けものフレンズR くびわちほー   作:禁煙ライター

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けものフレンズR くびわちほー 第01話「きおくそうしつ」Aパート

 目を覚ますと、知らない場所にいた。

 

 そんなどこかで聞いたお話の、はじまりみたいな状況に、わたしはいた。

 目覚めたのはよくわからない部屋の中。照明がいっさい点いてなかったけど、ところどころ天井がくずれているから、外の明かりが差し込んでいる。

 おかげで部屋の大まかな様子は分かったのだけど、どれだけ見ても、やっぱり全く見覚えがなかった。

 たぶん、こういう状況に置かれた場合、多くのヒトはまずは不安になってちぢこまり、その後で周囲の様子を見てみようと動き出すものだと思う。

 それが目に見えるものでも。こういった自分の置かれた状況でも。

 なんであれ、よく分からないものはみんな怖がるものだ。

 

 けど、何にしても例外というものはある。

 

「フンフンフフンフフー、フフフフーン♪」

 ハナウタ交じりに手を動かしているわたしは、間違いなくその例外に当てはまると思う。

 われながらノーテンキなことだけど、起きて早々、近くにあったスケッチブックとクレヨンを手に取って、ついさっきまで寝ていたタマゴ形のベッドのようなものをモデルにスケッチをはじめていた。

「デレデレデレデレデレデレデレデレ、ジャン♪ うんっ! かんせいっ!」

 白紙だったスケッチブックの1ページ目が埋まり、思わずにっこりと笑ってしまう。

 どうもわたしというヒトは、絵をかくのが好きみたいだ。

 ・・・って、周りを調べるのをそっちのけでお絵かきをはじめちゃう時点で、あえて確認することもないかもだけどね。

 

 腰かけていたガレキから立ち上がり、辺りを見渡した。

「うーん、それにしても・・・、なんなのかな? これ。」

 薄暗い部屋には、わたしが寝てたのと同じようなタマゴ形のベッドのようなものがいくつかあって、なんだかうすぼんやり光っていたりする。

「タマゴ・・・、ベッド・・・、うーん・・・、」

 あれこれ考えてみるけど、わたしのあんまりよくない頭では、答えなんて見つかるわけがなかった。

「うん、わかんないかな!」

 よくわかんないものは置いといて、とりあえず、外に出てみることにしよう。

 

「わぁ・・・、」

 

 ドアノブを回し、押し開けて見えた外の景色に思わず声が出る。

 空まで続いているような広い草原にはたくさんの木があって、葉っぱの一枚一枚が太陽の光をはね返して、きらきらと輝いている。

 地面に生えている草はところどころ花も咲かせていて、すん、と吸うと甘酸っぱいような匂いがする。

「すっごいきれい・・・。」

 スケッチブックをひろげてお絵かきを始めたくなるけど、がまんがまん。

 そんなんじゃいつまで経っても、ここがどこなのかもわかんないままだし。

 

 まっすぐに伸びる石畳の道に沿って、ゆっくり歩いていくと、ちょっと外れたところの木陰に何かが見えた。近づいてみると、だいぶ古ぼけたほろ馬車だとわかる。

 小さなものだけど、造りは頑丈そう。

「・・・、ようこそ、ジャパリパークへ?」

 ほろに書いてある文字を読み上げる。

 ジャパリパーク・・・、ジャパリパーク・・・。

 うーん、何か思い出せそうな気もするんだけど・・・。

 んー・・・、と。

 

 ともかく、ここはジャパリパークというとこ、らしい。

 パーク、ってくらいだから、さっきまでわたしが居た建物の名前じゃあないと思う。きっとたぶん、目の前にひろがる景色がぜんぶジャパリパーク、なのかな。

 パーク・・・っていうと公園だけど、馬車みたいな移動手段があるわけだし、ここの場合、自然公園みたいな感じ?

 まあ、引いてくれる動物がいない今は、それも移動手段にはならないんだけど。

 

 でも、ようこそって言ってるくらいだし、どこかに係りのヒトとかも、いるよね?

「すぅーーっ・・・、」

 おもいっきり息を吸い込む。

 空気おいしいなぁとか思いながら、いっぱいになったところで一気に吐き出した。

 

「だれかー! だれかいませんかー!」

 

 思った以上に大きな声が出て自分でもびっくりしたくらいなんだけど、返事はない。

「だれかー! いたら返事してくださーい!」

 めげずに何度も呼びかけてみる。

 けど、わたしの声以外周りはびっくりするほど静かだ。

「だれかってばー!」

 ・・・、さすがにちょっと恥ずかしくなってきたかなぁ・・・。

 

 ――がさがさっ!

「だれかー! ・・・って、・・・うわぁ!」

 物音が聞こえてふり向くと、視界の端の茂みから何かが勢いよく飛び出してきた。

 あわてて回れ右してかけ出す。

「わふっ! わふわふっ! わふっ!」

「うわぁーーーーっ!」

「わふわふっ! わふわふわっふ!」

「なにー!? なんなのー!? なんでぇーっ!?」

 飛び出してきた何かは荒い息を吐きながら、逃げるわたしを追いかけてくる。

やばい・・・、どんどん近づいてくる・・・。

 これ、すぐ追いつかれる・・・!

 

「わふぅーーんっ!」

「うわぁっ!」

 

 走る勢いのまま飛びついてきた何かに、わたしは何もできずに押し倒された。

 背の高い草がクッションになって、倒れた痛みはあんまりないけど、肩を押さえられて身動きが取れない。

 視界にはハァハァと息を吐く大きな口。

 おひさまの影になっていてもわかるくらいに大きなするどいキバ。

 そこから垂れてくるよだれが、わたしのほおに、ぴたん、と落ちた。

 

 あぁ・・・、これはもう、ダメかな・・・。

 こんなんだったらさっきのお絵かき、がまんするんじゃなかった・・・。

 あたし、このままきっと・・・、

 ・・・いや、あきらめちゃダメだ!

 考えろ。考えろ、あたし。

 身動きができなくても、まだ口は動く!

 おはなしが通じるかわからないけど、せめて一言だけでも・・・!

 

 わたしはさっきよりもっといっぱいに空気を吸い込んで、思いっきり吐き出した。

 

「お・・・、おねがい! たべないでぇーーっ!!!」

「た、たべませんよぉっ!!!」

 

 ・・・あれ?

 

 ― ― ―

 

 さっきまでわたしに覆いかぶさっていた何かは、わたしの目の前で正座をしていた。そしてわたしもなぜか、その前に正座をしてしまっている。

 なぜか、と言ったけど理由は簡単だ。

 申し訳なさそうな顔をしながら地面を見つめるその何か――、

「すみません・・・。わたし、あなたにごめいわくを・・・。」

「いやー、あはは・・・、」

 もとい、しっぽと大きな耳のついた女の子は、さっきまでの姿はどこへやら、すっかりしょんぼりしてしまっていたのだから。

 

「ぜんぜん大丈夫。気にしないで。いきなり逃げちゃったあたしも悪いんだし。」

 女の子の姿を見る。

 髪も服も、きらきらと銀色みたいなうすい灰色で、頭の上には大きな耳、おしりにはふわふわのしっぽがついている。

 今はうつむいてるからよく見えないけど、目が大きくてまつ毛が長くて、とてもかわいらしい顔をしている。

 オッドアイ、っていうんだっけ?

 右と左で瞳の色が違って、すっごいきれい。

 でも、その大きな目も、しょんぼりしてる今は細められている。

 

「いえ、わたしがこうふんしてとびだしてしまったのがわるいので・・・。」

「いやいや、そんなことないよ。あたしが悪いんだって。」

「いえいえ、わたしがわるいんです・・・。」

「いやいや、あたしが―――、」

「いえいえ、わたしが―――、」

 

「・・・ぷっ、あははっ、」

 おんなじようなやり取りをくりかえしていると、なんだか可笑しくなってきてしまった。

「・・・?」

 いきなり笑い出したせいか、女の子は不安そうな顔でこっちを見る。

 わたしは、ぽん、と手のひらを合わせて、不安そうなその子に笑いかけた。

「それじゃあ、どっちも悪くないってことで! ね!」

「は、はい・・・。」

 女の子はまだちょっと不安そうだったけど、少し落ち着いたみたい。

「それで、ええと、あたし、あなたのこと、何て呼べばいいのかな?」

 そうそう、この子の名前、まだ聞いてなかった。

「わたし、イエイヌっていいます!」

「イエイヌちゃん? かわいい名前だね!」

「そ、そうですかぁ?」

 素直に感想を言うと、イエイヌちゃんはうれしそうに笑った。

 どういうわけだかおしりのしっぽもぱたぱた動いてる・・・。

 

 作り物・・・、だよね?

 どうやって動いてるの・・・?

 

 そんなことを考えていると、イエイヌちゃんがこっちに身を乗り出してきた。

「わ、わたしも! あなたのおなまえをしりたいです!」

「あたし? あたしの名前は・・・、」

 おっと、たしかにまだ名乗ってなかったか。

 いけないいけない、あんまり褒められたことじゃなかったよね。ヒトに名前をたずねるならまず自分から、とはよく言うし。

 すぐに答えなきゃ。

 

 あたしの名前は・・・、

 なまえ、は・・・、

 

「・・・あれ? あたしの名前、なんだっけ?」

 いや、いやいやいや。ちょっと待って。

 たずねられてみて気づいたけど、わたし、自分の名前、ぜんぜん思い出せない。

「えっと、ちょっとまってね? はじめから思い出してみるから。あたしは・・・、ええと、タマゴみたいなやつに寝てて、そこが知らない場所で、お絵かきしてたらたのしくて・・・、それで・・・、あれ? あれ?」

 これまでのことを思い出しながら話してみる。といっても、思い出せたのはあの部屋で目を覚ましてからのことだけだ。

「えっと、それで、そとにでて、だれかいないかなって、呼びかけてみたらイエイヌちゃんがでてきて、えっと、その、」

 わたしはただただあわあわしてしまって、まったくうまく説明できなかった。けれど、イエイヌちゃんはマジメな顔でうんうんと頷きながら、ずっと聞いてくれていた。

「わかりました。あなたがめをさましたらしらないばしょにいて、いままでのことがぜんぶおもいだせなかった、ということなのですね?」

「すっごい! あんな説明でよくわかったね!?」

「えへへ・・・、」

 また素直に感想を言うと、イエイヌちゃんは照れたように笑った。

 そしてまた、しっぽがぱたぱたと動く。

 うーん・・・? どういう仕組み?

 

「めをさましたばしょに、なにかてがかりになるものはありませんでしたか?」

「えっと・・・、近くにこんなのが・・・、」

 手に持っていたスケッチブックを差し出してみる。

 イエイヌちゃんはそれを手に取って興味深げに観察しはじめた。

「ふむふむ・・・、なんですかね? これ。」

「えっと、それはスケッチブックっていって。絵をかくためのものなんだけど、」

「すけっちぶっく! そうなんですね! はじめてみました!」

 イエイヌちゃんはびっくりした様子で声を上げる。

「でも、このすけっちぶっく、いろがいっぱいあって、えをかくのがむずかしそうです。」

「あ、それは表紙で。ひらくと白い紙が出てくるの。」

 わたしはイエイヌちゃんが持ったままのスケッチブックに手を伸ばし、ぱらぱらとページをめくってみせる。

「わふ! すごいです!」

 イエイヌちゃんはまたびっくりした様子で声を上げる。

 そしてまた、ぱたぱたと動くしっぽ。

 

 うーん、なんというか。

 わたしのことより、イエイヌちゃんのしっぽの方が気になるよ・・・。

 

「こちらにもいろがいっぱいありますけど、これもひょうし、なのですか?」

「そっちは裏表紙かな?」

「うらびょうし。ふむふむ・・・、この、もようは?」

 と、イエイヌちゃんが指さしたのは裏表紙のはしっこの部分。

 ところどころ消えかかっているけど、ひらがなで名前が書かれていた。

 

「と・・・、もえ・・・?」

 

 と、もえ・・・、

 ともえ・・・。

 ・・・そうだ。思い出した。

「・・・これ、あたしの名前だ。」

 あたしは、ともえ。

 たしかにそう呼ばれていた。

 

「ともえ・・・、さん・・・?」

「そうだよ! ありがとう、イエイヌちゃん! おかげで名前、思い出せたよ!」

「ともえ・・・、さん・・・。」

「・・・? イエイヌちゃん?」

 イエイヌちゃんはぼーっとした顔でわたしの名前をくりかえし呼んでいる。

 も、もしかして、あたしの名前、何か変だったりする・・・?

 スケッチブックを見返してみると、『と』と『もえ』のあいだになんだか長いスキマがあるように感じるし。

 やっぱりこれ、あたしの名前じゃないのかな・・・?

 でも、あたしが、ともえ、って呼ばれてたのは、たぶん本当のことで・・・。

 

 ・・・なんて、だいぶ不安になっちゃったんだけど、

「なんだか、とってもすてきなきもちになるおなまえですぅ・・・。」

「あ、あはは・・・、なんだか照れるね。」

 すっごい幸せそうな顔をして、そんなことを言うイエイヌちゃんを見て、すぐに考えすぎだと思いなおした。

 

 くー、きゅるる。

 と、少し安心したせいだろうか、わたしのお腹がごはんを求める。

 やだもう、恥ずかしいなぁ。

「と、ところでイエイヌちゃん、どこかごはんが食べられるとこ、ないかな?」

 恥ずかしさに顔を赤くしながら、イエイヌちゃんに聞いてみる。

「あ、はい! それでしたら、ちかくにボスがいるとおもうので、ジャパリまんをもらいにいきましょう!」

「ボス?」

「はい! いつもみんなに、たべものをくばったりしてくれるんです! あちらのほうこうにいるはずですよ!」

 イエイヌちゃんの示した方向を見てみるけれど、それらしいものは何も見当たらない。それどころか、わたしの目に見える範囲にはわたしとイエイヌちゃん以外、誰もいなかった。

「誰もいなそうだけど・・・?」

「わたしはイエイヌのフレンズですから! たべもののにおいをさがすのはばっちりです!」

「フレンズ? 友だちってこと?」

「ともだち!? ともえさん! わたしとおともだちになってくれるんですか!?」

「え、いや、あの、もちろんわたしも、イエイヌちゃんとおともだちになりたいけど、そうじゃなくて・・・、」

「わたし、うれしいです! さあさあ! ごあんないします! いっしょにいきましょう!」

「えっと、その、・・・うん、そうだね。いこっか、イエイヌちゃん」

「はい!」

 自分の名前を思い出せても、まだまだわからないことはいっぱいある。

 でも、あんまりあせらず、ちょっとずつわかっていけばいいかな。

 

 ― ― ―

 

 となりあって歩きながら、わたしはイエイヌちゃんから色々なことを教えてもらっていた。

 イエイヌちゃんの説明はすっごいわかりやすくて、わたしのあんまりよくない頭でも、すぐに理解することができた。

「へー、ジャパリパークってそんな感じなんだね。」

「はい! いろんなフレンズさんが、いろんなとこにくらしてるんですよ!」

 さっきもイエイヌちゃんが言っていた『フレンズ』というのはヒトの形をした動物のことみたい。

 元々はわたしの知ってる動物の姿だったんだけど、さんどすたー?とかいうもののチカラで、ヒトの形になったのが、『フレンズ』ということみたいだ。

 なるほど。

 だからさっきもしっぽがぱたぱた動いてたりしたんだね。

 

 うーん・・・、それにしても、なんだろ。

 元が動物だっていうことを聞いてから、イエイヌちゃんのことを見るとなんだかこう、ムズムズしてくる感じが・・・。

 ふさふさぱたぱたしてるしっぽとか・・・、

 たまにぴこぴこ動いてるお耳とか・・・、

 すっごいもふもふなでなでしたい・・・っ!

 

「と、ところでイエイヌちゃんはなんのフレンズなの?」

 ひとりでムズムズしちゃってるのがなんだか恥ずかしくて、ごまかすように聞いてみる。

「わたしはイエイヌのフレンズでして、とおくのおとをきいたり、においをかいだりするのがとくいなんですけど・・・、」

「・・・けど?」

 わたしがオウム返しに聞き返すと、イエイヌちゃんは急に顔を暗くしてしまった。

「ほんとうはもっと、とくいなことがあるはずなんです。それなのに、わたし、これまでできたことがなくて・・・。」

「そうなの?」

 できたことがないのに、とくいなことだってわかるんだ。

 それって、イエイヌちゃんが、フレンズさん、だからなのかな?

 でも、それって・・・、

「はい。だからわたし、だめなフレンズなんじゃないかと・・・。」

 イエイヌちゃんは結論付けるように言葉を続ける。そして、しょんぼりした顔でだまっちゃった。

 

「え? なんで?」

 思わず、素朴な疑問を口にする。イエイヌちゃんはそんなわたしの反応にちょっと戸惑ってるみたいだ。

「なんでって、できるはずのことができないなんて、はずかしいじゃないですか・・・」

「うーん、あたしはそんなことないと思うけど・・・、」

 わたしはイエイヌちゃんの手を取って、ぶんぶんと振りながらお話を続けた。

「だって、今まで出来なかったことなのに、これから得意なことにできるんでしょ? それって、はじめから得意なことより凄いじゃない!」

 イエイヌちゃんはびっくりしたような顔でこっちを見て、

「はじめからとくいなことよりすごい・・・、そんなこと、かんがえたこともなかったです!」

 いっぱいの笑顔でわたしの手を両手でにぎり返してきた。

 しゅん、と降りていたしっぽもまたぱたぱたと動き出してる。

 

 ああ・・・、またムズムズが・・・っ!

 

「あの! ともえさんはなんのフレンズなのでしょうか!?」

「へ? あたし? あたしはフレンズというか・・・、」

 ムズムズをがまんしながら自分のことを考えてみる。

 今も自分のことは名前以外まったく覚えてないけど、動物だったりとか、パークという単語だったりとか、そういう一般的な知識はなんとなく思い出せる。

 なんとなく、だから、正しいかどうかはわからないけど、イエイヌちゃんみたいに頭にお耳も、おしりにしっぽもないわたしは、たぶんフレンズじゃあない。

 わたしの知っている動物で、わたしのようなものは、たぶんヒト以外にないだろう。

「たぶん、ただのヒトかな?」

 

 答えた瞬間、イエイヌちゃんの気配が変わったのがなんとなくわかった。

 ・・・いや、はっきりとわかった。

「ヒト・・・、ヒト・・・、ヒト、ヒト、ヒトヒトヒトヒトひひひひひ・・・っ!!」

「い、イエイヌちゃん・・・?」

 様子のおかしいイエイヌちゃんに、ついさっき正体不明のイエイヌちゃんに追いかけられていたときのドキドキがよみがえる。

 これは・・・、ひょっとして、

 つまりその・・・、なんというか。

 ・・・じらい、ふんじゃっ――、

 

「ようやくあえまじだぁーーーーっ!! あいだがっだでずぅーーーーーっ!!!」

 

「ちょっ! イエイヌちゃん! 落ち着いて! くすぐったいから! ねぇ!」

 わたしが空気を読んで逃げ出す間もなく、イエイヌちゃんは飛びついてほおずりしてくる。

 なんとか両手を体の間に挟んで距離を取ろうとするんだけど、イエイヌちゃんは見た目以上にパワフルで、だき着くように回された腕はびくともしない。

 いや、あの、ぜんぜん嫌じゃないんだよ?

 むしろさっきから感じてたムズムズが今はすっきりしてるし。

 それに、くっついてるとこがふわふわもこもこで、とっても気持ちいいんだけど・・・、

 

「わふっ! わふっ! べろべろべろべろっっっ!」

「あー! あははははは! ちょっと! なめるのだめだって! ねぇってば!」

 

 おねがいだから、おかおをなめまくるのはかんべんしてください。

 

「そうじゃないがなっておもっだんですぅ! ぞうじゃないがなっておもっだんでずぅ! みみもじっぽもはねもふーどもないじ! ひょっとじてヒトがなっておもっでぇ! だからぁ!」

「だからさっきも興奮しちゃったんだよね!? わかった! わかったから! いったん落ちつこう!? ねぇ!? あー! あー! あはははははは!!!」

 

 イエイヌちゃんの興奮が収まるまで、この後めちゃくちゃぺろぺろされた。

 

 ― ― ―

 

フレンズ紹介~イエイヌ~

 

 イエイヌちゃんはネコ目イヌ科イヌ属の哺乳類、イエイヌのフレンズだよ!

 イヌなのにネコ目とかややこしいけど、前は食肉目って名前だったんだ!

 お肉を食べる動物をまとめたものなんだけど、わかりやすいようにネコ目って名前に変わったんだって! 逆にわかりにくいよね!

 

 イヌは元々オオカミと同じ動物だったんだけど、ヒトと一緒に暮らすようになって、すっごい時間をかけてだんだん今の姿になっていったんだって!

 イエイヌちゃんはたぶん、動物だったころはハスキー犬だったんだと思うけど、ハスキーってオオカミさんとよく似てるよね! かっこかわいいの!

 

 イヌには鼻が良かったり、耳が良かったり、頭が良かったりっていう特徴があるよ! でも、あたしは何より『ヒトと仲良し』っていうのが一番の特徴だと思うかな!

 ネコだったりウマだったりウシだったり、ヒトと一緒に暮らしてる動物はいっぱいいるけど、その中でも一番最初に一緒に暮らし始めたのがイヌなんだ!

 一万年以上前ってすっごい昔で、それからずっと仲良しが続いてるんだって!

 びっくりだよね!

 

【こえ】ともえちゃん(しゅくしちほー)

 


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