新説・恋姫†無双~一刀と愉快な?仲間達~   作:越後屋大輔

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中々終われない……


第四十席義勇軍VS盗賊、のこと

 愛紗達が村へ向かっている頃、曹操は自分の天幕で酒を煽っていた。劉備のせいで可進に提案を却下された一も相伴に預かっている。

曹操

「全く!何なのよ、あの劉備って奴!関羽ほどの者があのような男を主に選ぶなんて……」殆どやけ酒である。

「一刀達も何であんな男を……(忍だけは疑ってるようですが)さあ、もう一杯どうです?」一は曹操に酌をする。2人が呑んでいると、誰かが訪ねてきた。それを必死に夏候惇が抑えている。

夏候惇

「こんな時間に何の用だ!?」

??

「曹操に会わせてくれ」乱入してきたのは馬超だった。

馬超

「曹操、話がある。聞いてくれ!」

 

 馬超から事情を聞かされた曹操。傍らで一はニヤリと薄笑いを浮かべる。

曹操

「なるほど。それで私にどうしろと言うの?」

馬超

「関羽達は頭に血が登って飛び出しちまったが、たったあれだけの人数じゃ殺されに行くようなモンだ!だからアタシに兵を貸してくれ!」

曹操

「イヤよ!愚かな主を選んだ報いよ。助ける義理はないわ」冷たく言い放つ曹操に、馬超は土下座して請うた。

馬超

「頼む。この通りだ!」

曹操

「……っ!」

夏候惇

「……っ!」

「?」

馬超

「だから!頼む……」予想だにしなかった馬超の行動に一以外が息を呑む。

曹操

「かつては父の仇と、命を付け狙った相手に頭を下げるとは……馬超、何の為にそうまでする?」

馬超

「友の為だ!」天幕は当然地面の上に張られているので、擦り付けるように頭を下げた馬超の額は土まみれだが、そんな事はお構いなしに言い切る。

曹操

「下らないわね」一瞬たじろぐも、曹操の返事は変わらない。

夏候惇

「華琳様っ!」夏候惇が曹操に何か言おうとしたところに曹操はこう続ける。

曹操

「……春蘭。今から手勢を率いて、燈馬と偵察に出なさい」

夏候惇

「……っ?偵察?」夏候惇は曹操の言葉の意味を理解して軽く微笑むと、一つだけ質問した。

夏候惇

「偵察中に賊と遭遇した場合はいかが致しましょうか?」

曹操

「それは自分で判断なさい。いちいち私に聞かないで」

夏候惇

「分かりました。燈馬行くぞ!」

馬超

「曹操……」馬超は感謝の気持ちで目を潤わせる。ソッポを向いた曹操はどことなく気恥ずかしそうだ。つまり、いわゆるツンデレな曹操なのだがやはり一にはその辺が理解出来なかった。

「あの……曹操さん。可進将軍に採用されなかった例の武器を使っても?」

曹操

「賊軍討伐用に用意していたアレね?朝廷に却下された以上、貴方個人の所有物なんだから勝手にすれば良いでしょ?それより何グズグズしてるの?早く出発なさい!」

夏候惇

「はっ!直ちに!」

「(ニカッ)言質は取りましたよ」

夏候惇

「喧しい!」夏候惇は一の襟を掴んで引き摺って、馬超と共に桃花村へ向かった。

 

 桃花村では朱里が先導して、村人達を賊から避難させていた。

朱里

「これで全員ですね。守りを固めて籠城します!」避難場所の庄屋の屋敷には既に村人のほぼ全てが籠っている。

朱里

「負傷者の救護を最優先に。後、西の櫓に増援を……」怪我人を支えながら、朱里が指示を出していると、

??

「俺が行く!」

??

「私も行きます!」聞き覚えのある声が朱里を横切っていった。更に風邪でダウンしていたハズの鈴々も戦線へ乗り出す。

朱里

「鈴々ちゃん!まさかその身体で戦に出るつもりじゃ……!?」

鈴々

「こんな時に、鈴々だけ寝てる訳にはいかないのだ……」

朱里

「でも……!」

鈴々

「……愛紗は鈴々に留守を頼むと言ったのだ。だから鈴々は絶対村を守るのだ。そして村の子達と一緒にお花見するのだ……」

朱里

「鈴々ちゃん……」

??

「……待てよ」鈴々を制する声がした。両腕をドリル化させた賢が門の前に立っていた。

「どうせなら2人で賊を追っ払おうぜ♪」軽口を叩きながら、親指で門を指し示す。

鈴々

「分かったのだ。朱里、後を頼むのだ!」賢に頷いて、朱里に真剣な眼差しを向けた鈴々。

朱里

「分かりました!お二人共ご武運を!」朱里は2人を送り出した。

 

 庄屋の屋敷の門前には、丸太を持った賊が迫ってきていた。ハンマー代わりに門を叩き壊そうとしている。

賊1

「後はこの屋敷だけだっ!一気に落とすぞぅ!」そしてとうとう門はぶち破られた。

賊1

「よぉし!……っ?」門に押し込んだハズの丸太が浮かびながら、賊達の方へ進んでいく。抱えていた何人かの賊は宙ぶらりんの状態だ。

 丸太を掲げた鈴々が門から出てきた。

鈴々

「通せない……ここは絶対に通せないのだ……フンッ!」丸太を振り回して、ぶら下がっていた賊ごと堀に叩き落とす。

賊モブ数人

「「「ウワァーッ!」」」

鈴々

「ここから先は、この張翼徳が絶対に通さないのだ!命の惜しくない奴はかかってくるのだ!」蛇矛を回転させて賊を煽る。

賊モブ

「……あれが燕人張飛か!」

賊1

「オイ!何をビビっている!?相手は一人だ!殺っちまえ!」

「張飛、ムチャするな!」賢は鈴々の肩を掴むが、止める素振りは見せない。

「乗れ。馬代わりになってやる」鈴々を賢が肩車して、2人で突撃する。

賊モブ

「二人になったぞ!」

賊1

「それがどうしたぁ!」

賊モブ数人

「「「このぉっ!」」」賊達も2人目掛けて突撃してくるが、

鈴々

「ウリャ!テェイ!ハァッ!」

「ゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラァーッ!」賢のドリルパンチと鈴々の蛇矛で次々と堀に落とされる。

賊1

「いけいけぇーっ!押しまくれっ!」しかし多勢に無勢、少しずつ押し返される。更に鈴々の意識が朦朧とし始めた。

鈴々

(熱で体が思うように動かないのだ……でも負けられないのだ。愛紗との約束を果たすのだ……村を……何としても村を……愛紗との約束を……)もう1人の賊頭が立ちはだかる。得物の斧が鈴々の蛇矛を打ち払った。

「……っさせるかよっ!」賢は鈴々を庇いながらドリルで応戦するが、疲れからか金属の硬さを維持出来ず、螺旋の溝から血を流す。

賊2

「その頸、貰ったぁ!」賊が再び斧を振り落とした瞬間、何かに弾かれた。それは愛紗の青龍偃月刀だった。

 月を背に愛紗が馬で颯爽と現れる。賊の頭を思いっきり踏みつけて、鈴々の側に駆け寄った。

愛紗

「鈴々。よく、頑張ったな」愛紗に頭を踏まれた賊は後頭部を撫でながら、立ち上がるが、またしても誰かに踏みつけられた。二度目は顔良だった。

顔良

「賢、大丈夫!?」

「何、掠り傷さ」

顔良

「もう!貴方はそうやって、いっつも強がって!」説教したかと思いきや、頭を優しく抱き寄せキスをする。

 愛紗は地面に刺さっていた青龍偃月刀を手にとり、顔良は金光鉄槌を構えて賊達へ向き直る。

愛紗

「妹が世話になってようだな。礼は十倍、イヤ百倍にして返させてもらうぞ!」

顔良

「よくも私の愛しい賢を……皆殺しよ!」2人の気迫に賊達は怯え出す。

賊モブ

「黒髪の山賊狩りまで来やがった……」かといって今更後にも引けない。

賊1

「ええい弓だ!遠巻きにして弓で仕留めろ!」賊の弓兵達が一斉に弓を構える。

賊1

「よぉーし、射てぇーっ!」正に今、矢が放たれようとした瞬間、弓兵達の手が次々と逆に矢で射たれて弓を落としてしまう。愛紗達が矢の飛んできた西の櫓を見上げると、黄忠が弓を構えていた。

黄忠

「弓ならこの黄忠がお相手しますわよ!」

愛紗

「おお、黄忠殿。どうしてここに?」

黄忠

「話は後!今は屋敷の守りを!」そんな状況で賊達が大勢で突撃したが、全員まとめて担ぎ上げられて、気孔のようなモノで吹っ飛ばされた。

履真

「来い悪漢共!『荊州の盾』と謳われた俺の力!とくと見せてやる!」履真の後ろからは沙弥と一戒が操る、鍋や釜、包丁にまな板をモチーフにした不格好な絡繰りがついてくる。

沙弥

「見かけは悪いかもしんないけど、アタシが開発した漢王朝史上、最強の絡繰りなのよぉ!」

一戒

「その名も『だいどころん』でまんねん!」

履真

「そのまんまじゃねーか!」戦闘中にも関わらず、ボケとツッコミの会話が成立している3義兄弟。

 

 

賊3

「屋敷はまだ、落ちねえのかよ?」

賊2

「他はあらかた制圧したってのに……」

賊3

「まあ良い。ちゃんと秘策を練ってある」などと話していた賊頭達の耳に、叫び声が聞こえた。

賊モブ

「敵襲だぁーっ!」馬に乗った馬超が、夏候惇が率いる黒騎龍隊と共に賊の中に突撃してくる。

馬超

「西涼が馬騰が一子、馬超推参!」

夏候惇

「者共!我らの力を見せてやれ!」夏候惇が配下に檄を飛ばす。

黒騎龍隊

「「「「はいっ!」」」」その光景に賊頭達は唖然とする。

賊3

「錦馬超に……!」

賊2

「黒騎龍……!?」屋敷の門前に居る賊達にも伝令がきた。

賊1

「何っ!曹操軍が!?」

賊伝令

「その数、およそ三十騎!」

??

「悪党共!どうやら年貢の納め時のようだな」賊達が背にしていた櫓から、何者かが叫ぶ。振り向くとそこには……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメとの違い
・義勇軍に顔良とオリキャラが参加。
・鈴々はここで初めて朱里を真名で呼ぶ→既に互いの真名は預けている
次回こそ終わらせたい……。
・愛紗と星は赤銅山で1度、背中合わせに闘っている→前回、賊は公孫賛の部下が倒したので初めて背中合わせになる。

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