元々黄忠の未亡人という設定を変えたかったのですが、ナゼこうなったかは私自身にもよく分かりませんw
~DB世界のその後~
その死から幾歳月。1日だけ現世に復活して、自分と同じ名前を付けられた孫娘の玄孫の成長を見届けた孫悟空は前世での記憶を全て失い、異世界に転生した。その世界こそ本作の舞台である。
履家という、平民ながらもそこそこ幸せな家庭に産まれた彼は名を真、そしてどういう訳か前世の名である『悟空』を真名として与えられた。
やがてこの世界で大人になった履真だが前世での『天真爛漫且つ永遠の少年』なイメージもなく、どちらかといえば理屈っぽいオッサンと化していたが、ナゼか容姿と戦闘力、人の良さはそのまま前世のそれを受け継いでいた。
前世の記憶も普通にないので、ある街で警備隊の任に就いた。30を過ぎてまだ20才にも満たなかったある女性と結婚。時期を同じくして警備隊長に昇進した。後に義弟となる、元盗賊の一員だった沙弥や一戒に出会ったのもその頃である。
やがて子供にも恵まれ、この乱世の中、履真は順風満帆な人生を歩んできた。どこかの悪党に愛娘
~話は我らが一行に戻る~
尚香が髪飾りを太陽の光にかざしてウットリ眺めていると、どこからか1羽のカラスが飛んできて、尚香の手から髪飾りを奪い取って再び空高く飛び去ってしまった。
尚香
「キャーッ!何するのよ、この泥棒!」
一刀
(食い逃げ犯に泥棒呼ばわりされる筋合いはないと思うけど……)一刀は心の中で突っ込みつつ、みんなと一緒に逃げていくカラスを追いかける。
忍
「理人、アンタ空飛べるでしょ?捕まえて取り返してきなさいよ」
理人
「何で俺が!?こんなガキの為に!」
朱里
「ここで借りを作っておけば親御さんに損害賠償をし易くなりますよ」
理人
「……なるほど。一理あるな」朱里のアドバイスに納得した理人は足の裏を火口にして飛ぼうとする。
その瞬間、ある宿屋の2階の窓から妙齢の女性が弓を構える姿が目に留まる。その女性が一本の矢を放つと、その矢はカラスの頭に当たるか当たらないかのギリギリのラインを掠める。
愛紗
「外したか……?」しかし、カラスは気絶して口に加えていた髪飾りを落とし、自らもまっ逆さまに落ちていく。
鈴々
「当たったのだ!」鈴々がカラスを、尚香は髪飾りを抱き抱えるように受け止めた。
尚香
「良かったぁ、壊れてない」そこに復活したカラスが鈴々の手から離れて襲いかかってくる。尚香をつついて羽でひっぱたくと何処へともなく去っていった。
尚香
「もうーっ、何すんのよこのバカ!」
鈴々
「一体どうなっているのだ?」
愛紗
「恐らく、矢が頭の近くを掠めた時に出来た強い空気の波に打たれて、気を失ったのだろう」
朱里
「でも、そんな事出来るんですか?」
愛紗
「出来るも何も、今目の前で見た通りだ」
朱里
「偶然じゃないんですか?狙いが外れて、それで偶々……」
愛紗
「そうかも知れない。けど狙ってやったとしたら、まさに神業……」
忍
(恐ろしいほどの腕前ね
いつまでも窓を見ていてもしょうがないので、一行は気持ちを切り替えてさっき尚香が見つけた店で昼食を摂った。
鈴々
「おいしかったのだぁ!」
尚香
「でしょ?一目見た時からここはイケるとピンときたのよね。シャオ様の目に狂いはなかったって事」ナゼか自慢気な尚香に噛みつく鈴々。
鈴々
「フンだ!鈴々はお腹が空けば何でも美味しい体質なのだから、別にお前が威張る事じゃないのだ!」
朱里
「鈴々ちゃん、それあまり自慢にならないような……」食事を終えた一行は、これまでずっと疑問に思っていた事を尚香に問い質す。
愛紗
「ところで尚香殿。お主が孫家の末の姫君というのは本当なのか?」
尚香
「勿論!」
愛紗
「別に疑う訳ではないが、何か証明するモノは?」
尚香
「証明も何も、こうして本人が言ってるんだから間違いないわ」ない胸を張る尚香。愛紗と鈴々と朱里は1度席を離れ、顔を付き合わせて話し始める。
愛紗
「と、言っているがどう思う?」
鈴々
「お姫様がおヘソ出して一人でウロウロしているなんてどう考えてもおかしいのだ」
朱里
「そうですね。最近陽気も良いですし、もしかして……」
尚香
「そこ!聞こえるようにヒソヒソ話さないっ!」3人に突っ込む尚香だったが、一刀に突っ込み返される。
一刀
「でもそれなら、どうしてお姫様が供も連れずにこんなところに?」
尚香
「ウッ!そ、それは……い、色々あるのよ」
幸太
「堅苦しいお城暮らしにウンザリして、家出同然に飛び出してきたんだろ?」
尚香
「な、何で知ってるのよ!?」
幸太
「さっき……あの2人と別れた時、自分でブツブツ呟いてたじゃねえか」
尚香
「何よ!盗み聞きしてたの?」
幸太
「俺は耳が良いからな。約50Km……12里以上(1里4㎞計算)離れた小石の砕ける音も聞き取れんだよ」そういう事か、と愛紗達が呆れて尚香にジト目を向ける。
尚香
「な、何よ?その目は……」そこにこの店の女将が急須を持って一行のテーブルにやってきた。
女将
「おやまあ、綺麗に平らげてくれたもんだねえ。お茶のお代わりいるかい?」
愛紗
「あ……申し訳ない」
一刀
「ありがとうございます」食器以外何も残ってないテーブルを見て、女将は嬉しそうに一行の茶碗にお茶のお代わりを注ぎながら尋ねてきた。
女将
「あんた達、旅の人みたいだけどやっぱり明日の行列を見物しに来たのかい?」
愛紗
「はあ?行列?」
女性
「おや、違うのかい?あたしゃてっきり……」
一刀
「女将さん、行列って何のです?」
女性
「実はここの領主様の姫さんのトコに隣の領主様の三番目の息子が婿入りしてくるんだけど、明日の昼過ぎにその行列がこの前を通るのさ」
忍
「へぇ~♪」
女将
「噂だと大層豪華な行列の上、婿入りしてくる三番目の息子ってのがとびっきりの美形だってんで、一目拝んどかなきゃあって近所の村からも人が集まってきてんだよ」
理人
「そうっすか。ま、何にしろ結婚とはめでたいな」
女将
「ところが……最近、妙な噂もあってね」
愛紗
「と言うと?」
女将
「ここだけの話なんだけどね……」女将が口に手を当てて、一行に内緒話を始める。
女将
「領主様の身内だか、側近だかが今度の結婚にえらく反対していて、その一味が婿入りしてくる息子の暗殺を企んでるんじゃないかっていう……」
一刀
「物騒な話だな……」
女将
「ホントだよ……折角の晴れの日だってのに、嫌ンなっちゃう」沈んだ表情でため息を吐く女将。
朱里
「けど、これで理由が分かりましたね」
愛紗
「理由?」
忍
「そういえば……この街に入る時、関所でやたらと調べられたわね」
朱里
「はい。あれはきっと怪しい者が入って来ないよう、警戒していたんですよ」
愛紗
「ならば、明日は領主も充分な警護を固めているハズだな」
朱里
「はい」
一刀
「そうだね。事前に漏れる陰謀なんて滅多に成功しないモノですよ」愛紗と朱里に同意した一刀は女将に向き直って励ます。
女将
「そうだと良いけど……とにかく、殺したり殺されたりはもうウンザリ。早く穏やかな世の中になってくれないもんかねぇ」一行に背を向けて仕事に戻る女将。その言葉に切なさを隠しきれない一行だった。
その店の別の席では……
店員
「ヘイ、お待ち!特製ラーメン叉焼、ネギ抜き、メンマ大盛りね!」星が相変わらず外套を被っただけの下手な変装で、スープと麺が見えないくらいメンマがてんこ盛りに乗ったラーメンを前にヨダレを垂らしていた。
~翌日~
尚香
「ふわぁぁ~、何で2人部屋に4人で押し込められなきゃならないのよ!おかげでろくに眠れなかったわ」1国の姫とは思えないほどの大あくびをしながら文句を言う尚香に忍がやり返す。
忍
「しょうがないでしょ?誰かのせいで路銀が足りないんだから」あの茶店で弁償させられた尚香の飲み食い分を浮かせようと、一行は宿屋にムリを言って、男女それぞれの2人部屋に4人ずつですし詰めになって夜を明かした。
鈴々
「お腹出してグースカいびき掻いていたクセによく言うのだ」
尚香
「ちょっと、いい加減な事言わないでよ!このシャオ様がイビキなんて掻く訳ないでしょ!?」
鈴々
「いーや、絶対掻いていたのだ!」
朱里
「はわわ……喧嘩はダメですよぉ」
理人
「……貴様ら、マジで燃やすぞ」仲裁する朱里と、静かだがドスを効かせた声で苛立ちをぶつける理人。
愛紗
「こら、そんな所でグズグズしてないで早く来ないか」愛紗が鈴々達を促したと同時に、空の雲が流れて、覆われていた太陽が姿を見せた。一瞬目の眩んだ愛紗の視界がハッキリすると、目に留まったのはあの女性が弓矢を放ったあの宿屋の窓だった。昨日の料理屋の女将の言葉と、たまたま聞こえた忍の独り言が脳内でフィードバックする……。
『明日の昼過ぎにその行列がこの前を通るのさ』
『恐ろしいほどの腕前ね』何かきな臭さを感じた愛紗は踵を返し件の宿屋に向かって走り出した。
忍
「待って愛紗ちゃん」忍に制される。
愛紗
「忍、済まぬが事は一刻を争うのでな。説明する時間はない」
忍
「だったら尚の事、1人で行動すべきじゃないわ。それにあれを見なさい」忍が指し示した先に居たのは例の2人組だった。
愛紗
「ん……?沙弥と一戒ではないか。ナゼあの二人がここに?」愛沙が首をかしげていると、2人は1軒の宿屋に入っていく。
忍
「どうやら目的の場所は同じみたいね。あちし達も行ってみましょ」
宿屋に着くと、まず愛紗が1人であの女性を訪ねる。後のみんなは裏口に控えて様子を見守る事となった。こちらは人数が多いので、全員で固まって動くと何かと目立つからだ。
愛紗はこの宿屋の従業員を呼んで、あの窓がある部屋に逗留している客に面通りを頼む。その部屋にやって来て見ると、女性とあの2人組が一緒にいた。
アニメとの違い
・本家アニメの愛紗のセリフを幾つかオリキャラが話している
・尚香は城を飛び出した理由を自ら口走る→独り言で呟いていたのを聴覚の鋭い幸太に聞かれている