からかい上手の高木さん~short Extra stories~ 作:山いもごはん
お楽しみいただければ幸いです。
「西片ってさ、どんな女の子が好みなの?」
少し涼しくなり始めた季節。その質問は、高木さんとの下校中、唐突に彼女から投げかけられた。
「はぁっ!?なんでいきなりそんなこと聞くのさ!?」
「だから、どんな女の子が好みなの?って。」
「そういうことじゃなくて!なんでそんなこと聞くの!?」
高木さんは顎に人差し指の指先を当て、空を見上げる。
「うーん。」
そして、一秒ほどの後にオレを振り向いて言った。
「なんとなく?」
「『なんとなく』!?なんとなくでそんなこと聞くの!?」
「まあまあ。だって、同級生の男の子が、どんな女の子が好きなのか、なんとなく知りたくない?」
実際のところ、好みのタイプなんて考えたことがない。だけど、それを正直に言うと、高木さんにからかわれるに違いない。
オレは、普段の復讐も兼ね、あえて高木さんの逆のタイプを答えることにした。
「まあ……別に隠すようなことでもないからいいけど。まずは、オレのことをからかってこない人かな。」
「からかってこない人。」
「それで、髪はショートで。」
「ショートで。」
「背が低めで。」
「低めで。」
「そんなところかな……。」
「からかわなくて、髪がショートで、背が低めの子?」
「そう……なる……かな……。」
高木さんの逆のタイプを言おうとしたのに、出てきた特徴がたったの3つ。オレ、意外と高木さんのこと、知らないんだな……。
「ふーん。」
高木さんは一瞬納得したかのように見えたが、次の瞬間、オレの目を見つめて言った。
「西片って、私の真逆のタイプが好きなんだね。まるで、わざと逆を言ったみたいに。」
この言い方。完全に見透かされている。ふと思いついた程度で高木さんに復讐などできるわけがなかったのだ。
オレが高木さんの視線から逃れるように顔を背けると、彼女は猛烈な反撃をしてきた。
「胸は?大きいのと小さいの、どっちが好きなの?」
「ぶっ!」
突然何を言い出すのか。オレは一瞬にしてパニックに陥った。
「む……胸、とか……いきなり何言い出すのさ!」
「だって、男の人って女の子の胸ばっか見るって言うでしょ?私の逆が好みだったら、胸も私の逆の方がいいのかなって。」
確かに、高木さんの胸は小さい。それは、オレと高木さんの間での共通認識でもある。つまり、オレが小さいのが好きだと言えば、高木さんの胸は大きいと言っているのと同義だし、大きいのが好きだと言えば、高木さんの胸は小さいと言っているのはまた同義なのだ。
ともあれ、大きいとか小さいとか、オレの口からはっきり言えるはずもない。恥ずかしすぎるのだ。
だから、いつものようにごまかすしかない。
「む……胸……とか、別にどっちでもいいよ……。」
「それって、大きくても小さくてもどっちでもいいってこと?」
「そう……なる……かな……。」
「ふーん。」
高木さんはそう言ったあと、一息置いて言葉を続けた。
「エッチ。」
「なっ!」
オレはさらなるパニックに陥った。
「ちがっ……!そういうんじゃなくて……!そのっ……どっちが好きかって言われたから……っ!」
オレがしどろもどろになりながら言い訳をしていると、突然高木さんが吹き出した。
「ぷっ……あはははっ!顔真っ赤にして……言い訳して……胸って言うのも恥ずかしがって……あははっ!あははははっ!」
オレがどれだけ恥ずかしかったか、どれだけがんばったかも知らず……嬉しそうで何よりだ。
「あははははっ!あはははははっ!はー……。あー、もう。ほんと、西片といると飽きないんだから。いい加減にしてよほんと。ぷっ……あはははっ!」
「こっちのセリフだからね!?」
正直うらやましい。オレもこんな風に自由に生きてみたい。
「じゃあ、高木さんはどんな人がタイプなんだよ。」
「ほらね?」
「ん?」
「気になるでしょ?『なんとなく』。」
「違うよ!別に気になったわけじゃなくて!オレだけ話して高木さんが話してないのは不公平だから!」
「西片は話したっけ?」
「えっ?」
話してない。高木さんの逆を言ってお茶を濁しただけだ。そしてそれは高木さんにもバレている。
「まあ、別にいいけどね。それで、西片は私の好み知りたいんだ?」
『知りたい』というのは悔しい。だけど、その情報が、今後高木さんをからかう上で役に立つかも知れない。そう、情報を制するものが世界を制するのだ。
「いや、基本的にはどっちでもいいんだよ?でも、知りたいか知りたくないかで言ったら、まあ、知っててもいいかなってくらいで。6:4ぐらいで知りたいかなってくらいで。」
「それって、要するに知りたいってことでしょ?」
「う……まあ、そうなるかな……。」
オレは反論することを諦めた。
「私はね、一緒にいて飽きない人がいいかな。」
「そうなの?」
「うん。やっぱり、ずっと一緒にいられるのって大事なことじゃない?」
「そうなんだけど……少し意外だったから。高木さんのことだから、からかって楽しい人、とか言うのかと思ってた。」
オレがそう言うと、高木さんはきょとんとした目でオレを見て言った。
「からかって楽しい人って、それ、西片本人のことじゃないの?」
「なっ!」
この展開は……マズい。
「ふーん。そっか。私は西片のことが好きだったんだ。ふーん。」
「違う!だから違う!言葉のアヤだから!そういうつもりで言ったんじゃないから!」
オレが全力の否定をするのは、これで今日何度目だろう。
「何が違うの?」
「それは!その……!高木さんが……その……オレのことを……好きだっていうのが……。」
最後は蚊の鳴くような声になってしまった。
「ねえ、西片。」
「なっ!何!?」
「好きだよ。」
「はぁっ!?何言ってんの!高木さんちょっとおかしいよ!」
「あはははっ!また顔真っ赤にして……。自分で言っておきながら…あはははははっ!もうほんと、いい加減にしてよ……あはははっ!あはははははっ!」
高木さん自身も顔を真っ赤にして大笑いしている。だけどそれを言ったところですぐさま反撃されるだけだろう。
「悪かったから……もう、そのくらいにしてよ……。」
「だって……ぷぷっ……あははははっ!」
オレは恥ずかしさで、高木さんは大笑いで、それぞれ顔を真っ赤にしながら、家に向かって通学路を歩いていった。
最後までご覧くださりありがとうございました。
短くしようと思いながらも、着実に長くなっています。
よろしければ今後ともお付き合いください。