「・・・既に帝国軍の鬼神兵が投入されているか。」
ウェスペンタティアの首都が一望できる高度で戒翔は眼下に広がる戦場を見下ろしていた。
「・・・あの尖閣の塔にアスナ姫が拘束されている訳だが」
『王族特有の固有技能を兵器として転用、同時に使い捨ての道具の様に扱っているみたいだね。』
「年端もいかない子供を兵器とするか・・・反吐が出る。」
多数の戦艦に十数体の鬼神兵で構成された帝国軍とそれを追い払うために抵抗する連合軍を見下ろしながら戒翔はバハムートの調べた情報を聞きながら侮蔑の混じった視線で抵抗を続ける連合軍を見つめながら術式を展開する。
「バハムート、アスナ姫を確保したと同時に両軍に重力魔法による無力化を敢行する。 戦艦に対してはマルチロックで砲撃を行使する。」
『了解!』
「では・・・行くぞ!」
黒騎士の甲冑に身を包んだ戒翔は飛行魔法の使用を中断し、自由落下でウェスペンタティアの首都へと降下する。
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「おい! 鬼神兵がこっちに来るぞ!?」
「大丈夫だ。 ここには姫巫女がいるんだ。 魔法攻撃をされたとしても意味は無い。」
二人の魔法使いが両手を左右別に手錠と鎖で逃げ出せない様にしている少女の方を見る。
「こんな年端もいかない子供を戦場に駆り出さないといけないなんて」
「ふん、外見に騙されるなよ? そいつは王家特有だかしらんが希少技能とでも言える魔法無効化能力を持っているんだ。 人ではなくバケモノか兵器として使用されるだけのモノだ。」
冷めた口調で冷酷な事を口にする魔法使いの言葉に相方の方もまたその言葉を聞いて絶句する。
「黄昏の姫巫女の力を使えば帝国の連中など」
「歯牙にもかけない・・・か?」
「誰だ!?」
少女の近くにいた魔法使いが声の方向に振り向くと見晴らしの良い尖塔の縁の所に黒い西洋甲冑に身を包み顔の大部分は黒いバイザーによって隠した戒翔が立っていた。
「貴様達に名乗る意味は無い」
「なんだと!?」
「死に逝く貴様等に名乗った所で意味は・・・無い!」
『absolute』
戒翔は左手を男達に向け、電子音声と共に二人の内一人が氷漬けにされ、姫巫女と呼ばれている少女の近くにいた男は半身が氷漬けにされるだけに留まる。
「がぁぁぁぁっ!」
「・・・魔法無効能力の御蔭で助かったと言うべきか、苦しむだけの結果になった訳か」
「貴様・・・何者」
「何度も言わせるな愚物、貴様等に名乗るななど無い。」
半身が氷漬けにされたフードの男の襟首を持って持ち上げると男は苦しげな声を上げる。
「ぐぅっ!?」
「痛いだろう? 苦しいだろう? お前が感じるその感覚を彼女に負わせていると知れ」
そう言って戒翔は男を尖塔から投げ落とす。
「結局は貴様が感じるのは一瞬の痛みと死に直面した恐怖だけだったな。」
眼下で砕け散る音と共に男の絶叫を聞きながらバイザー越しで分からないが侮蔑の眼差しで朱い花を咲かせた男の末路を見つめ、暫くして戒翔はバイザーを外し、少女の両手を縛る手枷を外し、少女の目線に合わせて身を屈める。
「大丈夫か?」
「・・・あなたは?」
「俺の名前か? 一応黒騎士と名乗っている。 キミの名前はなんて言うんだ?」
「・・・アスナ。 アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア」
「長い名前だな。 アスナと呼ぶが構わないな?」
「・・・どうでもいい。 わたしには何もないから」
そう言って戒翔はアスナを抱き上げる。
「何も無いのならこれから色々作っていけばいい。時間などいくらでもあるのだからな。」
そう告げて戒翔は足下に移送方陣を出現させる。
「…なんでまほうが?」
「アスナは知らないだけで俺みたいにアスナの持つ能力が効き辛い相手ってのがいるって事だ。」
「・・・そうなの?」
「そう言う事なんだ。 (実際には神力を付与した神秘を秘めた魔法は魔法無効化能力であっても無力化出来ないってのが正しいだろうがな)」
そして、移送方陣が完成した所で戒翔はある魔法を遠隔発動させる言霊を告げる。
「重力の網に捕らわれろ」
『Gravitybind』
首都を覆う様にして出現した黒色の魔力で編まれた網状の檻が上空に出現するのを見届けて戒翔はアスナを抱き上げたまま転移するのであった。 そして、その後に起きた惨事により、帝国、連合共に甚大なる被害が出て一時的な休戦状態となるのであった。 その騒ぎが大きかった所為か黄昏の姫巫女であるアスナが忽然と姿を消した事も流されるのであった。