本文中の数字ですが、基本的に地の文及び一刀のセリフではアラビア数字に、恋姫側の人物のセリフでは漢数字になってます。誤字じゃないのでご了承下さい。
村境まで降りてきた一刀と関羽はそこに墓石らしき、岩があるのに気づく。その横には小さな石が積まれていて、先ほどの岩へ花が添えられていた。
一刀
「……関羽さん、これは?お墓みたいだけど」
関羽
「分からない。ただ……この辺りは金持ちでなければ、墓なぞ作れんモノだが」2人がそんな会話をしていると、すれ違った村の老婆がそれとなく疑問に答える。
老婆
「最近はこの辺りまで賊が出るようになってのう。身ぐるみ剥がされて、殺された者も何人もおってな。花はそん人らへのせめてもの手向けじゃよ」
関羽
「……そうだったのですか」2人は墓に手を合わせて黙祷を捧げた。
老婆
「お役人様がしっかりしとったら、こんな物騒な事は起こらんじゃろうに。嫌な世の中になったモンだで……」そう呟いて2人が来た方向へ去っていく。一刀は何だかやるせない気持ちになった。
関羽
「北郷殿、どうかされたか?」
一刀
「イヤ。何となくは分かっていたけど、こういうのを目の当たりにすると、俺がいた時代というか、世界がいかに平和だったかを実感するなぁ……と思ってさ」この世界が一刀の知っている三国志の時代と同じ道を進んでいるのなら、今は戦国時代の真っ最中のハズ。因みに一刀はちょっとした三国志マニアだったので、ここの政治的状況は察しがついていた。実際には良く似て非なる世界だが。
関羽
「今は戦乱の世だからな……」
一刀
「……そうか」
やがて2人は村に入った。
一刀
「ところで関羽さん……」
関羽
「何だ北郷殿」
一刀
「その『北郷殿』って呼び方、どうにかならない?何だか肩がこるんだけど……」
関羽
「そ、そうか。では何とお呼びすれば?」
一刀
「最初に名乗った通り『一刀』でいいよ」
関羽
「しかしそれは【真名】ではないのか?」
一刀
「真名?」聞き慣れない言葉にキョトンとなる一刀。この世界の風習なのだろうか。
関羽
「【真名】とは文字通り、真の名前。親しき者同士にのみ呼ぶのを許されるもう一つの名前の事だ」
一刀
「なるほどね(そういえば、モンゴルなんかは悪魔に魅入られない為に敢えて変な名前を付ける風習があるらしいけど、それと似たようなモノかな?)」
関羽
「違う世界から来た北郷殿には分からないかもしれないが……迂闊に誰かの真名を呼べば殺されても文句は言えん。気をつけられた方が良い」
一刀
「そっか。ありがとう」
関羽
「北郷殿、字は?」
一刀
「7、8代ぐらい前の祖先の頃に国が廃止したから字もないよ。真名はない、というより真名以外の名前がないって方が正しいかな」
関羽
「では私は今後遠慮なく『一刀殿』と呼ばせてもらうが……」
一刀
「うん。関羽さんが許可してくれるまで真名を聞くのは止めておくよ」
村は小さいながらも、表向きは平和そうな感じだった。しかしどこか寂しげな印象も見受けられる。
関羽
「……こんな村の近くにまで賊が出没するとはな」
一刀
「酷い話だ……」
関羽
「一体、世の中はどうなって……うわ!」一羽の鶏がバタバタと跳ねながら、関羽の頭に襲いかかってきた。バランスを崩した関羽はその場にへたり込んでしまった
一刀
「関羽さん、大丈夫?」
関羽
「ああ、何ともない。今のは、もしや賊か?」
一刀
「違うみたいだよ」一刀が立てた親指で指し示した方に関羽が目をやると……。
関羽
「こ、子供?」砂煙を巻き上げながら、数人の子供達が走り回っていた。
??
「
一刀・関羽
「「鈴々山賊団?」」リーダーと思われる年端のいかない少女が得物を振り回しながら豚に跨がり、そう叫び他の子供達と共に猛スピードで立ち去っていった。一瞬の出来事にポカーンとしている一刀と、またしても尻餅をついてしまった関羽。
関羽
「な、何だったんだ?」
一刀
「さあな。冒険者組合で聞いてみるか。どっちにしろ、寄らなきゃならないし」関羽は一刀が差し出した手を取り、立ち上がる
関羽
「そうだな。組合は……うむ、すぐそこのようだな」
冒険者組合にジャイアントホッグの耳を引き渡し、幾らかの金を受け取った2人はさっきの子供達について尋ねた。答えてくれた受付の太めの中年女性は
女性
「はははは。そいつは災難だったねえ」
関羽
「笑い事ではない。何なんだ、あの悪ガキ共は?」
一刀
「鈴々山賊団とか名乗ってましたが?」
女性
「その名の通り、鈴々って子が大将の悪ガキ集団さね。ま、やってる事は畑を荒らしたり、牛に悪戯したりってトコだけどね。そういやこの間庄屋様の家の塀にでっかい庄屋様の似顔絵を落書きしとったけど、ありゃ傑作だったねぇ」
関羽
「それにしても親は何をしているんだ。山賊気取りの悪ガキを放っておくなんて……」関羽がそう言うと女性は切なげな目になる。
女性
「あの子、親はいないんだよ」
一刀
「え?」
女性
「何でも、小さい頃押し入ってきた賊に両親を……」
関羽
「そうでしたか……」
女性
「そのあと、この村の近くの山小屋に住んでいた母方の
女性
「あの子だって根は良い子なんだよ。今はただちょっとハメを外してるだけ。手下の子達の親も大目に見てやってるんだよ」
一刀
「……ありがとうございました。失礼します」一刀は女性に頭を下げて、関羽と冒険者組合を後にした。
その夜、一刀と関羽は宿屋に一泊した。冒険者組合で手にした金では一人一部屋取る余裕もないし、仮にも年頃の男女が一部屋では何かと問題があるからと、一刀は関羽だけに宿屋を勧める。
一刀
「俺は野宿するから」と言ったが、
関羽
「宿代は一刀殿のモノだ。だから私が野宿するのが道理だろう」と言って聞かない。結局二人部屋を取って一緒に泊まる事に決まった。
関羽は幼い頃、賊に我が家が襲われた晩の出来事を夢に見てうなされていた。
~回想シーン~
関羽の兄
「愛紗、起きろ愛紗!」
幼い関羽
「……兄者?どうしたのですか?」
関羽の兄
「戦だ。村が襲われた!」
幼い関羽
「えっ……?」
関羽の兄
「今から寝台の下に隠れるんだ。早くしろ!」慌てて言う通りにする関羽。兄は寝台の下にいる妹に告げる。
関羽の兄
「目を瞑ってジッとしていろ。絶対に声を出すんじゃないぞ!」そして賊に立ち向かう兄。賊と兄の喧騒に震えながら耐えていた関羽だったが、最後に寝台の下の隙間から見えたのは賊に殺されて苦悶の表情を浮かべた、変わり果てた姿の兄。
~回想シーン終わり~
関羽
「はっ!」そこで目が覚めた関羽。隣には寝台に腰かけた状態で心配そうに彼女を見つめる一刀がいた。
一刀
「関羽さん大丈夫?うなされていたみたいだったけど……」
関羽
「ああ、心配させてすまない。それより今日の昼過ぎにでも、例の鈴々とかいう子の下を訪ねてみよう」
一刀
「そうだね」
時間は少し戻り、昨日の夕暮れ。鈴々が住む山小屋に集まっていた山賊団の面々はその日の成果を糧にしばらく盛り上がっていた。
子供A
「今日も大成功!」
子供B
「そういやこの間庄屋の家の塀に描いた絵、消されちゃってたなぁ」
子供C
「傑作だったのに勿体ないよね~」
子供D
「ないよね~」
鈴々
「なーに、今度はもっとスゴいのを書いてやるから良いのだーっ!」
子供E
「さっすがおやびん」
子供A
「鈴々山賊団、サイコーッ!」
鈴々・子供達
「「サイコーッ!アハハハ」」烏の鳴き声が聞こえた。子供達は家に帰る時間だ。
子供C
「そろそろ帰る?」
子供D
「うん!」途端に表情が曇る鈴々。
子供A
「じゃああたしも」
子供B
「俺も」
子供E
「あたいも」子供達は山小屋を出て鈴々に手を振る。
子供B
「おやびんサイナラーッ」
子供C
「またねー」
子供A
「また明日ー」
鈴々
「うむ。また明日ぁー、みんなで山賊するのだーっ!」大声で約束を交わし、互いに手を振り合う。やがて子供達の姿はみえなくなり、鈴々は1人になる。
鈴々
「……明日になればまた、みんなに会えるのだ……。明日になれば……また……」寂しげに呟いて『鈴』の一字が書かれた、昼間に掲げていた旗を力なく握りしめて悲しい顔を浮かべていた。
一刀の仲間である現代人登場はもう少しお待ち下さい。アニメでいえば第二席辺りで1人出します。
アニメとの違い
・関羽の質問に答えてくれたのは飯屋の女将→職業を冒険者組合の受付に変更。
金のなかった関羽は飯屋でバイトして食事代とし、女将から納屋を借りて寝床とする→魔獣の討伐金で無事、宿屋に泊まる。
・子供達のセリフの順番があやふや。未登場なあの人の影響か?