私は『レイワ』! 博麗霊和! 霊夢おねーちゃんの妹!!   作:トマトルテ

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二話:お祓い

「ふぅ……だんだんと魔法の森に居るのが辛くなる季節に近づいているな」

 

 森の中から1人の魔法使い、魔理沙が汗をぬぐいながら現れる。

 背中には籠を背負っており、中にはやたら毒々しい色の草やキノコが覗く。

 恐らくは、魔法の実験や食用に使うつもりなのだろう。

 

「木に覆われて、暑くはないんだがその分湿度がな……夏の間は風通しの良い神社に入り浸るか」

 

 彼女は住居としている魔法の森の特性にげんなりとした顔をし、対策を練る。

 高台にある神社ならば、風通しは良く比較的過ごしやすい。

 昼間は神社で過ごし、夜は森に帰るという形ならば暑さも大分凌げるだろう。

 そんなことを考えながら彼女は、近くに流れる川へと歩いていく。

 採集で汚れた手を洗うのも目的だが、これから来る暑さを想像し、手近な涼に触れたくなってきたのもある。

 

「やっぱり川の近くは自然と涼しくなるな。家も打ち水でもやってみるか?」

 

 よいしょ、と籠を下ろし手近な岩に腰を下ろす、魔理沙。

 そして、彼女には珍しく少し気が抜けたようにボーっと川の流れに目をやるのだった。

 

「しかし、なんだ。今日は随分とだるい気がするな……」

「魔理沙おねーちゃん、疲れてるの?」

「疲れてるというか、気が抜けたような感じだな……ん?」

 

 何やら、聞き覚えのある声が聞こえてきたような気がして、顔を上げる魔理沙。

 すると、そこにはジーッと自分を見つめる霊和の姿があったのだった。

 

「なんだ、霊和か。こんなところで何をしてるんだ?」

「桃が流れてこないかなーって見てた」

「桃太郎でも読んだのか……とりあえず、こんな所には流れて来ないから無駄だと思うぞ」

「うん、私もそんな気がしてた。でも、魔理沙おねーちゃんに会えたからムダじゃなかった!」

 

 ニパっと笑い、ギュッと抱き着いてくる霊和の姿に魔理沙は頬を緩める。

 心なしか、ダルさが軽くなったような気がするのは保護者としての自覚からだろうか。

 

「ははは、私も霊和に会えてよかったぜ」

「うん! 霊和が居れば魔理沙おねーちゃんの穢れ(けがれ)を祓ってあげられるよ」

「そーか、そーか、穢れを……穢れ?」

 

 ニコニコと笑いながら、魔理沙は穢れていると言う霊和。

 その無邪気な笑みに、さしもの魔理沙もショックで固まってしまう。

 気分としては、『パパ、加齢臭臭い』と言われた父親のようなものである。

 

「霊和……ひょっとして私のこと嫌いになったか?」

「…? 大好きだよ。魔理沙おねーちゃんはただ穢れてるだけだし」

「いや、まあ月人とかから見れば私達は穢れてるらしいが……そこまでか」

「だって、魔理沙おねーちゃん元気がないんでしょ? だったら、穢れてるんだよ!」

「元気がないと、穢れてる…?」

 

 霊和の不思議な物言いに、魔理沙は首をひねる。

 そんな姿を見て、霊和は私が教えてあげるとばかりにフンスと胸を張って語り始める。

 

穢れ(けがれ)は、気枯れ(けがれ)。つまり、気が枯れているって意味があるの」

「気が枯れている……だから元気がないってことか?」

「そーいうこと! だからそれを清めれば自然と元気が戻ってくるんだよ!」

「なるほどな。元気がないことを穢れてるって言ってたんだな」

 

 とりあえず、自分が嫌われていたわけでないことを理解し、ホッと胸を撫で下ろす魔理沙。

 そして、恐らくは霊夢からの受け売りと思われる説明を語る霊和の頭を撫でる。

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて穢れを祓ってもらうとするか」

「うん、任せて!」

 

 魔理沙からの言葉に、パァーと顔を輝かせ、霊和は彼女を川瀬へと引っ張っていく。

 

「しかし、穢れを祓うって何をする気なんだ?」

「いつもと同じことをするだけだよ。水で洗って流すだけ」

「ああ、参拝前にやるあれと同じか」

「うん。でも、今日は特別に霊和がやってあげるね!」

 

 小さな手で川の水をすくい、せっせと魔理沙の手へとかけていく霊和。

 その微笑ましい姿と、水の冷たさに目を細めながら魔理沙は思う。

 こんなことをされれば、誰でも元気を出さざるを得ないだろうと。

 

「はらいたまーえ、きよめたまーえ。まもりたまーえ、さきわえたまーえ」

 

 何やらおかしなイントネーションの唱え言葉を聞きながら、最後に顔を洗う魔理沙。

 そうすると、本当に体の中からダルさが抜けたように感じられ、自然と目も冴える。

 

「はい、これでまがごととか罪とか穢れとかは全部流したよ」

「ありがとうな。しかし、みんながみんな川に流してたら、いつかは悪いもので溢れかえりそうだな。外の世界だと、そんな感じで川や海が汚くなっているらしいし」

 

 流された先で穢れや罪が合体して、そのうち魔王でも生まれそうだと笑う魔理沙に、霊和は特に気負うことも無く笑って、即答する。

 

「だいじょーぶ! 私が流したものは、飲み込まれて、吹き飛ばされて、最後は消えるから!」

「えらく、抽象的だな……まあ、大丈夫ならいいんだが」

 

 これまた霊夢から聞いたと思われることを、自信満々に語る霊和に、思わず魔理沙は苦笑いを零す。あまりにも、その得意そうな顔が霊夢と似ていたがために。

 

「さて、霊和のおかげで元気が出たのはいいが、これからどうするか」

「どうするー?」

 

 元々、少し休憩するつもりで来ただけなので、魔理沙だけならば別に家に帰ってもいい。

 しかし、足元で可愛らしく小首を傾げている霊和を、放置するわけにもいかないだろう。

 なので、このまま遊びにつきやってやるべきかと、魔理沙が考えていると突如声をかけられる。

 

「あれ? 魔理沙さん何やってるんですか?」

「ん、お前達は……いつもの三妖精達か」

 

 魔理沙が振り返って少し目線を落とすと、そこには三人の子供。

 否、背中から羽を生やした妖精達が居た。

 

「あ、やっほー! サニーちゃん!」

「こんにちレイワー!」

 

 妖精達の登場に、霊和は顔をパッと明るくして、オレンジのツインテールの妖精とハイタッチを交わす。

 彼女の名前はサニーミルク。光を屈折させる程度の力の持ち主だ。

 

「ルナちゃんとスターちゃんもこんにちは!」

「相変わらずテンションが高いわね、霊和」

「こんにちは、霊和」

 

 そして、サニーの後ろから残りの2人が現れる。

 黒髪ロングに青のリボンがチャームポイントの、スターサファイア。

 金髪縦ロールというお嬢様っぽい見た目の、ルナチャイルド。

 3人共、神社裏の大木に住んでいる妖精である。

 

「魔理沙さんも、こんにちは」

「ああ、こんにちは。それで、お前さん達の方は何しに来たんだ?」

「私達は晩御飯用に魚を取りに来たんです」

「魚か。しっかし、そんな小さい網だけで大丈夫か?」

 

 ルナの答えに対し、魔理沙は彼らが持つ虫取り網ような網だけで大丈夫かと尋ねる。

 客観的見れば、それだけの装備では小魚しか取れないだろう。

 しかし、三妖精達はチッチッチと指を振る。

 

「フッフッフ、魔理沙さん。私達の能力を忘れて貰っては困りますよ」

 

 サニーが分かっていないとばかりに、鼻を鳴らし、スターがそれに続く。

 

「ええ、そうね。まず私スターは、生物の居場所を探知できる。つまり、天然のソナー!」

「お次は私サニーが光を曲げて、隠れた魚の姿を丸裸に!」

「そして、最後は私ルナが音を消しさりながら近づいて捕まえる!」

「「「これぞ妖精三位一体の必殺!」」」

 

 バーンとまるで戦隊ものの登場シーンのようなポーズをとる三妖精。

 その姿に魔理沙は感心したような、呆れたような表情を浮かべて、ポーズ自体はスルーすることにした。

 ついでに、霊和もその隣でポーズを取っているがそちらもスルーする。

 

「まあ……大丈夫ならいいんだが」

「はい、問題ありません。そういえば、結局2人はなんでここに?」

「私達は、まあ…流れだな。川だけに」

「川だけにー」

 

 軽い冗談を飛ばす魔理沙だったが、霊和に無邪気な顔で続けられたせいか、顔を赤らめて帽子を深く被りこんでしまう。

 

「ねえねえ、みんな。私も魚捕りしてもいい?」

「いいわよ。でも、それなら全員で勝負した方が楽しくない?」

「いいわね、それ! それじゃあ、一番の大物を取った人が勝ちね」

「え? 連携して捕まえるんじゃ……」

 

 しかし、お子様達は魔理沙の羞恥心に気付くことも無く、話を進めて行く。

 そして、いつの間にやら魚捕り大会へと発展してしまうのだった。

 

「それじゃあ開始ー!」

「「「おー!!」」」

 

 因みにルナだけは突然の予定変更に困惑しているが、そこは妖精。

 勝負を放棄するはずもなく、足元の石に躓きながらも駆け出していく。

 

「……やれやれ、これで私が霊和の世話をする必要はなさそうだな」

 

 そんな姿を見送り、魔理沙は猫のように背伸びをする。

 子供の相手は子供がするのが一番。

 子供と言っても妖精ではあるが、霊和なら大丈夫だろうと判断したからだ。

 

「さて、せっかくだしこのまま霊夢の所に、茶でもたかりに行くか。あいつのことだ。霊和の話をしてやったら、興味の無いフリして聞くに決まってる」

 

 魔理沙は目を瞑りながらも、耳だけはピクピクと動かす霊夢の姿を想像して1人笑い、そのまま箒に乗って飛び立っていくのだった。

 

 

 

 

 

「でな、霊和に穢れてるって言われたもんだから、そこの川で清めてもらったんだ」

「ふーん」

 

 神社の縁側で目を瞑った状態で茶をすする霊夢と、身振り手振りを加えながら話をする魔理沙。

 一見すると、会話が成立していないようにも見える光景。しかし、魔理沙は確信している。

 霊夢が目を瞑っているのは興味が無いからではなく、その光景をイメージするためだと。

 

「小さな手でちょこちょこ私の手に水をかけてくれてな。可愛かったぜ」

「そう……」

 

 その証拠に声自体は平坦なものの、時折柔らかく唇がほころんだりしている。

 魔理沙はいつもその姿に、素直になればいいのにと呆れながらも、からかっている。

 

「なんだ、嫉妬してるのか?」

「はあ? 私が嫉妬とか馬鹿じゃないの。手を洗って貰ったぐらいで嫉妬するわけないじゃない」

 

 バカバカしいとばかりに鼻を鳴らして、否定の言葉を返す霊夢。

 しかし、これだけでも魔理沙の話をしっかりと聞いていたことが分かるのだから、彼女には隠し事は向いていないのだろう。

 

「……はじめて霊和がしゃべった時、自分の名前じゃなくて、私の名前を呼んだことに逆ギレして襲い掛かってきた巫女とは思えない発言だな」

「不思議ね。まったく記憶にないわ」

 

 あからさまに目を逸らしながら記憶にないとのたまう霊夢。

 そんな姿にジト目を向ける魔理沙だったが、また逆ギレされては困ると溜息を吐く。

 触らぬ神に祟りなしとは、まさにこのことである。

 

 因みに霊夢逆ギレ事件の内容は至ってシンプルである。

 

 初めての子育てに苦戦しながらも愛情を注いでいた霊夢は、霊和が初めて口にする名前は自分だと信じて疑っていなかった。そんなある日のこと、遂に霊和が意味のある言葉を口にした。

 

『ま…ま…』

『もう、ママよりはお姉ちゃんの方が良いんだけど。まあ、まだ小さいから仕方な──』

 

 霊和が自分のことをママと呼んでいるのだろうと思い、頬をだらしなく緩める霊夢。

 しかし、次の瞬間にその表情は凍り付くことになるのだった。

 

『まいさ!』

『……は?』

 

 ママではなく『まいさ』。

 聞き間違いかと思い、霊夢は無言で霊和を見つめる。

 

『まいさ、まいさ』

『…………』

 

 間違いなく『まいさ』と言っている。

 しかし、まいさなどという人物は霊夢の知り合いには居ない。

 しかし、赤ん坊の舌足らずの発音を考慮すれば誰の名前かは分かる。

 

『おーす、霊夢! 霊和の顔を見に来たぜ』

『まいさ! まいさ!』

『おー! 喋れるようになったのか!? なあ、霊夢! 今確かに魔理沙って言ったよな!?』

 

 遊びに来たのと同時に、霊和に名前を言われてついはしゃいでしまう魔理沙。

 だから彼女は気づかなかった。霊夢の顔から表情が消え失せていることに。

 

『……ねえ、魔理沙』

『なんだよ、霊夢? そんなことより霊和が私の名前を呼んで──』

『──―表に出なさい』

 

 その日、魔理沙は理不尽という言葉の真の意味を知ったのだった。

 

 

 

「うぅ……思い出したら寒気が」

「最近暑くなってきたから、ちょうどいいじゃない」

「体の芯から凍える感じはごめんだ」

 

 あの日の理不尽を思い出して、身震いをする魔理沙に霊夢は軽く鼻を鳴らす。

 そもそもの話、あの時期の子供の言葉は、ただ親の真似しているだけだ。

 魔理沙と呼んだのも、私が良く魔理沙の悪口を言っていたからに過ぎない。

 

 そう、『まいさ』という言葉そのものには何の意味もないのだ。

 大根に向かって『まいさ』と言っていたのだから間違いない。

 

 それに、ちゃんと人を認識して喋れるようになってからは、すぐにおねーちゃんと言ったのだ。

 魔理沙よりも、私の方が好きなことは火を見るよりも明らかだろう。

 紫に生温かい目を向けられながらも、おねーちゃんと呼びなさいと躾けたかいがあったというものだ。

 

「……ホント、霊和にはだだ甘だよな」

「あ? なんか言った?」

「何でもないぜ」

 

 ボソリと呟いた魔理沙を一睨みして黙らせる霊夢。

 まるで、妻の尻に轢かれる夫である。

 

「おねーちゃーん! それに魔理沙おねーちゃんもこっち来てみてー!」

「お、噂をすれば影が差すってやつだな」

「裏の木の妖精達も居るわね。何かあったのかしら」

 

 元気な声が聞こえた方を2人が見てみると、何やらやり遂げた表情をした霊和が立っていた。

 隣に居る三妖精達も同じような顔をしているので、本当に何か良いことがあったのだろう。

 2人はそんなことを考えながら、のんびりとした足取りで霊和達の下に行く。

 

「魚捕りはどうだった? 見たところ、坊主みたいだが」

「フフフ、坊主? いいえ、魔理沙さん。逆ですよ、逆」

「逆? じゃあ、別の所に置いてるのか」

 

 スターの物言いに、2人はキョロキョロと辺りを見回してみるが、それらしきものは見えない。

 はて、どう言うことだろうかと、不思議がっていると、霊夢があることに気付く。

 

「あれ? なんで、この地面だけ濡れてるのかしら」

「そう言えば、すこし変わった匂いがするような……」

 

 不自然に濡れた地面。そして、先程まではしなかった独特の匂い。

 霊夢と魔理沙がそれらに気付いたところで、子供達の悪戯が始まる。

 

「サニーちゃん! 今だよ!」

「フッフッフ、さあ見て驚け! 聞いて慄け! これが私達妖精の友情パワーだぁッ!」

「霊和は妖精じゃないけどね」

 

 ルナから軽いツッコミを受けながら、サニーが光を屈折させる能力を解除する。

 すると、霊夢と魔理沙の前に巨大なオオサンショウウオが出現するのだった。

 

「うおッ!? 能力で姿を見えなくしてたのか」

「地面だけが濡れて見えたのは、水の流れまでは考えてなかったからか……それにしても大きいわね、このサンショウウオ」

 

 突如として現れたオオサンショウウオに、最初は驚いていた2人だったが、そこは普通でない2人。すぐに気を取り直して、子供達の戦果であろうオオサンショウウオを眺める。

 

「あれ? あんまり驚かないですね、2人とも。私なんて見つけた時は腰を抜かして驚いたのに」

「いや、驚いてはいるぜ? どっちかというとお前達がこれを捕まえられたことにだが」

「そうよね……これだけ大きいと主だと言われても納得するし」

 

 霊夢と魔理沙のリアクションの小ささに、少しガッカリとした様子を見せる妖精達。

 しかしながら、生来お気楽な妖精達はすぐに調子を取り戻す。

 

「そう! スターが居場所を探知し!」

「サニーが巣穴に隠れた姿を水面に映し出す」

「そしてルナが音を消して霊和が近づいて」

「最後は私が巣穴ごと吹き飛ばす!」

 

「「「「これぞ妖精の力ッ!!」」」」

 

「待ちなさい。ツッコミどころが多すぎるわ」

 

 ガシッと手を組んで4人で決めポーズをとる子供達の頭をコツンと叩く霊夢。

 

「ほら、だから霊和は妖精じゃないって言ったじゃないの」

「あ、そうだった」

「いや、そこもだけど一番は霊和の行動よ。巣穴ごと吹き飛ばすって何をしたのよ?」

 

 叩かれた頭を擦りながら、ルナがサニーに文句を言うが霊夢が言いたいのはそこではない。

 途中まではえらく頭を使った作戦だったのが、最後は脳筋な策になったことだ。

 巣穴ごと吹き飛ばすなんて、オオサンショウウオもさぞかし驚いたことだろう。

 

「弾幕をぶつけてボーンだよ」

「せっかく、巣穴まで見つけてるんだから普通に取りなさいよ……」

「でも、岩の下とかだと手が届かないんだよ? 届くような道具もなかったし。そうだ! おねーちゃんならどうやったの?」

「わ、私? そうね……私なら」

 

 じゃあ、どうすればよかったのかと純粋な目を向けられて考え込む霊夢。

 獲物を見つけたはいいが、それを捕まえるための道具がない。

 手を突っ込もうにも岩の下では届きづらい上に、噛まれる恐れがある。

 では、道具を持って来るか? それはありていに言って面倒くさい。

 ならばどうするか? 答えは簡単だ。巣穴から出てこないのなら。

 

「……弾幕をぶつけてボーンね」

 

 巣穴を無くしてしまえば良い。

 

「ほらー、お揃いだよ、おねーちゃん!」

「流石は姉妹だな。霊夢が色々試して面倒くさくなった末に、全く同じことをする姿が目に浮かぶぜ」

「う、うるさいわね。偶々同じなっただけでしょ、偶々!」

 

 結局、妹と同じ答えに辿り着いてしまった自分に頬を赤らめる霊夢。

 実は内心では、流石は姉妹と言われてちょっと喜んでいたりするが、彼女がそれを素直に表に出せるはずもない。

 

「そんなことより、このオオサンショウウオどうするのよ?」

「どうするって食べるんだろ?」

「え、食べれるのこれ?」

 

 故に、苦し紛れで話題の転換を図ったのだが、予想外の返事に驚いてしまう。

 

「なんだ、知らないのか? そもそもサンショウウオは山椒(さんしょう)魚って意味で、捌くと山椒の匂いがすることからつけられたんだ。因みに味はスッポンに近くて、スッポンより美味いぜ」

 

 ペチペチとオオサンショウウオの頭を叩きながら、魔理沙が解説をしていく。

 幼少の頃より、家を飛び出して1人暮らしをしていた彼女はこういった食べ物は色々と詳しいのだ。

 

「へー、そうなのね」

「へー、そうなんだ」

「「「そうなんですね」」」

 

「……いや、霊夢と霊和はともかくお前達は食べるために取ったんじゃないのか?」

 

 呆れた顔の魔理沙のツッコミに、三妖精は揃って忘れていたという顔をする。

 どうやら彼女達の中では、オオサンショウウオのインパクトで色々と吹き飛んでしまったらしい。

 

「ふむ……物は相談だが私達が料理をしてやる代わりに、ご相伴に預からせてもらえないか?」

「ちょっと、達って私も入ってるの?」

「当たり前だろ。ここまで来たんなら神社で作るのが一番早いだろう」

「まあ、私は良いけど……あんた達はそれでいいの?」

 

 魔理沙の提案に物言いはつけるものの、そこまで反対する気はないのか霊夢は小さく肩をすくめる。そして、当の妖精達本人に了承の意思を確認する。

 

「私達もそれでいいですよ」

「これだけ大きいと、私達だけじゃ食べきれなさそうだし」

「それに霊和も手伝ったんだから食べる権利があるわ」

 

 それに対して妖精達が断ることも無く、プチ宴会の開催が決定する。

 霊和もみんなと一緒にご飯だと言って、無邪気に喜んでいる。

 

「それじゃあ私もタダってのは悪いから、お酒でも出しましょうか」

「お、いいな。こりゃ、今夜が楽しみになってきたな」

 

 調子よく、今夜の酒が楽しみだと告げる魔理沙に霊夢は苦笑を返す。

 

「はいはい。えらく元気ね、今日は」

「ははは、霊和に気枯れを祓って貰って元気になったからだろうな」

「気枯れを祓って元気に…?」

「ああ、今日霊和に教わったんだ。お前が教えたんだろ?」

 

 勝手知った様子で神社の台所に入っていく魔理沙は振り返らない。

 だからこそ、気づくことがなかった。

 

「そんなこと教えたかしら…?」

 

 霊夢が不思議そうに首を傾げている姿に。

 

「どうしたんだ、霊夢? オオサンショウウオは煮込むのに、時間がかかるから早くしろよ」

「なんでもないわよ。後、そういうことは先に言いなさいよね」

 

 そうして、博麗神社の一日は過ぎていくのだった。

 




次回は萃香か華扇ちゃんか早苗さんが出てくる予定。
あと、おにぎり。

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