それから温泉街の中にある茶店へ集合した曹操一派と我らが一行。
尚香
「もう、何よ!温泉にお湯がないなんてどういう事!?」尚香はさっきから膨れっ面で文句を言っている。
愛紗
「しょうがないだろ。地元の人の話では半月ほど前に起きた地震で、殆どお湯が沸き出さなくなったと言うんだから」
尚香
「おかげでお尻に痣が出来ちゃったわ!」
鈴々
「鈴々のお尻も真っ赤なのだ!」
夏候惇
「それにしても、これではせっかくの慰安旅行が台無しです」
曹操
「そうね。久し振りに温泉に入って疲れを癒そうかと思っていたのに、残念だわ」
鈴々
「鈴々も大きっなお風呂に入りたかったのだ」各自がぶつくさ愚痴っていると、朱里がこんな事を言い出した。
朱里
「あの、だったら皆さん、新しい温泉を探してみてはどうでしょう?」
愛紗
「新しい温泉を探す?」
尚香
「それってつまり、他に温泉が湧き出る場所を探して掘るって事?」
朱里
「はい。勿論、必ず見つかるとは限りませんが、やってみる価値はあると思います」
曹操
「燈馬、あなたはどう思う?」この男の能力をもってすれば、温泉を探すなど朝飯前だろうと践んで一に尋ねてみる曹操。
一
「可能性は充分にあるでしょう。それにしても……ププッ」
一刀
「……」
忍
「……」さっきまで理人の炎に追い回されて、ド○フのコントみたいにチリチリ頭で顔中煤まみれになった一刀と忍を見て、一は笑いを堪えている。尚、ギャグシーンなので一瞬後には、2人共元に戻っていた。
鈴々
「よーし!それじゃ早速、温泉を探しに出発なのだ!」鈴々が椅子から立ち上がると、尚香が口を挟んできた。
尚香
「ちょっと待ったー!」
幸太
「何だよ、ウッセーな……」テーピングで塞いだ耳へ更に手を当て、尚香を睨む幸太。
尚香
「せっかく探すなら、シャオ達とあんた達、どっちが先に温泉を堀り当てるか、競争しない?」
尚香以外全員
「競争?」
曹操
「ふむ。面白そうね」
尚香
「言っとくけどこれは只のお遊びじゃないわよ。もしこの勝負でシャオ達が勝ったら、あんた達はこのシャオ様の家来になってもらうわ」
夏候惇
「!……貴様ぁ!」
曹操
「春蘭!」尚香の物言いに腹を立てた夏候惇が椅子から立ち上がる。が、曹操がそれを制する。
曹操
「……孫尚香とやら、もし負けたら言う通り家来になってあげるわ」
夏候惇・夏侯淵
「「華琳様っ!?」」
一
「曹操さん?」
曹操
「……だがもし、私達が勝てば、関羽と藤崎は私のモノになってもらう。良いわね?」
愛紗
「えぇっ?」
尚香
「分かったわ」
忍
「……へっ?」
愛紗
「……って!何を勝手に!」
理人
「ったく!クソガキが」
一
「あのぉ~……」
一刀
「何だよ?一」
一
「それだったら、僕は男達だけで組みたいんですが、構いませんか?」曹操と友人達へ交互に顔を向けながら提案する一。
一刀
「何で?……まあ構わんが」
理人
「俺ぁ、別にいいけどよ」
忍
「それならあちしも異存はないわ」
幸太
「俺もっス」
曹操
「……三つ巴の競争って事ね。あなた達が勝ったら、どうしたいの?」
一
「もし僕らが勝ったら荀彧を許昌から追い出して下さい。それがムリなら、僕は貴女の下を離れて一刀達と行動を共にします」
一刀
(荀彧って、確か以前一を処刑するよう、曹操に進言した娘だよな)
忍
(そうそう。それが裏目に出て、却って自分が酷い目に遭ったのよね)
幸太
(……けど、一さんがここまで露骨に誰かを嫌うのって珍しいっすね)
理人
(あの冷血漢な一がなぁ……)普段良くも悪くも、人一倍他人には興味すら持たず、感情も見せない一だけに、友人達も意外に思ったようだ。
尚香
「……?え?まあシャオは良いけど」
曹操
「……その条件、呑むわ。よし!そうと分かれば出陣よ」
夏候惇・夏侯淵
「はい!」曹操が号令をかけると、一緒に席を立って駆け出す夏候姉妹。
愛紗
「え?あの、イヤ、ちょっと……えっ、えっ、ええええええぇー!?」引き止めようにも、取りつく島もない愛紗だった。
夏候惇
「華琳様、あんな約束をして良かったのですか?」ツルハシを担いだ夏候惇の問いに
曹操
「虎穴に入らずんば虎児を得ず、よ。関羽ほどの豪の者や藤崎のような能力者を手に入れるには、多少の危険はやむを得ないわ」
夏候惇
「ですが、いくら何でも負けたらあんな得体の知れない者の家臣になるなどと……」
曹操
「私達が勝てば良いだけの話よ。それならあの二人を手に入れて、燈馬も失わずに済むじゃない?」
夏候惇
「それはそうですが……」
曹操
「どうしたの春蘭?そんなに勝つ自身がない?」
夏候惇
「そういう訳では……」
曹操
「それとも……もしかしてヤキモチ?」
夏候惇
「……!な、何をっ!」
曹操
「心配しなくてもいいわ。例え関羽達が配下になっても、貴女の事はこれまで通り、可愛がってあげるから❤」曹操がそこまで言うと、ソッポを向いて足早に前に出る夏候惇。
曹操
「私の寝台が広いのは、貴女も知っているでしょ?」尚もからかってくる曹操に頬を染めながら、夏候惇は話を変えようと一番前を歩く妹に振る。
夏候惇
「ところで秋蘭。もう大分歩いているが本当に、それで温泉が見つかるのか?」
夏侯淵
「……桂花がいうには、疑似科学を集めた推移で温泉はおろか、地中に埋まっている土管も見つけられるそうなんだが……私にはよく分からん」夏侯淵はダウジングに使うL字型のロッドを両手に、意気消沈した顔を見せた。
未来チームの男子5名は、既に温泉ある場所を、おおよそではあるが見当をつけていた。
一
「ええ。これなら惑星規模での探索だって出来ますよ」
一刀
「まさか、一が人工衛星まで造っていたとはなぁ……」
理人
「しかし……こうして見ると、ここがヤッパ地球じゃないって事が分かるな」人工衛星から送られた映像で、外から見たこの世界の大陸は地球の世界地図とは、まるで違っていた。まず日本列島が存在せず、ヨーロッパと思わしき大陸も彼らが知る姿では大きく異なっている。
幸太
「じゃここは地球から遠く離れた惑星って事っすか?」
一
「若しくは宇宙とかを超越した別次元の世界ですね。それにしては三国志っぽい現状や、僕達の世界にも居た魔獣の存在とか似かよった部分が気にはなりますね」
忍
「それは後でじっくり考えましょ。今は真っ先に温泉を見つけないと」
一刀
「そうだね。愛紗を曹操に渡すなんて、とんでもない」
忍
「ちょっと、あちしはどうでもいい訳?」
一刀
「忍……『お前を渡したくない』って俺に言われてどう思う?」
忍
「キモっ!」
一刀達がバカな掛け合いをしている頃、袁紹、文醜、田豊の3バカトリオは森の中を進んでいた。当然ながら、宝物は見つかっていない。
袁紹
「……
田豊
「迷ってはいない、と思うんですけど……この地図あちこち虫に食われたりしてて、どうしたら印の場所に行けるのか、イマイチよく分からなくて」
袁紹
「ちょっと!それじゃ宝の在処に行き着けないじゃありませんの!」
田豊
「あっでも、この辺りなのは間違いない……ハズなんですけど……」話している内に自身がなくなって、段々声が小さくなってきた田豊。2人より数歩先を歩いていた文醜がふと何かに気づいて、後ろの袁紹に声をかける。
文醜
「あっ麗羽様、あれあれ」
袁紹
「見つけましたの?」袁紹と田豊は文醜が指し示した先の茂みに首を突っ込む。そこには簡素な家が立ち並ぶ集落があった。
袁紹
「こんな森の奥に人が住んでますのね」
文醜
「ちょうどいい、宝について聞いて見ようぜ」
田豊
「麗羽様、お待ちを。何かイヤな予感がします。まずは様子を……って?二人共、無計画に下りていかないでぇーっ!」田豊が止めるのも聞かずに、ズンズン集落に足を踏み入れる袁紹と文醜。そして、田豊の予感は当たった……
袁紹
「どうしてこんな目に遭いますの!?」
田豊
「だから言ったのにぃー!(泣)」
文醜
「チキショーッ、下ろせぇ‼」3バカトリオはある集団に捕らえられ、支柱に縄でくくりつけられていた。その集団一見すると人間、というより寧ろ人間以上に端正な顔つきをしている。だが皆、やや上向きに長く尖った耳を持っていて、明らかに人間でないのが分かる。
??
「θΩιαΨβΧγδΥ!」彼らの中から1人、袁紹に向かって何か怒鳴っているが言語が違うらしく、言っている事がサッパリ分からない。
袁紹
「あなた方何のつもりですの
文醜
「イヤ、麗羽様……それ以前にこいつら人間じゃないみたいっすよ」
田豊
「呑気に突っ込み入れている場合じゃないでしょ!?」
??
「&#%※〒∃∂∀」
??
「жеесршэ」
??
「ЮНЗЖ‰♯∪Ф」耳の長い連中はしばらく話し合っていたが意見がまとまったのか、再び袁紹に怒鳴り付けると、足下の薪に火を付けた。理由は不明だが、袁紹達を火炙りにするようだ。
袁紹
「お、お止めなさい!こんな事をして、只で済むと思ってますの!?」
文醜
「ま、待て!話せば分かる!」
田豊
「助けてぇーっ‼」正に3バカトリオの命は風前の灯であった。
その時、ナゼか竜巻が横向きに吹いて、3バカトリオを焼こうとしていた火が消し飛んでいった。直後、風上から耳長人間の言葉で語りかける者がいる。
??
「※∂∃!∈∋∀」
??
「麗羽様!
さて、この2つの声の持ち主は?果たして3バカトリオの運命は?それは次回の講釈で。
耳長人間の言葉に使った文字や記号は、全部適当です。何の法則もありゃしません。
アニメとの違い
・一刀と忍のギャグシーン
・曹操は温泉掘り競争に勝ったら愛紗を手に入れるつもり→愛紗と忍の2人を手に入れたい
・ダウジングするのは荀彧→夏侯淵。しかもやり方がよく分かっていない
・袁紹達が森で発見するのは曹操達で、宝を横取りされると思い込む→耳長人間の集落に入り、ナゼか火炙りの刑に。