ソードアートオンライン~ アインクラッドの完全制覇~   作:黒刃 竜壱

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今回もかなり長くなります。ご了承下さい。


75層ボス攻略 下

普通ならモンスターは大ダメージを連続で喰らうと数秒間、動きが止まる。

そのため大技を連発した僕とスカルリーパーは

数秒間固まり、一瞬早く硬直から回復する僕が優位に立てるハズ······だった。

 

今回のボス戦では結晶無効化エリアに加え、25層、50層に続く25の倍数層。

その時点で僕は気付くべきだったのだ。

結晶無効化エリアだけではなく、モンスターのアルゴリズムにも補正がかけられているだろうと。

更に強くなって僕達プレイヤーに襲い掛かって来るだろうと。

 

スカルリーパーはクールタイムによって動けない僕よりも予想以上に早く硬直が回復、

その致死の大鎌を僕に向けて大きく振り被る。

 

キリト達も突然の事で対応が追いついておらず、

僕とは完全に正反対の位置にいた為、どれだけ走っても5秒はかかる。

しかしそれでは遅い。もうスカルリーパーは攻撃体制に入っているからだ。

 

僕は慌てて硬直から回復しようと、体を拘束しているシステムに抗う。

しかし僕の体は全く微動だにしない。

しかもそんな姿を嘲笑うかのように、巨大な致死の刃が

僕の体を斜めに斬り裂こうと凄まじいスピードで襲い掛かって来る。

 

体に何度も力を込めて動こうとしてもやはり駄目だ。

最後に大技を使ったのが失敗だった。

ボス部屋だというのにあんな簡単に最上位ソードスキルを使ったのがそもそもの失敗だったのだ。

もっと慎重に行動し、使うタイミングをしっかり判断するべきだったのだ。

しかし、もう遅い。

鎌はもう目の前まで迫っている。もうここで僕の命は消え去るのかーーーー。

 

遂に、僕の闘志は消えかけ

死神の鎌が僕の肩口に触れようとしたその瞬間ーーーーーー。。。

 

硬直が、解けた。

 

「くっ········!!」

 

僕は失いかけた闘志を奮い立たせると、

剣の柄を握り直して体を捻り、鎌が直撃するタイミングをほんの僅かに遅らせる。

 

そしてその時に出来た一瞬の隙を使って剣を鎌が交錯する軌道に強引に入れ込んだ。

 

『ギイイイイイイインンン!!!!!』

 

重い響きとこれまで以上に強い衝撃が僕の体を叩く。

僕は思わず剣を手放しそうになるのを必死に堪えてしっかりと柄を握る。

 

剣と鎌の間に凄まじい量の火花が迸り、目が眩む。

 

『ガガアアアアアアンンン!!!!!』

 

足元の床に巨大な鎌が盛大な音を立てて突き刺さるのを間近で見ながら

僕は敏捷力パラメータを全開にして素早くバックステップに転じる。

 

ここまでの一連の動作に掛かった時間は約2秒。

その一瞬の動作にアドレナリンが全身を駆け巡ったせいか、酷く体を倦怠感が襲う。

なんとか回避できたものの、今のは本当に危なかった。

 

そう、ここは自分の命を懸けた剣と戦闘の世界。

一瞬でも気を抜いたらその隙をついてモンスター達が襲い掛かって来る。

僕はすぐ目の前にあった【死】への恐怖心を取り払うとスカルリーパーに向かって剣を掲げる。

 

と、その時だった。

 

『キシャアアアアアアアア!!!!!』

 

スカルリーパーはいきなり雄叫びを上げると、大鎌を交差するようにして上に掲げ始めたのだ。

僕はすぐにスカルリーパーから距離を取って防御姿勢を取る。

しかし周りで一心不乱に攻撃していたプレイヤー達は出来なかった。

数秒後に彼等はスカルリーパーの不審な動きに気づいたものの、それはすでに攻撃を放つ直前だった。

 

『ドオオオオオオオンンン!!!!!』

 

スカルリーパーは上に掲げていた致死の鎌を鈍く光らせて

それを水平に構えると、体ごと一気に回転した。

轟音と共に多くのプレイヤー達が数メートルも吹き飛ばされる。

しかも攻撃を受けたプレイヤー達はレッドゲージのまま

何かに取り憑かれた様に動けなくなっている。

 

「マズい·····!」

 

どうやらあの回転攻撃にはスタン効果が付与されていたようだ。

この戦場で数秒間でも動けなくなってしまうと、それは【死】を意味する。

たちまち数人のプレイヤー達が抵抗すら出来ずに

大鎌攻撃をまともに喰らい、無数のポリゴンへと姿を変える。

 

キリトやアスナも必死に鎌を食い止めようと奔走するが、

あちこちで倒れているプレイヤーを避けながら進まなければならず、苦戦している。

 

このままでは最悪、全滅もあり得る。

何より、キリト達が危ない。

 

僕は右手を振って装備ウインドウを呼び出すと、使用スキルを急いで変える。

 

そして背中に吊った鞘から大剣を取り出すと、

一目散にスカルリーパーに向かって走り始めた。

 

その間にもキリトやヒースクリフが

鎌を次々と迎撃しているが、苦難の表情を浮かべている。

 

こうなれば僕がやるべきことは一つだけ。

 

パーティーが壊滅するのを防ぐために、

僕やキリト達にタゲを集めて戦線が回復するのを待つしかない。

僕は覚悟を決めると、剣を右腰に思いっ切り引いてソードスキルの初期動作を発動させる。

 

『キュイイイイイイイイインンン····!!』

 

甲高い音と共に刀身が鈍くブルーのライトエフェクトを纏わせ始め、

同時に僕のアイコンに凍傷デバフが付いて体全体を刺すような冷気が漂い、

徐々にHPを削っていく。

そんな中でも僕は全力疾走でリーパーとの距離を急速に縮め、しっかりと相手を凝視する。

 

流石にリーパーも僕の存在に気づいたのか、

キリト達への攻撃を止めて新たな標的に向かって鎌を振り上げようとした。

 

しかし、もう遅い。

 

リーパーが鎌を振り下ろした頃にはもう、僕は奴の目の前まで接近していた。

その一瞬の隙をついて、僕はブルーに光り輝くライトエフェクト

と共に次々と軌跡を描いていく。

 

リーパーの肋骨部分に水平の斬り払い攻撃を行い、即座に左へ斬り返す。

更に上段に剣を振りかぶって垂直に斬り降ろした後、その勢いを殺さずに上段へ斬り返す。

そして一拍間をおいてから中心点に渾身の力で剣を突き

左斜め斬り上げ、右斜めに斬り下げて最後にもう一度強力な突き攻撃を喰らわせる。

 

これが僕のユニークスキル、《大剣豪》。

 

キリトの《二刀流》やヒースクリフの《神聖剣》等とは違って、

目に見えるような外見の変化は無い。

大剣を使う所までは普通だがそのソードスキルや威力、

スキルボーナスに関しては通常とは全く異なる。

 

 

《大剣豪》

ノーマルスキルよりも攻撃力が高くなり、

大剣を使用して専用のソードスキルを駆使して戦う。

 

[攻撃力上昇ボーナス:1.80]

 

[武器防御ボーナス:1.50]

 

[クールタイム短縮ボーナス:1.20]

 

その上位剣技、《ライトニングアイススプラッシュ》。

絶対零度の破壊力を以て8連続の強力な剣技を叩き込む

ハイレベルなソードスキルで、大剣豪スキルの熟練度が800以上ないと習得出来ない。

 

このソードスキルは威力故に発動中、[凍傷]デバフが付く。

しかしこれが、相当キツい。

ゲームの中の、ましてや単なる状態異常なのに

体中が途方もない冷たさに苛まされ、とても我慢出来るようなものではない。

それはこれがいくらナーヴギアが発する擬似的なものだとしても。

 

実際僕は今、全身の筋肉が強ばり始めていて

気を抜けばすぐにでも剣の柄を手放しそうになるのを必死に堪えている状況だ。

 

僕が苦しんでいる間にも甲高い効果音がたて続けに唸り、

ブルーのライトエフェクトが周囲に拡散する。

アドレナリンが体中を物凄い速さで駆け巡り、体の感覚が段々と失われていく。

もうすでに剣を振っている感覚すら無くなり、

ただシステムアシストに従って体が勝手に動き続ける。

 

それは凍傷デバフによって体の感覚が麻痺しているのか、

アドレナリンのせいなのかは分からない。

 

「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」」

 

『『キシャアアアアアアアアアア!!!!!』』

 

僕は雄叫びを上げながら最後の突き攻撃をスカルリーパーに放った。

 

 

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『カシャアアアアアアンン!!!!!』

 

膨大なライトエフェクト共に白銀の欠片が周囲に爆散した。

同時に、残ったプレイヤー達が音を立てて崩れ落ちる。

さすがのキリトも1時間のボス戦には応えたのか

アスナと背中合わせに座り込み、顔には疲労感が漂っている。

 

僕も大剣を床に突き立てて、座り込んでいる状態だが

長時間の戦闘による疲労感からか、軽く目眩がする。

 

僕が目を閉じてしばしの間まどろんでいると、

ふいに近くでガシャリという鎧の音が聞こえたので目を開ける。

 

すると、僕の目の前にヒースクリフが立っていた。

 

「おわっ···!?」

 

いきなり目の前にいたのと、

彼の両眼から放たれる威圧感でついつい圧倒されて奇妙な声を上げてしまう。

 

しかし、彼は別に気を悪くした風でもなく僕に目を向けて言った。

 

「アベル君、と言ったかな?先程の戦いは見事だった。」

 

「ありがとうございます。そちらこそ素晴らしい戦闘技術でしたね。」

 

何故か敬語になってしまう。現実世界の癖がつい出てしまった。

なんだか僕の苦手な先生に雰囲気が似ているからかもしれない。

 

すると、ヒースクリフは両目に軽い好奇心を滲ませて僕に問いかけた。

 

「アベル君、君は変わったソードスキルを使っていたが

                      あれはユニークスキルの一種だろう?」

 

やはり駄目だったか。

大剣豪の上位剣技は戦闘中、

一度きりしか使わずその後は通常の大剣スキルを放って

有耶無耶にしようとしていたがこの男はあの乱戦の中で

しっかりと僕のソードスキルを捉えていた訳だ。

流石はトップギルドの団長と言うべきか。

 

多分このままスルーしても彼には見逃されないだろう。

ならばいい機会だ。いっそここでこの前のキリトのように公表して

コソコソ隠さずに最前線で堂々と使えた方がいい。

 

そのほうが自分の為になるし、何よりキリトにとっても仲間が増えるのは心強いだろう。

 

僕は腹を決めるとヒースクリフに向かって言った。

 

「ああ、そのとおりだ。あれはユニークスキル、大剣豪だ。」

 

その瞬間、周りからおおっという声が上がる。

いつの間にか他のプレイヤーも僕達のやり取りを聞いていたらしい。

 

するとヒースクリフはやはり、というような顔をした。

情報屋のスキル一覧にも乗っていないのに、一体どこでこんなユニークスキルを知っていたのだろうか?

僕が混乱している中、彼はさも当たり前なことを言うようにサラリと僕に向けて言った。

 

「ならばアベル君、君の強さを見込んで頼みがある。

                  私のギルドに入ってみる気はないかい?」

 

「なっ·······!?」

 

僕はあまりの事にしばらく絶句する。

最強ギルドに誘われた事もあるが、わざわざ団長自ら誘うとは。

キリトやアスナも驚愕の表情を浮かべている。

 

しかしこの持ちかけは僕を大いに悩ませた。

 

ギルドに入れば死亡する可能性は格段に減少するが、

関わる人が増えればそれだけ厄介なしがらみ事も増える。

この前もキリトがクラディールとかいうメンバーに

危うく殺されかけた事もあって、あまり気乗りしない。

 

無論そんな事をされる程の真似はしていないと言い切りたいが

人間、どこで恨みを買っているか分からない。

 

それにもう一つ、koBに加入したくない理由があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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