超高校級の魔法科高校生 彼はすべてが「ツマラナイ」   作:イルさん

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入学編2

その日、カムクライズルは面倒な事に巻き込まれる予感とともに目が覚めた。

彼の持つ『超高校の占い師』の才能によるこの予感は、彼の一つ下の学年に所属していた『超高校の占い師』の才能の持ち主とは違い、その正確性は30%ではなく90%以上の正確性を持つ。

そのため、彼は普段は持ち歩くことのないCADを取り出し、その日は持って行くことに決めた。

 

その日、彼の予感は朝から的中することとなった。

 

カムクライズルが駅から第一高校へ向かっているときにそれはおきた。

 

「あ~、あんたは昨日の!」

 

突然後ろから大きな声がしたのだ。

他にも登校している生徒がいた上に、知り合いに似た声の人物はいなかったため気にせずに歩いていたが、次の言葉は今のカムクライズルを指し示すには十分な言葉だった。

 

「そこのツンツンヘアーにアンテナつけてるそこのあんたよ」

 

現在のカムクライズルは緑がかったツンツンヘアー。そして頂点にはアンテナと呼べる、特徴的なアホ毛がある髪形である。

 

「なんのようですか。僕はあなたに覚えがないのですが」

 

カムクライズルが振り返った先にはこちらを指さす赤髪の女子生徒とその周囲に男女が二人ずつ、合計五人の集団がいた。

 

「覚えがないって言うの!昨日あたしの警棒を受け止めたでしょ!」

 

女子生徒の言葉にカムクライズルは昨日のことを思い出しながら、警棒という言葉により連想されたのは昨日の下校時の校門前での騒動のみだった。

女子生徒が警棒と発言していたことから昨日カムクライズルが受け止めた警棒の持ち主なのだろう。

思い出してみると、赤髪の女子生徒と一緒にいる集団には見覚えがあった。

司波深雪と一緒にいた二科生の集団の集団のようだ。

 

「昨日の騒動を起こしていた方々ですか。それで何のようですか」

 

「えっと、ようっていうほどのものはないんだけど・・・」

 

「ようがないのであれば、僕は先に行きますよ」

 

聞き返したところ特に用事がなかったようなので立ち去ろうとしたところ今度は別の声に呼び止められた。

 

「この場所で出会ったのも何かの縁ですし、昨日のお礼と自己紹介を行いたいのですが、カムクラさんよろしいでしょうか」

 

「昨日のことは礼を言われるようなことではありませんよ。ただ僕が勝手に行ったことです。あなた方が気にすることではありません。それに僕が止めに入らなくてもすぐに生徒会長と風紀委員長が止めに入っていたでしょう」

 

「確かに生徒会長と風紀委員長がすぐに来たかもしれないが、助けてもらったのも事実だ。礼を言わせてもらえないだろうか」

 

司波深雪からの申し入れを断ろうとしたところ、その隣に立つ司波深雪の兄と思われる人物からさらに同じ申し入れをされたため断ることのほうが面倒な状況になってしまった。

 

「わかりました。あなたたちのその気持ちは受け取っておきます。それでは、僕は先に行き「「ちょっと待った~」」」

 

再び立ち去ろうとしたカムクライズルであったが、赤髪の女子生徒とゲルマン風の男子生徒の二人がカムクライズルの別々の肩をつかんで止めようとした。

しかし、その手は空を掴むのみだった。

なぜなら、カムクライズルが才能を駆使して避けたためであった。

 

「まだ何かようがあるのですか」

 

「これも何かの縁だし深雪も言ってたように自己紹介しましょうよ」

 

「そうだぜ、この女と意見が合うのも癪だが自己紹介しようぜ」

 

「ちょっとそれどういう意味よ」

 

自己紹介を求められたはずがいつの間にか二人の睨み合いへと変わってしまった。

 

「エリカちゃん、落ち着いてよ」

 

「レオも落ち着け」

 

その二人の睨み合いは眼鏡をかけた少女と司波深雪の兄と思われる人物が仲裁に入ったことで終わった。

 

「僕の名前はカムクライズルです。1-Aに在籍しています。そろそろ面倒ごとが発生しそうですし先に行きます」

 

「お、おい」

 

「あ、ちょっと待って」

 

なかなか話が進まない現状とカムクライズルの直感が面倒な事に巻き込まれると強く主張していたので後方から聞こえる声を気にせずに自身の名乗りを終えるとすぐに立ち去った。

 

「一方的な自己紹介になってしまったな」

 

「そうですね。お兄様、カムクラ君は何かを気にしていたように思うのですが何を気にしていたのでしょう」

 

「深雪の言う通り何かを気にしている様子だったな。焦っているようではあったが、律儀に自己紹介をしていたから俺たちが原因ではないようだが」

 

「ちょっと、あんたがうるさいからカムクラ君がさっさと行っちゃったじゃない!!」

 

「騒いでたのはお前のほうだろ!!」

 

カムクライズルが立ち去った後も後ろから聞こえる声から容易に想像できる言い争いにあきれながらそのまま自分のクラスへと向かった。

 

カムクライズルが自分の教室に着くと同時にクラスの雰囲気が変貌した。

昨日の生徒会長の言葉を聞いていた生徒が大半であるためクラスメイトの大半がカムクライズルが入学試験の首席であることを知っている。

だが、高校生、しかも新入生というには初々しさがなく大人びた雰囲気と新入生総代の挨拶を「興味がない」の一言で断った行動からカムクライズルに対してどのように接したら良いのかわからないという雰囲気が教室中に広がっていた。

だが、当のカムクライズル本人は何故教室がこのような雰囲気になっているのかを特に理解しようとせず、今日の面倒事をどのようにしたら回避できるのかを人類最高峰と思われる頭脳を用いてあらゆるパターンを考えていた。

カムクライズルが教室に着いて少し時間がたつと、教室の雰囲気が再び一変した。

雰囲気が一変したことに気づき、教室を見渡すと司波深雪がまっすぐカムクライズルの机までやってきて足を止めた。

 

「何の用ですか」

 

「カムクラさんに会長から伝言を預かりました。今日の昼休みに生徒会室に来てほしいそうです。私や兄も同様の誘いを受けています。私達と一緒に生徒会室に向かうようにとのことです」

 

「丁重にお断りします。そのように会長に伝えてください」

 

「理由を伺ってもよろしいですか」

 

「先ほども言いましたが、今日は面倒なことに巻き込まれる予感がします。そんな日に生徒会長の呼び出しとはいえ、生徒会室に行くことは自分から面倒なことに巻き込まれに行くような気がしてなりません」

 

カムクライズルの言葉に深雪は言葉を詰まらせてしまった。

登校中、カムクライズルが先に第一高校へ行った後、小走りで兄の名前を呼びながらやってきた生徒会長七草真由美は入学式にであったばかりにもかかわらず、自分の兄である司波達也を既に下の名前で呼ぶようになっていた姿から、もしかしたらカムクライズルが危惧しているように面倒なことになるかもしれないと思うと言い返せない言葉であった。

 

「ですが七草会長が、生徒会室に来ない場合は教室に迎えに行くとおっしゃっていました」

 

今度はカムクライズルが言葉を詰まらせる番であった。

教室に生徒会長が訪ねてくるなど間違いなく面倒事でしかない。

しかも教室に訪ねてこられては(カムクライズルはほとんど気にしていないが、友人からクラスメイトとは交流を持った方がいいと言われたため交流を持とうとしている)教室にいるクラスメイトからさらに距離をとられかねない。

そうなった場合、現状よりもさらに交流を持つことは難しくなってしまう。

それはあの孫が大好きな協力者からも小言をもらう展開になってしまうだろう。

その状況は面倒なことであるためできれば避けたいものであった。

 

「仕方がないですね。今回は大人しく生徒会室に向かうことにします。他に用がないようであれば僕は私用が入ったので失礼します」

 

新入生総代の挨拶の件を聞いていたため思いのほかあっさりと会長からの呼び出しを受け入れたため深雪が安堵の表情を浮かべているとカムクライズルが自身の端末を確認しながら深雪の返事を待たずに立ち上がり教室から出て行った。

カムクライズルは教室を出るとそのまますぐに人気のない場所へと移動した。

人気のない場所に着くと自身の才能と魔法を使い周囲に人がいないことを確認すると、端末を取り出しどこかへ連絡をかけた。

 

「こんな時間に何のようですか」

「すまない。この時間に連絡しては迷惑になると思ったのだが孫がどうしてもと言うものだから君に連絡をかけさせてもらったよ」

「孫が、ですか。珍しいこともあったものですね。普段であれば、あなたの方が今回のようにこちらの都合を考えずに行動をすることが多いのですが。何か問題でも発生したのですか」

 

電話の相手であるカムクライズルの後ろ盾であるこの人物やその孫で友人でもある人物の普段の行動を知るカムクライズルにとって今回のようなことは珍しい事態であった。

基本的に他者をいじることに楽しみを感じている後ろ盾と素直で優しい友人ではどちらが普段からカムクライズルにとって面倒な事態や迷惑なことをしているかなど誰に聞いても前者の人物のことだと考えるだろう。

しかし、今回は珍しく後者の人物がカムクライズルにとって迷惑になるであろう行動をとった。

このことはカムクライズルにとって何か問題が発生したのではと考えるには十分な行動であった。

 

「確かに問題は発生した。しかし、本来であればこれ程急に連絡をしなければならないほどのことではなかった。だが、孫が心配だと言うものだからね」

「相変わらず孫が関わると人が変わりますね。魔法師としてのあなたを知る人が今のあなたを見れば驚き呆れるでしょうね」

「このような姿を見せるのは家族以外だと君くらいだよ。他の者が見ることはあるまい」

「そうですか。ところで用件は何ですか。あまり時間がないので手短に済ませてください」

 

カムクライズル自身が話始めたことだが、孫の自慢話はこれまでにさんざん聞かされているため、早々に切り上げなければ長くなることも、同じ話を耳にタコができるほど聞かされることも知っていたため、授業(カムクライズル自身は内容を完璧に理解しており今さら授業を受ける必要を感じていないが、友人にどのような授業を行っているのか教えてほしいと頼まれたので内容を教えるために)を聞くために話すように促した。

 

「そうだったね。肝心の用件なのだが、どうやらブランシュが第一高校だけではなく、希望ヶ峰コーポレーションにまで手を出そうとしているみたいでね。希望ヶ峰コーポレーションと言えば世界有数の企業でありながら社長を含め幹部の情報がほとんどない。本社が日本にあるという情報から希望ヶ峰コーポレーションを乗っ取ろうと考えたみたいだ。第一高校に手を出そうとするだけならば孫もそこまで気にすることはなかったのだが、君の作り上げた希望ヶ峰コーポレーションは君にとって特に思い入れのあるものだと思ったらしくてね。君にこのことを知らせてほしいと頼んできたんだよ」

「そうですか。ブランシュも随分愚かなことをするものですね。反魔法国際政治団体の分際で希望ヶ峰に手を出そうとするとは身の程知らずにも限度というものがあると思うのですが、どうやら限度を知らないようですね。近いうちに相応の対応をとりますよ。あなたの孫にも身の程をわきまえていないものたちには相応の対応をしておくから心配しないよう伝えてください。この件が一段落したらまた遊びに来るようにとも伝えておいてください」

「やはり心配いらないようだね。孫にはそのように伝えておくよ。これで孫も私も一安心できるというものだよ」

「あまり時間もないのでこれで失礼します」

 

元々無駄話を好むような性格ではないカムクライズルは用件が終わると授業開始の時間が迫っているという理由もあり、早々に話を切り上げ、自身の教室に向かいながら今聞いた話について考えていた。

教室に着き、授業が進む中、希望ヶ峰コーポレーションという組織の性質上、単なる反魔法国際政治団体ごときにどうこうできるものではないとは考えつつも、授業を聞き完璧に再現できるようにしながら自身の周囲で非常事態が発生した場合速やかに対処できるように様々な状況の想定を始めながらどのような方法で対処できるかを昼休みになるまで考えているのだった。

 

 




希望ヶ峰コーポレーション
カムクライズルが自身の才能を使い作り上げた会社。
上層部にどのような人物が所属しているのかは一切不明で社長兼筆頭株主として日向創の名前のみが知られている。希望ヶ峰コーポレーションが作られ、わずか数年で農業、医療、機械、漁業、土木業など様々な分野で世界トップクラスになった。また、日向創が世界中の大企業や将来性の高い企業の筆頭株主を務めていることでも有名。世間からは様々な分野で実績を残しているため、新興企業でありながら各分野で高評価されている。一方で希望ヶ峰コーポレーションと常識の範囲を越えて敵対や妨害を行ったものは社会的または物理的または両方で消されることから、一部では十師族の四葉家以上に触れてはいけない存在とされている。

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