新説・恋姫†無双~一刀と愉快な?仲間達~   作:越後屋大輔

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第三十九席桃花村、襲われるのこと

可進

「何じゃお主は?」

「曹操軍所属の燈馬です。恐れながら……我が雇い主と将軍閣下のご意見の折衷案がありますが、発言しても?」

可進

「構わぬ。申せ」

「まずはですね……」一は作戦の概要を可進に話して聞かせる。

可進

「……本当にそんな事が可能なのか?」怪訝そうな可進に、曹操の自信ありげな援護射撃が入る。

曹操

「この男ならやってのけるでしょう。それは私より、貴方達の方が良く分かっているんじゃない?」一刀と配下の忍へ振り向く曹操に2人は頷きを返す。

劉備

「お待ち下さい!」

可進

「ん?お主は確か義勇軍の……」

劉備

「賊軍なぞ所詮は烏合の衆。首謀者さえ討ち果たせば、後は何とでもなりましょう。可進将軍閣下、仰る通りここは一気に攻め潰すべきでしょう!その際はこの劉備めに是非先陣をお任せに!」劉備が自らを売り込もうと、一の案を一蹴して可進に進言した。

一刀

「劉備殿、何を勝手に……!」一刀が劉備を止めようとするが、劉備はそれを無視して更に可進に口上を述べる。

劉備

「この劉玄徳、朝廷に身も心も捧げる所存。その朝廷に弓引く敵が何万あろうと、決して恐れるモノではありません!」この言葉に気を良くした可進は

可進

「よくぞ申した。明日の先陣、貴様に申し付ける」

劉備

「はっ!閣下のご期待に答え、必ずや賊将の頸、挙げてご覧に入れましょう」

可進

「うむ。見事敵将の頸を取った暁には、貴様を官軍の将に取り立て妾の側近の一人としよう。期待しておるぞ♪」結局一が提案した作戦は却下となり、突撃にて賊軍を殲滅する方針で軍儀は進められた。先陣を仰せつかった劉備は喜ぶが、曹操一派は不満そうである。愛紗は沈んだ顔になり一刀、忍、理人も明らかに機嫌が悪い。

 

 本陣を敷いた場所に池がある。愛紗はその前に佇み、月を見上げて今は亡き兄を偲んでいた。

愛紗

「兄者……世の中を変える方法が見えてきました。私をお守り下さい」月に浮かぶ兄の顔に祈る。その顔が劉備に変わると、夕方の可進の言葉が脳内をフィードバックする。

『妾の側近にしてやろう』悲しげな表情になる愛紗の元に劉備が姿を見せた。

劉備

「関羽殿。そろそろ明日の作戦会議を……どうしました?」劉備から目を逸らし、ふて腐れて木にもたれ掛かる愛紗。

愛紗

「いや別に……」劉備は木に手を置き、壁ドン状態に持ち込む。

劉備

「関羽殿。私には貴女だけが頼りです」愛紗の肩を抱き、ジッと見つめる。

劉備

「ずっと側に居てくれますね?契りの証を……」

愛紗

「劉備殿?その……」どこか怪しげな笑顔を向け、愛紗に口づけようとする劉備。顔を赤らめた愛紗は堕ちそうになる。その場面にたまたま、出くわしてしまった馬超。そこで見たのは……。

 

 庄屋の屋敷では、床の中で体を起こした鈴々に朱里が薬湯を差し出していた。

朱里

「さあ、飲んで下さい」

鈴々

「朱里。これ何なのだ?」

朱里

「三日草を煎じたモノで、熱を下げるのにとても効果があるんですよ」

鈴々

「何か変な臭いするのだ~」

朱里

「馬超さんのなけなしの生気を吸い取って育った薬草なんですから、ありがたく飲まないとバチが当たりますよ♪」

鈴々

「不っ味ぅーい、もう一杯!」薬湯を一気に飲み干した鈴々であった(これだけ色々パクってよく怒られなかったモノだと作者は思う)。

 

 反乱軍の潜む山では、賊共が焚き火を囲んで酒を呑んでいる。そこにお馴染みの3人組(話毎に別人の設定ではあるが。詳細はWikipedia参照)の、B(チビ)とC(デク)が報告にやってきた。

賊B

「お頭方!念の為、もう一度様子を見て参りやしたが、義勇軍の奴ら本当に出払ってるようですぜ!」

賊1

「そうか」

賊C

「残っているのは見張りの兵と村人だけで……」

賊2

「へへっ、やっと好機がきたようだな」

賊3

「根気よく見張ってた甲斐があったぜ」

賊1

「ああ。今夜こそあん時の恨み、晴らしてやるぜ」この3人、先日の戦で我らが一行に敗れ、砦を奪われた賊共の残党である。

賊1

「戻ってきたら砦を奪われてるのは、今度はあいつらって訳だ」賊共は下卑た笑い声を上げた。

 

 官軍の本陣にある義勇軍の天幕では、劉備が作戦の指示を出す。

劉備

「まず関羽殿には、張飛殿の隊を率いてもらう」

愛紗

「はいっ!」やけに気合いの入った愛紗をニタニタ顔で見つめる馬超。

愛紗

「どうした?」愛紗が馬超に問うも

馬超

ぶぇぇつ()にぃー(ヘラヘラ)」2人が私語を挟んでいても、劉備は淡々と作戦指示を述べ続ける。

劉備

「その部隊を先陣に、馬超隊を……」天幕に1人の兵士が入っていた。

兵士1

「劉備殿!」

劉備

「何事だ」

兵士1

「村が……桃花村が賊の大軍に襲われました!」

愛紗・馬超

「「……えっ!?」」

劉備

「何だと?」

兵士1

「たった今着いた村からの伝令によりますと、相手はかなりの数。おそらくはこれまで退治した賊の残党共が協力して、一気に襲ってきたのではないかと」

劉備

「ックソ……」顔をしかめる劉備。愛紗と馬超は顔を見合わせる。

劉備

「で?」兵士に続きを促す劉備。

兵士1

「孔明殿が指揮を執って庄屋の屋敷に村人を集め、防戦に務めてますが、いつまで保つか分からない、増援を請う。と」

馬超

「何てこった!」

愛紗

「劉備殿!何をしているのです!?すぐに村へ!」

劉備

「いや。村には戻らない」

馬超

「ハァッ!?」

愛紗

「何を言っているんです!?早くしないと!こうやっている間にも村が!」

劉備

「大丈夫。堀と櫓で守備は完璧なハズ。きっと孔明殿が……」しれっと言ってのける劉備だったが、今度は怪我をした兵士が駆け込んできた。

兵士2

「伝令!賊軍は村の外堀を突破!至急救援を請……」言い切る前に倒れてしまった兵士。

兵士1

「おい、しっかりしろ!すぐに手当てしてやるぞ。おい誰か、運ぶのを手伝ってくれー!」しばらく呆然として言葉の出なかった愛紗だが、何とか気を持ち直して劉備に進言する。

愛紗

「劉備殿、お願いです!すぐに村へ援軍を!」

劉備

「だが我らは明日の先陣を承っている」

愛紗

「ですがっ!」

劉備

「明日の戦で功を立てれば、官軍の将になれるのだぞ!それも今をときめく大将軍、可進様の側近に!」

(本性表したわね)忍はポツリと呟き、劉備を睨み付ける。

愛紗

「しかしっ!今は村を救う方が大事では!?」

劉備

「確かに拠点を失うのは辛い。蔵に貯め込んだ軍資金を賊共に奪われるのも癪だ!」

一刀

「お前……こんな時に何言ってんだよ!?」

愛紗

「私が言いたいのはそんな事ではない!我々が村を見捨てたら、村人がどうなるかを考えて下さい!」

劉備

「関羽殿、そなたの気持ちはよく分かる。だが世の乱れを正し、多くの民を救うにはより大きな力を手にする事が必要なのだ。大儀の為、私の為に、側で尽くしてはもらえぬか?村は孔明殿に任せて、我らの輝かしい大儀の為に、共に歩んでほしい……私の事だけを考えて、村の事はやむを得ない事と、ここは一つ……」この期に及んでいけしゃあしゃあと身勝手な事を言う劉備の頬を思いっきりひっぱたく愛紗。哀れ、床に崩れ落ちる劉備。

馬超

「ヒュ~、お見事」そんな愛紗を絶賛する馬超。彼女も劉備を胡散臭く思っていたのだろう。

劉備

「ま、待て。幾らお主が豪の者でも、一人では死にに行くようなモノだぞ!それよりも大儀の為に……!」これに答えたのは愛紗ではなく、一刀だった。

一刀

「……1人じゃない。愛紗、行こう」愛紗の隣に並んで、共に天幕を去ろうとする。

愛紗

「一刀?」

一刀

「俺は……愛紗を1人にはしないよ。さあ村へ急ごう」愛紗は一刀に頷きを返すと、劉備を睨み付けながら言った。

愛紗

「貴方の大儀が何かは知らぬが、私には私の志がある!私の志は、真に愛するに値する者を守り抜く事だ!」そのままズカズカと出口へ向かい、天幕を出ていった。

劉備

「ま、待ってくれ!(焦)」すがり付こうとする劉備の頭を、大槌が叩きのめす。顔良が金光鉄槌を降り下ろしていた。

顔良

「私、帰る!」顔良は天幕を去った。

理人

「ケッ、クソが!」理人も気絶した劉備に毒づき、足からジェット噴射で天幕を出ていった。

「あちしも辞めさせてもらうわ。アンタと一緒に闘うなんて、もうウンザリよ」忍も鷹に化けて、天幕の隙間を抜けていった。

馬超

「アタシも抜けるぜぇ♪」こうして1人、また1人と劉備の下を離れていく。最早、劉備の野望は風前の灯と消えた。

 

愛紗

「鈴々、孔明殿。無事で居てくれ!」

顔良

「賢、お願い。死なないで!」愛紗と顔良の2人。共にそれぞれ大切な人の安否を気遣いながら、馬を走らせる。自らの足で走る一刀、空を駆ける理人と忍も同じ思いで村へと急いだ。

 

 

 

 

 

 


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