けものフレンズR くびわちほー   作:禁煙ライター

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けものフレンズR くびわちほー 第01話「きおくそうしつ」B・Cパート

フレンズ紹介~ロバ~

 

 ロバちゃんはウマ目ウマ科ウマ属の哺乳類、ロバのフレンズだよ!

 分類がほとんどウマになってるくらいだし、ウマによく似てる動物なんだよ!

 ロバには『うさぎうま』って名前もあって、ウサギみたいに長い耳が特徴だね!

 

 ロバはウマに似てる動物の中で一番小さいんだけど、とっても力持ちなんだよ!

 お水が少ないところでもへっちゃらだし、でこぼこしてるところも平気なんだって!

 それに食べ物が少なくても元気だから、色んなところで荷物を運んでヒトを助けてくれる動物なんだよ!

 

 昔話とかだとよく『ロバは頭がよくない』なんて書かれ方をするんだけど、本当はとっても頭がいい動物なんだって!

 頭がいいせいで気にいらないヒトのいうことを聞かなかったりするから、『いうことを聞かない=頭がよくない』って思われてたんだって!

 ひどいよね!

 

【こえ】ともえちゃん(しゅくしちほー)

 

 ― ― ―

 

 あれから少しして、わたしはだいぶ困り果てていた。

 それはもちろん、顔中よだれまみれになったことについてじゃあない。

 たぶん色々忘れちゃう前から、わたしは動物が好きだったんだと思う。よだれまみれでもぜんぜん嫌じゃないし。

 まあ・・・、その相手の姿が自分と似た年恰好の女の子っていうことについては、さすがに恥ずかしい気持ちがないわけじゃないけど。

 でも、今はそれ以上に困ったことが目の前にある。

 

「たいへんなことをしでかしました・・・、このおわび、どうすればぁ・・・、」

 

 涙声でそんなことを言うイエイヌちゃん。その体勢は両手両ひざを地面に降ろして、おでこも地面にぴったりつけて、ようするに、土下座スタイル。

 さっきまでふりふりぴこぴこしていたしっぽもお耳もまた、しゅん、と垂れ下がっていた。

「そんな・・・、おわびなんて大丈夫だから、ねえ、イエイヌちゃん、おかお、あげよ?」

「そういうわけにはいきません。あんなたいへんなことをしでかしたわたしが、そんなかんたんにあたまをあげるわけにはまいりません。」

「ほんとに気にしないでいいからぁ・・・、ねぇってば。」

 さっきから何度も同じことを言っているのだけど、イエイヌちゃんはすっごい頑固でぜんぜん聞いてくれない。

「ばつを! どうかわたしにばつを!」

「罰って言われても・・・、困ったなぁ。」

 どうしよう・・・、ほんとに困った・・・。

 

「ねえ、ちょっとそこのきみたち、」

 と、後ろから声をかけられて振り返る。

 頭の上に大きな耳をつけた女の子がのぞき込むようにこっちを見ていた。

「あ、ごめんなさい! ひょっとして騒がしかった?」

「ううん、そんなことはないよ。」

 この子もフレンズ・・・、なのかな?

 大きな耳と頭の後ろでまとめた長い髪はイエイヌちゃんより濃いめの灰色をしてて、ふわふわさらさらと風になびく感じがすっごいかわいい。

 うーん、あのふわさら、すっごいなでなでしたい・・・。

 イエイヌちゃんのしっぽに感じたようなムズムズがまた湧き上がってくるけど、大きな声を出してごまかすことにする。

「えっと、はじめまして! あたしはともえだよ! この子はイエイヌちゃん! ・・・ほら、イエイヌちゃんも! ちゃんと立ってあいさつしないと!」

 イエイヌちゃんの手を取って、えいっ、と立ち上がらせる。

「わふ! い、イエイヌです! おみぐるしいところをおみせしました!」

 よかったぁ・・・。

 なんとか元に戻ってくれたみたい。

 

「あたしは、ロバっていうの。よろしくね?」

 ぺこり、とロバちゃんが頭を下げると、長い髪がふわりと揺れる。少し遅れて、背中にしょった大きなリュックもぐらりと揺れた。

「それにしてもすっごい荷物だね・・・。」

「わふ、とってもちからもちですぅ。」

 ロバちゃんは自分の体より倍以上大きいリュックを背負っていた。

 フタが締まらないくらいぱんぱんに詰まっていて、さっきおじぎしたときにも中身が飛び出しちゃいそうなくらいだった。

「・・・お引越し? フレンズさんもお引越しするの?」

 なんでそんなにいっぱいの荷物を、って理由を考えると、わたしにはそれぐらいしか思いつかない。けれど違ったみたい。ロバちゃんはふるふると首を振って、正解を教えてくれる。

「えっと、あたし、ものをはこぶのがとくいだから、いろんなものをあつめたり、くばったりしてるの。」

「あつめたり、くばったり、ですか?」

「うん。だれかのいらないものでも、ほかのこのすきなもの、だったりするから。」

 わぁ・・・!

 すてきな理由・・・!

「すっごい! ロバちゃん、みんなの役に立つのが好きなんだね! えらいね!」

「ほんとです! わたしも、いろんなものをあつめるのすきですけど、くばるなんてかんがえもしなかったです!」

「えっと・・・、そんなおおげさなことじゃないけど・・・、ありがと。」

 わたしとイエイヌちゃんにほめられて、ロバちゃんは照れたように頭をかく。

 あー、やっぱりかわいいなぁ・・・。

 

「集めたものってどんなのがあるの?」

「そうだねー・・・、たとえば、」

 ロバちゃんは器用に後ろに手を回して、リュックからきらきらした丸いものを取り出した。

「これなんかは、さいきん、ひろったものなんだけど、きらきらしてて、すきなこもおおいかなって。」

「・・・、これ、スーパーボール?」

「ともえさん、ごぞんじなのですか!?」

「うん、たぶん。・・・、ロバちゃん、それ、ちょっと貸してもらってもいい?」

「あ、うん。はい、どうぞ。」

 ロバちゃんから受け取ってまじまじと見る。

 うん、やっぱりラメ入りのスーパーボールだ。

「えへへ・・・、ちょっと遊んでもいいかな?」

「うん? かまわないけど・・・。それって、あそぶものなの?」

「そうだよ! ちょっと見ててね!」

 せっかくだから、おもいっきり高く飛ばしたいよね。

「とりゃー!」

 わたしは大きく振りかぶって、スーパーボールを思いっきり石畳の道に叩きつけた。

「ええっ!? いきなりなにするの!? そんなことしたらこわれ・・・、って、あれ?」

 石畳にぶつかったスーパーボールは、ぴょーん、と跳ね上がると、そのまま真下に落ちてくる。そしてまたぶつかり、同じくらい跳ね上がった。

「わふ! なんですかこれ! ぴょんぴょんとんでます!」

「うわわぁ・・・!」

 ふたりは跳ねつづけるスーパーボールをびっくりした顔で見ている。

 だんだんと跳ね上がる高さが落ちてきて、ちょうどいい高さになってきたところで、わたしはボールを受け止めた。

 

「どうかな? こういう風に遊ぶんだよ!」

「すごい! こんなのはじめてみたよ!」

「ともえさん! もういっかい! もういっかいなげてください! こんどはわたしがきゃっちしたいです!」

 しっぽをぱたぱたさせるイエイヌちゃんは待ちきれないとばかりに、はふはふと息をはく。

「よーし、いくよー? とりゃー!」

「わふっ! わふぅーーーんっ!」

 跳ね上がったスーパーボールが一番てっぺんに行くのに合わせて、イエイヌちゃんは大きくジャンプしてボールをキャッチした。

「イエイヌちゃん、すごっ! そんな高く飛べるの!?」

「えへへ・・・、じょそうをつければ、もっとたかくとべますよ?」

「みたいみたい! もう一回やろう!?」

「わふっ!? いいんですか!?」

 イエイヌちゃんが少し腰を落とした体勢になるのを見てから、わたしは今度は角度をつけてボールを地面にぶつける。

「じゃあ、いくよー? それー!」

「わふっ! わふわふわふっ! わふぅぅぅーーーんっ!」

 すっごいスピードでかけ出したイエイヌちゃんは、ななめに飛んでいくスーパーボールをまた一番てっぺんのところでキャッチした。

「あはは、楽しいね! イエイヌちゃん!」

「わふっ! とっても楽しいです!」

「わぁ・・・、とってもよろこんでくれてる・・・!」

 楽しく遊んでるわたしたちを見て、ロバちゃんはすっごいうれしそうな顔。

 やっぱり、ロバちゃんはだれかの役に立つのがうれしい子なんだね。

 いい子だなぁ・・・!

 

 ― ― ―

 

「そういえば、ロバさんはどうしてわたしたちにおこえがけを?」

「あ、そうそう、そうなの。」

 ボールでひとしきり遊んだ後、イエイヌちゃんがたずねると、ロバちゃんはすこし不安そうな顔になってお話をつづけた。

「ちかくに、セルリアンをみかけたってこがいたから。ふたりとも、はやくここからはなれたほうがいいんじゃないかなって。」

「おお、それはかたじけない! ごちゅうこく、ありがとうございます!」

「・・・せるりあん?」

 わたしは、はじめて聞いた単語に思わず聞き返してしまう。

「イエイヌちゃん、せるりあん、ってなに?」

「セルリアンというのは、われわれフレンズにきがいをくわえる、とてもきけんなやつらのことです。」

「へー、」

「セルリアンにおそわれて、たべられると、フレンズはサンドスターをうしなってしまい、うごけなくなったり、どうぶつにもどってしまったり、するらしいです。」

 なにそれこわい。

 ってか、襲う? 食べる? こんなにかわいい子たちを?

 うーん、あたしにはそれ、ぜんぜん理解できないなぁ。

 

「なんだか怖いね。その、セルリアンっていうの、どんななの?」

「すがたかたちはおおきかったりちいさかったり、いろいろありまして、いろもあおかったりあかかったり、いろいろです。」

 イエイヌちゃんはわたしの質問に、ていねいに説明を続けてくれる。

「けど、おおきなまるいめと、いしをもっていて、はんぶんすきとおったようないろをしてるのは、みんなきょうつうしてますね。いしはセルリアンのじゃくてんなので、」

 そこで言葉を区切り、ぶん、と軽くひっかくような動作をする。

「そこをねらえばいちげきでしとめられますが、おおがたのこたいは、いしにこちらのてがとどかなかったりするので、てごわいのです。」

「へー、そうなんだ。」

 なるほど。なんとなくイメージできたかも。

「イエイヌちゃんの説明、すっごいわかりやすいね。ありがと!」

「うん、あたしもそうおもう。きみって、すごくものしりなんだね。」

「そ、そんなことありませんよぉ・・・、えへへ、」

 わたしとロバちゃんにほめられて、今度はイエイヌちゃんが照れちゃった。

 やっぱりこっちもかわいい・・・!

「イエイヌちゃん、よだれ、垂れてるよ?」

「わふ! おみぐるしいところを!」

 わたしが教えてあげると、イエイヌちゃんは口の周りをごしごしした。

 あー、こんなところもすっごいかわいいなぁ・・・!

 かしこい! かわいい! イエイヌちゃん!

 

「ロバちゃん、ありがとね! 荷物いっぱいで大変なのに、教えにきてくれて。」

「ううん。こまったときにはたすけあうのが、パークのおきて、だから。」

「そうなんだ。すてきな掟だね!」

 どうやらこのジャパリパークというところは、わたしが想像してたより、もっとずっとすてきなところみたい。

 さっき聞いたセルリアンみたいに怖いものもあるみたいだけど、こんなにかわいいフレンズさんたちが助け合ってけなげに生きてるなんて、それを聞いただけで・・・、

「はうぅ・・・、」

「・・・? どうしました? ともえさん?」

「・・・いや、ちょっと、ムズムズがね?」

「ムズムズ? どこかかゆいんですか?」

「あはは、大丈夫だよ。すぐおさまるから。」

「そんな! がまんせずにいってください! わたし、がんばってなめますから!」

「はい治りました! かゆいの治りました! だからなめなくてダイジョブです!」

「そうですか・・・、くぅん、」

 しょんぼりしてるイエイヌちゃんには申し訳ないけど、またよだれまみれになるのは、さうがにちょっと遠慮したい。

 

「・・・くぅん? くんくん、くんくん・・・、」

 と、イエイヌちゃんは突然周囲の匂いを嗅ぎだした。

 すごく、真剣な表情。

「・・・イエイヌちゃん?」

「どうかした? かおいろが・・・、っ、」

 わたしと同じように不思議そうな顔をしていたロバちゃんも、耳をぴくぴくさせたかと思うと、顔をハッとさせる。

「ともえさん、ロバさん、わたしからあまりはなれないでください。」

 イエイヌちゃんは腰を落として両手両足をひろげた姿勢になると、注意深く周囲を警戒しはじめた。

「えっ? それってどういう・・・、」

「すぐ、ちかくまできています。いまからでは・・・、」

 言葉を区切って、ちらっ、ちらっ、と、わたしとロバちゃんを見る。

「・・・たぶん、にげられません。」

「あたしのことは、きにしないで。ふたりだけでも、にげ――、」

「こまったときにはたすけあうのが、パークのおきて、でしょう?」

「・・・、こまったなぁ。でも、ありがと。」

 どうも、イエイヌちゃんとロバちゃんには、わたしには感じ取れない何かがわかっているみたいだ。

 わたしだけ、ぜんぜん状況を呑み込めていない。

「わたしが、もうすこしはやくきづいていれば・・・、」

「しょうがないよ・・・。やつらはにおいもおとも、うすいから・・・。」

「やつら・・・?」

 ・・・けど、たぶん。

 このふたりの雰囲気は・・・!

 

「・・・、きます! セルリアンです!」

 

 それは、わたしたちの数倍以上はある、おおきな怪物だった。

 

 ― ― ―

 

 青くて丸い大きな体に、感情の見えない大きな丸い目。体のあちこちからは触手のようなものが伸びていて、その一本一本がわたしの腰とおなじくらいの太さをしている。

 こわい。

 どきどきで胸がくるしい。

 手足がぶるぶると震える。

 背中にはひやりとしたものが流れて、ぞくぞくが止まらない。

 あの場所で目を覚ましてから、ひょっとして、はじめてかもしれない恐怖を、わたしは感じていた。

 

「ふたりとも! うしろにとんでください!」

 イエイヌちゃんの大声にハッと我に返る。

 となりのロバちゃんは大きな荷物をしょったまま、ぴょんと後ろに飛びのいた。

 わたしも飛ぼうとする。

けど・・・、ダメだ。

 動かそうとしても、ひざが、がたがたと震えるだけ。

 力の入らない足で、それでもむりやり飛ぼうとすると、どすん、と尻もちをついてしまった。

「あいっっ、たぁ・・・、」

「ともえさん!!」

 イエイヌちゃんは倒れてしまったわたしをかかえて飛び上がる。

「うわぁっ!」

 さっきまでわたしたちがいた場所を、ムチみたいに振るわれた大きな触手が勢いよく通り過ぎた。

「・・・っ、だいじょうぶですか!? ともえさん!」

「う、うん。あたしはへいき、だけど・・・、っ、イエイヌちゃん! 腕が・・・!」

 イエイヌちゃんの腕を見ると、大きく擦りむいたような傷が目に映った。さっきの触手に、ぶつけられちゃってたみたいだ。

「このくらい・・・、っ、なんてこと、ありませんよ。」

 イエイヌちゃんはにっこり笑ってみせるけど、すっごい痛そう。

 そんな・・・、あたしのせいで・・・。

「・・・ロバさん、ともえさんをおねがいします!」

「うん! わかった!」

 何もできないわたしをロバちゃんにあずけて、イエイヌちゃんはセルリアンに飛びかかった。

 

「がぁぁぁぁぁあぁっ! がぁぁうっ!!!」

 

 イエイヌちゃんはキバをむき出しにした、見たこともないようなこわい顔で爪を振るう。

 色の違う両目が、するどい爪が、ぼうっと光っている。

 その爪が力強く振るわれるたび、セルリアンの振り回す触手が何本もちぎれ飛んだ。

「す、すっごい・・・! イエイヌちゃん、これならやっつけられるんじゃ・・・!」

「・・・うん。たしかにすごいけど、でも・・・、」

「があぁぁうっ!! ・・・っ、」

 ほんの一瞬、イエイヌちゃんの動きが止まる。

 その一瞬をセルリアンは見逃さなかった。

 

「ぎゃうんっ!」

「イエイヌちゃん!?」

 触手の一本が、びしっと大きな音を立ててイエイヌちゃんの体を打ち付けた。ふき飛ばされそうになるのを何とかこらえて、イエイヌちゃんは反撃の爪を振るう。けれど、その爪はかろうじて触手をはじいただけで、さっきのような勢いはなかった。

「ぐっ・・・、っ! ぃぎっ・・・!」

「イエイヌちゃん・・・っ! イエイヌちゃん!」

 次々に襲ってくる触手を、イエイヌちゃんは体勢のととのわないまま、なんとか爪ではじいているけど、押されてるのは明らかだ。

「イエイヌちゃん! ・・・っ、うわぁっ!」

 余裕が出てきたのか、セルリアンはこっちにまで触手を振るいはじめた。

「あぶないっ!」

 危うくぶつかりそうなところを、ロバちゃんがかばってくれる。

「ロバちゃん! 大丈夫!?」

「だ、だいじょうぶ・・・。にもつが、ふせいでくれたから。」

「あ・・・、」

 見ると、ロバちゃんのリュックが切り裂かれていて、中身が外に飛び出してしまっていた。

 

 どうしよう。どうしよう。

 イエイヌちゃんがつらそうなは、きっと、さっきケガしたせい・・・。

 それに、ロバちゃんの大切なリュックまで・・・。

 ぜんぶ、ぜんぶあたしのせいだ・・・!

 

「なんとか、しなきゃ・・・!」

 

 考えろ。考えろ、あたし。

 この状況をなんとかするためには・・・。

 逃げるのは難しいって、イエイヌちゃんがさっき言ってた。

 なら、あいつをやっつけるしかない。

「・・・そうだ、石を見つけないと!」

 イエイヌちゃんがさっき説明してくれたセルリアンの弱点。

 石を狙えば一撃でしとめられるって。

 それにかけるしか・・・!

 でも、どこに・・・?

 

 わたしは注意深くセルリアンを観察する。と、

「・・・、あった! 頭のてっぺん!」

 頭のてっぺんに大きな石があるのが見えた。

「でも・・・、あの高さじゃ・・・、」

 イエイヌちゃんでも、たぶん、あの高さには助走をつけないと届かない。

 そんな隙を、セルリアンが見せてくれるとは思えない。

 どうすれば・・・!

 と、地面にばらまかれたロバちゃんの荷物に、あるものを見つける。

 ・・・っ、そうだ・・・!

 これなら・・・!

 

「ロバちゃん! さっきのアレ! また借りるね!?」

「ええっ! いいけど、なんで!? あそんでるばあいじゃないよ!」

 わたしは地面に転がってるスーパーボールを拾い上げ、大きく振りかぶってから大きく息を吸い込んだ。

 そして、はき出す!

 

「おーい! そこのでっかいの!」

 

 わたしの大声に反応して、セルリアンの大きな目がこちらを向いた。

「これでも! くらえーっ!」

 その瞬間を狙って、わたしは渾身の力でスーパーボールを石畳に叩きつける。上手くいくか不安だったけど、スーパーボールは狙い通りの方向に跳ね上がってくれた。

「と、ともえさん! なにを!?」

「イエイヌちゃん! ボールに向かって飛んで!」

「えっ!? ええっ!? どうしてです――、」

「いいから! 早く!」

「わふっ! わ、わかりましたぁっ!」

 イエイヌちゃんは大きく後ろに飛びのいて、セルリアンから距離をとる。

 そして助走をはじめた。

 

「わふっ! わふわふわふっ! わふっ! わっふぅぅぅぅんっ!!!」

 一気にスピードに乗ったイエイヌちゃんはその勢いのまま、大きく飛び上がる。

 狙いはスーパーボール。

 セルリアンの直上に跳ね上がった、スーパーボールだ。

「わふっ! あれは・・・っ!」

 イエイヌちゃんも石に気づいたみたい。

 両目と爪に宿る光が輝きを増す。

 

 ・・・よかった。

 これで、やっつけられるね、セルリアン。

 ――っ、

 

「・・・っ、ともえさん!?」

 と、イエイヌちゃんは飛び上がった状態で視線をこちらに向ける。

 ああ、もう。

 こっちにも気づいちゃったかぁ。

 やっぱりイエイヌちゃんはかしこいなぁ。

 

 たぶん、イエイヌちゃんの爪が届くより前に、セルリアンの触手がこっちに届く。

 フレンズさんたちみたいなチカラがないわたしは、たぶん一回やられただけで・・・。

「いいから! そのままやっつけて!」

 イエイヌちゃんはすっごい泣きそうな顔をして、でも、既に空中にある体では他に選択肢がないことにすぐに気づいたんだろう。キバをぐいっとむいて、大声で叫んだ。

 

「がぁぁぁぁっぁぁぁっ!!!」

 

 セルリアンの大きな触手が視界いっぱいに広がる。

 そしてそのまま、わたしの意識は途切れた。

 

 ― ― ―

 

 夢を見ていた。

 森に囲まれた丸い建物。

 それをじっと見つめるナニカの姿。

 どうしてかその姿ははっきりと見えない。

 うすぼんやりとした輪郭で、まるで幽霊みたいに佇んでいる。

 

 それが何なのか、そもそも生き物なのかさえ分からないけれど、

 どうしてだろう、わたしにはそのナニカが悪いものには思えなかった。

 ただただ独り、何かを待ち続けているようなその姿からは、ひとつの悪意も感じなかった。

 

 ― ― ―

 

「うーん・・・、んぅ・・・?」

「はっ! きがつかれましたか! ともえさん!」

「んー、・・・んー?」

 目を覚ますと、わたしはふわふわしたものを枕に、夕暮れの中寝っ転がっていた。

 頭上には私の顔を覗き込むイエイヌちゃん。

 この視界とこの頭の後ろのやわらかな感触・・・、ひょっとしてイエイヌちゃんの膝枕?

 

 ・・・あれ?

 もしかしてここ、天国・・・?

 

「おけがはありませんか!? いたいところ! ないですか!?」

 痛いところは特にない。

 しいて言うなら、突然の状況にどきどきしているくらい。

「えーと・・・、うん、大丈夫みたい。でも、どうして・・・?」

「ロバさんが、たすけてくれたんですよ。」

 そう言って、イエイヌちゃんは視線を横に向ける。

 わたしも頭を横に向けると、すやすやと眠ってるロバちゃんがいた。

「ロバちゃんが? えっと、ケガとかは・・・、」

「だいじょうぶですよ。あの、おおきなにもつが、こうげきをふせいでくれたみたいです。」

「そうだったんだ・・・。」

 言われてみて、気づく。

 ロバちゃんのリュックは――、

「・・・、ごめんなさい。」

 もう、物を詰めるどころじゃないくらいにぼろぼろになってしまったリュックを見て、わたしは自分のしたことを後悔した。

 

 あたし、なんとかしなきゃって、思って。

 あたしのせいで、イエイヌちゃんも、ロバちゃんも、ふたりとも・・・、

 そんな、言葉にできない思いを、

「ともえさん。」

 イエイヌちゃんは全部わかっているとでもいうような、優しい顔で微笑んでくれた。

「だいじょうぶです。ともえさんが、わたしたちをたすけようとしてくれたことは、わたしも、ロバさんも、ちゃんとわかってますから。」

 それだけで、わたしは救われたような、とてもあたたかな気持ちになる。

「うん・・・、ありがとう。」

「でも、ああいうきけんなのは、もうにどとしちゃだめですよ?」

「はい・・・、ごめんなさい。わかりました。」

 

 そのあと、日もすっかり沈んでしまって、わたしたちもロバちゃんの近くで一緒に寝ることにした。

 けど、さっき起きたばっかりだから、なかなか寝付けない。

 ごろん、と寝返りをうって空を見上げる。

 きらきらと、視界いっぱいにひろがる星々。まんまるなお月様は少しまぶしいくらい。

 こうして見上げていると、不安だったこととか、怖かったこととかが、ぜんぶ、すーっと、消えていくみたいだ。

「イエイヌちゃん、まだ、おきてる?」

 何の気なしに、イエイヌちゃんに声をかけてしまう。

「はいぃ・・・、おきてますよぉ・・・?」

 返事をしてくれたけど、イエイヌちゃんはすっごい眠そうだ。

 ううん。ちょっと、わるいことをしてしまったかも。

 

「ロバちゃん、リュックなくなっちゃって、かわいそうだよね・・・。」

 特に話しかける内容も考えていなかったわたしは、とっさに今一番気になっていることを口にする。言ってしまってから、ちょっと後悔した。

 ううん。後悔とは、またちがうかも。

 自分の発言に、自分でいきどおりを感じている、とでも言うべきじゃないかな。

 だって、かわいそうも何も、ぜんぶあたしのせい、なんだから・・・。

「んー・・・、なにか、かわりになるものが、あればいいんですが・・・。わふぅ・・・、」

 かわいらしいあくびの音が聞こえてくる。

 これ以上、寝るの邪魔しちゃだめだよね。

「ごめんね。もう眠いよね? おやすみ、イエイヌちゃん。」

「はい・・・、おやすみなさいぃ・・・。」

 あたしも、もう寝ないと。

 

 なにか・・・、かわりになるもの・・・。

 

 お日様がのぼってすぐ起きたわたしたちは、ロバちゃんが分けてくれた『ジャパリまん』で朝食をとった。

 そういえば、色々あったから忘れてたけど、昨日から何も食べてなかったよね、あたし。

 そもそもごはんをもらいに『ボス』のところに行こうとしてたんだったっけ。

「なにこれ! すっごいおいしい!」

「わふ! やはりジャパリまんは、いつたべてもおいしいですね!」

 はじめて食べたジャパリまんは、お腹がすっごい空いてたのもあって、とってもおいしかった。イエイヌちゃんも、とってもおいしそうにほおばっている。

「肉まんみたいだけど・・・、ちょっと違うかな? 冷めてるのにやわらかくて、あまくてしょっぱくて、なんだか幸せになる感じ! ありがとね! ロバちゃん!」

 おいしい朝ごはんに上機嫌だったわたしは、そのままのテンションで話しかける。

「・・・ううん、どういたしまして。」

「・・・、っ、」

 そして、ロバちゃんの表情に言葉がつまってしまった。

 どこか寂し気な、その表情。

 

「ほんとうに、わけていただいて、よかったのですか? ロバさんのぶんは・・・、」

「・・・だいじょぶだよ。ボスにあったらすぐもらえるし。それにあたし、すくないたべものでも、へいきだから。」

「・・・そうなんだ。燃費、いいんだね。」

「ねんぴ? うん、よくわからないけど、たぶんそうかな・・・。」

 よくわかってない顔のロバちゃんは、やっぱり寂しそう。

 それは、そうだよね。

 だって大切なリュックがなくなっちゃったんだから。

 すごく、いたたまれない気持ちになる。

 わたしの、せいで・・・、

「あはは・・・、燃費ってがいねんは、フレンズさんたちにはないか・・・。」

 場をつなぐように、つぶやくように言いながら、

「あ、」

 と、思いついたことに声が漏れる。

 ・・・ええと、ひょっとして。

 あれなら、ひょっとしたらリュックのかわりになるかも・・・!

 

「ねえ、ロバちゃん! このあと、一緒に来てくれる? 見てほしいものがあるんだけど!」

 

 ― ― ―

 

「うわわ! うわわわわ! これすごい! これ、すごいよ!」

 

 ロバちゃんは出会ってから一番のテンションで、すごいすごいと何度も言った。

「昨日、イエイヌちゃんに会う前に見つけたの。リュックの代わりになるかなって。」

 あの建物からちょっと歩いた、わきの木陰。

 すっごい古いけど頑丈そうなほろ馬車は、今日も同じ位置にあった。

「これがあれば、もっといっぱい、いろんなものをはこべるかも・・・! ものだけじゃなくて、みんなをはこぶのもいいかなぁ・・・!」

「良かったぁ。すっごい喜んでくれてるみたい。」

「はい。わたし、こんなによろこんでるフレンズをみるの、はじめてかもしれません。」

 馬車のつかいみちをあれこれ口に出してるロバちゃんの横で、わたしとイエイヌちゃんは顔を見合わせて笑った。

 

「こんなすてきなものをみつけてくれて、ほんとにありがとう!」

「いいからいいから、あたしのせいでリュック、壊れちゃったんだし」

 わたしとイエイヌちゃんはロバちゃんの引くほろ馬車に揺られていた。「だれかをのせてみたい!」というロバちゃんのお願いを聞いた形だ。

 乗ってみてわかるけどやっぱりかなり頑丈で、揺れも少ない。

「ともえさん? なにをしてるんですか?」

「ん? ちょっとね。旅の思い出を絵に描いてるの。」

「わふ! みたいです!」

「まだ描いてる途中だからだーめ。」

「くぅん・・・、そうですかぁ・・・。」

 別にいじわるをしてるつもりはないけど、しょんぼりしたイエイヌちゃんを見ると、とても悪いことをしてる気分になる。

 見せてあげようとも思うのだけど、やっぱり、かいてる途中の絵を見せるのは、ちょっとはずかしいかな。

「がっかりしないの。かきおわったら、見せてあげるから!」

「・・・はい! ありがとうございます!」

 描きかけの絵には、ロバちゃんがうれしそうに引く馬車と、その荷台でにっこり笑っているわたしとイエイヌちゃん。

 とてもすてきなロバ車の旅だった。

 

「ねえ、きみたち。ばしゃのかわりに、すきなものをもっていってくれないかな?」

 昨日、セルリアンにばらまかれてしまった荷物を手分けして荷台に載せていると、ロバちゃんがそんなことを言った。

「え、いいっていいって。あたしはただ見つけただけだし。」

「わたしもだいじょうぶですよ。わたしにいたっては、みつけてすら、いませんし。」

 そう言って断ろうとするわたしたちに、ロバちゃんは首を横に振る。ふわさらのポニーテールが一緒になって揺れた。

「パークのものは、はじめにみつけたこのもの、なんだから。それに、きみはあぶないところをたすけてくれたでしょ?」

 真剣な顔でそう言って、かと思うと、すっ、と声のトーンが落ちた。

「えっと・・・、もちろん、こんなすてきなものの、かわりになるものなんてないし・・・、いらないものをもらってもしょうがないし・・・。」

 あわわ。

 ロバちゃん、せっかく喜んでくれたのに、

 また、しょんぼりした顔に!

「えーっと! あたしは何にしようかな! すてきなものがいっぱいで目うつりしちゃうよね! ね! イエイヌちゃん!」

「わふっ! そうですね! なにがいいですかね!」

「そ、そう? そういってもらえると、うれしいな!」

 顔をほころばせるロバちゃんの横で、またイエイヌちゃんと顔を見合わせて笑う。

 うん。やっぱり遠慮するのはよくないよね。

 せっかくのご厚意、甘えさせてもらおう!

 

 ― ― ―

 

「それじゃ! あたしはこれで! ふたりとも、げんきでね!」

 

 元気な声でそう言って、ロバちゃんは馬車を引いて歩いていった。

 姿が見えなくなるまで手を振り続けてから、わたしたちも歩き出した。

「それにしても・・・、イエイヌちゃんがもらうもの、本当にそれでよかったの?」

「はい! これがあれば、ともえさんのすけっちぶっくや、どうぶつずかんが、もちはこびやすいですから!」

 ロバちゃんから馬車の代わりにもらったもの。

 わたしはどうぶつ図鑑と、どうぶつプリントがちりばめられた水筒を、イエイヌちゃんは肩掛けかばんをもらった。

 どうぶつ図鑑はところどころ破れたり、色あせたりしてるけど、フレンズさんたちのことをよく知る為にはとっても役立ちそうだ。

 そして、イエイヌちゃんがもらった肩掛けかばんは、スケッチブックや図鑑をしまうにはちょうどいいサイズだった。

「そんな気をつかわなくてよかったのに・・・、スーパーボール、欲しかったんじゃない?」

「そ、そんなことはああありませんよぉ。わふ。」

 ロバちゃんも「かばんだけじゃなくて、ボールももってっていいよ」って言ってくれたのに、「そんなにいっぱいもらえません!」と断固拒否したイエイヌちゃんだった。

 わたしなんか、どうぶつプリントがとってもかわいい水筒と、どうぶつ図鑑と、どっちにしようかえんえん迷ったあげく、両方もらっちゃったというのに。

「もう・・・、イエイヌちゃんは頑固だなぁ。」

 ひとりごとのようにつぶやいて、わたしはイエイヌちゃんの持ってるかばんを手に取った。

「なら、せめてこれはあたしが持つね!」

「だ、だめです! それではともえさんが、つかれてしまいます!」

 イエイヌちゃんはかばんを手放す気はないみたいで、ちょうど引っ張り合う形になった。

「いいの! こればっかりは譲らないからね! 中身があたしのものなら、あたしが持たなくちゃだめでしょ!?」

 そうやって強く言うと、かばんを引っ張るイエイヌちゃんの力が弱まり、しばらくしてその手がゆっくりとはなれた。

「わふ・・・、わかりましたぁ・・・。」

「よしよし。ありがとね、イエイヌちゃん。」

「くぅん・・・、ともえさんはがんこですぅ・・・。」

 

 イエイヌちゃんから受け取ったかばんに、さっそく図鑑とスケッチブック、水筒をしまう。

 ・・・と、

「あれ・・・? このポッケ、何か入ってる・・・?」

 かばんのポケットに何か入っているのに気付いた。

「なんですかね? あけてみてみたらよいのでは?」

「うーん、後にしようかな。よっ、と・・・!」

 ベルトを肩にかけると、かばんがちょうど腰のあたりにくる。まるで昔から使ってたみたいにしっくりきた。

「どうかな? 似合う?」

「はい! とってもよくおにあいです!」

 こうしてみると、なんだか旅立ちの準備ができた、みたいな感じがして、気分が高まる。

 うんうん。この感じ、わるくないわるくない。

 

「さて、これからどうしようかな。」

「あ、あの、もし、ともえさんさえよろしければ、わたしのおうちにいってみませんか?」

「イエイヌちゃんの、おうち?」

「はい! ・・・あの、せいかくには、わたしがフレンズになるまえに、ヒトとすんでたおうち、だとおもうんですけど。」

「イエイヌちゃんがフレンズになる前かぁ・・・、」

 言いながら、想像してみる。きっとすっごいかしこくてかわいい、ときどきアホっぽくて懐っこい、すてきな子だったんだろうなぁ・・・。

 

 ああ、またムズムズが・・・。

 

 ごまかすように顔をぶるぶる振る。

「いいね! いこうよイエイヌちゃん!」

「わふ! ありがとうございます!」

「そんな、お礼なんて。こちらこそ、だよ。案内してもらうのはあたしなんだから。それに、ヒトが住んでたってくらいなら、パークのことも何かわかるかもだし!」

「そうですね! なにかヒトにしかわからないようなてがかりが――っ、」

「イエイヌちゃん? どうしたの?」

 突然、イエイヌちゃんは息をのむように言葉を詰まらせた。

 まさか・・・。また、セルリアン・・・?

 なんて思っていると、イエイヌちゃんはあわてた様子で言葉を続ける。

 

「お、おもいだしましたぁっ!」

「思い出したって、ヒトのこと?」

「いえ! そうではなく! いや! たしかにヒトのことですが!」

 がくぜん、という顔で、イエイヌちゃんはこっちを見る。

 そしてそのまま――、

「えっ? ちょっと! イエイヌちゃん! 何してんのっ!?」

「そのせつは! ほんとうにもうしわけありませんでしたぁっ!」

 ずさっ、と飛びのいたかと思うと、イエイヌちゃんは地面におでこをこすりつけた。

「ばつを! なにとぞ! わたしにばつを!」

「えぇーっ!? またぁーっ!?」

 思い出したって、そっちのことー?

 

 うーん、困った。

 昨日は途中でロバちゃんが来て、うやむやにできたけど・・・、これ、たぶん、実際に罰を与えるまでくり返すパターンかなぁ・・・。

 うーん・・・、罰かぁ。

 そのお耳やしっぽを、あたしに思うさま、もふもふさせなさい!

 なんて言ったら、確実にドン引きだし・・・、主にあたし自身が。

「うーん・・・、それじゃあ・・・、」

 しばらく考えて、

「その、呼び方さ、」

 罰とは呼べないような、簡単なお願いをしてみることにした。

 

「ともえさん、じゃなくて、ともえちゃんって呼んでくれないかな?」

 

 きょとん、とした顔でこっちを見るイエイヌちゃん。

「・・・、えっと、・・・それ、ばつですか?」

「そうだよ! 罰だよ!」

「まったく、ばつになってないような・・・。」

「いいの! これは罰なの! わかった!?」

「わ、わふ! わかりました!」

 大きな声に驚いたのか、イエイヌちゃんはがばっと顔を上げる。

「じゃあ、言ってみて、ともえちゃん」

「ともえ・・・、ちゃん」

「もう一回」

「ともえ、ちゃん」

「元気な声で!」

「ともえちゃん!」

「はい! よくできました!」

 

 そうして、ふたりで顔を見合わせて、にっこり笑った。

 

「えへへ・・・、これからよろしくね! イエイヌちゃん!」

「はい! よろしくおねがいします! ともえちゃん!」

 

 

 ― ― ―

 

 ― ―

 

 ―

 

 

 ここは、ジャパリパーク。

 今日もたくさんのフレンズさんたちが、のんびり幸せに暮らしています。

 

 ぽかぽかと暖かな日差しが降り注ぐ草原を、

 ふたりのフレンズさんたちが、お話をしながら旅をしていました。

 

「センちゃーん・・・、みち、ほんとにこっちであってるのー?」

「そのはずですよ、アルマーさん。わたしがカルガモさんにきいたじょうほうによると、こちらでまちがいないはずです!」

「ほんとかなー?」

「カルガモさんはみちあんないがとくいなんですから、まちがえるはずないですよ。」

「いまみちあんないしてるのセンちゃんじゃーん・・・。」

 

 どうやらふたりは何かを探しているみたい。

 何を探しているのかな?

 

「それにしてもカルガモ、ぶじでよかったよねー。」

「そうですね。くらいところで、ならんであるいてるなにかをみつけて、」

「つい、ついていっちゃってー、」

「あかるいところにでたら・・・、」

「ならんであるいてたのがー、じつはセルリアンだったなんてー!」

「きゃーっ!」

 

 あらあら、怖い話。

 ふたりが探しているのもセルリアンなのかしら?

 ふたりとも、あぶない目にあわない?

 大丈夫?

 

「そしてならんでるせんとうにはー・・・!」

「きゃーっ! きゃーっ!」

「センちゃーん・・・、これ、あたしがセンちゃんからきいたはなしなんですけどー?」

「きゃーっ! きゃーっ! きゃーっ! ・・・ぷっ、くすくす・・・、」

「まったくもー、・・・あはは、」

 

 うふふ、よかった。

 なんだかふたりとも楽しそう。

 

 ふたりのフレンズさんたちの、楽しい旅は続きます。

 

 


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