私は『レイワ』! 博麗霊和! 霊夢おねーちゃんの妹!! 作:トマトルテ
「おねーちゃん! おねーちゃん!
「どうしたの
神社の縁側に座る巫女、霊夢の下に1人の幼い少女が慌てたように駆け寄ってくる。
絹のような黒髪を姉とお揃いの赤いリボンで結び、これまたお揃いの紅白の巫女服を着る。
違いと言えば、体の大きさとまん丸と大きな目ぐらいというそっくりっぷりだ。
「レミリアちゃんが血を吸うとか言って、私に触ったら腕が灰になっちゃったの!?」
「ほっといたら復活するから気にしなくていいわよ」
「そーなんだ! 吸血鬼ってすごいんだね!!」
信頼する姉から友達が無事だと知らされてホッとする妹をよそに、姉は後であの吸血鬼を殺してこようと物騒な考えを巡らせる。しかし、妹はそんな内心に気付くことなく無邪気に笑いながら姉に話しかける。
「ありがとう、おねーちゃん。レミリアちゃんが大丈夫なら、私は
「晩御飯の時間までには帰ってくるのよ」
「はーい!」
走っていたかと思うと、今度は宙に浮かび上がり、大急ぎで飛んでいくせわしない妹の姿を苦笑しながら見送った後、霊夢はしみじみと静かな言葉を零す。
「……あの子を拾ったのもこのぐらいの季節だったかしら」
そして、のんびりとお茶をすすりながら過去の記憶を思い起こすのであった。
その日は太陽が2つあるかのごとく、日差しが強かったと
「はぁ、桜が散ったばかりだって言うのに幾ら何でも暑過ぎよ」
朝っぱらから容赦なく降り注ぎ肌を刺す日差しに、幼くも端正な顔を歪めて霊夢はぼやく。
しかし、ぼやいたところでお天道様が海に流れて消えていくわけもない。
彼女はその事実にうんざりとしたようなため息を吐き、絹のような黒髪を乱雑に掻く。
「……さっさと神社の入り口だけ掃除して、後は家に引き篭もってよ」
本来であれば掃除すらやりたくないが、紅白の巫女服が示す様に、霊夢はここ博麗神社の巫女。
最低限、参拝客が通る道ぐらいは掃除する。主にお賽銭を手に入れるために。
「ま、どうせ来ても
と、言っても人里から遠く離れた博麗神社にはあまり人が来ない。
ここ幻想郷にある、唯一の神社と言っても良いにも関わらずにだ。
なので、本人の収入は祭りの出店とかで稼ぐ方が多いというのが、悲しい現実である。
「霊夢ー! 大変だー!」
「と、噂をしたらなんとやらね。どうしたの、魔理沙? そんなに慌てて」
そんな現実から逃避しようとしていた霊夢の下に1人の少女が現れる。
星のように煌めく金髪と金の瞳。それを引き立てる白黒のエプロンドレス。
霊夢とは腐れ縁的な関係にあり、暇さえあれば博麗神社に入り浸っている。
因みに霊夢が居ないと退屈で死んでしまうらしい。
「どうしたのじゃないぜ! 梅の木の下に…下に…」
「梅の木の下に?」
普段であれば驚くことはあっても、慌てることは少ない魔理沙の姿に霊夢は首をひねる。
はて、一体何がこの魔法使いを慌てさせているのかと思い。
「―――赤ちゃんが落ちてたんだ!?」
「はあ?」
素っ頓狂な声を上げてしまうのだった。
「……本当に赤ん坊ね」
「ひょっとして霊夢の子か?」
「一日二日で妊娠出産が出来るなら、私は神様やってるわよ」
「だよなぁ……昨日も会ったし」
駆け足で梅の木の前に辿り着いた霊夢を待っていたのは、産着を着た赤ん坊だった。
まるで必要がないと言う様に、未熟な青い実と共に赤子が地面に転がる異様な光景。
さしもの霊夢もそれには動揺し、取り乱してしまいそうになるが、隣の魔理沙の存在が何とか踏み止まらせる。
そして、地面に捨てられたままにしておくのも不味いと思い、恐る恐る拾い上げるのだった。
「子泣き爺とか、妖怪の類……て、わけでもなさそうね」
「と、なると本当に捨て子か? こんなに小さい赤子をわざわざこんなところで」
「……ん? 捨て子…捨て子ってもしかして儀式のことかしら」
「儀式? 何か知ってるのか、霊夢」
腕から感じる重さとぬくもりに戸惑いながらも霊夢はあることを思い出す。
「そうよ、思い出したわ! 一度捨てられた子は強く育つって話があるのよ。だから、この子もその類よ。いやー、この霊験あらたかな博麗神社にあやかりたいなんて分かってるわねー」
「へー、そんなものがあるのか、知らなかったぜ」
問題が解決したことで、気が楽になったのか、上機嫌そうに赤子をあやし始める霊夢。
魔理沙の方もなるほどと納得を見せる。だが。
「でも、そういうのって普通は、事前に話を通しておくもんじゃないのか? その様子だと聞いてないんだろ?」
至極真っ当な疑問が浮かび上がり、それを阻止する。
「……う、うっかりしてる親御さんだったんでしょ」
「そもそもの話、妖怪神社って呼ばれるここに置いてくか? 今までやったことないんだろ?」
「そ、それは……」
「さらに言えば、表じゃなくて納屋があるような裏側だ。私みたいな奴じゃないと来ないぜ」
魔理沙からの指摘に、霊夢は分かりやすい程に目を右往左往させる。
平時であれば妖怪神社の物言いに反論しただろうが、動揺のため反論が出ない。
実際、博麗神社は霊夢目当ての妖怪が集まるので、子供にとっては危険な場所ではある。
「ひょっとすると……今の話を知った妖精が、悪戯で連れてきたって可能性もあるな」
魔理沙の提示する可能性を無視することが出来ずに、霊夢は考え込む。
しかし、あまり考えるのが得意なわけではないので、ものの数秒で考えるのをやめる。
「そうね……よし! 一先ず、人里に行くわよ!」
「親を探すのか?」
「そうよ。親を見つければ
全部。そう語る霊夢には普段は見られない遠慮があった。
子供に強く育って欲しいという愛情故に捨てられたのか。
あるいは食い扶持を減らすために、情などなく捨てられたのか。
ズケズケとものを言う霊夢であるが、流石に後者を本人の前で言うのは
「……だな。そうと決まれば、里までひとっ飛びして2人で手分けして探すか!」
その遠慮を魔理沙も感じ取り、少し大げさに声を張り上げながら箒で浮かび上がる。
霊夢の方も、いつもの感覚で宙へと浮かび上がり、ハタと気づく。
「あら…?」
「なんだ? 急に赤ん坊の顔を覗き込んで。もしかして泣いてるのか?」
「そうじゃなくて、この子……笑ってるわ」
手の中の赤ん坊が、キャッキャッと楽しそうに笑っていることに。
「ははは! 高い所が好きなのかもな」
「そうね……全く、こっちの気も知らないで呑気に笑っちゃって」
笑う赤ん坊に釣られたように、霊夢も頬を緩める。
「さて、行きましょうか」
そして、人里へ向かって飛んでいくのだった。
赤ん坊を落とさないように、しっかりと胸に抱き寄せながら。
「ダメだ、霊夢。全く見つからん」
「……そっちも? こっちも梨のつぶてだわ」
その数刻後、茶屋の片隅でグッタリとしている2人の姿があった。
「こっちは産婆の婆さん達に聞いてみたんだが、ここ数日はどこにも子供は生まれてないらしい」
「私もこの子を連れて色々と聞きこんだんだけど……子供が居なくなった家もないみたい……」
「そうかぁ…となると、よっぽどの事情があったのかもなぁ。駆け落ちした末の子とか」
「そうね………」
「霊夢? なんか、やけに疲れてないか?」
情報を交換し合う2人だったが、霊夢は机に突っ伏したまま顔を上げない。
最初は親が見つからなかったことに、気を落としていると思っていた魔理沙だったが、流石に様子がおかしいと思い尋ねてみる。
「………子供の世話って大変ね」
「ああ……」
「おしめ替えないといけないし、お腹が減ったらミルクあげないとけないし、泣きだしたらあやさないといけないし……母親って偉大ね」
「お、おう……」
グッタリとした霊夢から語られるのは、世の親が通る苦難の道だった。
天才肌の霊夢ではあるが、流石にこれらのことを易々とこなすことは出来なかった。
「その…大丈夫だったか?」
「慌ててる時に、聞き込みをしてたおばちゃん達が色々と教えてくれてなんとか。何か、余ってた粉ミルクとか貰っちゃったし。他にも色々とおすそ分けされたわ」
「隣の荷物はそれか……」
何やら風呂敷に包まれた大量の荷物の正体に、魔理沙は乾いた笑い声を零す。
どうやら親は見つからなかったが、親切な人達は見つかったらしい。
「しかし、これからどうする? 仮に里親を探すにしても時間はかかるだろ」
「しばらくは私の所で預かるとして……実親も里親も見つからなかったらどうしよう」
そうして、2人は考え込むように黙ってしまう。
もし、赤子を見つけた時にこうなることが分かっていれば、見て見ぬフリをしたかもしれない。
貧しい家が食い扶持を減らすために子供を捨てる。珍しいことではないのだ。
納得は出来ずとも割り切ることぐらいは出来ただろう。
しかし、今はもうそういう訳にもいかない。
2人は小さな命を拾いあげてしまったのだ。
一度拾ってしまえば、見て見ぬフリは出来ない。
手放すのなら、自らの手でその温もりを捨てねばならないのだ。
そんな残酷な選択を戸惑いなく取るには、2人の少女は余りにも善良過ぎた。
「……なぁ、霊夢。なんか、店が騒がしくないか?」
「まったく、人が真剣に悩んでる時に迷惑ね。せっかく寝入った子供が起きたら大…変……」
「霊夢…?」
にわかに騒めき始めた店の様子に、迷惑そうに鼻を鳴らす霊夢だったが騒ぎの方を見て固まる。
魔理沙の方も釣られて首を回した所で、同じように固まる。
「ま、魔理沙…あの子が!」
「あ、あの子供が!」
そして、口をそろえて叫ぶのだった。
「「―――浮いてる!?」」
あの赤ん坊がプカプカと宙に浮いて笑っている姿を見て。
「ちょっと! 勝手に離れるんじゃないわよ!!」
その姿に肝が冷えた霊夢が慌てて自分も浮き上がり、天井近くに浮いている赤子を確保する。
そして、どこか不機嫌そうな顔をしている赤ん坊を叱りつけるのだった。
「こらッ! 家の中で飛んだら危ないし、他の人に迷惑でしょ!!」
「うー……」
「『うー』じゃないわよ。全く、少しは心配するこっちの身にもなりなさい」
厳しくも思いやりのある、実の親のような叱り方をする霊夢。
そんな彼女の姿と、生後一か月にも満たずに宙を飛んだ赤子の才能に、魔理沙は思わずつぶやいてしまう。
「……なあ、霊夢。本当にお前が生んだ子じゃないんだよな?」
「そんなわけないでしょ!? この子は正真正銘、神社で拾っただけの子よ!!」
「悪い悪い。冗談だよ」
まだ結婚もしていないのに、人の親になってたまるかと憤る霊夢に、苦笑いしながら謝る魔理沙。赤子が空を飛ぶ。普通であればそれだけで大騒ぎになりそうな出来事だが、普通ではない2人は驚きこそすれど、それだけである。
「まったく、もう。取りあえず今日は帰るわよ。ごちそうさまでした」
「まあ。いつまで悩んでても仕方ないか。ごちそうさん」
なので、2人は何事もなかったかのように店を出て行く。
しかしながら、一般の人間からすれば十分異常なことであった。
「あの子はもしかすると……神様の子供なのでは?」
故に、店に居た者達がそう思うのも不思議なことではなかった。
翌朝、自分の家に戻っていた魔理沙が赤子のことが気になり神社を訪ねると、そこには常ならぬ光景が広がっていた。
「祭りでもないのに……博麗神社に参拝客がいるだと…?」
長蛇の列と言うわけではないが、それでも賑わっていると言える数の参拝客。
普段は閑古鳥が鳴くこの神社としては、まずありえない光景だった。
「異変か!?」
「何が異変よ。神社に参拝客が居るのは普通でしょうが」
「私とお前の立場が逆だったら、絶対同じことを言ってるぞ?」
「………で、何しに来たの?」
「おい、無視するなよ」
思わず、何か人知の及ばぬ異変でも起きているのかと疑う魔理沙だったが。
霊夢にお祓い棒で頭を叩かれたことで正気に戻る。
その時の霊夢が若干目を逸らしていたのは、
「たく……まあ、昨日の赤ん坊が気になって来たんだが、こりゃなにが原因だ? 今日は祭りでもあったのか?」
「祭りじゃないわよ。強いて言えば、その子が原因だろうけど」
「あの子が? そういや、姿が見えないがどこに居るんだ?」
「あっちで世話焼きおばちゃん達に面倒を見てもらって――」
そこまで言った所で、まさに赤子の居る方角からどよめきが沸き起こる。
しかし、それは昨日のような動揺したものではなく、どこか興奮したようなものだった。
「なんだなんだ?」
「はぁ……またあの子は……しょうがないわね」
興味津々に首を伸ばす魔理沙とは対照的に、霊夢はため息交じりにフワリと浮き上がる。
そして、同じようにフワフワと浮き上がってこちらに向かってくる存在に向かって飛んでいくのだった。
「こーら! 大人しくしていなさいって言ったでしょ、もう……」
「うー!」
「……叱ってるのに笑うんじゃないわよ。まったくこの子は……」
霊夢が抱き留めた存在は件の赤ん坊である。
初めはいつものように叱ろうとしていた霊夢であるが、その腕の中で嬉しそうに笑う子を見ては怒る気にもなれず、諦めたように息を吐く。
「おおぉ! これが神様の子か!」
「ありがたやありがたや……」
「どうか私達の店にもご利益を……」
そして、その横では赤子に対して手を合わせる村人達の姿があった。
「……なぁ、霊夢。なんだこれ?」
「話せば長くなるんだけどね……」
そして、霊夢は語りだす。
なぜ、博麗神社に参拝客が居て、赤子が信仰対象になっているかを。
「なるほどな……昨日行った茶屋が何故か繁盛して、この子を抱っこした家の稼業も繁盛した。それに加えて赤ん坊が空を飛ぶっていう神がかった行為が結びついて、福の神扱いされたわけか」
「そう言うこと。極めつけは神社に捨てられてたってとこね。出生不明な点が逆に神秘性に繋がっちゃったのよ」
先程まで神社を賑やかしていた参拝客も帰り、いつものような静寂を取り戻した博麗神社。
しかし、心なしかいつもよりか活気があるように見えるその縁側で、2人はお茶を飲む。
「ただ空を飛ぶだけで神様になれるなら、魔理沙だって神様なのに大げさよね」
「私は魔法使いだぜ。ま、赤ん坊が飛ぶから有り難いんだろう。私達が歩いても何も言われないが、赤ん坊ならハイハイしただけで拍手喝采だ」
「ま、そうよね。赤ん坊がやるから珍しいだけで、本当に神様なわけがないわよね」
ミルクを飲み終わり、今は穏やかに寝息を立てている子を抱きながら霊夢は言う。
こんなどこにでも居るような子供が神様なわけがないと。
「と、言っても福の神なのは案外本当かもしれないぜ?」
「はぁ? なんでよ」
しかし、そんな霊夢に対し魔理沙がからかうように付け加える。
「祭りでもないのに、こんなにも神社が賑わうなんて神様の奇跡でもないとあり得ないだろ」
「失礼ね。……まあ、この子のおかげでお賽銭箱が潤ったのは事実だけど」
いつもであれば、魔理沙の物言いに手の1つは出ていたであろうがそれもない。
何だかんだ言って、神社が賑わったことで霊夢の心はホクホクしているのである。
何とも現金な巫女も居たものである。
「それにしても……この子はどこの子なのかしらね」
「だよなぁ。今日も聞いてみたけど、誰も知らないって言うしな」
「里の子じゃないなら、一体どこの子なのかしら……」
「―――外の世界から流れて来たのかもしれないわよ」
2人が頭を悩ましていると、誰も居なかったはずの背後から声が聞こえてきた。
「なんだ、
「外の世界から流れて来たってどういうことだよ?」
「……少しは驚いて欲しかったのだけど」
「悪いけど、肝試しには早すぎるわ」
真後ろから声をかけたというのに、何の反応も見せない2人に妖艶な女性、
そしてその能力を使い、忘れ去られた者達が集う幻想郷と外の世界を隔てた張本人である。
「まあ、いいわ。外の世界から流れて来たって言うのは言葉通りの意味よ」
「この子が外の世界で忘れ去られたってこと?」
「その可能性が高いわね。だって、里の子でもなければ、神隠しで攫ってきた子でもないもの」
「神隠しの主犯に言われても説得力がないわね」
「主犯だからこそやってないって分かるのよ」
クスクスとその美貌に胡散臭い笑みを張り付けて笑う紫。
外の世界と隔離された幻想郷に入る方法は大きく分けると2つある。
1つは外の世界において忘れ去られること。
2つ目は、この八雲紫の手によって神隠しに会うことだ。
「ふーん……ま、信じてあげるわ」
そんな実績があるために、胡散臭そうに紫を睨む霊夢だったがやがて目を逸らす。
彼女は何だかんだ言って、この妖怪に信頼というものを抱いているのだ。
「しかし、流れて来たなんて妙な言い方をするな。来たでいいじゃないか」
「あら、そうかしら? 博麗神社は幻想郷と外の世界の境目。言わば、波打ち際みたいなものよ。だったら、外から流れついたと言ってもおかしくないと思わない?」
「まあ……言われてみれば」
意味深に笑う紫に、何となく引っかかる魔理沙だったが、道理は通っているために一応の納得を見せる。
「さて、それよりも今はこの子の今後をどうするかじゃなくて?」
「どうするって言ったってなぁ…」
チラリと横目で赤子の様子を確認するが、変わらず呑気に霊夢の腕の中で眠っている。
「人の気も知らないで呑気なもんだな」
「そうね……さて、霊夢。一つ提案があるんだけど」
「……なによ」
そんな赤ん坊の様子に頬を緩めていた紫だったが、表情を引き締めて霊夢に向き直る。
そんな常ならぬ紫の様子に霊夢は警戒したように、目を吊り上げる。
腕の中の赤子を守るように強く抱き寄せて。
「―――その子を育ててみない?」
「……へ?」
赤ん坊を育ててみろ。
予想だにしていなかった言葉に、霊夢はまんまるに目を見開いてしまう。
因みに隣の魔理沙も同じような表情であった。
「な、なんで、そんなこと言うのよ。私のとこより養子とかに出した方がいいでしょ?」
「そうだぜ。小さい子はやっぱり両親が居る家で育つべきだ」
そして、当然のように霊夢では荷が重いと反論の言葉を返す。
それは偏に赤子のことを思っての反論であった。
だが、しかし。
「そうね。その子が
紫の言葉には閉口するしかなかった。
普通の人間は空を飛べない。
霊夢と魔理沙が飛べるのは、2人が人間として普通でないからだ。
一般の家庭では、赤子に空を飛ばれては連れ戻す術がないだろう。
赤子が危険な場所に行こうとするのを見ても、指をくわえて見ていることしか出来ない。
しかし、霊夢ならば止めることが出来る。普通ではないが故に。
「……まあ、無理強いはしないわ。子供を育てるって大変だもの。その場合は私が責任をもって里親を探してあげるわ。ただ、その後のことは保証できないけど」
「う……」
一般の家庭に預けられた赤子がどうなるか。
親が真っ当でも赤子の異質さ故に不幸になるかもしれない。
今は神の子扱いだが、バケモノ扱いされるようになるかもしれない。
そんな未来が霊夢の頭の中に過ってしまう。
「ねえ……1つ聞いても良い?」
「何かしら」
「なんでこの子を私に育てさせようとするの?」
しかし、それだけでは命を育てるという重い行為への踏ん切りがつかずに、霊夢は尋ねる。
なぜ、自分なのかと。
「うーん、そうねぇ……1つはあなたに何かがあった場合の
「後は?」
「その子は神社に住むのが自然だから……かしら」
そう言って紫はまた胡散臭そうな笑みを浮かべる。
霊夢は紫の言葉を信用するべきか、赤子と彼女の顔を交互に見ながら考え込む。
そして、しばらくうんうんと唸った後に諦めたように溜息を吐く。
「……分かったわ。この子は私が育てる」
「ふふふ、霊夢ならそう言ってくれると思ってたわ」
「調子の良い……」
「安心して、霊夢。必要なものとかは用意してあげるから」
「じゃあ、お金をありったけ寄越しなさい」
「教育に良くなさそうだから却下ね」
霊夢の要求をバッサリと切り捨てつつ、紫は隙間の中へと消えていく。
もう、用件は済んだのだろう。と、霊夢と魔理沙が息を吐いたところで。
「あ、言い忘れてたけど、その子の名前考えてあげなさいよ」
ニョキっと顔だけ隙間から出して、そんなことを言い残していくのだった。
「……なあ、霊夢。本当にその子を育てるのか?」
「言ったからには育てるわよ。それに、里の人は既にそのつもりで家にお下がりの服とか置いてってくれてるし」
そう言って、霊夢は部屋の隅に積まれている参拝客からの奉納品を指さす。
「必要なものが向こうから来るとか……本当に福の神みたいだな」
「だったら神社も儲かって大助かりなんだけどね。まあ、今はそんなことより名前ね」
「ああ、いつまでもその子じゃ呼びづらいからな」
紫の意見に賛成するのもしゃくだが、名前がないままでは可哀そうだ。
ということで、早速名前を決めることにした2人だったが。
「……名前ってどうやって決めるのかしら?」
「適当なのはダメだよなぁ……」
そんなに簡単に決まるなら世の親は悩みはしない。
結局、2人は3日間悩み通し、最後には見かねた紫も参戦してようやく決まったのだった。
「決めたわ。あんたの名前は―――」
告げられる名前は、霊夢の自分の名を入れたいという願いから1文字。
魔理沙の人と仲良くなって欲しいという願いから1文字。
そして、紫が縁起が良いと意味深に、拾った場所である梅にまつわる歌から取った読み。
それらを合わせて。
「―――
霊和と名付けられたのだった。
令和記念に書きました。
オリ主ってつけてるけど多分霊夢が主人公やります。
この作品の目標はお姉ちゃんしてる霊夢を書くことなのです。
霊和ちゃんはむしろヒロイン枠。
原作のどの時期とかは特になし。ZUN氏曰く、サザエさん時空らしいので。
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