新説・恋姫†無双~一刀と愉快な?仲間達~   作:越後屋大輔

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話と全く関係ないですが最近の福園さん、映画の仕事が続きますね。春には『のんのんびより』今は『ガルパン』公開中で、秋には『ストパン』上映だそうです。


第十四席一刀達、謎の少女に出会うのこと

 一行は山の中を進んでいた。鈴々は相変わらず元気に、赤銅山の一件の時と同じ歌を歌いながら山道を歩いている。今日は一刀まで一緒になって、仲良く歌っている。

鈴々・一刀

「「♪やーまっがあるからやまなのだー。かーわがあっても気っにしないー♪」」

愛紗

「二人共、あまり変な歌を大声で歌うな。恥ずかしいだろう?」

鈴々

「何を言っているのだ愛紗。山を歩く時は熊避けの為に、歌を歌った方が良いのだ。爺っちゃんがそう言っていたのだ」

「そういえば聞いた事あるわね」

一刀

「それに結構楽しいよ。愛紗も歌ってみないか?」

愛紗

「……遠慮しておこう」

「そうだ。こんなところで愛紗に出会ったら、熊がビックリしてしまうぞ」

愛紗

「そうそう。私にバッタリ出会ったら、熊が可哀想……って何でだ!?」星に乗せられた愛紗がノリツッコミをして、一刀と忍が目を丸くする。

一刀

「……意外だなあ。愛紗がノリツッコミなんて」

愛紗

「そ、その……何だ……つい、な」

「そんな人とは思わなかったわ」

愛紗

「待て。意味が違って聞こえるぞ!」

「フフッ」

愛紗

「何がおかしい?私の顔に何かついているのか?」

「イヤ。やはり公孫賛殿より、お主らの方が面白いと……」などと、いつも通りのバカ話をしているところへ……

 

??

「きゃあああ!」突然女のモノらしき叫び声が聞こえてきた。

一刀

「何だ今のは!?」

鈴々

「行ってみるのだ!」5人で声のした方へ駆け出していく。

 到着してみるとそこには、鈴々よりは幾らか上のようだが、まだ年端のいかない少女が3人の賊に囲まれていた。男達はリードを着けた3頭の狼を連れていたが、その大きさは普通の狼の倍はあり、口から真っ赤な液体が滴り落ちている。

??

「酷いっ!私を騙したのですね?」見た目は儚げな弱々しそうな少女だが、気丈な態度で賊に向かい合う。

賊A

「別に騙しちゃいねえさ」

??

「でも……村への近道を教えてくれると言ったのに、こんなところへ連れてきて!」

賊A

「近道は教えてやるよ。但し、村へのじゃなくて天国へのだけどなぁ!」リーダー格の賊がニタニタと下卑た笑いを浮かべる。

賊C

「デヘヘヘッ」

??

「天国……それじゃ私を殺すつもりなのですね!?」

賊B

「そうじゃねえよ。気持ちよくして、天にも昇る心地にしてやるのですよ!」

賊ABC

「「「ウエッヘッヘッヘッ!」」」汚い笑い声を上げる賊トリオに、少女とは別の声が話しかける。

??

「お前のいう天国とやらは、大層良い所のようだな」

賊A

「そりゃーもう、最高に……ん?」賊トリオが振り向くとそこには旅の冒険者5人がいた。因みに、賊に声をかけたのは愛紗である。

賊A

「何だお前ぇら!?」

一刀

「聞いて驚け!この者こそ噂に名高い絶世の美女、黒髪の山賊狩りだ」

「噂ほど美しくはないがな!」

愛紗

「……ってオイ!」再び漫才を繰り広げる愛紗と星をスルーして、一刀と鈴々は得物を、忍は空手の型を構える。

鈴々

「弱い者苛めは許さないのだ!」

「私も貴様らのように、無粋な言葉を吐く輩は大っ嫌いでな!」

賊A

「ほざけ!こっちにゃ魔獣もいるんだ。見ろ!この血に濡れた口を!恐いか?逃げんなら今の内だぞ!」野生の魔獣ならではの、何らかの生き物を食い殺したような迫力に愛紗、星、鈴々の足は僅かに竦むが、一刀と忍はケロッとした顔をしている。

「ああ、ブラッディーウルフね。確かに先人が『血塗れ狼』と名付けてはいるわよ」ブラッディーウルフ。その口元が常に赤く染まっているところから、一刀や忍の世界の先人達に付けられた種族名である。見た目通りの肉食の魔獣で、実際に生きた人間や獣を食らう事もあるのだが……。

一刀

「そりゃ多少は血もついてはいるだろうが……実際はほぼ唾液だぞ」この魔獣は元々の唾液が赤いという特徴を持っているのだが、件の先人がその口元が血に濡れていると誤認した為に、ブラッディーウルフ(血塗れ狼は和名)と名付けられた。そして真意が判明しても、呼び名だけは変わっていない。

鈴々

だえき(・・・)って何なのだ?」

「つまり、ヨダレだ」

愛紗

「血じゃないのか?」

鈴々

「それじゃ恐くないのだ!」

「イヤ。あの大きさの魔獣となれば、私達には手が付けられん」

一刀

「愛紗達は賊を始末してくれ。ブラッディーウルフは俺と忍が引き受ける」

愛紗

「……承知した」愛紗は青龍偃月刀を回転させながら、賊トリオに向き直る。

愛紗

「残念ながら天国へは案内してやれんが、この青龍偃月刀で地獄へ送ってくれる!」

賊A

「やれるモンならやってみやがれ!狼共!奴らを食い殺せ!」3頭の狼が放たれた。

一刀

「加速!」瞬時に距離を詰めた一刀が狼の首を切り落とし、

「変身!」狼よりも更に巨大な、ジャイアントホッグに変身した忍が残りの2頭を踏み潰した。賊トリオはあっという間に形成が不利になり表情が青褪め、半ば自暴自棄になってこちらへ突撃してきた。

賊ABC

「「「チッキショォォーッ!」」」髭面の賊Aはあまり鍛えられてなさそうな剣を、小柄な賊Bは手斧、巨漢の賊Cは槍をもって愛紗達に挑むも愛紗が賊Bを、鈴々が賊Aを、星が賊Cを難なく空の彼方へ吹っ飛ばす。

賊A

「地獄へ~!」

賊B

「行って!」

賊C

「きま~すっ!」

鈴々

「ザマーミロ、なのだ!」

「こりゃまた随分遠くへ飛んで行ったわねぇ」呑気に会話していると、賊から解放された少女が一刀達一行に駆け寄ってくる。

??

「助かりました。ありがとうございます。あんな恐そうな人達や魔獣をあっという間に退治してしまうなんて……皆さん、本当にお強いんですね」キラキラした目で見つめられて、愛紗と一刀は照れる。

愛紗

「イヤ何……」

一刀

「それほどでも」

??

「あ、申し遅れました。私は、と……そのと、童々(とんとん)と申します」ナゼか自分の名前を一瞬言い淀んだ童々に、一刀と忍は疑問を持つが、愛紗達は何も気づいていないようだ。

鈴々

「鈴々と似ていて良い名前なのだ」

童々

「そうですか?」

(もしかして偽名かしら?)

一刀

(かもな。でも結論を出すのは早計じゃないか?)

(そうね。とりあえず様子を見ましょ)童々の偽名疑惑は一旦置いて、愛紗達に続いて自己紹介する。

愛紗

「私は関羽」

鈴々

「鈴々は張飛なのだ」

「趙雲と申します」

一刀

「俺は北郷」

「藤崎よ」

愛紗

「どうです童々殿。村の方へ行かれるのなら、我々と一緒に参りませんか?」

「さっきみたいな賊がまた出てこないとも限らないし。あちし達、多少は腕に覚えがあるわ」

童々

「宜しいのですか?」

鈴々

「気にする事はないのだ。旅は道連れ、よは……え~と」

「酔わせて何をするつもり?だ」

鈴々

「そう。それなのだ」色っぽい声でボケる星。それを普通に聞き入れる鈴々に愛紗がデコピンを食らわし、一刀が2人に突っ込む。

一刀

「違うだろ?大体それじゃ意味が分からないよ」相変わらずの5人に童々は緊張が解れたのか、クスクス笑っていた。

 

 一方、太守の屋敷では1人の軍師が頭を悩ましていた。名前は賈駆(かく)。左右で髪を三編みにして、メガネをかけた少女だ。実は彼女の幼馴染みであり、この一帯の太守の董卓(とうたく)が姿を眩ましたのだった。

賈駆

「あの娘ったら……また性懲りもなく、屋敷を抜け出したのね!もぉぅーっ、この忙しい時にぃ~」憤りと心配のあまり、屋敷内をウロウロしている。

??

「どうした賈駆?」紫の鎧を纏った、ショートヘアの目付きの鋭い女に呼び止められた。

賈駆

「あっ、華雄将軍。(ゆえ)……っじゃなくて、董卓様がまた居なくなったのよ」

華雄

「というと、いつものアレか?お忍びで下々の暮らしを見て回るという……」

賈駆

「ええ」

華雄

「やれやれ。仕事を放り出してフラフラ出歩くとは、困った太守様だ」冗談っぽく皮肉る華雄に噛みつく賈駆。

賈駆

「領民と直に触れ合って、その声を聞くというのは決して悪い事ではないっ!」

華雄

「なら、別に良いではないか」

賈駆

「そうは行かないわ!最近は地方の賊の制圧に人を取られて、逆にこちらの治安が悪くなっているし。物の値段が上がって民から不満の声が募っているし。山には人食い狼が出るとかで……もぉぅー!」問題が山積みなのを思いだし、イライラするあまり頭をかきむしる賈駆。尤も人食い狼こと、ブラッディーウルフは既に一刀と忍に退治されていたが、賈駆が知るハズはない。

華雄

「賈駆よ。あまり心配ばかりしていると早死にするぞ?」

賈駆

「……華雄将軍。貴女は悩みがない分、長生きしそうね」

華雄

「まぁ。体は鍛えているからな」嫌みにも気づかず、豪快に笑い飛ばす華雄。賈駆はため息を吐くしかなかった。

 

 一刀達は童々と一緒に村へ続く道を進んでいる途中、童々から奇妙な話を聞いた。

愛紗

「化け物?」

「魔獣とは違うのかしら?」

一刀

「それって?」

童々

「はい。ある日、村の庄屋様のお宅の門に白羽の矢が打ち込まれて、そこに結ばれていた文『今宵、村の外れのお堂に食べ物を供えよ。でなければ村に災いが降りかかるであろう』と書いてあったとか。最初は質の悪いイタズラだと思い、そのままにしておいたそうなのですが、翌朝になってみると山から運んできたのか、門前に大きな岩が忽然と置かれていたそうです。これは人の力で持ち上がるモノじゃない、化け物の仕業に違いない、と」

「ほう」

愛紗・鈴々

「「んっ!」」興味深そうな星に対して、少し表情が強張る愛紗と鈴々。

童々

「それで慌てて、お堂に食べ物を供えたらそれからは七日に一度の割合で催促の矢文が打ち込まれるようになったそうです」

「何と奇っ怪な……」

「……確かに妙ね」

童々

「しかし、これはあくまで街で聞いた噂。それが本当かどうか確かめたくて……」

一刀

「それで村を訪ねに?」

「しかし童々殿。ナゼそのような事を?只の町娘が興味本意でする事とも思えぬが」星の指摘にあたふたしだす童々を見て、一刀と忍は1つの仮説を立てる。

一刀

(まず、偽名を名乗っているのは間違いないな。それにこの娘は只の町娘じゃない)

(そうね。恐らくはこの辺りの有力者、或いはその娘か孫だと思うわ)

「お主達、さっきから何をヒソヒソ話をしている?」

「大した事じゃないわよ」その時鈴々が何かを見つけた。

鈴々

「あれは何なのだ!?」指を向けた先は、この村の庄屋が住んでると思われる屋敷でその門前には、巨大な岩がデン!と無造作に出入り口を塞いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメとの違い
・童々を襲うのは賊3名→その賊が連れている魔獣も一緒。
・童々の漢字は作者オリジナルの当て字。Wiki等では片仮名表記
次回は一刀達の新たな仲間が登場するかもしれません。

※どうでもいいんですけど、今『奇面組』の二次創作にドハマり中です。

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