からかい上手の高木さん~short Extra stories~ 作:山いもごはん
楽しんでいただければ幸いです。
「たっ!」
冷たい風の吹く帰り道、オレは通学カバンを持つ手に痛みを感じた。
見れば、指の関節に見事なあかぎれができている。
「うわあ…痛そうだね…。」
隣で自転車を押す高木さんもオレの指を見て、率直な感想を漏らす。
「私、絆創膏持ってるからあげるよ。」
高木さんは自転車を止め、カバンから絆創膏を取り出す。
「はい。じゃあ、貼ってあげるから手出して。」
「え?い……いいよ!それくらい自分でできるから!」
「そうかな?西片不器用でしょ?」
「余計なお世話だよ!」
確かに不器用なのは自覚している。だけど、他人から言われるとそれはそれであまりいい気はしない。
絆創膏をもらい、この上ないほど丁寧に貼る。
「ほらね?」
そう言ったのは高木さんだった。案の定、片手で絆創膏を貼れるほどオレは器用ではなかった。
「あはははっ!だから言ったのに。」
「くっ……。」
「そうだ、他のところも切れる前に、ハンドクリーム塗っておくといいよ。私、持ってるから貸してあげるよ。少し切れてるところに塗ってもあんまりかゆくならないタイプだから、今の西片にはちょうどいいと思うよ。」
高木さんはカバンからハンドクリームのチューブを取り出し、自分の手ににゅるにゅるっと出す。
「はい。じゃあ、塗ってあげるから手出して。」
「はぁっ!?塗るって、その、それで?」
「うん。私が、私の手で西片の手に塗ってあげるの。」
「そんなのできるわけないだろ!?いいよ!自分で塗るよ!不器用でもそれぐらいはできるよ!」
「あははははっ!もう…顔真っ赤にしちゃって……一生懸命弁解して……あははははっ!」
高木さんは、自分の手に出したハンドクリームを大笑いしながら自分の手に塗り、続いてオレの手にハンドクリームをにゅるにゅるっと出してくれた。
初めて塗るハンドクリーム。高木さんと同じように両手にしっかりと塗りこむと、それだけでもうすべすべになったような気がする。
「ねえ、西片。」
「今度は何!?」
「こうして同じハンドクリーム使ってるとさ、なんだか手つないだような感じがしない?」
「はあっ!?何言ってんの!?しないよ!全然!するわけないよ!」
もちろん、ハンドクリームはハンドクリーム。手をつなぐこととはまったく別だ。同じはずがない。
だけど、そんなことを言われたせいで、自分の両手を妙に意識してしまった。
幸運だったのは、その場所がまさに、帰り道で高木さんと別れる場所だったこと。
オレにできることは、その場から逃げ去ることだけだった。
「じゃ、じゃあ!オレ帰るから!また明日!」
高木さんに別れを告げ、オレは高木さんの姿が見えなくなる場所まで走った。
少しの間ダッシュしたオレは、道端で少し息を整えてることにした。
指に貼られた絆創膏と、ハンドクリームの感触に意識が向く。
ふと思いついて手のにおいをかぐと、少し甘い香りがした。
ご覧くださりありがとうございます。
筆者でもこの分量の短い作品が書けるのだと思うと、少し感慨深いものがあります。
今後ともご覧いただければ光栄です。