新説・恋姫†無双~一刀と愉快な?仲間達~   作:越後屋大輔

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今回はオリキャラが一気に2名登場です。


第八席袁紹、武道大会を開催するのこと

 ここは冀州領主の屋敷。後漢時代、三公と呼ばれる優れた人材を官職として輩出してきた名門、袁家が治めるこの地。だが当代の領主である袁紹はその血筋を受け継がなかった。金髪縦ロールのいわゆるおバカお嬢様で、政の才能は皆無。そのくせプライドだけは人一倍高く、且つ我が儘と何その全部盛り?なダメ太守であった。

 そんな袁紹だから、当然仕事はろくにしない。この日も真っ昼間から風呂に入り、侍女からマッサージを受けていた。

 

 この日、袁紹を訪ねてきた者がいた。後の三國志で名を馳せる曹操である。

袁紹

猪々子(いーしぇ)斗詩(とし)。二人揃ってどうしましたの?」

文醜

麗羽(れいは)様、曹操殿がお目通りしたいと、訪ねておいでですが」バスタオル1枚の姿で寛いでいる袁紹のところへ配下の文醜、顔良の2人が報告にやってきた。

袁紹

「お風呂に入ってようやく目が覚めましたのに、何で朝っぱらからあんないけ好かない小娘に会わなきゃならないんですの?」

文醜

「朝っぱらって……もう昼過ぎですよ」

袁紹

「睡眠不足はお肌の大敵ですのよ」今日も今日とて相変わらずのダメ太守ぶりに苦笑を漏らす事しかできない2人。

顔良

「とにかく、我が領内に逃げ込んだ賊や魔物を退治する為にわざわざ都から参られたのですから、ご挨拶しない訳には……」

袁紹

「分かってますわよ。服を着替えたら行きますから、もう少し待たせておきなさい」

 

 しばらくして謁見の間。袁紹はその玉座に腰掛け、曹操を出迎える。

 髪型は袁紹同様の金髪縦ロールでキャラが被っていなくもない。小柄な体に美しい顔立ち、一見すると人形のような愛くるしさを持つ曹操。だが彼女は有能で才に恵まれていて、後に三國志にその名を轟かせる覇王となるのだが、今ここではそれは語るまい。

袁紹

「都からわざわざ賊と魔物退治とは。ご苦労な事ね曹操」

曹操

「ええ。本来ならば私が出向く事ではないのだけれど、連中が貴女の領内に入ったとあらば話は別。放っておけば、みすみす逃がす事になるでしょうからね」

袁紹

「ちょっと、それはどういう意味かしら?」

曹操

「貴女が賊一人、魔物一匹も退治出来ない無能な領主だって事よ」鼻で笑う曹操。

文醜

「曹操!袁紹様に対して無礼であろう!」曹操に食って掛かる文醜、これだけなら主君思いの立派な家臣なのだが……

文醜

「いくらホントの事でも言って良い事と悪い事があるだろう!」袁紹を挟んで文醜の反対側にいた顔良がズッコケる。

袁紹

「猪々子、どういう意味ですの!?」

文醜

「あ、イヤ、咄嗟の事でつい本音が……」

袁紹

「ぬわぁ~んですってぇ~!」その様子に呆れる曹操。

曹操

「ふんっ。無能な領主に間抜けな家臣とは良い取り合わせね……恐れ入ったわ」

文醜

「どうだっ、参ったか!」

顔良

「ちょっと!今のバカにされてるのよ」3人の中では一番まともな顔良が文醜に突っ込む。

文醜

「えっ、そうなの?」

 

 曹操が帰ってからの謁見の間では……

袁紹

「全く!貴女達のせいで大恥をかかされましたじゃありませんの!」

顔良

「貴女達って、私は何も……」

文醜

「しかし良かったんですか麗羽様?賊も魔物も曹操に任せちゃって」

袁紹

「良いんですのよ。あんな汚れ仕事、あの小娘にやらせておけば」面倒事は嫌だ、と言わんばかりに全てを曹操に擦り付けた袁紹。つくづく情けない領主である。

袁紹

「そんな事より武道大会の方ははどうなってますの?」

 

 袁紹の屋敷を後にした曹操は馬に跨がって、2人の男女と街道を進んでいた。部下の女性は名を夏候惇という、長い黒髪と赤いチャイナドレスを身につけた曹操の右腕的存在である。もう1人の客将は男にしては線の細い、メガネをかけたインテリ風でとても腕に覚えがあるとは思えない。馬に乗らず徒歩で、曹操の馬に足並みを合わせながら尋ねる。

??

「曹操さん。袁紹氏はどうでしたか?」

曹操

「相変わらずよ。名門の出である事に胡座をかいて自分が無能である事に気づきもしない。あんなのが領主をしていると思うと虫酸が走るわ……」

??

「……そうですか」

夏候惇

「何やら感慨深そうだな……袁紹に拾われなくて良かったとでも?」

??

「まぁ、そんなダメ人間を1から鍛え直すのも、それはそれで面白そうですけど」

曹操

「貴方なら可能かもしれないわね……それはさておき、春蘭。兵達はどうしていて?」

夏候惇

「はっ。既に門外にて待機しています。合流し次第、すぐにでも出発出来ます」

曹操

「そう。で、燈馬。例の兵器はどうなってるの?」燈馬と呼ばれたこの男。お気付きだろうが一刀達同様、異世界からの転移者である。名は燈馬(はじめ)、仕組みを知っているモノなら材料だけで再現する『創造(クリエイト)』という能力を持っている。

 

燈馬

「砲台と手榴弾ですか?数はご注文通り作成してありますが、使い方にはくれぐれも気を付けて下さいね」もう何度も繰り返している注意をここでも呼び掛ける。

夏候惇

「いい加減しつこいな、お前も」

曹操

「それだけ危険だって事でしょ?」

「何せ命に関わりますから、それを承知の上で亡くなる方も後を絶ちませんし……」その会話の途中、大きな声がした。

鈴々

「うわぁ~。あのお姉ちゃん、頭がクルクルなのだぁ!」一刀達一行である。

愛紗

「これ、止めないかっ!」慌てて鈴々の口を押さえる愛紗。

一刀

「すみません。この子は髪型の事を言ったので、別に頭の中身が……って一か!」

「一刀!それに忍も。何であなた達まで?」

「こっちが知りたいわよ」

曹操

「あら、知り合い?」軽く驚く曹操に対して、一がこの世界に来て初めて会った夏候惇が思い出したように、

夏候惇

「そういえばお前も最初、この二人と同じ服を着ていたな」今の一はフランチェスカ学園の制服ではなく、曹操軍から支給されたこの世界で一般的な男性の衣類を着ていた。

曹操

「まぁ子供の戯言だし、燈馬と旧知の関係なら咎めるつもりはないわ。それより……髪といえば、貴女も中々良いモノを持ってるわね」曹操の視線は愛紗に注がれる。

愛紗

「イエ、これは人に褒められる程のモノでは……」

曹操

「下の方もさぞ美しいのでしょうね」

愛紗

「えっ?イヤ!それは、その……」

鈴々

「そうなのだ。愛紗は下の毛もしっとりツヤツヤ〇〆―▽◇※△★」忍が慌てて鈴々の口を塞ぐ。

「滅多な事を口にするんじゃないわよ!」

一刀

(愛紗の下の……)

「アンタも変な妄想やめなさいよ!」

夏候惇

「華琳様。お戯れはそのぐらいに……」夏候惇に諌められると

曹操

「そうね……」再び愛紗達に向き直り

曹操

「今は野暮用があって残念だわ。我が名は曹操。縁があったらまた会いましょう」

「そういう訳で、僕はこちらにお世話になってますから。一刀、忍。機会(おり)を見てどこかで落ち合いましょう」3人は去っていく。

「あれが近頃噂の曹操か……侮れんな」

「やっぱり曹操も女の子なのね」

一刀

「しかしさすが覇王と呼ばれるだけの風格は感じられるな」

「それにしても、お主らの仲間が曹操の下にいたとはな」

一刀

「ああ。あいつが一緒となると曹操を敵に回すのは危険すぎるな」

「確かに。色々とヤバいわね」

 

 数時間後……

愛紗・星・鈴々

「「「お帰りなさいませ、ご主人様!(なのだ!)」」」5人はメイド飯店で臨時のバイトをしていた。この辺りの魔物討伐は曹操に一任されているので、懸賞金の対象外となっていたのだ。

愛紗

「全く!どうして私がこんな事を……」客に見えない場所で、壁に手を付き項垂れる愛紗に星がピシャリと言う。

「今日の宿代にも事欠く有り様な上、魔物退治で金が稼げないのだから仕方あるまい。それにこの仕事が一番給金が良かったのだ」

愛紗

「しかし主でもない相手をご主人様と呼ばねばならんとは」

男性客

「すいませーん」

「お帰りなさいませご主人様。さぁ~こちらへどうぞ❤」途端に可愛らしい声で接客を始める星。その声はさながら元祖ギャルゲー第二段に登場するサーカス団の美少女にそっくりだった。

一刀

「そういや中の人が同……グハッ!」

「メタるんじゃないわよ!」意味不明なやり取りをする男2人だったが

女性客

「すいませーん」

一刀

「お帰りなさいませお嬢様。お席へご案内致します」

「承りましたお嬢様。少々お待ち下さい」イケメンの一刀と忍に女性客は誰もが、デレッデレな顔になっている。

愛紗

「星。お主にしてもあの二人にしても、上手くやり過ぎてないか?」

「腹が減っては戦はできぬ。先立つモノがなければ、これからの旅もままならない」

一刀

「そうだよ愛紗。これも軍略の内さ」

「そう思えば何て事はないわ。あ、お帰りなさいませ~」

愛紗

(恐るべし、趙子龍に異世界人達……)

 

 その頃、鈴々は店の食べ物をつまみ食いはする、皿は何枚も割る、といった失敗を繰り返して馘になった上、愛紗に怒られてふて腐れながら往来を歩いていた。

鈴々

「ちょっと失敗しただけなのに。こうなったらドーンとお金を稼いで、愛紗達をビックリさせてやるのだ!」道の脇の立て看板があり、その周りに人だかりが出来ていたのを見掛ける。そこには何やら書いてあったが、

鈴々

「う~ん。難しい字ばっかりで良く分からないのだ~」

??

「冀州一武道大会本日開催!優勝者には賞金と豪華副賞有り、だってさ」鈴々の近くに立っていた、髪をポニーテールにまとめている愛紗と同年代ぐらいの少女が教えてくれた。

鈴々

「賞金?じゃあ優勝すれば、お金をいっぱい貰えるって事なのだな!」

??

「まぁな。けど、そう簡単にはいかないと思うぜ」

鈴々

「何でなのだ!」

??

「そりゃ決まってんだろ。優勝するのはこのあたしだからだよ!」

??

「そいつぁ、聞き捨てならねえな」この会話に1人の男が割り込んできた。

??

「優勝はこの俺、高坂がいただく。勿論、賞金もな。お前らにゃ絶対負けねえぜ」身長が190cm.近い男が自信満々に宣言する。この時の鈴々は気づいてなかったが、彼もフランチェスカ学園の制服姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメとの違い
・袁紹について曹操に尋ねるのは夏候惇→オリキャラの燈馬一。
・鈴々がバイトを馘になる細かい描写はカット
・メイド飯店の最後のセリフは星1人→一刀と忍と3人に振り分け

オリキャラ③
・燈馬一
一刀達の同級生でやはり友人の1人。高校生ながらIQが非常に高く、あらゆる科学に通じている為、『創造』で武器や未来の機械類等、無機物に限り作成出来る。但し、ガンダムやタイムマシン等、元の世界に実在しないモノは作れない。高坂については次回。

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