新説・恋姫†無双~一刀と愉快な?仲間達~   作:越後屋大輔

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第十九席孔明、旅の一行に加わるのこと

 水鏡の庵に逗留して3日、愛紗の怪我は未だ癒えずにいた。診察しながら水鏡がふと呟く。

水鏡

「まだ腫れが引かないわね……こんな時はサロンパ草があれば良いのだけれど」

鈴々

「サロンパ草って何なのだ?」

(何、そのパクりっぽい名前?)

一刀

(色んな方面から叱られそうな気がする……)

水鏡

「こうした腫れによく効く薬草なの。白い小さな花を咲かせる草で、その葉を磨り潰して使うのよ」

孔明

「あっ先生!サロンパ草なら私が採ってきます」

水鏡

「えっ、でもサロンパ草が生えてるのは山の随分上の方よ?それにあの山には小鬼(しょうき)も出るし……」小鬼とは現代でいうゴブリンだ。雑魚モンスターのイメージが強いが、こちらでもそれは同様だ。因みにこの世界のゴブリンは葉物や薬草の青臭さが大の苦手で、長年薬草に携わり、(人間の嗅覚では分からない程度だが)その匂いが体に染み付いてしまっている水鏡には近づけなかった。

孔明

「大丈夫です。先生と何度か行った所だから、場所は覚えてますし、小鬼を追っ払う方法も知ってます」妙に張り切っている孔明。

水鏡

「そうね。私が一緒に行けると良いのだけれど、今日は頼まれていたお薬を麓の村まで届けなければならないし……」心配ではあるものの、甘やかしすぎるのも良くないと、複雑な思いの水鏡。だが意外な助け船が出された。

幸太

「何なら俺も行きますが?」

水鏡

「それなら安心ね。じゃあお願いしようかしら?」

孔明

「はい!」そしてお気に入りのポシェットを肩にかけ、これまたいつも愛用しているベレー帽を被り、位置を整えると幸太を連れて山に登っていった。

孔明・幸太

「「それじゃ、行ってきます!」」

水鏡

「転ばないように気を付けるんですよぉ!幸太、朱里をしっかり守ってねぇ!」

孔明

「はぁい!」

幸太

「分かりましたぁ!」門前で2人を見送る水鏡。その後ろには、面白くなさそうに膨れっ面をしている鈴々がいた。

 

孔明

「朋有り遠方より来たる、また楽しからずや……はわわっ!」論語を暗唱しながら歩く孔明にジト目を向けて隣を行く幸太。彼が予測した通り、突然転ぶ孔明。

幸太

「しょうがないなぁ。ホラ立てよ」呆れながらも手を差し出す幸太。孔明を助け起こすと再び先へ進む。実は先ほどから自分達を()けてきている人物がいる。鈴々だった。

鈴々

(あいつばっかりいい格好はさせないのだ!)最初は、あわよくば孔明達からサロンパ草を横取りしようとしたが、やはり考えを変えて薬草の生えた場所に着いたら、2人より先に摘んで一足先に帰る事に決めた。

 

 ~鈴々の妄想~

鈴々

「じゃ~ん!サロンパ草なのだ♪」

愛紗

「ほう。偉いぞ鈴々、流石私の妹だな」

「見直したわ。鈴々ちゃん♪」

一刀

「やっぱり妹は鈴々だけで充分だな」

鈴々

「エヘヘなのだ♪」

 ~鈴々の妄想終わり~

 

鈴々は愛紗や一刀、忍達に頭をナデナデしてもらっている自分を妄想しながらも、足音を潜めていたが、幸太の耳には当然聞こえている。

 

鈴々

「何もない所で転ぶなんてあいつ、とんだドジっ子なのだ。足も遅いし、これならあいつの後に薬草を摘んでも余裕で先回り出来るのだ」ニシシシと、悪い笑顔を浮かべるのだった。一方幸太は

幸太

(ハハーン。張飛の奴、朱里ばっかり誉められているのが面白くないのか……)この場は敢えて惚けていた幸太だが、鈴々の一挙一投足に動きに目を光らせ……もとい、耳をそばだてる。

 

 しばらく進むと、渓谷に掛かる吊り橋に出くわした幸太と孔明。その下は崖となっていて、落ちたら一溜まりもない。吊り橋を繋ぐ縄を握りしめ、怖々と渡る孔明。

鈴々

「何をグズグズしているのだ?そうか、あいつ高い所が苦手なのだ。だから怖くて吊り橋が渡れないのだ」悪い笑顔を浮かべる鈴々だが、足がすくむ孔明の手を取って、スタコラ吊り橋を渡る幸太。

幸太

「いつもはどうしてたんだよ?」吊り橋を渡り終えると幸太が孔明に尋ねる。

孔明

「先生が手を取って渡らせてくれていたから……」

幸太

「1人じゃムリなら最初から行くとか言うなよ……まぁ気持ちは分かるけどさ」愛紗の怪我を一刻も早く直してあげたいという孔明の意思を汲んだ幸太は、それ以上は何も言わず

幸太

「後少しだ。早く済まそうぜ」もう一度孔明の手を取って先を進む。

孔明

「うんっ♪」サロンパ草の生えてる場所へ仲良く向かう2人。

鈴々

「あの耳栓、いちいち余計なことをするのだ」歯噛みして悔しがる鈴々。

 

 サロンパ草が生えてる場所に辿り着いた幸太と孔明の2人。幸太は小鬼を警戒してか耳に手をかざし、孔明はキョロキョロと辺りを見回している。

孔明

「……確かこの辺に咲いているハズなんだけど、あっ!」岩肌の高いところにサロンパ草を見つけた孔明。

鈴々

「高いところが苦手なあいつが登れっこないのだ」2人に追い付いた鈴々が物影に隠れて様子を窺っていた。しかし……

孔明

「んしょっ」懸命に岩を登り、サロンパ草を採ろうとする孔明。

孔明

「あともう少し……」

幸太

「オーイ朱里、あんまりムチャすんなよ」そしてようやく手にしたと同時に、足を踏み外して落ちそうになる。これには鈴々も思わず飛び出していこうとしたが、真下にいた幸太が孔明を無事抱え込んで事なきを得る。

 

 その時だった。いつもと様子が違う事に気づいたのか、崖の裏から小鬼が姿を現して、2人に襲いかかってきた。しかも1匹2匹ではなく、50匹はゆうに越える。幸太は孔明を庇いながら大きく息を吸うと、一気に吐き出す。

幸太

「音波砲!」咆哮から発せられた衝撃波で数匹の小鬼は消し飛んだ。しかし敵の数は多く、2人では分が悪い。しかも孔明は戦闘には役に立たないので実質幸太1人……それも孔明を庇いながらでは充分な力を出し切れなかった。

鈴々

「鈴々も闘うのだ!」今度こそ飛び出してきた鈴々。

孔明

「張飛さん!?」鈴々に尾けられていたのに全然気づいてなかった孔明は驚く。

幸太

「手伝え張飛!」

鈴々

「合点なのだ!」蛇矛と音波砲で小鬼を殲滅させていく2人。初めての共闘とは思えない、見事なコンビネーションを見せるが敵は中々減らない。

孔明

「はわわ~っ!どうしよう、私じゃ何の力にもなれない……」とりあえず安全な場所へ逃がされた孔明は、2人を援護する方法を思案し始める。

孔明

「そうだ!あれならここにも生えてるから……」何かを摘み取った孔明は幸太と鈴々の元へ駆け出す。

幸太

「朱里!?何で出てきた?」

鈴々

「危ないから引っ込んでるのだ!」制止の声も聞かず、孔明はさっき摘んだモノを千切りながら小鬼に投げつける。忽ち前進を止める小鬼達。

孔明

「ここには小鬼達の嫌いな匂いがする薬草が自生してるの」

幸太

「なるほどな」

鈴々

「今のうちなのだ!」隙が出来た小鬼達に向かい、一気に始末する幸太と鈴々。

 

 小鬼を全て倒すと孔明も加わり、3人で討伐の証しとして、麓の冒険者組合に持っていく為に奴らの耳を切り落とす。

鈴々

「お前強いのだなー」

幸太

「張飛こそやるじゃねえか」

鈴々

「それと……お前もよくやったのだ」顔を背けながら孔明の事も認める鈴々。

幸太

「何、照れてんだよ」若干のツンデレを見せる鈴々をからかう幸太。

鈴々

「照れてなんかないのだ!」そうして互いを認め合った3人はいつの間にか親友のような関係になっていた。

鈴々

「鈴々は鈴々。真名を預けるのだ」

幸太

「俺は幸太」

朱里

「私は朱里です」やがて空が薄暗くなり、3人は水鏡の庵に帰っていく。吊り橋では鈴々が手を取ってくれたので、朱里は帰りも怖がらずに渡る事が出来た。

 

 庵に着くと、心配そうな顔をしながら門前で待っていた水鏡が3人を出迎える。

水鏡

「まぁ……随分汚れちゃって」そう言うが口元は緩んでいる。全員無事で帰ってきたのが余程嬉しいのだろう。

朱里

「先生。これを」朱里はサロンパ草を水鏡に手渡す。

水鏡

「偉いわ。ちゃんと採ってこれたのね」

朱里

「はい!幸太君と鈴々ちゃんが手伝ってくれましたから!」

幸太

「じゃあ先生、俺は冒険者組合にコレ持っていきます」切り取った小鬼の耳が詰まったずだ袋を水鏡に見せて踵を返すが、水鏡に制される。

水鏡

「待ちなさい幸太。十三才以下は組合に受け付けてもらえませんよ」

一刀

「俺が着いていく。年齢もそうだけど、口の回らないお前じゃ安く買い叩かれるぞ」と、いう訳で一刀が幸太を連れて麓の冒険者組合に出かけていった。

 

 翌日。男子2名も居合わせる中、水鏡が愛紗の包帯を外してみると、足は見事に完治していた。

水鏡

「まあ。腫れがスッカリ引いてるわロンパ草がよく効いたようね」

一刀

(……フザケた名前の薬草だけど効能は確かなようだな)

(そうね。バカにしているとしか思えない名前だけど……)様子を見にきた一刀と忍がそんな話をしている。

愛紗

「……それでは!」

水鏡

「もう歩いても大丈夫」足をさすりながら水鏡に感謝の言葉を告げる愛紗。

愛紗

「水鏡殿にはスッカリ世話になってしまって。何とお礼したら良いか……」

水鏡

「困った時はお互い様。お礼など別に……」背中を向けたまま、医療道具を片付け、遠慮の言葉を口にする水鏡に食い下がる愛紗。

愛紗

「それでは私の気が済みません。何か私に出来る事があれば、言っていただけますか?」

水鏡

「それなら一つお願いがあるのですが……」道具を片付ける手を止めて、愛紗に向き直ると水鏡は意外な事を頼んできた。

水鏡

「ご迷惑かと思いますが、あの子達を、朱里と幸太を一緒に旅に連れていってほしいのです」これには愛紗だけでなく、一刀も忍も驚いた。

愛紗

「えっ、孔明殿達を旅に?」

一刀・忍

「「?」」

水鏡

「はい。朱里は以前から旅に出て世の中を見て回りたいと言っていましたし、幸太もいずれは元いた世界に帰りたいと。私も、若い頃はあちこち旅をして見聞を広め、多くのモノを得ました。ですから、あの子にも同じようにさせてやりたいと思ってはいたのですが。ご存じの通り、最近は物騒ですし。それにいくらしっかりしているとはいっても、子供だけで二人旅というのも……それでもし宜しければ、あの子達を旅のお仲間に加えていただきたいのですが……」

愛紗

「それは別に構いませんが……水鏡殿はそれで宜しいのですか?」

一刀

「俺達も元の世界に帰れる保証は何もないんです。それなら幸太もここに置いてもらった方が良いような気がしますが……」

水鏡

「ええ、そうですね……確かにあの子達がいなくなるとここは淋しくなります。しかし、それはあちらにいる幸太のご家族も同じ気持ちでしょう?それに旅に出たいというのは、朱里が私に言った、たった一つのおねだり。その気持ち、叶えてやりたいと思います」目に涙を浮かせながらも、水鏡の決心は揺るがない。

一刀

「まぁ確かに幸太は俺達が預かるのが道理ですけど……愛紗、忍。どうする?」

「良いんじゃないかしら?」

愛紗

「では我々一同……」

愛紗・一刀・忍

「「「責任を持って諸葛孔明殿をお預かりします!」」」こうして旅の仲間が一気に6人に増える事になった。

 

 ところで、星はどうしたかというと……

「……メンマ……あれ?」先日の霧の中で道を外れながらも、ずっとメンマの事を考えていて、今頃になって1人はぐれたのに気づくのだった。

 

 

 

 

 




アニメとの違い
・朱里は単身サロンパ草を採りに行く→幸太と2人。
・崖から落ちそうになった朱里を受け止めるのは飛び出してきた鈴々→幸太
・サロンパ草を採った後、鈴々は朱里を真名で呼ばないと宣言→この時点で真名を預かる。
・星はその日の内にみんなとはぐれたのに気づく→霧の中を数日さ迷ってから気づく。
・小鬼(ゴブリン)登場はオリエピ。尚、サロンパ草は本家アニメに出てきます。
次回以降、オリキャラは当分現れません。

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