からかい上手の高木さん~short Extra stories~ 作:山いもごはん
千文字前後を目指していたのに、早々に1,800字越えしてしまいました。
次はがんばってもうちょっとコンパクトにまとめます。
「それ何?」
昼休みの終わり、オレは右隣の席に座っている高木さんに尋ねる。
「卒業アルバム。今、女子の間で見せ合うのが流行ってるんだよ。」
オレと高木さんは学区が違う。だけど、そのケースには見覚えがある。オレの卒業アルバムと同じ大きさで、同じ模様のケースだ。中のアルバム自体もきっと似たような模様なんだろう。学区の近い小学校では、きっと同じ業者に卒業アルバムの作製を依頼しているのだろう。
「見せ合うだけ?」
「うん、見せ合うだけ。」
「それって楽しいの?」
「結構楽しいよ。なんなら私の見せてあげるよ。」
見せてあげるって言われても……別に興味もないしな……。
そう思いながらもペラペラとページをめくっていると、修学旅行なんかの行事の写真が載っているページが現れた。その中の一枚に、オレの知らない女子3人と楽しそうにカメラに向かっている高木さんの写真があった。他の生徒はほとんどが引きで撮られている中、こうしてカメラ目線で写っている写真は珍しい。
「高木さんだ。」
「うん。その3人は仲良しだったんだけど、中学校に上がってからは一緒に遊んだりする機会がすっかりなくなっちゃってね。メールとかではちょくちょく話してるんだけど。」
正直なところ、この4人の中では高木さんが一番かわいらしい。だけどそんなことは言わない。言う義理も義務もない。
ただ、一緒に写っているのがオレの知らない女子だったからか、ふと、ここに写っている高木さんは、オレの知らない高木さんなのだと、妙なことを考えてしまった。
他にも気にして探してみると、後ろ姿だったり見切れていたりはするものの、ちらほらと高木さんの姿が見つかる。
せっかくなので、個人写真も見てみよう。普通の卒業アルバムなら、各生徒のバストアップの写真が、クラスごとのページにまとめてあるはずだ。
高木さんって何組だったの?と尋ねようと顔を上げると、高木さんと目が合った。
「な……なんでこっち見てるの?」
「ん?西片が私のこと一生懸命探してくれてるのが嬉しいなって。」
「なぁっ!?」
「あれ?違うの?一生懸命探してくれてたよね?」
「別に一生懸命になんて探してないし!全然そんなんじゃないし!」
「一生懸命じゃないにしても普通に探してくれてたよね?」
「だから別に探してないって!そんなことしてないから!」
「ふーん。まあ、別にいいけど。」
なんだか全部見透かされているような気がする。いつものように。
実際、探していたのはほんとのことだったんだけど、あんな言い方されてしまっては、はいそうです、と認めるわけにはいかない。なにより恥ずかしすぎる。
恥ずかしさをごまかすように、オレは少し話題を変えることにした。
「た……高木さんさ、あんまり変わらないよね。」
オレの言葉に、高木さんがじとっとした視線を送ってくる。
「西片、それってセクハラだよ。」
「なっ……!ちがっ……!そういうつもりじゃなくて!」
「そういうつもりって?」
「だから…その…そういうつもりじゃなくて……。」
「ぷっ…あはははっ!西片、さっきから同じことばっかり言ってるよ。必死なんだから、もう。あー、涙出ちゃうや。ぷぷぷっ…。」
ここにきてオレは、からかわれたことに気付き、照れ隠しにまた卒業アルバムをペラペラとめくり始めた。
「まあ、6年生のときの写真ばっかりだから、実際にあんまり変わってないんだけどね。」
「だったらなんでさっきセクハラとか言ったのさ!」
「だって、これで西片をからかえるって思ったら、我慢できなくなっちゃって。」
「あー、そうですか……。」
5時間目の授業の前にどっと疲れてしまった。
「あ、でも、1つだけ、この頃の私と、今の私とで、全然違うことがあるんだよ。」
「ああ、そうなんだ……。何が?」
尋ねてもろくなことにはならないだろうと思ったけど、なんとなく惰性で尋ねてしまった。
「今の私は、西片と出会ってるから。」
「なっ!」
つまり、それって……!?と、驚いたものの……一体どういうこと?
高木さんに尋ねようとしたとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。まあ、これ以上引き延ばすような話題でもないだろう。
それに、なんとなく、なんとなくだけど、この話題にはこれ以上触れない方がいいような気がする。
「西片。」
オレが授業の準備をしていると、高木さんがオレの目を真っ直ぐに見ながら言った。
「今度、西片のアルバムも見せてね。」
オレには、卒業アルバムをネタにからかわれる未来が見えていた。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
次回があれば、またよろしくお願いします。