どうぶつ紹介~アードウルフ~
アードウルフちゃんはネコ目ハイエナ科アードウルフ属の哺乳類だよ!
ウルフって名前についてるし、和名もツチオオカミっていうんだけど、ハイエナの仲間なんだって!
ハイエナの仲間ではいちばん小さい体をしてて、お顔も小さいから、すっごいかわいいんだよ!
アードウルフは穴を掘って、シロアリとかを食べて暮らしてるよ!
アリクイみたいに舐めとって食べるから、他のハイエナに比べて舌が長くて大きいし、噛まなくていいから歯やアゴは大きくないんだって!
シロアリを探すのがすっごく得意で、土の中を掘る音で探し当てたり、アリの分泌する匂いを辿って見つけたりするんだよ!
そんな小さな音とか匂いを探知するなんて、すっごいよね!
そんな食生活だから、穴に潜るのがすっごい好きで、穴を見つけるとぜったいに潜っちゃうみたい! ぴょこん、って穴から顔を出したりして、すっごくかわいいの!
あと、群れで暮らすことはないんだけど、つがいを見つけると、お互いにその相手と生涯ずっと一緒に暮らすみたい!
ひとりの相手と一途に想い合うなんて、なんだかすっごく素敵だなぁ・・・。
【こえ】ともえちゃん(しゅくしちほー)
「よーし、じゃあ、いくよー? ・・・それー!」
掛け声と同時に、わたしは半身の体勢から、水切りをするような形で持っていた物を投げた。
持っていた物、というのは、イエイヌちゃんがとっておき、と言っていた遊び道具、フリスビーである。
「ハッハッハッハ・・・、ゥオゥン!」
しゅるしゅると回転する円盤はふわふわと宙を飛び、並走するように走り込んできたアードウルフちゃんにダイビングキャッチされた。
アードウルフちゃんはフリスビーをくわえたまま、とてとてと近づいてくる。そしてそのままわたしの足元にフリスビーを置いた。
これが、狩りごっこ。なるほどたしかに。
つまりこれは、フリスビーを空を飛ぶ獲物に見立てた狩りの真似事であるわけなのだった。
「よしよし、えらいえらい。」
撫でて欲しそうにすり寄ってくるアードウルフちゃんの首や頭を、両手で挟み込むように撫でてあげると、喉を鳴らして気持ちよさそうな声を上げる。
もふもふの感触が手のひらから伝わってきて、撫でているこっちだって、とっても気持ちいい。
「キュゥン・・・、ァフ、ァフ、」
おまけにこの声、この表情である。
平静を装って一緒に遊んでいるわたしだけれど、さっきからきゅんきゅんが止まらず、顔はにやけっぱなしだった。
「ォン!」
「うふふ・・・、なぁに? また投げて欲しいの?」
「ァフ! ァフ!」
「しょうがないなー。じゃあ、もう一回ね?」
「アォン!」
待ちきれないといった感じに手元を見るアードウルフちゃんに、デレデレのわたしは足元のフリスビーを拾い上げ、大きく振りかぶる。
「それー!」
そして、さっきと同じように投げたのだけど、
「あ、」
思わず声を漏らしてしまう。アードウルフちゃんのあまりのかわいさに、ついちからが入り過ぎてしまったようだ。フリスビーはさっきより速く、大きな弧を描いて飛んでいく。
アードウルフちゃんはまだ小さいから、強く投げないように気をつけていたんだけど、きゅんきゅんに呑まれると暴走してしまうわたしの悪癖は多少気をつけたくらいではどうにもならないようだ。
「ごめん! アードウルフちゃん! あれはさすがに、」
取れないよね、と続けようとした口は、次の瞬間目に飛び込んできた光景に、そのままあんぐりと開いたままになってしまった。
とつぜん横から走り込んできたイエイヌちゃんが明後日の方向に飛んでいくフリスビーをジャンピングキャッチしたのだ。
「はっ、はっ、はっ、・・・はぐぅっ!」
・・・口で。
「キュゥン・・・、クゥン、」
「ふっふっふ、まだまだあまいですねぇ。あのていどのすろーいんぐをきゃっちできないとは。」
獲物を横取りされて悲しそうなアードウルフちゃんに、イエイヌちゃんはふふんと得意げに声をかける。
「いいですか? ゆくさきをみてからはしりはじめてはおそいのです。フリスビーがゆびをはなれるしゅんかんにはしりだし、かそくをしながらゆくさきをみきわめて・・・、」
人差し指を立てながら話を続けるイエイヌちゃんをジト目で見つめながら、わたしはすたすたとふたりに近づいた。
「・・・で、あるからして。フリスビーきゃっちとは、いうなればおのれとのたたかいであり、」
「イエイヌちゃん・・・、」
「おお、ともえちゃん。いいところに。いまこのこにきゃっちのコツを・・・、」
にこにこの笑顔を見せながら振り返るイエイヌちゃんに、わたしは大きく息を吸い込んで、
「おんなのこがお口でものをくわえるなんて、はしたないことしちゃいけません!」
「かけっこっつったら、あたしのでばんだな!」
にっこり、満面の笑みを浮かべるロードランナーちゃんが相変わらずの大きな声を出した。
走ることが大好きなことも相変わらずのようで、かけっこ、という単語を聞いた時点から、ずっとうずうずしていたロードランナーちゃんである。
こうして実際にかけっこをする段になって、にこにこ笑顔で嬉しそうに手足をぷらぷらさせている。
その足元にはアードウルフちゃん。この子もかけっこする空気を察したのか、楽しそうにはふはふと息を漏らしながら、開始の合図を今か今かと待っていた。
「うぅ・・・、わたしもかけっこしたいですぅ・・・。」
おなじく走るのが大好きなイエイヌちゃんは、ふたりの姿をとても羨ましそうに眺めていた。
『はんせいちゅう』と書かれた紙を首からぶら下げて、地面にちょこんと正座をしている。
プラカードのようなその紙は、さっきのフリスビーでのことをきちんと反省してもらうため、わたしが用意したものだ。
でも、ちょっとやりすぎかなぁ・・・?
イエイヌちゃん、じゅうぶん反省してるみたいだし。
そんなことを思いながら、くぅん、とおはなを鳴らしながらしょんぼりしているイエイヌちゃんに近づいた。
「イエイヌちゃんも、かけっこしたいよね?」
「いえ・・・、わたしはこのとおり、はんせいちゅうですし・・・。」
「もう充分反省したでしょ?」
言いながら、わたしはイエイヌちゃんの首にかかった紐を取ってあげた。
「ともえちゃん・・・! ありがとうございますぅ!」
「いいからいいから。イエイヌちゃんも一緒に、走っておいでよ。」
歓喜の表情と共にぱたぱたとしっぽを振るイエイヌちゃんに、わたしはちょっと複雑なこころもちである。
うーん。なんというマッチポンプ。
「お、やっぱおめーもはしんのかよ。」
「はい! こうやではおくれをとりましたが、こんどはまけませんよ?」
「へへっ、そーこなくちゃよ。」
横に並んだイエイヌちゃんに、ロードランナーちゃんは不敵な笑みを見せる。イエイヌちゃんはその顔を真っすぐに見て、似たような笑顔を返した。
実に楽しそうなふたりである。
けれど。
なんというか、ちょっとヒートアップしすぎなような。
「えっと・・・、ふたりとも、わかってるとおもうけど、アードウルフちゃんはまだちっちゃいから、」
「んじゃ、はじめるとすっか! くびわ! ごうれい!」
「・・・いちについて、よーい、どん。」
不安を感じたわたしが口を挟む間もなく、かけっこ開始の合図が出されてしまった。
「うおおおおぉぉぉっ!」
「わふわふ! わふー!」
威勢のいい声が発せられたかと思うと、ふたりの背中がものすごい勢いで遠ざかっていく。相変わらずのとんでもないスピードだった。
ちょっと離れた場所にいた、既にその光景を見たことのあるわたしでさえ、その勢いに肩をびくんとさせてしまったほどである。
つまり。
だとすれば。
もっと近くにいて、それをはじめて見る子にとっては・・・、
「キュゥウ・・・、ァフ、」
「ああああっ! アードウルフちゃん! だいじょうぶ!?」
びっくりしすぎて、目を回してひっくり返ってしまったアードウルフちゃんにかけよりながら、わたしはひめいのような声を上げた。
「なんというか・・・、チサマら、ざんねんなやつらじゃの。」
「うぅ・・・、もうしわけありません・・・。」
「もがー! ふがー!」
かけっこ勝負から帰ってきたふたりは、並んで正座をさせられていた。
イエイヌちゃんの首にはさっきと同じ『はんせいちゅう』の紙、ロードランナーちゃんの首には『いっかいやすみ』と書かれた紙がぶら下げられている上に、口にはバッテン印つきのマスクがつけられている。
ちなみに、ロードランナーちゃんの紙とマスクはくびわちゃん作だ。
「キュゥン・・・、クゥン、」
わたしはすっかり怯えてしまったアードウルフちゃんを抱っこしながら、よしよしと頭を撫でている。
「だいじょぶだよー? もう怖くないからねー? 危ないことするおねーちゃんたちは、じっとしてるからねー?」
「くぅん・・・、ともえちゃん、あんまりですぅ・・・。」
「んがー!」
ひなんめいた声と、ちょっと何言ってるかわからないです、なうめき声が聞こえてくるけれど、今度ばかりはじごうじとくである。
ふたりにはしばらくの間、はんせいしていてもらおう。
と、くびわちゃんがしゃがみ込んで、ごそごそと何かをしているのに気付いた。
「あれ? くびわちゃん、何してるの?」
「・・・あなほり。あーどうるふは、あなほりや、あなにもぐるのが、すきだから。」
手元を見ると、どこかで拾ったのか、シャベルを片手にいっしょうけんめい地面に穴を掘っていた。
くびわちゃんは体が小さいから、ちっちゃい子がお砂場で遊んでるみたいで、すっごく微笑ましい光景である。
しばらく、ほっこりしながらその様子を眺めていると、ふう、と満足そうに息を吐いて、くびわちゃんがこちらを見上げた。
「・・・できた。」
くびわちゃんの足元には丁度アードウルフちゃんがすっぽり入れるくらいの大きさの穴が空いていて、しっとりとした土の匂いが昇ってくる。
「あはは。よかったね、アードウルフちゃん。おねーちゃんが穴を掘ってくれたよ?」
「クゥン・・・、ァフ、」
わたしは抱きかかえていたアードウルフちゃんを両手で抱え直して、くびわちゃんの方に近づける。
――と。
「ウゥゥゥ・・・ッ、アフッ! ワフッ!」
「あ、あれ? どうしたの? アードウルフちゃん。」
どうしてだろうか。アードウルフちゃんはとつぜん低く唸り始めると、くびわちゃんに向かって勢いよく吠え出した。
興奮しているというか、威嚇をしているというか、怯えたような様子だ。
「あれ? なんで? どうしてだろ。くびわちゃん、怖くないよ?」
「・・・たぶん、におい、のせい。」
じたばたと暴れ出したアードウルフちゃんを再び抱っこする形に抱え直していると、くびわちゃんがとても悲しそうな顔でぽつりと言った。
「匂い、って? くびわちゃんの匂い、ってこと?」
「そうじゃろうな。そこなちいさきものは、セルリアンにとてもよくにたにおいをしておる。」
わたしの問いかけに答えたのは、音もなくとなりに立っていたなみちーちゃんだった。
「アードウルフはおぼえておるのじゃろう。サンドスターをうばったあいての、においをな。」
くびわちゃんはボス、ラッキービーストがセルリアンになって生まれた存在だ。
鼻が良くないわたしにはわからないけど、その匂いも、ボスとセルリアンの匂いが混じったような匂い、なのかもしれない。
ひょっとしたら、イエイヌちゃんが船の上で言っていた、知っているふたつの匂い、っていうのは、そういうことだったのだろうか。
でも、
「ちょ、ちょっと待って! たしかにくびわちゃんの匂いは、そうなのかもしれないけど・・・、でも! くびわちゃんはそんな、あぶないものじゃなくて、」
「みくびるでない。チサマらのようすをみていれば、そのくらいのことはわかろう。」
あわてて声を上げるわたしに、なみちーちゃんは優しい声で答えてくれる。そのままくびわちゃんの目の前に立つと、目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「てを、だしてみよ。」
くびわちゃんは少し不思議そうな顔をしたけれど、言われるがままにおずおずと手を差し出す。穴掘りをしていたせいで、その指先には土汚れがついていた。
なみちーちゃんはその指を、ついた土ごとぺろりと舐めた。
いったい何を、と思うけれど、続けて発せられた言葉に、その意図を理解する。
「ほれ、アードウルフよ。このとおり、こやつはきけんなものではないぞ? チサマもこちらへきて、つちのあじをたのしんではどうじゃ。」
ウウゥ・・・、と低く唸り続けていたアードウルフちゃんは、なみちーちゃんの言葉に唸るのをぴたりとやめ、わたしの腕の中からするりと抜け出してぴょん、と地面に降り立つ。
そしておそるおそる、ふたりのところへ近づくと、なみちーちゃんが舐めていたくびわちゃんの指に鼻を近づけて、くんくんと匂いを嗅いだ。
そして、
「キュゥン・・・、ぺろぺろ、・・・ァフッ! ァフッ! ぺろぺろ、」
「・・・くすぐったい。・・・あはは、」
なみちーちゃんと同じように、土ごと指を舐めはじめると、悲しそうな表情だったくびわちゃんの顔に、明るい笑みが浮かんだ。
「なみちーちゃん、ありがと。くびわちゃんのこと、信じてくれて。」
「しんじるもなにも、こやつのかんちがいをただしただけじゃ。れいをいわれるようなことではないわ。」
なみちーちゃんはそう言って、キキキ、と甲高い声で笑う。
アードウルフちゃんはひとしきりくびわちゃんの指を舐めた後、地面の穴に潜り込んで首をぴょこんと出していた。その顔はどこか満足げというか、とてもリラックスした表情である。
そのとなりでしゃがみ込んだままのくびわちゃんは、アードウルフちゃんの頭をおっかなびっくり撫でている。けれどその顔は、やっぱり笑顔だ。
なんだかすっごくほっこりする光景だった。
「くぅん・・・、なんだかおいてけぼりにされてるかんじがしますぅ・・・。」
「んがー・・・、くぅ・・・、ぴゅい・・・、」
離れたところから聞こえてくる声と寝息に、そろそろイエイヌちゃんだけでもはんせいを解いてあげようと思い、きびすを返す。
そのときだった。
どさり、と後ろから音が聞こえて、なんだろうと振り向く。
「・・・え?」
振り返った視線の先にあったのは、地面に倒れたなみちーちゃん。そして慌てて駆け寄るくびわちゃんとアードウルフちゃんの姿。
わたしも駆け寄り、地面に横たわるなみちーちゃんの顔を覗き込む。
その、とても綺麗な顔は、まるで血の気が引いたように真っ青だった。
「なみちーちゃん!? だいじょうぶ!? ねえ! どうしたの!?」
どれだけ大きな声で呼びかけても、なみちーちゃんは目を覚まさなかった。
あの後、なみちーちゃんをみんなで抱えておうちの中に運び、ベッドに寝かせた。
枕元にはアードウルフちゃんの姿があり、くぅんと鼻を鳴らしながら、とても心配そうに顔を覗き込んでいる。
ベッドの周りにいるみんなの表情は暗い。もちろん、わたしもそうだろう。
弱弱しいものだけれど息はしているし、命に別状はない、と思うのだけど、いきなり倒れるなんて、心配しない方がおかしい。
「なみちーさん、だいじょうぶでしょうか・・・?」
「わかんない・・・。なんで倒れちゃったのかな・・・、びょうき、だったのかな・・・。」
イエイヌちゃんの問いかけに、何もわからないまま答える。そのままくびわちゃんの方に視線を向けて、
「ねえ、くびわちゃん。何かわからない? なみちーちゃん、なんで・・・。」
「・・・さんどすたーが、こかつしてる。たぶんもう、なんにちも、たべてない。」
何日も食べてない・・・、って、それって。
くびわちゃんの返答に、思い出す。
イエイヌちゃんのお茶の準備を待っているとき聞こえた大きなお腹の音。
あれはなみちーちゃんのお腹の音、だったんだ。
「ちっ・・・、そういうことかよ。んなことしても、コイツがよろこぶわけじゃ、ねーだろに。」
「・・・、なみちーさん、アードウルフさんのこと、ほんとうにすきだったのですね・・・。」
そんな、居たたまれない表情と共に漏れ出たふたりの呟きには、わたしが理解したこと以外の何かがあるように感じた。
どういうことだろう、と思ってふたりを見ると、ロードランナーちゃんががしがしと頭を掻きながら話しはじめる。
「フレンズがどうぶつにもどっちまうと、そいつとなかのよかったフレンズも、どうぶつにもどりたがることがあんだよ。わざとセルリアンにくわれたりするヤツもいっけど、たいていはそいつみてーに、めしをくわねーようになって・・・、」
「フレンズがフレンズでいつづけるためには、サンドスターのほきゅうが、かかせません。ていきてきにジャパリまんをたべていれば、もんだいはないのですが・・・。」
思えば、お茶の時だって、なみちーちゃんはお茶菓子に一切手を付けていなかった。あのときはてっきり、マナーてきなものだと思っていたけれど、そうじゃなかったんだ。
あれは、あれはつまり、その、
飢えることによる、緩やかな・・・、
「だから、どうぶつにもどったフレンズはやせいにかえして、ちゃんとおわかれしなくちゃ、いけねーんだ。」
歯噛みするように呟いたロードランナーちゃんの台詞で、全て腑に落ちた。
「そんな・・・、そんなのって・・・、」
「なんじゃ、バレてしもうたか。」
わたしが呟いたと同時に、なみちーちゃんが口を開いた。ゆっくりと目を開き、そのまま手をついて身を起こそうとする。
「ムリしないで! いきなり体を動かしたら!」
「よい。どうせさきのないみじゃ。ねてばかりではつまらんわ。」
「そんなこと・・・、」
誰の手も借りずに上半身を起こしたなみちーちゃんは、周りを囲むわたしたちからイエイヌちゃんの姿を見つけて、キキキ、と力なく笑った。
「やぬしどの。すまぬな。このようなことに、チサマのねどこをつかわせてもらって。」
「いえ・・・、そんなことは・・・、」
このようなこと、というのはもちろん、そういうこと、だろう。
もう一足遅かったら。
らぼでバギーを借りられなかったら。
わたしたちがおうちに着いた時、ひょっとしたらここには、一匹のコウモリが住んでいたのかもしれなかった。
「めのまえで、というのもねざめがわるかろう。なに、すぐにでてゆくわ。」
そう言って、なみちーちゃんは羽をぱさりと動かす。
「・・・もう、とぶちからものこってない、か。すまぬ。そこをどいてくれぬか。そうかこまれては、ベッドからおりることもままならぬゆえ。」
「そんなの・・・、」
できるわけないよ、と言いかけたわたしの口は、
「すぐにでていく、ねぇ。」
そんな、ぶっきらぼうな感じの呟きに遮られる。
声のした方を見ると、ロードランナーちゃんが不機嫌そうな顔でなみちーちゃんを睨んでいた。
「おめーさ。なんで、あたしらがきたとき、すぐにそういわなかったんだよ。」
「・・・、ちゃに、さそわれたからの。むげにことわるのもしのびなしに。」
なみちーちゃんの返答に、ふぅん?と鼻を鳴らして、ロードランナーちゃんは続ける。
「んじゃ、ちゃーのんだあと、そうすりゃよかったじゃねーか。なんでだ?」
「それは・・・、その、」
なみちーちゃんは再度の問いかけに言葉を詰まらせて、きょろきょろと視線を這わせる。
そんな、なみちーちゃんの膝の上に、アードウルフちゃんの小さな足が置かれた。
そのままなみちーちゃんの上に乗ると、上半身に身を預けるように寄りかかる。
「キュゥン・・・、クゥン・・・、クゥン・・・、」
下から顔を覗き込みながら、まるで病気の母親を心配するような、不安げな声を漏らす。
その声に、なみちーちゃんの鼻からすんすんと、すするような音が漏れ出した。
「こやつが・・・、アードウルフが・・・、たのしそうにしてるのが、うれしくてな・・・、」
震えた声を出したなみちーちゃんの目から、ぽろぽろと涙がこぼれだす。
「なみちーは、アードウルフがいなくなって、ずっと、かなしくて、つらくて・・・、ひとりで、たすかったことが、ゆるせなくて・・・、こんなことなら、いっそ、いっしょに、って・・・!」
アードウルフちゃんを抱きしめながら、なみちーちゃんは嗚咽交じりに言葉を続ける。
「そのまえに、がんばって、やせいにかえそうって、おもって・・・。でも、ついてくるし・・・。どうぶつにもどってから、いつも、げんきがなくて、さみしそうで・・・! あんなに、えがおのにあうこだったのに・・・!」
「キュゥン・・・、」
なみちーちゃんの言葉が、わからなくても伝わるのだろう、腕の中のアードウルフちゃんが悲しそうな声を上げた。
なみちーちゃんは、こんなにもつらい気持ちを抱えて、ずっとひとりでいたんだ。
それなのに、わたしたちにはあんなにも気丈にふるまって・・・。
それが、どれだけ大変なことか。どれだけつらいことか。痛いくらいに想像できる。
なにか、なにか言ってあげないと・・・。
「そりゃ、とーぜんだろ。どうぶつとフレンズじゃ、ちげーんだよ。」
聞こえてきた声は、冷たく突き放すようなものだった。
・・・言葉だけを聞けば。
「チサマ・・・ッ!」
「ことばだって、きおくだってなくしちまう。フレンズがどうぶつにもどるってのは、そいつがいなくなるのといっしょだ。・・・でもよ、」
キッと睨みつけるなみちーちゃんの目を、はじめて見るような、すごく真剣な顔でまっすぐに見つめ返して、ロードランナーちゃんは言葉を続ける。
「なにいってっかわかんなくても、つたわるもんはあんだろーが。あたしなんてにらんでねーでさ、ちゃんとそいつのかお、みてやれよ。」
優しく、さとすように言われて、なみちーちゃんはアードウルフちゃんの顔を覗き込む。
「そいつがなんで、やせいにかえれねーか、おめーもホントは、わかってんだろ?」
「クゥン・・・、ぺろ、ぺろ、」
覗き込んだその頬に流れる涙にアードウルフちゃんが舌を伸ばすと、なみちーちゃんは顔をくしゃくしゃにして嗚咽を漏らした。
「アードウルフ・・・、アードウルフぅ・・・、」
「・・・どうぶつとフレンズはちげー。でも・・・、だからって、ともだちになれねーわけじゃ、ねーだろが。」
ロードランナーちゃんは小さく呟くように言うと、わたしの方にずい、と手を伸ばした。
その言葉は、なみちーちゃんに向けたものでもあるようで、別の誰かに向けられたもののようでもあった。
ひょっとしたらロードランナーちゃんも、むかし、大切な誰かを失ったことがあるのかな・・・。
そんなことを考えながら、わたしはかばんから取り出したジャパリまんを、その手のひらにのせた。
「くえよ。おめーがそのまんまだと、いつまでたっても、そいつのきもちがうかばれねぇ。」
ロードランナーちゃんは手に取ったジャパリまんを差し出しながら、ぶっきらぼうにそう言った。
なみちーちゃんはおそるおそる、差し出されたジャパリまんを受け取る。両手でつかんで、口の前に持っていくのだけど、けれど、そこで止まってしまった。
口を開けて、食べようとする形のまま、しばらくの時間が過ぎる。
やっぱり、食べられないのかな・・・。
どうしたら、食べてくれるんだろう・・・。
なんて、そんなことを、わたしが心配するまでもなかった。
「キュゥ・・・、ぺろ、ぺろ、」
アードウルフちゃんがジャパリまんの近くに顔を寄せて、ぺろぺろと舐めだしたのだ。
そうして、一部分をよだれまみれにすると、そのまま食べることなく、なみちーちゃんの顔を見上げる。
それはまるで、こわくないよ、と言っているようだった。
さっきお外でくびわちゃんの土まみれの指を舐めた、なみちーちゃんのように。
なみちーちゃんは呆気にとられたような、けれど、どこか嬉しそうな表情になると、キキキ、と小さく笑う。
そしてそのまま、小さな口を開けて、ぱくり、
「・・・、おいしい、」
よだれまみれジャパリまんにかぶりつくと、小さな声で感想を漏らす。
ぱくぱくと、無言のまま三分の一くらいまで食べたところで、その目からまた、涙がぽろぽろとこぼれはじめた。
「おいしいよぉ・・・、アードウルフぅ・・・!」
なみちーちゃんは涙をぽろぽろこぼしながらも、ちゃんとジャパリまんをひとつ食べきった。そして泣き疲れたのだろう、再び倒れるように眠りに落ちた。
ついさっき倒れたばっかりでのその様子に、また心配になったけれど、くびわちゃんいわく、ちゃんとサンドスターの補給はできたそうだから、一先ずは安心していいだろう。
それにしても・・・、
「んあ? あんあ? はりひへんはほへー。」
まじまじとその顔を見てしまったわたしに、ロードランナーちゃんはジャパリまんを口いっぱいに頬張りながら睨み返す。
食べてるの見てたらお腹空いた、とロードランナーちゃんが言ったので、苦笑しながらもうひとつ取り出して渡したのだった。
お菓子もいっぱい食べてたはずなのに、おまけにこの空気の中で、すごい食欲である。
そんな感じに、ロードランナーちゃんはすっかりいつも通りな感じだけれど、ついさっきまで見せていた姿は、なんというか、すっごいかっこよかった。
思えばみつりんでくびわちゃんを説得したときもそうだったけど、ロードランナーちゃん、ああいう一面もあるんだね。
「・・・ちゃんと、のみこんでから。」
「んぐっ・・・、んっ・・・、げっふー。」
「・・・ろーどらんなー。おぎょうぎ、わるい。」
口は悪いしお行儀もよくないけど、やっぱりロードランナーちゃんも、素敵な子だ。
「それにしても、なみちーさん、ちゃんとたべてくれて、よかったです。」
「そうだね。これからもふたりで、楽しく過ごせるんじゃないかな?」
言いながら、すやすやと眠っているなみちーちゃんと、その横でうずくまって眠っているアードウルフちゃんを見て、ほっこりした気分になる。
「そうですね。うんがよければ、アードウルフさんも、またフレンズになることもできるでしょうし。」
「サンドスターの噴火、だっけ?」
「はい。ついこのあいだふんかしたばかりですから、しばらくはこのままだと、おもいますが。」
「そっか・・・。」
なんとなく寂しい気分になりながら、窓の外、遠くの方に見える山を眺めていると、くいくい、と袖を引っ張られてそっちを向いた。
「なぁに? くびわちゃん。」
「・・・ほうほうが、ないわけじゃない。」
「え? 方法って? なんの?」
ぽつぽつと、いつもの抑揚のない声で言うくびわちゃんに何の気なしに聞き返すと、返ってきた返答は、わたしの思ってもみなかったものだった。
「・・・あーどうるふを、もういちどフレンズにする、ほうほう。」
「ええ!? そんなこと、できるの!?」
驚いて聞き返したわたしに、くびわちゃんはさもとうぜんのように、「・・・できる。」と答えた。
「・・・さんどすたーが、どうぶつにふれると、ふれんずになる。なら、さんどすたーがあればいい。」
「あればいい・・・って、そんなのどこに・・・、あ、わかった。ジャパリまんでしょ!」
言いながら考えて出した回答は、どうも違っていたみたいだ。
くびわちゃんはふるふると首を振る。
「ともえちゃん。ジャパリまんにふくまれるサンドスターは、とてもすくないのです。どうぶつをフレンズにするには、とても・・・。」
「ええ・・・、じゃあ、どこにあるの? くびわちゃん。」
みたび聞き返したわたしに、くびわちゃんは無言のまま窓の外に向けて指をさす。その方向を眺めると、きょじゅうくの建物の遠く向こうに、小さく山が見えた。
「・・・あの、やまのふもとに、けっしょうかしたさんどすたーの、こうしょうがある。たぶん、いまものこっている。」
こうしょう・・・、鉱床ってこと?
「・・・そこにいけば、どうぶつをふれんずにするには、じゅうぶんなおおきさの、さんどすたーがあるはず。」
「そうなんだ! くびわちゃん、やっぱり物知りだね!」
本当に物知りだ。
わたしなんか、サンドスターの鉱床なんて、そんなものがあるなんて考えもしなかった。
そっか・・・、そこに行けば、アードウルフちゃんも・・・。
「なら、さっそくふたりを連れて・・・、あ、でも、なみちーちゃん、大丈夫かな? あのお山までだとだいぶ距離がありそうだし・・・、」
病み上がり、というか、ついさっきまで倒れるくらいにすいじゃくしていたのだ。いくらフレンズさんが頑丈で、ちゃんとご飯を食べられたとはいえ、すぐに満足に動けるとは思えない。
「わたしたちだけで、とりにいってはどうでしょうか? おふたりにはここでまっていただいて。」
「そうだね! そうしよっか! ロードランナーちゃんも、いいかな?」
「んー・・・、そうなぁ・・・。」
ジャパリまんを食べ終えたロードランナーちゃんにも話を振ってみるのだけど、その反応は微妙というか、あまり乗り気じゃないように感じる。
「ま、いーんじゃね? とりにいくだけならよ。」
「う、うん。ちょっと遠いかもだけど、バギーもあるから、そんなに何日もはかからないと思うし・・・。」
「へっ、んなこときにしてるわけじゃねーよ。」
ロードランナーちゃんはそう言って、気にすんなとばかりに手をひらひらと振ってみせた。
なんだかちょっと気になるけど、聞いてもはぐらかされそうな気がして、聞き返すことはできなかった。
ナミチスイコウモリが目を覚ますと、部屋の中には枕元で眠るアードウルフ以外、誰の姿もなかった。
はて、夢でも見ていたのかと思うものの、何日かぶりに満たされた腹は、確かに先ほどまでのことは現実であったと伝えてくる。
ふと、視線をテーブルにやると、こんもりと重なって置かれたジャパリまんが目に映る。
音もなくベッドからおり、テーブルの傍に立つと、ジャパリまんの下に何やら紙きれが敷かれていることに気づいた。
「これは・・・、たしか『もじ』とかいうのじゃったか・・・、サ・・・、を、・・・き、・・・ふん、よめぬわ。」
紙切れには文字が書かれていたが、フレンズであるナミチスイコウモリは一部の文字しか読むことができない。
識字率がないに等しいフレンズにとって、一部でも文字が読めることは非常に稀有なものであったが、文を通して読めなければあまり意味はなかった。
「クゥン・・・、」
「なんじゃ、チサマもおきたのか。」
聞こえてきた声に視線を落とすと、足元にアードウルフがいるのに気付いた。アードウルフはキュウキュウと小さく鳴き声を上げながら、ナミチスイコウモリの足に体をすり寄せる。
「キキキ、そんなにしんぱいせんでもよい。もう、へいきじゃ。」
ナミチスイコウモリは椅子に腰を下ろし、ぽんぽん、と膝を叩く。すかさずアードウルフがよじ登り、膝の上で丸くなると、優しい手つきで
「やつらは・・・、またもどってくるかの?」
「キュゥン・・・? ァフ、ァフ、」
「そうよな。わからぬよな。」
「キュゥン・・・、クゥン・・・、」
「そうさな。みな、よいやつらじゃったわ。」
ナミチスイコウモリとアードウルフは、まるで互いの言葉を理解しているかのように会話をするが、けして彼女らは互いの言語を理解をしているわけではない。
けれど、
言葉を覚える前の赤子が、表情や身振り手振り、鳴き声で親とコミュニケーションをとるように。言葉を理解せずとも伝わるものは、確かに存在する。
その感覚を成すものを、ヒトは信頼と呼び、ときに愛と呼んだ。
「ァフ! オゥン!」
「そうじゃな。しばらくまって、もどってこぬなら、おいかけるとしようかの。なにせ、れいをいいそびれたゆえ。なみちーも、チサマも、たがいにの。」
「ァフ! ァフ! ゥオゥン!」
楽しそうに笑いながら、『これから』の話をするふたりの間にも、確かにそれは存在した。
バギーの後部座席でスケッチブックをひろげながら、わたしはなみちーちゃんのことを考えていた。
あの後、思い立ったがきちじつ、ということわざのとおり、わたしたちはすぐにバギーに乗り込み、くびわちゃんの示したサンドスターの鉱床に向けて旅立った。
はじめは、なみちーちゃんが起きるまで待とうという話だったのだけど、やけに急かしてくるロードランナーちゃんにみんなが根負けした形だった。
うーん、乗り気じゃなかったはずなのに、なんでよ。
相変わらず、走ること以外のこうどうげんりが読めない子である。
なみちーちゃんたちにはジャパリまんと一緒に書き置きを残したから、ちゃんと待っててくれると思うけど・・・。
「きになりますか?」
さっきからずっと、クレヨンを動かす手が止まっていることに気づいてか、イエイヌちゃんが何をと言わず聞いてくる。
「うん。ちゃんと待っててくれるかなって。」
「だいじょうぶですよ。もし、はぐれてしまっても、またさがせばよいだけです。」
「あはは。そうだね。そのときは、イエイヌちゃんのおはなに頼ろっかな。」
「わふ! おまかせください!」
ぽふん、と胸に手を当てて、自信たっぷりに言うイエイヌちゃんに、わたしはほっこり癒されながらも、少し申し訳ない気持ちになった。
「ごめんね、イエイヌちゃん。せっかくおうちに帰れたのに、ゆっくりできなくて。」
そうなのである。
イエイヌちゃんはせっかくおうちに帰れたのに、あんまりゆっくりできなかったのだ。
わたしとしてももう少し、それこそ何日かくらいは滞在して、ゆっくりまったりするつもりだったから、ちょっとだけ残念な気持ちがあるのは否定できない。
勿論、アードウルフちゃんやなみちーちゃんといっぱい遊んだし、このサンドスター探しの旅も、したいと思ってはじめたことだから、けして不満ではないのだけど。
「そんなこと、きにしなくていいんですよ。おうちはにげませんし。またこんど、いっしょにいったときに、ゆっくりすればいいんです。」
それに、と区切るように言葉を置いて、イエイヌちゃんは、
「こんどはちゃんと、ともえちゃんのきおくのてがかりを、さがさなくてはいけませんから。」
そう言えばそうだったね、という、当初の旅の目的を口にした。
「あはは。そうだったね。あたし完全に忘れてたよそれ。」
言いながら、なんだか照れくさいような、嬉しい気分になる。
あたし自身忘れてたようなことを、イエイヌちゃんはちゃんと覚えていてくれたんだね。
「もう、ほんとうにともえちゃんは、じぶんのことはあとまわしなんですから・・・。」
「あはは。ごめんごめん。ちゃんと思い出したから、うん。」
照れ隠しの笑いが止まらないわたしは、たまらずにやけた顔を外に向ける。
そのまま遠くの景色を眺めるようにすると、少しずつにやけ笑いが収まってきた。
と、
「・・・、あれ?」
「どうかしましたか? ともえちゃん。」
「えっと・・・、あの、丘のとこ、」
窓の外を指さして言いながら、イエイヌちゃんの方を振り返る。イエイヌちゃんはわたしの手が指す方をしげしげと眺めると、けげんそうな顔になった。
「ふむ・・・、なにも、みえませんが。」
「え? あれ?」
もう一度視線を窓の外に向けると、さっき見えた筈のものはこつぜんと姿を消していた。
「えっと・・・、さっきは、たしかに・・・、」
視界の隅に映った遠くの丘に、見覚えのある姿が見えた気がしたんだけど・・・、
「なにか、あそこにいたのですか?」
「うん。見覚えがある子がいたと思ったんだけど、気のせいだったみたい。」
「うふふ。ともえちゃんはあんがい、そそっかしいところがありますから、きかなにかを、みまちがえたのでしょう。」
「えー? さすがにそれはないよー。」
あはは、とお互いに顔を見合わせて笑う。
さすがのあたしでも、木と見間違えたってことはないと思うけど、さっきのはやっぱり、気のせいだったかな。
ちくりんからはもう、だいぶ離れたし、こんな遠いところにあの子がいるはずないもんね。
そんなことを考えながら、わたしはスケッチブックの描きかけのページにクレヨンを走らせはじめた。
ここは、ジャパリパーク。
今日もたくさんのフレンズさんたちが、のんびり幸せに暮らしています。
森の中にある大きなライブステージ。
目を閉じればかつての歓声が聞こえてくるその場所で、
さんにんのフレンズさんたちがお話をしていました。
「そったらさぁ。いきなりおおぜいのセルリアンにかこまれてぇ。あんときはもぅ、ダメかとおもったんよぉ。」
「ふむふむ、それからどうしたのですか?」
「はじめてみるフレンズがぁ、こー、ぴゅー!ってとんできてぇ。ぴゃー!ってみーんな、やっつけたんよぉ。こー、つめを、ぴゃー!ってやってぇ。」
「なるほど、ぴゅー!と、ぴゃー!ですか! ぜひそのあたりのところをくわしく!」
「センちゃーん、そこ、じゅうようかなー?」
さんにんの内、ふたりはセンちゃんとアルマーちゃん。
ふたりは最近危ない目にあったフレンズさんに、そのときのお話を聞いてるみたい。
ひょっとして、それが新しい『いらい』の内容なのかしら?
「そのこって、どんなこだったかなー? みためとかー、おおきさとかー。」
「うーん、おおきさはウチらとおんなじくらいやったねぇ。みためは・・・、きいろかったりくろかったり、しましまじゃったねぇ。」
「きいろとくろのしましま・・・、」
「あと、むねんとこがえっらいふくらんどったけど、ありゃあ、でっかいたんこぶでも、できてたんかねぇ? もし、ウチのせいでケガしたんなら、ほんにもうしわけないんよぉ。」
「あははー。それはちがうとおもうよー?」
うふふ。
フレンズさんは本当に申し訳なさそうだけど、
アルマーちゃんの言う通り、それは勘違いかな?
「アルマーさん。タヌキさんがであったフレンズって、」
「どうやら、あたりっぽいねー。かばんさんのいってた、セルリアンがり、かなー。」
「やはり・・・、そうだとおもったのです。でなければ、ぴゅー!とか、ぴゃー!などというはずがありません!」
「かくしょうをえたのそこなんだー。」
ふたりでナイショ話かしら?
フレンズさん、タヌキさんは、ひそひそ声でお話をしてるふたりが気になるみたいね?
こっそり近づいて盗み聞きしようとしちゃってる。
「それで! そのフレンズは! そのあとどこへいったのですか!?」
「ひぃっ! ・・・、きゅう、」
あらあら大変。
センちゃんの大声でタヌキさん、気絶しちゃった。
やっぱり、盗み聞きなんて、したらいけないのよ?
「もー、センちゃん、いきなりおおごえだしちゃだめだってばー。タヌキはびっくりすると、きぜつしちゃうんだからー。」
「ああ! これはしつれいを! だいじょうぶですかタヌキさん! タヌキさーん!」
「はぅ! ・・・、ブクブクブク・・・、」
「センちゃんはたまにー、わざとやってんのかなー?って、おもうことがあるよー。」
もう。
ふたりとも、タヌキさんにあんまりひどいことしたら、ダメよ?
ふたりのフレンズさんたちの、楽しい旅は続きます。