新説・恋姫†無双~一刀と愉快な?仲間達~   作:越後屋大輔

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一応言っておきます。本作の現代世界にひびきの高校は存在しません。あしからず。


第十席賢、顔良に惚れるのこと

 この晩は袁紹の屋敷に一泊の宿を借りた鈴々、馬超、高坂の3人。

 そして翌朝、文醜と顔良の申し出に袁紹は怪訝な顔をする。

袁紹

「馬超と張飛を召し抱えるのを止めろと?」

文醜

「イエ。そこまでは言ってないんですけど……」

袁紹

「貴女達も見たでしょう?あれだけの豪傑を配下にすれば、きっとあの曹操の鼻を明かしてやれますわ」

顔良

「武勇に優れているのは認めますけどあの二人、『強く賢く美しく』を掲げる我が袁紹軍に相応しいかどうか……」

袁紹

「ふむ……確かにあまりお上品とは思えませんわね」

文醜・顔良

「「ですよねぇーっ」」

顔良

「(私達も馬族出身であまり人の事は言えないけど)そこで一つ、提案があるんですけど」

袁紹

「提案?」

顔良

「馬超と張飛が麗羽様の配下に相応しいかどうか、試験をするのです」

袁紹

「なるほど。適正試験という訳ね」

文醜・顔良

「「はいっ」」

袁紹

「良いでしょう」

文醜

(ヨッシャ!これで後はあの二人に無理難題を押し付けちまえば……)

袁紹

「では、試験の課題は私が出しましょう」

文醜・顔良

「「えぇーっ!?」」

袁紹

「それであの二人と勝負なさい」

文醜

「勝負……ですか?」

袁紹

「ええ。それで貴女達が勝てば、今まで通り私の側近は貴女達。ですが、もし負けた場合は……これよ」袁紹は手刀で喉元を切る仕草を見せる。

文醜

「えぇーっ!まさか斬首刑!?」

袁紹

「違うわよ!クビ!お払い箱ですわ」

文醜

「なぁ~んだ、良かったぁ」

顔良

「良くないわよ!」もう後には引けない文醜と顔良だった。

 

陳琳

「さあ、突発的に始まった、袁紹軍適正試験。張飛、馬超、新参組二名対お馴染み文醜と顔良の三本勝負で強さ、賢さ、美しさを競います!」試験会場は昨日と同じ闘技場が使われる事になり、実況も昨日と同じく陳琳が担当する。

 

 愛紗達と手分けして、昨夜から姿の見えない鈴々を探していた一刀は街の人から聞いた話を頼りに袁紹の元にやって来て、またしても友と再会した。

高坂

「オイ、一刀じゃないか!お前もこの世界にいたのか?」

一刀

(けん)!?これで俺を含めて4人目だな」

「4っ……俺とお前以外にもいるのか?」

一刀

「ああ、忍に一がな。忍とは一緒に行動している。一は曹操の配下になっていたが」

「またアクの強い奴らが……」半ば呆れて手のひらで目頭を押さえる賢。

一刀

「その話は後にしてくれ。それより鈴々……じゃなくて、張飛って娘を知らないか?」

「張飛なら昨日、武道大会で一手()り合ったぜ。今日は何かの適正試験だとかで袁紹の側近と決着つけるそうだ」

一刀

「そっか。じゃ俺は、忍や他のみんなに知らせに行くよ。終わったら俺達が逗留している宿屋まで連れてきてくれないか」

「ああ、構わんぞ。って忍と2人旅じゃないのか」

一刀

「急ぐんでな。詳しくは後で話す」一刀は用件だけを伝えて、その場を去っていく。

「……つまり張飛も旅の仲間って事か。しかし、一刀も忙しない奴だな」一刀を見送って、会場に戻る賢。間もなく開始という時刻になって、顔良と鉢合わせた。

「顔良。そういや俺は試験に参加しなくて良いのか?」

顔良

「良いの良いの。これは麗羽様の侍女としての試験でもあるから、貴方は無条件で客将にって、麗羽様が……」文醜が話に割り込んできた。

文醜

「アレ?麗羽様そんな事言ってたっけ?」

顔良

「(プチッ)ヤダ、猪々子ったら……忘れちゃったの?」顔良は口元を緩めているが、眉をピクピクさせて、額から血管を浮かべている。その笑顔の恐ろしさに、それ以上追求出来ない文醜だった。

 

 まずは賢さを競う。両陣営にそれぞれ木製のマジックハンドと椅子、3メートルくらいの高さから吊り下げられたバナナが用意されていた。

(これ……サル用じゃねえか!?)

文醜

「あたい、こういうの苦手なんだよなぁ」

顔良

「イヤ、苦手とかそういう問題じゃなくて……」高坂も顔良も呆れている中、

鈴々

「アレをとるぐらい簡単なのだ」椅子を引き寄せてその上に立って一生懸命手を伸ばすが、当然届くハズがない。

馬超

「バカだなぁ。こういう時は道具を使うんだよ」マジックハンドを手にバナナを取ろうとする馬超。しかし椅子は使わない。

(バカなのか、コイツら?イヤ、落ち着け俺。この2人は俺が知ってる張飛と馬超とは全くの別人……)

顔良

「あの……これって、こうすれば良いんじゃ……」顔良は椅子の上に立ち、マジックハンドでバナナを掴む。

馬超

「おお!」

鈴々

「その手があったのだ!」

文醜

「どうだ!知力34の力、恐れ入ったか?」

顔良

「うぅ……勝ったのに、ナゼかあんまり嬉しくない~(泣)」

高坂

(顔良って苦労してそうだな……)様々な思いが交錯する中、まずは文醜・顔良チームが一勝をとった。

 続いては美しさ。袁紹から勝負の内容の詳細を説明される4人。

袁紹

「この裏にある衣装部屋から好きな服を着て舞台にお立ちなさい。観客の評判がより高かった方を勝ちとしますわ」そして衣装部屋に入った両チーム。そこには漢時代を彷彿させる世界にも関わらず、ナゼか近代的な洋服が沢山あった。

鈴々

「面白い服がいっぱいなのだ」

馬超

「参ったなぁ。あたしあんまりお洒落とか……」

 

 ~ここからしばし着替えの時間~

 

陳琳

「さあ!両陣営の支度が整ったようです。まずは張飛、馬超組から!」

鈴々

「がお~がおがお~なのだ!」ピンクの虎の着ぐるみで現れた鈴々。マスコット的な可愛らしさに会場が暖かい笑いに包まれる。その後ろから馬超が出てきた。

馬超

「あ、あんまジロジロ見るなよ……あたしこういう、ヒラヒラしたの似合わないって分かってんだから……」白いニットソーと黄色のワンピースを着て、髪を解いた馬超は俯きがちに呟くと、恥ずかしそうに頬を染める。

陳琳

「え……ええ。馬超選手、一部に激しく受けているようですが。それでは観客の皆さん、採点をお願いします!」予め配られていた○と×の札を一斉に上げる観客達。それを、冀州野鳥の会の面々が双眼鏡を手に集計する。

陳琳

「出ました、87点!これはかなりの高得点です!」

 

 ~一方文醜、顔良組。舞台袖にて~

文醜

「ちっ!中々やるな、あの二人」

顔良

「ねえ猪々子……ホントにこの格好じゃないとダメなの?」

文醜

「何言ってんだよ!こうなりゃ一か八か、これに賭けるしかないって!」

顔良

「でも~、やっぱり……」

文醜

「行くぞ!」2人揃って舞台に飛び出す。

文醜

「乱世に乗じて平和を乱す賊共め!」

顔良

「漢王室に代わって成敗よ!」ナゼか某魔法少女のような出で立ちで登場した2人だったが……

 

 ─ポカーン─

 

 思いっきり会場が白ける。心なしかこの辺りだけ、気温が下がったような気さえした。テンションだだ下がりな観客も、仕方なしと言った表情で札を上げる。

陳琳

「え~、文醜、顔良組の合計は13点……と、いう訳でこの勝負は張飛、馬超組の圧勝です!」

「……まぁ、そうだろうな。しかし何であんな服が……?ここの世界観、メチャクチャだな」

馬超

「ヨッシャ!」

鈴々

「やったのだ!」大喜びの鈴々と馬超に対して、

文醜

「ま、負けた……」

顔良

「色々捨てたのに負けちゃった……」ある意味人生詰んだ2人。舞台上でうちひしがれて、袖に引っ込んでも沈んでいた。それでも3回戦の火蓋は切って落とされる。

袁紹

「それでは最後に強さを競ってもらいますわ。但し、武器を持っての戦闘ではなく……」袁紹が取り出したのは先端部分に白鳥の頭を模した相撲のまわしだった。現代日本人ならあの白塗りのバカなお殿様を思い出すだろう。

袁紹

「この我が袁家に代々伝わる華麗で優雅で壮麗なこのまわしを絞めて、女相撲で決着を着けてもらいますわ!」

鈴々、馬超、文醜、顔良

「「「「えぇーっ!?」」」」

(あんなモンまであるのかよ?しかもイケてるつもりなのか……ホント救いようのないバカだな)

 

 結局、袁紹には逆らえず嫌々まわしを締める文醜と顔良。まわし以外は何も身に付けてはいけないルールの為、衆人環視の前でほぼ全裸を晒すハメになった2人。そこに意外な邪魔が入った。

「君に恥を掻かせたくない……」顔良の身体にフランチェスカ学園の制服が掛けられた。

袁紹

「高坂!?邪魔する気ですの?(怒)」

「煩せぇ!俺は顔良を連れてあんたの下を去る。馘にするなら勝手にしろ!」右腕で顔良の身体を隠すように抱き抱え、左手の指を5本ともドリルに変化させて袁紹の喉元に突きだす。

「あばよ!」そのまま立ち去る賢と顔良。

袁紹

「ちょっと!試験はどうなりますの!?」

文醜

「麗羽様!そんな事より、斗詩が拐われちまいましたよ!アンニャロー、よくもあたいの斗詩をぉーっ!」

陳琳

「あの~……お取り込みのところ、すみません。ただ今ですね、張飛、馬超両選手がこの勝負を棄権すると言って帰っちゃいましたが……私も次の仕事があるので、これで失礼します」いつの間にか観客も、誰一人として残っていなかった。

 帰り道、袁紹のバカっ振りにボヤく鈴々と馬超の姿があった。

馬超

「いや~、いくら何でもあれは勘弁してほしいよなぁー」

鈴々

「流石の鈴々もあれはキツいのだ……」そして2人は鈴々達が逗留する宿にたどり着いた。

鈴々

「ただいま~なのだ!」

愛紗

「コラーッ‼」愛紗の怒号が宿中に響く。

鈴々

「ふにゃ!」

愛紗

「宿で大人しくしていろとあれほど言っておいたのに、フラフラと居なくなって!一晩帰って来ないなんて!」

一刀

「まぁまぁ愛紗。居場所は分かってたんだし、鈴々も反省しているみたいだからその辺で」

愛紗

「全く!どれだけ心配したか……ん、お主は?」鈴々の後ろから、バツが悪そうに入ってきた少女にようやく気づいた愛紗。

馬超

「あ、どうも。あたし馬超って言います」

鈴々

「馬超はね、鈴々の新しいお友達なのだ!」

一刀

(今度は馬超か……どうも蜀陣営に縁があるな。アレ?)一刀は今夜、ここで会うハズだった友を思い出した。

一刀

「鈴々、賢はどうした?ほら、俺達と同じ服を着ていたあのデカい奴」

鈴々

「ああ。あいつなら、顔良を拐ってどっか行っちゃったのだ」

一刀

「マジかよ……何考えてんだ、あいつ」

「鈴々ちゃん、顔良の特徴は?」

鈴々

「う~んとねえ……」鈴々が質問に答えると揃ってため息を吐く一刀と忍。

「そんな事だと思ったわ」

一刀

「そうだ。あいつ結構惚れっぽい性質(たち)だった……」

「お主らの仲間なだけはあるな」クスクス笑う星に返す言葉もない2人であった。

 

 

 

 




アニメとの違い
・3回戦は文醜、顔良の不戦勝。2人は馘を免れる→顔良に惚れた賢が誘拐騒ぎを起こして勝負はうやむやに。
・一刀達は鈴々が袁紹のところにいたのを知っていたので愛紗の最初のセリフから「どこへ行っていたんだ!」をカット。
星は今回セリフなし→一言だけ足しました。
因みに賢が無条件で袁紹の客将になるというのは顔良の捏造です。どうも両思いらしい2人……。
次回は久し振りに敵の魔物が登場?

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