次話はほぼ完成してます。サブタイ考え中なので、決まり次第投稿します。
曹操が治める許昌という街に、裕福な商家に生まれながらも見目麗しく心優しい少女がいた。名を
幼女は日々の糧を得る為、山羊の乳を運搬する仕事に就いた。その荷車は犬
ある日、丁原が働く妓楼の女将、
面珍
「丁原。明日から客を取りなさい」若干14才の丁原に告げる。現代日本だったらこの女将、問答無用で刑務所行きだが、生憎この世界に風営法は存在しない。
丁原
「そんなっ!」
面珍
「お前に選択の余地はないよ。分かったね」それだけ言うと店に戻っていく。その日帰宅して陳宮に相談したら、真っ向から反対された。
陳宮
「聖羅お嬢様、そんなのダメなのです!」今更だが、丁原は真名を『聖羅』という。
丁原
「でもねね。断ったら私、あの店を追い出されるわ。そうしたら他に行く所は……」陳宮の真名は『音々音』だが、親しい相手には真名をモジった『ねね』の愛称で呼ばれる方が多い。今はもう、そう呼ぶのは丁原しかいないが。
陳宮
「だったらねねがお嬢様を養うのです!そんな店、今日限りで辞めてしまうのです!お嬢様を傷物にしたら、ねねは亡くなった旦那様に申し訳が立たないのです!」
翌日に店を辞めてきた丁原。女将は今まで世話してやったのにだの何だの散々なじったが、陳宮が連れている犬に吠えられると腰を抜かし、ヘタり込んだまま去っていく2人を見送るハメになった。
それから2人は陳宮
丁原と陳宮は訪れた先々で色んな仕事をしながら旅を続ける。始めの内は大した問題もなかったが、ある村で丁原が病に倒れてしまう。
陳宮は医者に診せる金と薬代を稼ごうと街まで出て、1軒の商家の戸を叩き、仕事をさせてくれと請う。
陳宮
「お願いです。何でも良いから仕事をさせてほしいのです!一生懸命働くですから!連れを医者に診せたいのです!」だが応対した男は、無惨にも陳宮を足蹴にして怒鳴り付ける。
男
「うっるせえ!」
陳宮
「あうっ!」
男
「ここんトコ不景気で、只でさえ仕事がねぇってのに!お前みたいな他所から流れてきたガキに任す仕事なんざあるもんかっ!物乞いなら手前ぇの村でやりやがれ!」そう吐き捨てると、戸を強く閉めて下がっていった。尻餅をついた音々音は立ち上がると涙声で呟く。
陳宮
「……物乞いじゃないです……ねねはただ……お嬢様を医者に診せたくて……薬代が欲しくて……」うちひしがれる陳宮を慰めるように「クゥ~ン」と、一鳴きする張々。陳宮は服の袖で目を擦るとその頭を撫でながら、精一杯の笑顔を繕う。
陳宮
「心配しなくて良いです。ねねはあんな事ぐらいでへこたれないのです」
夕暮れの街をトボトボ歩く1人と1頭。その途中で立て看板に人が群がっているのを目にする。
《近隣の村々を襲う魔
陳宮
「黒蝮蛇ですか……お金は欲しいですけど、ねね達に魔獣退治なぞ、所詮ムリな話なのです」
張々
「クゥ~ン」
陳宮
「それより早く帰るのです」医者はおろか、一粒の米さえ持って帰れない音々音はせめて着替えぐらいはさせてやろうと、家代わりにしている寂れた神社に張々を連れて帰っていく。
神社の床では薄っぺらい布団と、申し訳程度の毛布にくるまった丁原が寝息を立てていた。陳宮は聖羅の体をゆっくり起こして、汗だくになった下着と寝間着を脱がせてから、洗濯したばかりのモノに着替えさせる。途中で目を覚ました丁原に陳宮は今日の成果が何もなかった事を告げる。
陳宮
「聖羅お嬢様。今日も一文も稼げなかったのです……だから薬も食べ物も手に入らなかったです」
丁原
「良いのよねね。さ、貴女もお休みなさい」途端に地響きがする。何事かと外を窺うと、目玉だけでも陳宮の頭より大きい巨大で鱗が真っ黒な蛇が神社に纏わりついていた。
丁原
「イャーッ‼」
陳宮
「ギョエ~‼」大蛇は舌舐めずりをしながらこっちを睨んでいる。
陳宮
「ば、化け物!お、お前なんかに、お嬢様には手を出させないのです!」膝を震わせながら、それでも精一杯腕を広げて丁原を庇う陳宮。
聖羅
「ねね!?私はいいから!貴女は張々と逃げて!」そう叫んで陳宮に駆け寄ろうとした丁原だが、病のせいかまともに立てず、這いつくばって近づいていき、陳宮に抱きつく。
陳宮
「……良いのです。ねねは……
聖羅
「ねねぇーっ‼」
??
「神社に纏わりついてんじゃねえよ!この罰当たりが!」
??
「……排除する」男の大声と女の小さな呟きが聞こえた。一瞬後、大蛇の尻尾を男が掴んで投げ縄のように振り回す。
??
「ソラソラソラソラーッ!」天高く投げ飛ばされた大蛇はやがて落っこちて、地面に激突しては、跳ね上がってバウンドするのを数回繰り返す。
??
「……終わり」傷ついた大蛇は女の得物に首を
??
「……さて、そんじゃ冒険者組合までコイツを運んでいくか」男が大蛇の死骸に手をかけようすると、女に袖を引かれる。その眼差しは丁原と陳宮に向いていた。
??
「……どうした、恋?」
呂布
「……流華、お腹空いた……」
流華
「腹減ったって……」どことなくサルに似ている流華が、整った顔立ちだが無表情な呂布に言い返そうとする。が、気が変わったのか
流華
「うん、このままじゃ流石に重すぎるな。オイ、そこの小っこいの。今からこ
陳宮
「お嬢様?」
丁原
「あれ?息苦しくないし、頭も痛くない。すっかり回復している!」
流華
「流石に
丁原
「ありがとうございます!でも私達お金がなくて……」
流華
「俺がいつ『金払え』って言った?礼ならあのチビと一緒に解体するのに手を貸せ」
黒蝮蛇の皮を裂いて、牙や目玉をしまうと流華は神社に手を合わせて頭を下げてから境内で火を起こした。
肉を串刺しにすると、焼きながら恋と共に食べ始める。焼けた肉からは旨そうな匂いが漂う。
恋
「……食べるか?」
陳宮
「い、いらないのです……ね、ねね達は物乞いじゃないのです」ゴシゴシと恋の方天画戟を磨く音々音。それを見た流華は串を2本、2人の前に差し出す。
呂布
「……恋は、お腹が空くとご飯が食べたくなる。ご飯を食べると幸せになる……一人で幸せになるよりみんなで幸せになる方がずっと幸せ。だから……お腹が空いているなら恋達と一緒に食べると良い」
流華
「解体手伝った分の報酬だと思えば良い。それなら物乞いにゃならんだろ」
丁原
「……そういう事なら。ねね、頂きましょう」
陳宮
「はい!お嬢様!」それから、何日も飲まず食わずだった聖羅と音々音は一心不乱に食べ続ける。やがて月も出た頃、満足するまで食べ終えると
呂布
「お腹いっぱいになった?」
丁原・陳宮
「「……は、はい」」
流華
「もう真っ暗だな……お前ら、あの神社で暮らしているのか?」
丁原・陳宮
「「っ……!」」
呂布
「……行く所、ないのか?」コクッと頷く2人に恋は腕を指し伸ばす。
呂布
「……だったら一緒に来ると良い。恋達と家に帰ろう」
流華
「恋。先に冒険者組合へ行くぞ」肉は殆ど残らず、皮と骨と目玉に解体された黒蝮蛇を大型の荷車に乗せて引いていく流華。後ろから荷車を押す丁原と陳宮。呂布は少し離れて、後ろからついてきて、その隣を並走する張々。こうして4人と1頭は、冒険者組合に向かった。
アニメとの違い
・陳宮のエピソードは『フランダースの犬』のパロディで陳宮はネロの役→パトラッシュ役の犬も一緒だがパロディ元は『小公女セーラ』がベース。陳宮の役どころはベッキィ。
・呂布は自分で釣ったらしい焼き魚を陳宮に与える→流華と倒した魔獣の肉を丁原と陳宮に与える。
オリキャラ⑪丁原
真名は聖羅。名前は『三国志』にも登場する、実在の人物から。但し、『恋姫』原作シリーズ及びアニメ本家に同名のキャラは登場しない。陳宮が以前雇われていた商家の娘。父親の死後、貧乏暮らしに。パロディではセーラ役。てか、作者が単に小公女パロディ書きたかったという理由だけて登場したキャラ。
オリキャラ⑫面珍
真名は不明。パロディでは悪名高いミンチン院長の役どころ。