ただただ、少年がドSお嬢様に振り回されるお話   作:雨が嫌い

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嵐の前

「どうぞディアドラ様」

 

「どうぞエステラ様」

 

「「お入りください」」

 

最後二人のセリフは同時にいった。バルコニーの陰からゆっくりと紫のドレスが分離していた。次の瞬間には、時間が引きちぎれた。

ありとあらゆる感覚がこの刹那で失われた。

いや■のなんていう陳腐な語彙ごと弾け飛んだのだ。こちらを見下ろす瞳は、宝石のごとく、理想的な鼻梁は天井の彫刻家が魂を落として削り上げたに違いないと思わせるほど。

 

閉ざされた楽園の花弁を思わせる唇には決して失われない青春の輝きが宿っていた。そんなひとつずつの表現が、馬鹿らしくなるほどにその女はその女であるだけで美しかった。全ての形容詞を失った果ての何か。

 

仮にも魔術師たるものおいそれと口にしてはならぬ■としか表現できない結末の地点。

 

「黄金姫を襲名いたしましたディアドラ・バリュエレータ・イゼルマと申します」

 

何人かの魔術師が手に持ったグラスを取り落とし自らの靴にブドウ色のシミを作ったことにさえ気づかなかった。完全に呼吸を止めてしまい酸欠に落ちいるまで立ち尽くすものもいれば、その場に跪き滂沱と涙する者さえいた。

 

これが魔術による精神攻撃ならば誰も歯牙にかけないかっただろう。ここに集まったものはそれなり以上の魔術師であり魔術師たるものまず、自分の精神を磨くことこそが最初に教えられる事項だったからだ。ただただ純粋なる■であったからこそ、彼らの培ってきた精神防衛の術式は紙のように引きちぎられた

 

本来、意識しても魔眼を使ってさえいれば、俺自身も影響を受けることはなかったはずだが、魔眼を使う気すら根こそぎ持っていかれるほどの何かがそこにはあった。はっきり言って自分の意識が断絶していたことに気付くのが遅れた。

 

「白銀姫を襲名いたしましたエステラ・バリュエレータ・イゼルマです」

 

周囲を見を回せばほとんどのものは未だ意識を回復していなかった。主の到来を目視した信者ならば同じような反応になるかもしれない。何人かが目を押さえているのはこの景色を最後に眼球を潰してしまいたいという衝動に駆られたからだろう

その衝動を抑え込めたのももう一度同じ日を見られるのではないかという浅ましい欲望。

 

「なるほど」

 

隣から上がった声に目を向けると、蒼崎橙子がささやいた。

 

「あれが黄金姫か・・・噂には聞いていたがよもやそこまで至るとはイゼルマの歴史もなかなか賞賛せざるを得ないな」

 

先ほどとは変化した口ぶり・・・

 

「性格の切り替えか」

 

「ご名答。少し性格をね・・・」

 

外していたメガネをかけ直して橙子が会釈する。その時には先ほどの雰囲気が戻っていた 。乾いた拍手が会場にこだました。

 

「お見事!」

 

おそらく70は超えているであろう見た目、狼の如く気高い銀髪。緑の洒落たドレスに身を包みびっしりと背筋を正してその老女が心地よい拍手を送った。それは自失していた魔術師達さえ立ち直らせる清涼なる響きだった。その魔術師ロードバリュエレータを視認した瞬間、俺はライネスに囁きかけた。

 

「少し席を外す。後は グレイとトリマウで何とかしてくれ」

 

そう言う俺に、ライネスは渋々といった表情で頷いた。

 

 

結局、ライネスと合流したのは社交界が終わってからだった。

 

多くの魔術師達はそのも帰路に就き、財政的にも明日の電車を待つ必要のある俺たちは、向かいの塔の東に部屋を借りていた。どうやら月の塔が家の陽の塔が客人の場所と言う割り振りらしい。

 

さすがに上質のベッドであり横たわるだけで無重力空間な気分にさせられる。俺とライネスはため息を吐きそっと瞼に触れる。

 

ライネスの眼球はそれはもう暑くなっていることだろう。これだけ多くの魔術師がいたのだ。常にチャンネルを合わせていた眼球が軽い熱暴走起こしているはずだ。幸い、俺はこの魔眼を使うことがなかったので、悪化はしていない。

 

「いやー参ったよ。ロードバリュエータ。冠位の蒼崎橙子とは・・・考えるべきことが山積みでどこから整理したものかさっぱりさ」

 

ぼやくライネスにグレイが声をかけた。

 

「ですけど襲われるようなことはなくて良かったです」

 

グレイはベッドではなくソファーに座っている。長いこと気を張っていたせいか、まだ落ち着かないようでそわそわしている

 

組み合わされた指がちまちま動いているのが、まるであやとりのようだ。

 

「まあちょっかいを掛けそうなやつも、今回のお披露目で毒気を抜かれたんだろう。あそこまで行けば兵器だな!」

 

「・・・どうしてあんなに美しい人を作ったんでしょう?」

 

「兄とも話していたが美しさが魔術の領域だからさ」

 

目薬を差しながらライネスが答えた。

 

「美しさがですか・・・」

 

「そうさ兄は、数学的な調和が魔法円や工房に必要だからとか話していたが、確かイゼルマと言うかバリューエレータはもっと根幹的な部分で美しさを評価しているんだよ」

 

「根源の渦に至るためてわけか」

 

「正解!バリュエレータはそこに至るために■という道を選んだ」

 

「元々美的感覚とは人間にとって生き延びるための機能だった。そう先生も言っていたな・・・毒を避けるために嗅覚味覚を発達し、危険を避けるために視覚聴覚は鍛えられてきた・・・だけどこういう五感とは別に人間は思考を確立する以前から、快楽をもたらす感覚として美は存在していた」

 

フランスはラスコー洞窟に描かれた壁画、レンドルフ遺跡で発掘された旧石器時代の画像たち。

 

原始美術とも言われるこれらの作品群は人類と美術が切り離せない関係にあることを明示している。

 

「そうだ。グレイ。少しの間だけ、アークと二人にしてくれないかな?ちょっと話しておきたいことがあるんだ」

 

「あ、はい。分かりました・・・」

 

グレイは困惑した様子だったか指示通り、部屋を一旦出て行った。

 

「それで話とはなんだ?ライネス」

 

「その前に、もっと近くに来たまえ。というか来い」

 

俺は最近疲労のせいもあってか、思考を停止してベットに腰掛ける。それがいけなかった。思いっきり引っ張られて、ベットに押し倒される。その状態のまま、ライネスが馬乗りの状態で乗ってくる。

 

「アーク、君は私のものだ」

 

「・・・だから何だよ?」

 

「さっきのあれはどういうつもりなのかな?アーク」

 

「何のことだ?」

 

「決まっているだろ!蒼崎橙子に勧誘されたときの返答さ!!!」

 

その蒼瞳を俺に向け、にらみつけてくる。

 

「・・・そう声を荒げるなよ、ライネス。あの場で真っ向から、否定するよりあの返答の方が穏便に済ませられると考えただけだ。それに、分かっているだろ?ギアススクロールは絶対だ。俺は、ライネスを裏切らない」

 

「・・・蒼崎橙子は、それを可能にするといった。実際、冠位の魔術師なら不可能とは言い切れない」

 

「ハハ、ライネス。それは、お前を捨てて、俺が裏切り行為(・・・・)をするって言いたいのか?ふざけんなよ」

 

自分でも驚くくらい、低い声が出た。ライネスが目をわずかに見開き、驚愕する。

俺は、無理やり態勢を変えライネスを押し倒した。

 

「よりにもよって、俺が裏切るだと(・・・・・)?誰がそんな薄汚い真似するかッ!俺はあいつらとは違う!!!」

 

 

「・・・そうかい、それを聞いて安心したよ・・・本当にね。だが、この私を困らせたのは事実だ。何か見える形で謝罪してもらわなければ割に合わない」

 

「何がお望みで?」

 

「そうだな~・・・君の遺伝子を私に差し出すとか?」

 

「つまり子作りしろと?」

 

「ああ、あーでも、これでは君に得がありすぎるな。何せ、こんな美少女と一夜を共にできるのだから」

 

・・・あきれた女だ。何年共に生活してきたと思っているのだろう?情は湧きこそすれ、それは愛情ではない。

 

「ハァ~、もうグレイを呼び戻したらどうだ?外で待たせ続けるのは悪い」

 

「そうだね~、今すぐ戻ってきてもらおうか?」

 

ニヤリと悪魔の笑みを浮かべたライネスを俺はどうにかして止めるべきだった。しかし、時すでに遅しっというか、勢いに任せて何でこんな体勢に持ち込んだのだろう。俺は盛大に後悔した。

 

「グレイ~、今すぐ来てくれ~」

 

同じベットで服の乱れた男女が片方を押し倒している。この状況を見て、どういった反応をグレイにされたのかは、ご想像にお任せする。ただ・・・めっっっっちゃくちゃ、誤解を解いてまじめな話を始めるのが大変だった。




自分で読み返したら・・・何か微妙な感じですね。書き直すかもしれないです。

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