方がマシだという表情を皆がしていた。

 

「………」

「孫次郎、俺達はお前の下した決断を尊重する。だが横着するのはやめてくれ」

「……それだと道は一つしかないじゃないか兄様」

「ククク、かもしれんな……」

 

 長慶は将和と笑いつつ長逸達の表情を見る。長逸達も頷いた。それを見た長慶はゆっくりと息を吐いて顔を上げた。その表情は

 

「……目指そう……天下を……」

 

 決断した長慶はそう皆に告げる。

 

「此処まで来たんだ……ならば最後までやろう。皆、私についてきてくれ」

『オオォォォ!!』

 

 頭を下げる長慶に政康らは拳を上げるのである。

 

「それでさしあたって……どこを攻め取るので?」

 

 少々落ち着いたところで久秀は長慶に問う。

 

「む……」

「これを見てくれ」

 

 返答に困っていた長慶に助け船を出したのは将和だった。将和は畿内の地図を広げて皆に見せる。

 

「我等は今、摂津の芥川山城にいる事は承知しているな?」

 

 将和の言葉に皆が頷く。

 

「三好が畿内で保有しているのは河内、摂津、和泉だ。特に淀川を抑えているから京へ赴く時は早かろうがそれがちと問題だ」

「……成る程」

 

 前々から話を聞かされていた久秀は改めて将和の案に納得した。

 

「どういう事だ兄貴?」

「もしだ、もし三好家の主力が京に滞在中に帰り道を叩かれたらどうする?」

「……あー、それは不味いな……」

 

 軍事上で例えたら一存も納得したようである。

 

「そこでだ……大和を取る」

「大和か……しかし大和は寺が多いが大丈夫なのか?」

「心配するな、山科殿経由で朝廷から許可を取り次いでいる」

「……初めから仕組んでいたのですね?」

「なに、何れ大和は取るつもりだったからな(意外と可愛いな……)」

 

 ジト目の長慶を見つつそう思う将和だった。

 

 

 

 




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