超高校級の魔法科高校生 彼はすべてが「ツマラナイ」   作:イルさん

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入学編1

カムクライズルが魔法科高校への進学を決めたのは、この世界で交流をもつある人物に勧められたためであった。

超高校級の希望である彼にとって、どこの高校へ進学しても変わらないためにただ勧められたからという理由と全国にある魔法科高校の中で家から一番近いからという理由で選んだ高校であった。

 

 

入学式を控えた第一高校では教職員と生徒会役員の間に新たな問題が発生していた。

 

「興味がありません。僕はそれを辞退します」

 

入学試験で首席となったカムクライズルは入学式において依頼された新入生の答辞を断ったためであった。

当初、魔法科高校において理由もなく入学式の新入生による答辞を断った生徒はこれまでにいなかったため(理由があったとしても普通なら答辞を断ることはめったにないのだが)カムクライズルは理由を説明することなく答辞を断ったため、教職員はなんとかカムクライズルを説得して答辞を行ってもらおうとした。

その結果、返ってきた返答は興味がないという理由であったため、さらに教職員と生徒会役員に混乱をもたらした。

しかも、理由を聞き出すためにあまりにもしつこく電話をかけていたため、何故か学校の電話はもちろん、教職員、生徒会役員の個人の電話やパソコンなどからのメッセージもカムクライズルの家だけ連絡をいれられなくなっていた。

さらにこの時代としてはやや古典的な郵便による手紙までカムクライズルの家には届かなくなっていた。

カムクライズルとしてはしつこかったので面倒になり、超高校級の才能の一部を使ったためであった。

その結果、一部の教職員と生徒会役員が胃を痛めたのはカムクライズルの知らない話である。

 

 

 

 

 

 

2095年4月

 

 

 

問題が発生したが、第一高校は答辞に代理を用意することで問題を解決して入学式の日を迎えた。

 

「この学校もツマラナイ場所でしょうか。彼らほど個性豊かな人物には会わないでしょうが、ツマラナイ日々ではないと良いのですが」

 

かつてカムクライズル(日向創)日向創(カムクライズル)であった頃、互いに別々の形で出会い、カムクライズルにとっては取るに足らない存在であり、日向創にとっては憧れであり、仲間であった彼らを思い浮かべ、戻らない日々を思いつつ、カムクライズル(日向創)はかつての過ちを繰り返さないようにと考えながら第一高校に向かう。

 

 

 

 

第一高校の入学式はカムクライズルの予想通りツマラナイものであった。

会場の座席は自由席だったにもかかわらず、魔法を用いた実技試験の成績が上位100人に入る一科生と下位100人に入る二科生できれいに前と後ろにわかれて座っていた。

誰かに言われたわけではなく、生徒同士が互いに差別しあう様子はカムクライズルからすると愚かなものであった。

自身の持つ圧倒的な才能にどの分野でも勝ることのできないもの同士が実技試験の結果のみで互いにわずかな差で差別しあう光景はツマラナイものであった。

 

「くだらない。やはりこの世界もツマラナイものなのでしょうか」

 

無機質な声で呟かれたその言葉はカムクライズルの代理として答辞を述べている司波深雪の圧倒的な美貌によりほとんどの生徒の意識が司波深雪に向いていたため、周囲の生徒が気にすることはなかった。

 

 

入学式が終わり式場を出た彼はIDカードを受け取り自身のクラスを確認すると、この日は自分の教室へ向かう必要がないためそのまま帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1-Aはこの教室ですね」

 

入学式を終えた次の日、カムクライズルが自身の教室に辿り着くと、教室は一人の生徒へと視線を向ける生徒ばかりであった。

新入生代表代理を務めた司波深雪は優れた魔法師は容姿も整っていることが多いと言われるように、クラスの男女問わず視線を向けられているが、本人はあまり気にかけていないようであった。

そのため、日向創の姿に黒髪であるカムクライズルが教室に入った際に彼を気にする者はいなかった。

 

 

この日はガイダンス、オリエンテーション、そして授業見学とどれとカムクライズルにとっては物足りない内容であったため、ディスプレイ端末を用いて様々な情報を調べていた。

そして放課後、情報を調べているうちに教室にいた他の生徒は誰もいなくなっていた。

 

(少し調べることに集中してしまいましたね)

 

そして、カムクライズルが帰ろうと校門付近に近づいたとき事件は起きた。

 

「いい加減に諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう」

 

一人の眼鏡をかけた二科生のおとなしそうな女子生徒が一科生、しかもカムクライズルと同じクラスの集団に大声を出して反論しているところだった。

 

「別に深雪さんはあなたたちを邪魔物扱いなんてしていないじゃないですか。一緒に帰りたかったら、ついてくればいいんです。何の権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか」

 

再び声をあげた眼鏡をかけた女子生徒の言葉に後方で頬を赤らめた司波深雪とその状態に戸惑いをわずかにみせる司波深雪の兄と思われる二科生の男子生徒がいるなか、さらに赤髪の女子生徒と背が高めのゲルマン風の男子生徒が一科生の前へとあらわれ一科生の集団の先頭に立つ男子生徒と言い争いを行い始めた。

 

(くだらない。二科生を見下す一科生。わずかに勝る点があるというだけで自身があらゆる点で優れているという考えも、その考えを他人に強要しようとすることもすべてがくだらなくてツマラナイ)

 

カムクライズルが言い争いをしている一科生が聞いたら怒りだしそうなことを考えていると更なる問題が発生した。

それは、眼鏡の女子の言葉が引き金となった。

 

「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが今の時点でどれほど優れているというのですか」

 

一般的には正論に当たるこの言葉だが、自身の才能を誇り、二科生を見下す一科生にとってこの言葉は彼らを怒らせるだけであった。

 

「どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるぞ」

 

一科生の男子生徒が小型拳銃形態の魔法発動媒体CADを前に出ている二科生の男子へ魔法を放つため突きつけた。

それと同時に、赤髪の女子生徒が警棒を取り出し男子生徒のCADを弾き飛ばそうと動き出した。

しかし、実際はどちらも起こらなかった。

それは、カムクライズルが二人の間に入り、持ち主が気付かないほどの素早さと技術でそれぞれの武器、小型拳銃形態のCADと警棒を奪い取ったためだった。

 

「そこまでです。これ以上行えば、両者共にただの言い争いではすまない怪我を負いますよ」

 

そしてもう一組、別の乱入者が訪れたためだった。

 

「やめなさい。自衛目的以外の魔法による対人攻撃は校則違反以前に、犯罪行為ですよ」

 

現れたのは二人の女子生徒だった。

言い争いをしていた一年生のような初々しさはなく、カムクライズルからみても一年生に比べかなり貫禄のある生徒だった。

カムクライズルは興味を示すことがなかったために入学式で紹介されたにも関わらず二人の女子生徒のことを覚えていなかったが、現れた女子生徒は生徒会長と風紀委員長の二人だった。

 

「1-Aと1-Eの生徒だな。事情を聞きます。ついて来なさい」

 

直前まで威勢よく言い争いをしていた両者だが、突然生徒会長と風紀委員長が現れたことで両者、特に一科生たちは

萎縮していた。

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

 

その空気の中で突如、司波深雪の隣に立つ兄と思われる人物が話し出した。

しかし、この争いを単なる悪ふざけと称することはカムクライズルからしても難しいものであった。

一歩間違えば怪我人がかなりの数出ていたのだから当たり前である。

 

「悪ふざけ?」

 

実際、彼の言葉に疑問を持った風紀委員長が眉をひそめ、問い返した。

 

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうだけのつもりだったんですが、あまりに真に迫っていたもので、思わず彼の手が出てしまったようです」

 

司波深雪の兄と思われる人物とカムクライズルを除いたこの場の一年生が絶句する。

 

「その風紀委員長の言うおとりです。あなたの言うことが正しいのであれば、そこの一科生の女子生徒はなぜ魔法を使おうと思ったのですか。その理由を聞かせてほしいものです」

 

「驚いたんでしょう。条件反射で起動プロセスをじっこうできるとは、さすが一科生ですね」

 

「あなたの友人が魔法による攻撃を受けようとしていたように思うのですが、そのことも単なる悪ふざけだと称するのですか」

 

「攻撃と言っても彼女が発動しようとしていた魔法は目眩ましの閃光魔法ですから。それも視力障害を起こしたりするほどのレベルでもありませんでしたし」

 

「どうやらあなたも展開された起動式を読むことができるらしいですね」

 

カムクライズルと男子生徒による言葉の応酬が繰り広げられる中、起動式を読むことができるという言葉に特に生徒会長と風紀委員長の二人が反応を示した。

起動式は魔法式を構成する膨大なデータの塊である。

そのため、通常意図して起動式を読むことは()()()()()()()()()()()()なことである。

だからこそ、起動式が読めるというこの男子生徒の言葉に生徒会長と風紀委員長は反応した。

 

「実技は苦手ですが、分析は得意です」

 

しかし、男子生徒はこの非常識な技能を「分析」の一言で片付けてしまった。

 

「どうやら誤魔化すことも得意なようですが、詰めが甘いですね。あなたは僕のことを上級生と勘違いしているようですが、僕はあなたと同じ新入生ですよ。()()()()()なようですが、それは魔法に対してだけのようですね」

 

カムクラから言われた言葉にその場でただ一人矢面に立っていた男子生徒は驚きを示していた。

同時に司波深雪の表情が一瞬ひきつった。

 

「これは一本とられたようだな。そこの新入生の言う通りどうやら君の得意な分析は人に対してはまだまだのようだね」

 

そして、この場でカムクライズルと男子生徒の応酬を傍観していた風紀委員長が面白いものを見たかのように反応し、笑いだした。

カムクライズルとしては少し男子生徒をからかっただけだったのだが、風紀委員長が笑いだしたことによりこの場の張りつめていた空気がゆるんでいった。

 

「もう摩利ったらしたら失礼でしょ。それで深雪さん、達也くん、本当にただの見学だったのよね?」

 

笑いだした風紀委員長に注意をしつつ、同じく傍観していた生徒会長が二人にたずねた。

それに対し、たずねられた二人は共に頷くことで返事をした。

 

「生徒同士で教え合うことが禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には、起動するだけでも細かな制限があります。このことは一学期の内に授業で教わるないようです。魔法の発動を伴う自習学習はそれまで控えた方がいいですよ」

 

真面目な表情で述べた生徒会長の影響を受けてか、風紀委員長も表情を引き締め言葉を述べた。

 

「会長がこう仰られていることでもあるし、今回は不問にします。以後このようなことの無いように。それとそこの君、名前は?」

 

「1-E司波達也です」

 

風紀委員長が矢面に立っていた男子生徒に名前をたずねている傍らでカムクライズルはすでに問題は解決したと判断し、そのまま立ち去ろうとした。

 

「覚えておこう。そこの帰ろうとしている君、名前は?」

 

しかし、呼び止められたことで名前を答えた方が良い状況になってしまった。

 

「1-Aカムクライズルです」

 

「あっ、あなたがカムクライズルくんだったの」

 

仕方がなく答えたカムクライズルに風紀委員長が返事をする前に生徒会長が驚きながらカムクライズルに確認するようにたずねてきた。

 

「真由美、彼のことを知っているのか」

 

「名前だけなら知っていたの。摩利は入学式前に私たち生徒会と先生方が慌ててていたのを覚えている?」

 

「ああ、お前たちがだいぶ慌てていたからよく覚えている」

 

「その原因が彼なの」

 

「彼にか?」

 

生徒会長の言葉に事情を知っている生徒会長と元々興味のないカムクライズル以外のその場にいる全員の頭に疑問符が浮かぶ中、生徒会長は理由を話始めた。

 

「彼、カムクライズルくんは今年度の首席なの。しかも、彼の成績は筆記試験、全教科満点、実技試験は全魔法科高校歴代最高を記録したほどの結果を残したにも関わらず、興味がないという理由だけで新入生総代を断ったのよ。しかも、彼に連絡を取ろうとしてもなかなか連絡がとれなくて、一度連絡をとることができて理由を聞いたあとはあらゆる手段を用いた連絡手段が彼に繋がらないから私たち生徒会も先生方も大慌てになったというわけよ」

 

流石に生徒会長が説明した内容を予想していたものはいなかったようで、驚きと同時に呆れの視線をカムクライズルは向けられたのだった。

 

「それでは僕はこれで失礼します」

 

その空気の中、堂々と帰宅したカムクライズルに一種の尊敬の眼差しがその場にいた多くの生徒から集まったりもした。

 

その後、落ち着いた生徒の内、一人の女子生徒と一人の男子生徒がカムクライズルに警棒とCADをとられていたことを思い出し慌てていたが、何故か自分の元に戻ってきていたため、その場の生徒たちの頭に再び疑問符が浮かんでいたことをカムクライズルは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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