冒険者組合についた。交渉を流華に任せて呂布達は一休みする。
冒険者組合受付
「いやぁ、黒蝮蛇を倒すとは流石長岡さんに呂布さん。これであの村も平和になりますし、私共は良い買い物が出来て、正に一石二鳥でございます」もみ手をする組合従業員。因みに黒蝮蛇の骨と皮は丈夫な武器や鎧の材料に、目玉は宝石として、高額で取引されるそうだ。褒賞金と買取り代金を受け取ると、丁原と陳宮を連れて大きなお屋敷を訪れた。
流華
「ここの太守、董卓様のお屋敷さ。お前らを置いてもらえるよう、頼んでみる」門前には番をしていた華雄がいた。
華雄
「何だ長岡?また呂布が捨てられた動物を拾ってきたのか。しかし今日のはまた、三匹共バッチぃな……」旅に出てから、殆ど着の身着のままで体を洗う機会もなかった2人と1頭は土と埃にまみれている。
呂布
「……でも可愛い」
流華
「そう言うな華雄。後で恋が風呂に入れるそうだから」
華雄
「まあ呂布がそう言うなら、そうなんだろう。飼うのは良いがちゃんと洗っとけよ?バッチぃままだと賈駆が煩いからな」もう誰も屋敷を訪れる予定はないので、華雄は自分の部屋に戻っていく。
流華
(華雄……連れてきたのは犬だけじゃねえぞ?何でスルーした……)流華は心中で華雄に突っ込みを入れつつ、呂布と屋敷の玄関へ入る。慌てて追いかける丁原と陳宮。
屋敷は内装も、丁原の元いた商家の家よりも立派だった。廊下を進んでいるとメガネの女性とかち合う。
賈駆
「ん?呂布!あんたまたバッチぃのを拾ってきたのね!?今週これで何度目よ?」
呂布
「
賈駆
「良いわよ数えなくて!長岡、あんたがついていながら、何で止めないのよ!」
流華
「あー……」何かを言いかける流華だったが、賈駆は呂布の方を向いてため息を吐く。
賈駆
「ウチにはあんたが拾ってきたのがワンサカと居るんだから、今更一匹や二匹増えたところで大差はないわ!飼うのは良いけどちゃんと躾けるのよ。この前みたいに、ボクの寝間でおしっこしたりしたら承知しないからね!」かなりの剣幕で捲し立てる賈駆に対して、淡々と返事をする呂布。
呂布
「分かった……賈駆の部屋ではおしっこさせない……」言いたい事は全部言ったらしく、その場を去りかけた賈駆だったが
賈駆
「……って!ちょっと待ったぁ!」踵を返し、再び流華と呂布の側に来る。
賈駆
「そっちのデッカいワンコは良いとして、他の二人は人間じゃない!」
流華
(やっぱりそうきたか……)
呂布
「バッチぃけど可愛い。バッチぃけど可愛い。バッチぃけど可愛い……おんなじ」張々と丁原、陳宮を順番に見つめて賈駆に向き直り、当たり前のように言いきる。
賈駆
「同じな訳ないでしょ?この娘達、名前は!?年齢は!?どこから連れてきたの?まさか可愛いからって人様のをお持ち帰りしたってんじゃないでしょうねえ!?どうなの?えぇ!?」怒り心頭の賈駆に怯えて、流華達の背に隠れる陳宮。丁原は不安気に呂布を見上げる。
呂布
「賈駆、怒るの良くない……」
賈駆
「えっ?」
呂布
「……怖がってる」ハッとする賈駆。
流華
「まあまあ、賈駆。俺が説明すっから……恋、そいつら連れて風呂に行ってこい」流華は賈駆の背中を押しながら退散していく。呂布は2人と一匹を連れて風呂場へ向かう。
流華
「……という訳でな」董卓の執務室で今日の出来事を、逐一報告する。部屋には賈駆と、今の主である董卓がいる。
賈駆
「で……何させるの?」
流華
「……何って、仕事か?」
賈駆
「当たり前でしょ?何もしない人間を置いとく訳にはいかないの」
流華
「まぁ(元の三国志じゃ、確か陳宮は軍師だったな。丁原は……何だっけ?一刀が居りゃ聞けるんだが)とりあえずは呂布と一緒に動物の世話をしてもらおうかと」
董卓
「私は良いと思いますよ」主の許可を得たので、一礼して執務室を出る流華。
一方、風呂に入っている丁原と陳宮。呂布に頭から湯をかけられて、体の表面に付いた汚れを洗い流される。
呂布
「バッチぃままだと賈駆が怒る……だから綺麗にする」そして2人の体中、顔、背中やお尻に至るまでゴシゴシ洗い始める。
陳宮
「え?あ、ちょっと、だ、ダメです!じ、自分で出来るのです!」
丁原
「キャッ、くすぐったい……ひゃう!」幼い割に、妙に色っぽい声をだしてしまう2人。スッカリ綺麗になると、呂布と同じ寝室に連れて来られた。そこには呂布が普段使っているのとは別に、2人用の寝台が新たに設けられていた。
丁原
「ねね、起きてる?」
陳宮
「眠れないですか、お嬢様?」
丁原
「貴女も?」
陳宮
「そうです。綺麗なお布団で寝るの、久し振りだから却って寝付けないのです……」
呂布
「丁原、陳宮……」いつの間にか呂布が2人の顔を覗き込んでいた。驚く2人。
丁原・陳宮
「「ふわぁっ!」」
呂布
「眠れないのか?」
丁原
「は、はいっ」
陳宮
「はいです……」
呂布
「じゃあ……」2人の寝台に潜ってきた。
呂布
「連れてきた子の中ですぐに慣れなくて、中々寝れないのいる。そんな時、恋はいつもこうしてる」軽く微笑むと2人の頭を抱き締めて、優しく包み込む。
丁原
(良い匂い……)
陳宮
(何だか思い出せないですけど……)
丁原・陳宮
((とっても懐かしい匂い……))
呂布
「ウチに連れてきたのはみんな恋の子供……だから二人もそう。だから……安心して眠ると良い……」2人は微睡みに落ちていきながらも、これから一生呂布と流華についていこうと心の中で誓った。
話は丁原が妓楼を辞めた日まで遡る。先述通り、この世界に風営法が存在しないのだが、許昌は曹操が治める街。よってここの商人は彼女が定めた条例を守らなければならない。
面珍は曹操に呼び出され、彼女の屋敷にて謁見していた。
曹操
「そなたが妓楼の女将か?」
面珍
「左様にございます、曹操様」恭しく平伏する面珍に曹操は告げる。
曹操
「この度、私が出した条例は知っているわね?この許昌で十六才未満の売春、並びにその強要は固く禁じたハズだけど?」暗に『お前は違反しているだろう』と面珍に詰め寄る曹操。当の面珍はスッとぼける。
面珍
「さて?何の事やら。わたくし、とんと身に覚えがございませぬ」
曹操
「そう、あくまでしらを切るつもりなのね……橙馬!」
一
「はい。面珍さん、貴女の所業は全て記録されてますよ?」メガネをかけた飄々とした男、橙馬一がハ○そっくりな球体の絡繰りを抱えてきた。斥候カメラと名付けられたそれは許昌一帯を飛び回り、賊の探索や犯罪の検挙に使われている。その数、現段階で11体存在する。
カメラは面珍と丁原のやり取りを録音していた。夏候姉妹以下、多くの配下が立ち合う中、一は抱えていたカメラのスイッチをONにして、収められた映像と音声を再生する。
~ここからカメラの収めた光景~
面珍
『お前を見初めたお客がいてね。明日はその人に抱かれな』
丁原
『!で、でも私まだ十四ですが……』
面珍
『年齢なんて書簡を適当に書き直せば分かりゃしないよ。お前は黙って体ぁ差し出しゃいいんだ」
~カメラ再生終わり~
悪事が全て、白日の下に晒された面珍。しかし考えがなかった訳ではない。玉座にて、額に青筋を浮かべている曹操にペコペコしながら何かを差し出す。
面珍
「曹操様。これでおひとつ、どうぞよしなに」差し出したは賄賂金だった。しかし、これが却って曹操の神経を逆撫でした。
曹操
「(怒)……私の決めた条例に逆らい、あまつさえ賄賂に目が眩む下郎と見なすとは……随分いい度胸ね。春蘭!」
夏候惇
「はい、華琳様!」
曹操
「妓楼は闕所!この面珍なる者は鞭打ち百叩きにし、市中を引き回した上で、即刻頸を刎ねろ!」
夏候惇
「御意!さあキリキリ歩け!」夏候惇は面珍を縄で縛り上げると、刑場まで引き摺っていった。
曹操
「……あの面珍とかいう女、他にも色々やらかしてそうね。妓楼を調べないと……」裁きを終えた曹操は、疲れきった顔でため息を吐く。
一
「じゃあ曹操さん。僕が件の店へテコ入れに行ってきますね」
曹操
「ええ、お願い。それと橙馬……」
一
「はい?」
曹操
「その斥候かめらとやら、もう少し増やせないかしら?我が領地は、この許昌以外にも広がりつつあるし……」
一
「分かりました……では次の予算会議までに見積もりを上げておきますね」一は曹操から兵士数人を借りて、闕所が決まった面珍の妓楼へと家宅捜索に向かっていった。さて、曹操はこの国で天下を取れるのか?そして一はこのまま、己の知識と能力を活用して、いつか曹操の右腕となるのか?それはまだ作者にも分からない……。
アニメとの違い
・董卓はセリフが一切ない(放送当時、声優さんが産休中だったそう)→一言だけセリフあり。
・曹操達が登場する辺りからオリエピ