一夜明けたこの日、孫策はテラスで本を読んでいた。そこへ周瑜がきた。
周瑜
「まだ眠そうね」
孫策
「昨夜は少し呑み過ぎたから」
周瑜
「関羽殿や北郷殿達と話が弾んでいたそうですが」
孫策
「ええ。異世界とやらの話、中々興味深かったわ。それに関羽はかなり腕も立ちそうだし、あのまま野に置いておくには惜しいわ。それにあの張飛って娘も……フフッ、あれ以上大きくならなければ庭で飼いたいくらい」孫策は犬になった鈴々を妄想していた。
《ワンワン、なのだ!》
周瑜
「フフお戯れを……」
孫策
「で、その客人達はもう起きているの?」
周瑜
「はい。既に朝食を済まされ、関羽殿と張飛殿、北郷殿、伍代殿は尚香様と山の狩り場へと」
孫策
「誰かつけてあるの?」
周瑜
「案内役として甘寧を」
孫策
「そう。なら良いわ」
周瑜
「孔明殿と藤崎殿は書庫が見たいと申しましたので陸遜が案内をしています」
~場面転換~
ちょうどその頃、陸遜に連れられて書庫に入っていた朱里と忍。
朱里
「うわぁ!こんなに沢山の書物、初めて見ましたぁ」
陸遜
「はい。政に軍略を始め、農耕、天文、史書、暦とあらゆる書物がここに集められているんです」
忍
「物理や数学、言語学に関する書物はないかしら?」
陸遜
「……その辺は、生憎と」
朱里
「それでもスゴいです!もしかして陸遜さんはここにある書物全てを読まれたのですか?」
陸遜
「ええ。私、書物が大好きなんです❤」
朱里
「私もです♪」
陸遜
「❤書物って良いモノですよね。新しい知識が波のように押し寄せてきて、それが身体の一番深いところに迸る喜びといったら……アッハ~ン❤」話している内に顔を紅潮させて、ドンドンおかしくなる陸遜に唖然となる朱里と忍。
朱里
「……イエ。私はそういうのとは、違うんですけど(汗)」何を隠そう、陸遜は本にハマると性的に興奮するちょっと
忍
「どんな世界の、どの時代にも異常性愛者っているのね。ハァ……」
~場面戻る~
孫策
「それと……野原とか言ったわね、あの男の子。今はどうしているの?」
周瑜
「それが……」周瑜が口ごもっていると、孫羌が来て説明役をかって出た。
孫羌
「黄蓋に街へと引っ張られて行きおった。しかし……あんな楽しそうな黄蓋を見るのは何年振りかのう?」
孫策
「……あれから五年。早いわね」5年前、この地で大きな戦があり、そこで黄蓋は夫を……ほどなくして、残された唯1人の息子も流行り病で世を去っていった。
周瑜
「もし黄蓋殿のお子が存命なら、丁度あのぐらいの年齢になってますね」
孫羌
「あの
そして街には黄蓋に腕をとられながら、あっちこっちに連れ回されている幸太。頼んでもいないのに服や玩具を幾つもプレゼントされて困惑気味の様子である。
幸太
「あ、あのぉ~黄蓋さん?こんなに貰っても使い道とかあんまり無いんすけど……」
黄蓋
「何を言っておる。子供が遠慮なんぞするモノではない。ホレ、次へ行くぞ!」黄蓋はその豊満な胸に幸太を埋めるように抱き抱えるとその状態のまま、次の目的地へ向かった。ある種の男の夢を若干8才で叶えてしまった幸太だが、本人はまだまだ花より団子な上に、実際に窒息死しかけたのだから、踏んだり蹴ったりである。
幸太
(……俺、このところ死にかけてばかりいるような気がする)
一方こちらは山へ狩りにきた愛紗達。
尚香
「しっ!」人差し指を口に当てると、空を舞う山鳥に弓を射る。ナゼかその弓は現代日本で売ってそうな、魔法少女グッズっぽいモノだった。
甘寧
「お見事です尚香様。獲物は私が」
尚香
「頼むわ甘寧」尚香が仕留めた山鳥を拾いに行く為、愛紗達と離れた甘寧。
尚香
「どう?この前会った黄忠ほどじゃないけど、弓にはちょっと自信あるのよね~」ドヤ顔で弓の弦に指を引っ掛け、クルクル回す尚香に鈴々がジト目を向けて言い放つ。
鈴々
「ふん!薄い胸を張って威張っても、ちっともカッコ付かないのだ!」
尚香
「ちょっと!薄い胸とはナニよ!あんたの方がよっぽどツルペタのお子様体型じゃない!」
鈴々
「温泉で見たけど、お前だって鈴々と大して変わらないのだ!」
尚香
「言ったわね!変わるか変わらないか、勝負してやろうじゃない!」
鈴々
「望むところなのだ!」段々ヒートアップしている喧嘩に呆れる愛紗達。
愛紗
「……って何を下らない事を」
鈴々
「下らなくないのだ!」
尚香
「そうよ!おっぱい勝ち組は黙ってて!」
愛紗
「イヤ。勝ち組って……」
尚香
「ねえ、あんた達はどう思う?」突然、一刀と理人に話を振ってきた尚香
一刀
「勝ち負けじゃなく、大きいのは大きいなりの良さ、小さいのは小さいなりの良さがあるんじゃないか?」
理人
「俺が思ってんのは唯1つ……」
鈴々・尚香
「「うんうん……」」理人が言いかけると興味津々で前のめりになり、頷きつつ続きの言葉を待つ2人。しかし……
理人
「ガタガタと五月蝿ぇんだよ手前ぇら!消し炭にしてやる!」理人は額に青筋を浮かべながら、手のひらから炎を発する。いわば炎の《か○はめ○》版いったところか。それを2人へ放つ。
尚香
「ま、マズいわ!」
鈴々
「逃げるのだ!」馬鹿馬鹿しい逃走劇を繰り広げる3人に一刀と愛紗は顔を見合わせ、ため息を吐くと
愛紗
「……山鳥でも探すか」
一刀
「ああ。そうしよう」歩きだした2人が木の隙間から何となく下を覗くと、孫家の城が見えて、そこには孫策と周瑜がいた。
それから一時間もした頃、テラスには孫家の兵が集められ、騒ぎになっていた。兵に何かの指示を出している周瑜の元に孫権が駆け寄ってきた。
孫権
「周瑜!」
周瑜
「孫権様……」
孫権
「姉様が襲われたって本当なの!?」
周瑜
「残念ながら……昼間ここで寛いでいると、屋を射掛けられまして」
孫権
「矢を……!?」
周瑜
「傷は浅いのですが矢じりに毒が塗ってあって、傷口から毒を吸い出して何とか一命はとりとめたのですが、意識は未だ戻られず……」
さて、城内が大変な事になっているのを知るよしもない愛紗、一刀、鈴々、尚香、理人は意気揚々と帰還してきた。鈴々は背中に大きな猪を背負っている。
鈴々
「大猟、大猟。今日のお昼はぼたん鍋にするのだ!」そんな彼らの前に突如、孫呉の兵士達が囲む。その内の1人が愛紗に剣を突き立て、こう宣告した。
孫呉兵隊長
「北郷、関羽、張飛、伍代。お前達の身柄を拘束する!」鈴々以外の3人は手錠をかけられて、謁見の間に連行される。
玉座には孫策は居らず、室内には孫権、孫羌、孫静、周瑜が並んでいて反対側で鈴々と尚香、甘寧、手錠をかけられた愛紗、一刀、理人と向かい合っていた。
朱里
「関羽さん?何があったんですか!?」
忍
「どうなってるのよ?」慌てて入ってきた朱里と忍はここまでの経緯を聞く。
朱里
「関羽さんが孫策さんを暗殺しようとした……?何かの間違いです!関羽さんがそんな事をするなんて絶対に有り得ません!証拠……証拠はあるんですか!?」いつになく激昂する朱里に孫権の答えは
孫権
「証拠はない」
朱里
「それならナゼ!?」
孫権
「確たる証拠はないが、姉様がいたところに矢を射掛けるにはあの山の狩り場が絶好の場所なのだ。そこに素性も知らない旅の冒険者が居たのだ。疑われるのは当たり前であろう」
忍
「どこが当たり前よ!そんな穴だらけの理論、納得出来る訳ないわよ!」
朱里
「そうです!大体狩り場には御家中の方が案内役として、付いていたのでは!?」
孫権
「付いてはいたが、ずっと一緒に居た訳ではないと甘寧は言っている」
甘寧
「孫策様が矢を受けたと思わしき頃、私は尚香様が射掛けた獲物を捕りに関羽殿の側を離れました」
朱里
「それなら尚香さんが近くに……」
尚香
「ちょうどその頃、シャオは張飛と一緒に関羽の側には居なくって……」すまなそうに証言する尚香。朱里の表情は沈む。
忍
「まだ諦めるのは早いわよ孔明ちゃん。用意された矢と獲物の数や、孫策さんに射掛けられた矢の角度とか調べれば、愛紗ちゃんの無実を証明するモノが……」そこに急いでやって来た幸太と黄蓋。
孫羌に耳打ちをして何かを伝える幸太。途端に顔が青褪める孫羌。そして周瑜に手招きしてやはり耳打ちをすると、孫権に向き直り、
孫羌
「孫権!関羽殿達を解き放ちなさい」孫権に指示する。
孫権
「叔父上!?しかし……」
孫羌
「異論は認めん。今すぐ枷を外せ」厳しい顔つきの孫羌に言われ、やむ無く愛紗達の手錠を外す孫権。
周瑜
「孫権様、どうやら些か勇み足だったようですね。孫策様が倒れられて、動揺するのは分かりますが……こんな時だからこそ冷静に物事を判断し、皆を率いるのが上に立つ者の務め。そうではありませんか?」周瑜の説得に孫権も納得した。
孫権
「そうだな周瑜。お主の言う通りだ」果たして幸太は孫羌に何を吹き込んだのか?そして孫策暗殺事件の真犯人は?それは次回の講釈で。
アニメとの違い
・朱里は甘寧にも孫策暗殺の動機と機会があると弁舌を振るい、怒った甘寧に殺されかけて最後は目を回す→その前に幸太が帰ってきて愛紗達の疑いを晴らす。
・黄蓋の家族についてはオリエピ。
次回、江東編完結の予定です。