戦闘シーンを、書きたかったんですけど、ちょっと誇張して書いちゃったのでところどころおかしいです
特異点フランスのお話です
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――in フランス
「あなたは変わったサーヴァントですね」
そうルーラーに言ったのはフランスで出会ったサーヴァント、ジャンヌ・ダルクだった。
その日の夜営中、マシュと立香が交代で眠り、ジャンヌとルーラーが見張りをしていた。
ほかのサーヴァントが見回りに行き、二人で火の番をしていたとき、つぶやくように放たれた一言である。
「そうかな。自分は平凡だと思ってるんだけど」
「いえ、そんなことはありません。ただ……」
ジャンヌは少し寂しそうに微笑んだ。
「あなたは私に、少し似ている気がします。なんというか……大切なものを、守ろうとしている目が、でしょうか」
「そう、かな……そうかもね」
守りたい、と思ってた人はいる。
大切だ、と思っている人もいる。
思わず、すうすうと寝息をたてて眠るマシュを見てしまう。
(そうだ。私は、守られてばかりだった……)
「ふふ……っ」
ジャンヌがいきなり笑い声をあげたので、ルーラーは思わず怪訝な顔をした。
「いや、ごめんなさい。怒らないで聞いてほしいんですが……」
「はい?」
「やはり、守るものがある人は強いな、と思って」
ジャンヌは笑う。先ほど、マシュを見ていた時のルーラーの顔。
力強く、いい笑顔だった。決意に固められた顔だった。
だけど……
(あなたは、どこか脆い。固すぎる決意はいつか、身を滅ぼしますよ……)
しかしジャンヌはその忠告を言わず、心のうちに秘めた。
「私とてルーラーの端くれ。貴女のクラスがルーラーではないことは承知しています」
「そっか……知った上で私を、ルーラーって呼んでくれるの?」
「ええ。貴女がなんの英霊かは知りません。勘ぐるつもりもありません。しかし貴女が正しき道を歩むのなら、私はそれを見守りましょう。ルーラー」
ルーラーは返事をしなかった。
ただパチパチと燃える火を眺め、夜は更けていった。
**************
ーー特異点??
そこは見覚えのある部屋だった。カルデア内の白い部屋。藤丸立香はここが記憶の中だということを、漠然と理解していた。
つまりここは――夢の中というわけだ。
「マスター立香。君は理解しているだろうが、サーヴァントにはサーヴァントそれぞれに強みがある。それはわかるね?」
カルデアの大天才(自称)であるダ・ヴィンチちゃんは、立香にとある講義をしていた。
サーヴァントそれぞれのスキルと特性、強みを、どう使っていくかについての講義だ。
サーヴァント……英霊である彼らにはそれぞれ、その逸話に基づいた強みがある。
それは宝具にも現れているし、スキルやクラスにも現れている。
「そう。キャスターならば陣地作成、アーチャーならば単独行動スキルと、それぞれのクラス特性。クー・フーリンならガッツ、ロビンフッドなら破壊工作とそれぞれの英霊に基づいたスキル。君はそれを使っていかないといけないわけだ」
クー・フーリンは確か、食事に誘われ毒を飲まされたあとも生きていて、腹の中身を引きずり出し川で洗って毒を無効化し、そのあと敵をぶち殺した逸話があったはずだ。
ロビンフッドは森の義賊であり、いかに戦闘前に相手の戦力を削げるかに特化している。
そこまで思い出したところで、ダ・ヴィンチちゃんはぴんと指を立てた。
「君が召喚したルーラーのサーヴァント。彼女の特性は数あるサーヴァントの中でもかなり異質だ。一応解析したんだけど、ステータス自体はかなり低い。
自分のことを卑下してるあの童話作家さんよりもね。攻撃力、耐久力共に最低値だ。あはは、そこらへんのワイバーンの群れに飛び込んだら死ぬね、これは」
辛辣なことをさらっと言ってしまうダ・ヴィンチちゃんである。
「じゃあなにが特化しているのか。これはびっくりなんだけどね。スキルの数さ。全体回復、応急手当、攻撃力アップ、霊子譲渡、ガッツ、回避、スタン、無敵、ほかにもいろいろ。霊基再臨をさせる前にこれだけのスキル数は異常だねぇ、まったく」
攻撃力ではなく、スキル数に全振りなわけだ、とダ・ヴィンチちゃんは言う。
「これがなにを意味しているのかわかるかい? 要するにね、彼女は相手に攻撃するよりもサポートするほうに向いている英霊ということなんだ。
彼女の真名は不明だけど、どちらかというと前線よりも後方にいた魔術師じゃないかと予想するね」
ルーラーを使うときは、どちらかというとサーヴァントの後ろでサポートに徹しさせた方がいいだろう、と立香はメモっておく。
そう、彼女の武器の類は持っていないし、攻撃も遠距離からの魔術であることが多い。
そういえば、この前の戦闘ではルーン魔術を使っていた。
なのに作る料理は肉じゃが……生きていた年代の読めないサーヴァントだ。
「さてと、サーヴァント講義は尽きないけど、今日はこれで終わりにしておこう。そろそろ起きないといけない時間じゃないかな? マスターくん」
そう言って、ダ・ヴィンチちゃんは軽くウィンクした。
**************
「マスター! 無事!?」
その日のレイシフトで、立香は以前ダ・ヴィンチちゃんに言われたことを思い出していた。
目の前がチカチカと白く光る。薄ぼんやりとした視界で赤い髪の後ろ姿が見えた。
どうやらしばらく気絶して、夢を見ていたようだ。
「ルーラーか……?」
「怪我はないみたいだね。よかった」
「なにが起きて……」
「敵性サーヴァントに宝具を放たれたの。凄い衝撃波だった」
立香はフラつく頭を抑え、起き上がる。
目の前にはマシュとルーラー、そしてそのほかのサーヴァント――ジャンヌ、清姫、エリザベートの姿があった。
不思議なことに――全員ほぼ無傷の状態で。
「……キ、貴様、貴様ァア!? 私が宝具を撃つタイミングを知っていたというのかぁあッ!?」
敵であるサーヴァント……ジルドレェは目を見開き、憎々しげに叫び放つ。
聖杯で強化されていたジルドレェの宝具が放たれたのは、つい先ほどだった。
部屋に残る魔力の残滓が、その魔術の凄惨さを物語っている。
――しかし。
ルーラーは、それを予測しサーヴァント全員に自身の持つスキルを施した。
回避、無敵、その他諸々のスキルを駆使し、ルーラーはジルドレェの宝具を完封したのだ。
マスターが指示したわけではなく、独断でのスキル使用だった。
「ぐぬぬ……まさか直感スキルで避けたのか……!?」
「そんなの持ってない。来ると思ったから使っただけ」
そう。
誰にもわからない世界のことだが、ルーラーは知っていた。
以前の世界で、一度戦ったことがあり、その宝具がいかなるもので、いつ、どこでどんな攻撃を仕掛けてくるのかを。
完全に予測することができていた。
「マスター、無事なら今すぐ立って。擦り傷だけなはずよ」
「あ、ああ……」
立香はフラつきながらも足を踏ん張って立ち上がる。
ところどころに擦り傷はある。魔力不足で体の節々が痛い。
しかしそうも言っていられなかった。
「マスター、ご無事ですか!?」
マシュが盾を構えながら立香に向かって叫ぶ。その足は恐怖に震えていたが、瞳はまっすぐ敵を見据えていた。
「大丈夫だ! マシュ、みんな、無事か!?」
「はい!」「うん!」「無事よ!」「ええ」
皆多少のダメージはあるが、五体満足だし攻撃もできる。まだ最悪の状況じゃない。
相手は聖杯で強化している、およそ正気とは思えないキャスターのサーヴァント、ジルドレェ。
その宝具を完封してみせたのだ。
ルーラーはふぅ、と息を落ち着けながら立香を見やった。
「マスター、あいつ、強化してるけどそんなに強いわけじゃないよ。注意すべきはあの宝具。もう一回放たれたら、多分防げないと思う」
「わかった。もう一度宝具を撃たれる前に、仕留めろってことだな?」
「撃たれるタイミングは私が読む。だからマスター、攻撃に集中して」
「わかった。頼む!」
立香は仲間のサーヴァントを見やる。今は誰も宝具を使える状態にない。
しかしそれは相手も同じだ。宝具という大魔術を使ったあとで多少の消耗がある。それは聖杯の加護があったとしても変わらない筈だ。
つまり。
「ルーラー、攻撃力アップ!」
「了解! 全体強化!」
今叩き込まねば後がない。
立香は全力でサーヴァントに魔力を回しだす。
「マシュ! ジルドレェに真正面から攻撃しろ! 引きつけてくれ!」
「了解しました!」
マシュがジルドレェに接近しその盾で拮抗する。魔術師であるジルドレェは接近戦はしてこない。
だから必ず防御系の魔術で防いでくる。
マシュがジルドレェの気を引いているのを確かめ、立香は味方に指示を飛ばした。
「清姫! 背後を取れるか!?」
「勿論です、
バーサーカーである清姫が音もなく背後を取る。おそらくはストーカーのなせる技であろう。
見事な早業で、清姫はジルドレェの背中に火を吐いた。
「がぁああっ!? ぐ、ぐぅ……」
肉の焼ける音と共にジルドレェが苦悶の声をあげる。
「か、回復……」
「させません!」
ジルドレェが回復魔術を使う前に、ジャンヌが接近し繰り返し攻撃を叩き込む。
「ジャンヌ! 貴女という人は……!」
「ジル! 今私は貴方の敵だ! 油断するなどあり得ないことですよ!」
ジャンヌは、立香が何を考えているか半分以上読めていた。
いとまのない攻撃を繰り返し、相手を焦らせる。違うところに目をいかせず、常にどこかしらに注目させることで、【気をそらす】。
「マスター、そろそろだ!」
ルーラーの声が背後から聞こえた。
「く、ほ、宝具……っ!」
「させるかぁああっ!!」
苦し紛れに宝具を放とうとするジルドレェに、ルーラーは人差し指を向ける。
「ガンド!!」
「んなっ!?」
ルーラーの指先から放たれた黒い呪いが、ジルドレェの体に浸透する。
スタン状態に陥ったジルドレェの目は、やっと冷静さを取り戻した。
(……なんだとぉお!?)
「令呪をもって命ずる! エリザベート! 宝具を放て!」
「やっと私の出番ね、子イヌ! フィナーレよ! 宝具! 『
いつの間にか、目の前にランサーのサーヴァント、エリザベート・バートリが立っていた。
人類最後のマスター、その令呪が赤く発光し、魔力が収束する。
防御魔術を無効化する一撃が、ジルドレェの体を貫いた。
**************
金色の粒子に包まれ、消滅していくのを感じながら、ジルドレェは人類最後のマスターの前に立っていた赤い髪のサーヴァントを見やる。
(あいつは……私の戦い方を、知っていた……?)
その立ち回り方は慣れたそれだった。どんなときにどんな攻撃をするか、【すでに知っていたかのような】的確な立ち回り方である。
(生前に会ったことなど、なかった筈だ)
サポートに徹しているように見えて、あのマスターをうまく誘導しているように見えた。
あの戦い方は前線に立つ者というよりは、
(……指揮官、だ)
確かに、元々指揮官をしていたサーヴァントなど、有り余っているだろう。ジャンヌ・ダルクだって、兵を指揮したことがあるのだから。
しかし彼女の戦い方は、通常の指揮官のそれとは違う。
――サーヴァントにおける戦いに特化したものだった。
「あぁ、ジャンヌ……」
それ以上思考する前に、ジルドレェは、光の粒子となって、特異点、オルレアンから消え去った。
**************
第一特異点、オルレアンから帰還し、ルーラーは幾日かの休日を得た。
サーヴァントは眠る必要も食べる必要もないが、マスターは別だ。
何日も特異点でまともな寝床にありつけず、かなり消耗しているだろう。
次の特異点までの数日間で、しっかりと休んでもらいたいものだ。
「やあ、ルーラー」
「……Dr.ロマン」
そんな日の夜中、ルーラーが魔力を回復させつつ、一人でいたところを話しかけて来たのは、ロマ二・アーキマンだった。
「君、いつもこんなところにいるのかい? 探すのに苦労しちゃったよ」
ロマンはいつも通りの穏やかな笑顔で言う。
ルーラーがいたのは誰もいない、薄暗い空き部屋の中だった。
食堂やほかのサーヴァントの居室からも離れているし、あまり人がいるところでもない。
その部屋の中で、灯りもつけず、一人膝を抱え座っていたのだ。
「隣、失礼していいかな」
「うん」
ロマンはルーラーのとなりに同じように腰掛けた。しばらくの沈黙が二人の間をさまよった。
「改めてお礼を言おう、ルーラー。立香くんをサポートしてくれてありがとう」
先に口を開いたのは、ロマンだった。
「いや、サーヴァントとして当然のことだし」
ルーラーは照れ臭そうに少し微笑んだ。
「……。君に話があって来たんだ」
「うん、知ってる」
ロマンは少し顔を歪める。
話したくない、という顔だ。
ルーラーは黙っていた。やろうと思えば、きっとロマンを避け続けることはできただろう。
しかし、そうしようとは思わなかった。
「君は……ルーラーのサーヴァントじゃないんだね」
ロマンの言葉を、ルーラーは
「……そうだよ」
あっさりと、肯定した。
「聞いてたんでしょ、ジャンヌとの会話」
「……」
沈黙が、何より雄弁な肯定だった。
ルーラーは何も言わなかった。
――なぜかわからないが、ロマンには、すぐにバレてしまうような気がしていたのだ。
「君のステータスには、おかしなところが多い。よく見れば気付く筈なんだ。なのに、誰もそのことを言わなかった。ダ・ヴィンチちゃんでさえも」
自他共に認める天才であるダ・ヴィンチちゃんでさえ気付かない、クラスへの違和感。
ロマンが気付けたのは、たまたまジャンヌとの会話を聞いていたからだった。
「おそらく君のステータスには、強い誤魔化しの魔術がかけられている。誰もおかしいと気付かないような、違和感を感じなくするような。だけどこの魔術は……君自身の仕業じゃないんだね」
「……」
「君のことを、信用していないわけじゃないんだ。だけど……」
正直な人だ、とルーラーは思う。彼だけは、前の世界と何も変わらない。
この世界では、まだレフ・ライノールの正体もわかっていない。その中にルーラーとクラスを偽るサーヴァントがいれば、怪しんだって仕方がない。
「誰だって、正体を隠してる人は怪しいと思うよ」
「……すまない」
「ふふ、なんで謝るの? ……でもごめん。私はまだ私の真名を、あなたに明かすわけにはいかない」
「……そうか」
「でも、そうだなぁ。…私の目的は、教えることができるよ」
「目的?」
ロマンは首をかしげる。
「元々はね、人類を救って、世界を修正することが目的だった。でもさ……」
ルーラーは、顔を上げる。
かつて、地獄を見た。
その先を旅した。
世界を救おうとした。
どうしようもなく、救われなかった。
それでも。
「今は、守りたいから戦ってるんだ。人類を、皆を。それに、私たちを」
たとえ、この先にまた地獄が待っているとしても、守りたいもののために歩みを進めたい。それが、ルーラーの本心だった。
「それが、君の信念か」
「うん。これは守るための戦いだから。だから、私は諦めない。最期のときまでね」
恥ずかしそうに頬を掻くルーラーを見て、ロマンは既視感を感じた。
彼女は誰かに似ている。どこかで見たことがある。
「そうか。君は……」
「……? なに?」
「いや、なんでもない。じゃあ、僕は行くよ」
「いいの?」
「ああ。もういいんだ」
ロマンは立ち上がり、部屋の出口まで歩いていった。
「あぁ、そうだ。この部屋」
「?」
「もうちょっと明るくしたほうがいいな」
ドア近くの端末をいじり、部屋の電気をつけ、ロマンは部屋を立ち去った。
部屋の外に出て、しばらく歩いていると、廊下の向こう側から見覚えのある少女が走ってきた。
「あ! ドクター! ルーラーさんを見ませんでしたか?」
「彼女かい? 彼女なら…あっちの部屋にいたよ」
「ありがとうございます!」
「どうかしたのかい? そんなに慌てて」
「マスターがルーラーさんと三人でお茶しようと言ってまして。呼びに行こうと思ってたんです」
「はは、そうか。頑張ってね」
走っていったマシュを見送り、ロマンは再び歩みを進める。
ルーラー。
クラスも、真名も正体不明もサーヴァント。
全く別の人物であるはずなのに、
彼女はどこか、人類最後のマスター、藤丸立香に似ている。
ロマンはそう思いながら、仕事に戻るため歩き出した。
唐突に始まり唐突に終わりました