新説・恋姫†無双~一刀と愉快な?仲間達~   作:越後屋大輔

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前回書いた恋姫モノで、インベーダー達に出番を奪われた内の1人、許緒。今作ではガッツリ登場します。


第二十席鈴々、馬超と大食い大会に参加するのこと

 幸太と朱里を仲間に迎えた一行は、次の街を目指して進んでいく。

愛紗

「鈴々、あんまり一人で先に行くな。はぐれてもしらんぞ」みんなより1歩も2歩も前を歩く鈴々に愛紗が注意する。そこへ朱里がこんな話を切り出す。

朱里

「そういえば、はぐれたお仲間の方、お名前は確か……」

「趙雲よ」

朱里

「その趙雲さんですが……結局、水鏡先生の庵にも訪ねてこられませんでしたし、はぐれたままで心配ですね」

愛紗

「けどあやつも子供じゃない。きっと同じ空の下、元気にやっているさ」

一刀

「そうだね……アレ?また分かれ道だ」一刀の視線の先には前回と同様に、二又に分かれていた道があった。

鈴々

「こんな時は鈴々にお任せなのだ」先日のように蛇矛を道の真ん中に立てる鈴々に忍と愛紗が突っ込む。

「鈴々ちゃん、またあの占いするつもり?」

愛紗

「……この前もそのせいで酷い目に遭ったではないか」

鈴々

「うぅ……今度は大丈夫なのだ!」

一刀

「それなら必要ないよ……幸太」

幸太

「りょーかーい」耳栓を外した幸太がそれぞれの道へ耳をすます。

幸太

「右の方に大きな街がありますね。左には何もなさそうっす。それに街を出るとこの道、繋がって一本に戻るみたいっす」

愛紗

「じゃあ右へ進もうか」

朱里

「そうですね」

「う~ん……?」

一刀

「どうした忍?珍しく神妙な顔して」

「展開がおかしい気がするのよね……本来起こるべき事が起こらないというか」

謎の声

『それは作者の趣味である。詳しくはあとがきへ続く』

幸太

「今、親父の声がしたような……」

一刀

「まさか。いくらお前でも、異世界にいるハズの親父さんの声まで聞こえる訳ないだろ?」

「メタ話は止めなさいよ……」

 

 何はともあれ、無事に街へ入った一行は宿屋をとってから各々自由行動を始める。

鈴々

「お腹空いたのだぁ~」

一刀

「オイオイ。昼飯食ってからまだそんなに経ってないだろ」空腹を押さえる鈴々と、それに苦笑する一刀が街をぶらついていると、何やら人だかりが出来ている。

鈴々

「袁紹の所みたいに人いっぱいなのだ」

一刀

「冀州の武道大会があった時な。こっちでも何かやるのかな?」一刀が立て看板に書かれた文に目をやると、聞き覚えのある声がその内容を読んで聞かせる。

??

「『大食い大会本日開催。飛び入り参加大歓迎!』だとさ」

一刀・鈴々

「「馬超!」」そこには冀州の武道大会及び曹操襲撃事件を切っ掛けに知り合った馬超がいた。

鈴々

「どうしてここにいるのだ?故郷の西涼に帰ったんじゃ……」

馬超

「ああ、勿論一度は西涼に帰ったさ。で、やる事やってまた武者修行の旅に出たんだけど、ここにきて路銀が尽きちまって」頭を掻きながら照れ臭そうに説明する。

一刀

「……て事は」

馬超

「ああ。あれに参加して、賞金を頂こうって寸法さ!」立て看板を指すが、

鈴々

「そうはいかないのだ!」

一刀

「え?」

鈴々

「優勝は鈴々達が頂くのだ!」

一刀

「ちょっと待て。俺は参加しないぞ?」一刀は慌ててそう言うが、互いにバチバチと視線をぶつけ合う2人は聞く耳持たない。

馬超

「ほう……いいだろう。お前なら、相手にとって不足はない!勝負だ張飛!」

鈴々

「望むところなのだ!」

 

陳琳

『と、いう事で今年も開催されました毎年恒例の大食い大会もいよいよ大詰め!それでは、ここまで勝ち残った四名の勇者をご紹介します!』ナゼかここでも大食い大会の実況を務める陳琳。これもお約束というモノである。尤も、冀州の武道大会には不参加だった一刀は気がついてないが。

陳琳

『まずははるばる西涼からやってきた馬超選手!続いて、虎の髪飾りは伊達じゃない!猛虎もビックリの食べっぷり、張飛選手!そして、皿の上には塵一つ残さず平らげる、正に人間竜巻!野原選手!』

「3人共、頑張んなさ~い!」

愛紗

「全く……鈴々の奴、何をやってるんだ……」

朱里

「幸太君まで……見てるこっちが恥ずかしいよ……」合流した愛紗達は、観客席から様子を観てため息を吐く。飛び入り参加した幸太も馬超、鈴々に負けない健啖ぶりを発揮して、朱里を呆れさせていたが、忍だけは爆笑しつつ3人を応援する。他の観客達はそんな事に気づく訳もなく、大歓声を上げている。

陳琳

『最後に、小っちゃい体からは想像も出来ない驚異の食欲!許緒選手!』そこには髪を2つの筒状に纏めた、年齢的には鈴々と愛紗の間ぐらいの小柄な少女がいた。歓声の中から『小っちぇーなぁ』『小っさい』という声がチラホラ聞こえる。それを聞いた許緒は唇を尖らせて、不満そうに

許緒

「……ん、小っちゃいって言うな」と、呟いた。

陳琳

『さあ、決勝は深すぎない程々の味が売りの[十万斤饅頭]!これを制限時間内にどれだけ食べられるか競ってもらいます!では……始めっ!』陳琳が開始の合図に銅鑼を鳴らそうとした瞬間、

幸太

「すいませーん。棄権しまーす」間髪いれずギブアップ宣言する幸太にズッコケる陳琳と観客及び、一刀と忍を除く仲間達。

陳琳

『なんと!野原選手、十万斤饅頭に手を付けずして降参です!これは一体どういう事でしょうか!?』ズレた眼鏡を直しつつ、進行を続ける陳琳。プロである。

「そういや幸太って甘いモノ苦手だったわね」

朱里

「そうなんですか?」

愛紗

「何ともまぁ……子供らしくない……」という訳で幸太も観客席に移動して、ここから先は馬超、鈴々、許緒で三つ巴の勝負となる。

 

陳琳

『それでは改めまして……始めっ!』今度こそ銅鑼が鳴り、3人の選手の闘いが始まった。

 ペースは遅いながらも確実に饅頭の数を減らしていく馬超。対して鈴々は片っ端から平らげていく。その2人を尻目に、涼しい顔で食べ進める許緒。

陳琳

『流石は決勝まで勝ち残った三名。程々の味の十万斤饅頭を苦もなく食べ続けてけています!』誰が優勝してもおかしくない、会場全体がそんな空気に包まれる。

鈴々

(くっ……!あの許緒って奴、相変わらず凄い勢いなのだっ!)

馬超

(ここまでの勝負で誰よりも多く食べているのに、まだあんな底力が……!?)

鈴々

(でも鈴々だって、負けないのだ!)更にペースを上げる鈴々。一方、馬超は既に限界に達して脱落。鈴々VS許緒の一騎討ちとなるも、鈴々も腹がピンチに陥っている。視線を脇に向けると十万斤饅頭の残り、ラスト3個で許緒の動きが止まる。

鈴々

(あいつ、残り三個で手が止まったのだ。ならこの一皿を食べれば鈴々の逆転勝利なのだ!)最後の皿に手を伸ばす鈴々。だがあと少しというところで、しばらく動きが止まっていた許緒が復活。何と皿を持ち上げ、流し込むように残りの十万斤饅頭を完食。しかも……

許緒

「おかわり!」この一言に最後の希望を失った鈴々も倒れ、大食い大会は許緒がぶっちぎりで優勝した。

 

 時刻は夕方となり、愛紗達は鈴々と合流して馬超とも久し振りに会った。朱里と幸太が初対面の挨拶をして、とりあえず今日の事を話題に会話しながら宿屋へ戻る事になる。

鈴々

「うぅ……優勝できなかったのだ」

馬超

「まぁ腹いっぱい食えたんだし、良しとしよう」

愛紗

「あんなので勝っても自慢にならんぞ」

幸太

「最後に出てくるのが肉とかなら、俺が優勝していたのに……」

朱里

「棄権して正解。関羽さんが仰る通り、恥をかくだけだよ」

一刀

「まぁまぁ愛紗も孔明ちゃんもそんなに目くじら立てなくても……」

馬超

「そういや趙雲はどうした?」

「訳あってはぐれちゃったのよ」

馬超

「えぇっ!?大丈夫なのか?」

愛紗

「まぁあいつなら心配あるまい」

一刀

「きっとどっかで生きているさ」

??

「おーい!」彼らを呼び止める声がする。先ほどの大会で優勝した許緒だった。

一刀

「君はさっきの……」

許緒

「ボクは許緒、字は仲康。全国を廻って、大食い修行してるんだぁ」

全員

(((((何の為に!?)))))揃って心の中で突っ込むが声には出さず、一刀達もそれぞれ自己紹介する。

許緒

「お前ら中々やるじゃん、ボクに大食いであそこまで張り合う奴は初めてだよぉ!」

鈴々

「鈴々達もあんな化け物じみた大食いは初めて見たのだ……」

許緒

「イヤァ、それほどでもぉ」ナゼか頭を掻きながら、視線を逸らし照れる許緒。その仕草に幸太は見覚えがあった。

幸太

「褒めてねーよ!って……この突っ込み、久し振りだな」

「アラ、ホームシックになっちゃった?」

幸太

「そんなんじゃねぇっすよ」

一刀

(あ~、幸太の従弟のしんのすけ君もよく同じ仕草してたっけ……)

許緒

「感傷的になってるところで悪いんだけど……ここで知り合ったのも何かの縁!親睦を深める為にも、これからみんなで何か旨いモノでも食べないか!」

馬超

「……ってお前、まだ食べるつもりなのかぁ……?」

鈴々

「ホントに底無しなのだ……」

許緒

「あー、お金の事なら気にしないで。大食い大会の賞金でボクが奢るから♪」

馬超

「いや、そうじゃなくて……」

「良いじゃない。折角だから、ご馳走して貰いましょ」

一刀

「俺達は食ってないしな」

鈴々

「鈴々は遠慮しとくのだ。しばらくは何もお腹に入りそうにないのだ」

馬超

「あたしも張飛と一緒に帰るよ。確か一緒の宿屋だったよな」鈴々と馬超以外の一行と許緒で夕食を共にしようと話がまとまりかけた時だった。

??

「何言ってんだよ!」少年の怒鳴り声が聞こえた。

幸太

「……っ痛!」鼓膜に激痛が走り、咄嗟に耳を塞ぐ幸太。

??

「借りた分はちゃんと返したハズだろ!」尚も少年の怒鳴り声は続く。その相手はいかにも悪人といった感じの3人組だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメとの違い
・最初の分かれ道で愛紗と鈴々は喧嘩になって愛紗は朱里と、鈴々は単独行動→占いより確実な幸太の聴力のおかげで喧嘩にならず、全員同じ道をいく。大食い大会も観覧する事に。本文で忍がこの件に言及しているメタネタあり。
・許緒のクレしん的ボケに突っ込むのは鈴々→幸太(従兄弟の設定の為)

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