アラホロ亭繁盛記~アーランドの酒場と錬金術士達~ 作:よるのこ
「……飲み過ぎたわね」
翌日、朝方に迎えのちみゅみみゅが来るとのことで、ジーノの見送りをしていたミミは少しだけ痛む頭を抑えながらトトリの帰りを待っていた。
元々はゆっくり一杯のウィスキーを飲んで帰るつもりだったのが、思わぬ再開と約束にテンションが上がってしまい、何度かお代わりをしてしまったのが原因である。
さすがにたまにトトリと飲む時にやらかすような、記憶を無くすまでには至っていないがそれでも飲み過ぎたと、反省をしながら、昨日のアラホロ亭での出来事を思い返す。
正直、久しぶりに出会ったジーノとの酒席はとても有意義なものだった。
あの腐れ縁はいつまで経っても本当にちっとも変わらない。子供っぽくて、単純で、そしてどこまでも真っ直ぐな気性で、自分の芯をしっかりと決めて、自分の幼馴染と同じように、己の道をひたすらに突き進んでいるのである。
苦労も伝わるが、実に楽しそうに話す冒険譚。お酒が入って二人だからこそ話せる本音の話。そして互いにとって大切な人に関する約束。お互いが守るものを改めて話したこの二人の酒席は……
「……まぁ、楽しい時間だったわね」
「へ~。ミミちゃん昨日はお楽しみだったんだね~」
「ト、トトリ!?」
「ただいま。ミミちゃん」
「お、おかえりなさい……」
最近
「ミミちゃん、聞いたよー?」
「な、何をかしら……?」
妙にニコニコ、というかニヤニヤしているトトリに妙に威圧感を感じるが、気のせいだと思いたい。
「錬金術教室に通っている人が私を見つけるなり、話してくれてね。ミミちゃんが男の人と二人で飲んでいましたーって」
「誰よそんなことトトリに話したの……!?」
アラホロ亭は酒場でこそあるが、老若男女誰でも訪れることができる場所であり、二人が飲んでいた時も様々な人が訪れていたが、あの中にトトリの生徒が紛れ込んでいたらしい。
「ねぇ、トトリ。それはね……」
「ジーノ君なんでしょ?ミミちゃんと年が近くて、それで親しそうに話している男の人ってジーノぐらいだもんね」
「……まぁ否定はしないけど、なんか気になる言い方ね……」
実際に後輩の冒険者や警備団の若手からは、頼りになるし面倒見もいいけど、ちょっと近寄りがたいと思われており、本人も少しだけ気にしているのであるが、特にトトリは気にせず話を続ける。
「それで、ジーノ君はどうだった?元気そうだったの?」
「東の大陸は中々大変らしいけど、相変わらず無駄に元気そうだったわよ」
「そっか、それならいいや」
「あなたもアイツと同じようなこと言うのね……」
お互い心配はしつつも大丈夫だと信じている。同じ村の生まれで、物心ついたころから一緒だという二人の間の信頼は、ミミにとっては少し羨ましく、そして負けたくないもの。
「……アイツ、あなたに会えないのを随分と残念がっていたわよ」
それでも、ミミはジーノとお酒を飲んで聞いた彼の心境を伝えておくことにする。
多分本人は言うなよと怒るかもしれないが、これくらいはいいだろうと。次に3人で会う時に、この件でトトリと一緒に少しからかってやろうと言う下心も持ちながら。
……この発言を後悔することになるのはもう間もなくであるが。
「ふーんそっかー…………でもミミちゃんばっかりズルいなぁ」
「な、なにが……?」
ちょっぴりジト目気味に、でも口元はニヤニヤさせたまま、拗ねたような口調でトトリがミミに文句を言う。
「だって、私が居ない間にジーノ君と二人で仲良く飲んでいたんでしょー?二人が仲良くしているのは私も嬉しいけど……わたしだってジーノ君と会えなくて、ちょっぴり寂しかったのに」
「そ、それは仕方なかったじゃない……。あなたはジーノが帰ってくるって知らなくて、ジーノはあなたが遠方に居るって知らなかったんだから……」
「いいなぁーミミちゃんばっかり。……次はわたしがジーノくんと二人で飲んじゃおうかな?……なーんて」
(本気で言っているのか私をからかっているのか判別ができない……!)
どうもミミをからかうことを趣味にしつつあるトトリだが、もしかしたら本当に寂しい気持ちがあって、それを隠すつもりでわざとからかってきているかもしれない。その判別はミミにはできない。
(……でも二人きりで飲みに行かれるのも、なんだかものすごく面白くないし、アイツが帰ってきたらまた3人で飲みに行く約束でもとりつけようかしら。とりあえず今日は……またトトリを誘って飲む……?)
昨日のお酒がまだ少しだけ残る頭に活を入れながら、ミミは本気かどうか判別がつかないトトリの機嫌を取る算段を立てながら、また彼が帰ってきたその時に想いを馳せるのであった。
という感じの3人のお酒のお話しを見てみたいです。