「・・・で、ここが赤き翼の隠れ家か?」
「まんま掘立小屋じゃの・・・かの有名な赤き翼の隠れ家とは思えんのぅ」
墓守の宮殿から脱した一行は転々と各地を移動しながら最終的な目的地である赤き翼の隠れ家へと身を寄せていた。
「お子ちゃまにはこの良さが分からんのかねェ」
「妾は子供じゃないぞ! この筋肉達磨!」
「あだだ!」
テオドラが不満を漏らすもラカンに挑発されてなのか亞人特有の身体能力で本人の肩に飛び乗るのと同時に髪を引っ張ったり、噛み付いたり等して逆襲をしていた。
「アリカ、それでどうする? 王国の方にも内通者及び信奉者と思しき人物たちは恐らく高官や重鎮達が殆どだろう?」
「・・・それでも妾はこの争いを止める為に動く。 その為に戒翔、私の為に動いてくれんか?」
「俺はアリカの騎士だ。 主君の為に動くのが騎士の務めなんだろ?」
「戒翔・・・」
「それにそこの赤毛のアホもアリカに協力する為に助けに来たんだろうしな・・・少数精鋭で裏で動いている奴らを叩き潰してヤツラの目的を聞き出してやろう。」
「そうじゃな。」
戒翔の言葉に此方を伺う様に見ている子供位の身長で赤毛のツンツン頭と目付きの悪そうなのが特徴の赤き翼のリーダー【ナギ・スプリングフィールド】がいた。
「おい、あの遺跡から出て来る時に見せた姿・・・アレはいったいなんなんだ? アンタは旧世界の人間じゃないのか?」
「正しく言うのなら旧世界に縁のある者って所だ。 実際には人外なのには変わりないけどな」
以前の脱出の際に目撃した姿はこの場にいるアリカを除く面々が疑問に思っていた事をナギは代表するかのようにして質問すれば簡単に返って来た事に呆気に取られるが戒翔の告げた事に驚く。
「・・・簡単にそんな事を言ってもいいのか? 下手すれば大戦が終わった直後に正義馬鹿共の討伐対象になりかねない事なんだぞ?」
「ん? そんな事か・・・俺は俺だ。 自分の生きたい様に生きるその上でその正義馬鹿共が矛先を俺に向けるのなら降り掛かる火の粉は払うだけだ。」
戒翔の物言いにナギはあからさまに溜め息を吐く。
「そう言う事を言ってんじゃないけどよ・・・お前は良いだろうけど姫さん達はどうする気なんだよ」
「・・・鳥頭で良く考えたんだな。 アリカ達の事ならお前達に任せておけば大丈夫だろうに・・・そもそもお前はアリカに気があると思ったが」
「な、なななな何言ってんだ! 俺がこんな無表情のお人形みたいな奴の事を好きになるなんて絶対に無いからな!」
「・・・それもどうかと思うが本人の前で言う台詞では無いな」
「・・・あ」
「言いたい事はそれだけか・・・貴様」
「ちょ、ま あぶろッ!?」
戒翔の言葉に慌てたのか咄嗟で出た言葉に戒翔が突っ込むが時既に遅し・・・アリカ本人からの王家特有の魔力付与付きの大振りのビンタを喰らってナギは錐揉み回転をしつつ地に落ちる。
「・・・馬鹿だな」
「バカですね。」
「バカじゃな。」
上から戒翔、アルビレオ、ゼストの三人のコメントである。
――――――――――――――
「それで・・・この後はどうするんだ?」
一息ついたところでラカンが口を開くと一番の疑問を口にする。
「取り敢えずは敵の動向に注意しつつ情報を集める事でしょうか・・・敵の目的が漠然としないまま動くのは危険ですからね」
「なら情報収集はアルビレオやガトウ達インテリ組に任せて俺達は敵の支部を潰して回っていけば自ずと向こうが釣られるのを待つ事にしようか」
アルビレオの言葉に戒翔は賛同しつつ以前にやっていた事を提案する。
「やけに具体的ですがそれは以前にしていた事なのですか?」
「そうだ・・・アリカの騎士となってから時間があれば各地を転々として潰し回っていた。 まぁ、何処も末端の支部ばかりで収穫はあまりなかったがな」
「・・・そうですか。 あなたには私達と一緒に情報収集して頂きたいですが、警護対象であるアリカ王女の近くにいて貰わないといざという時に困ってしまいますからね。」
「・・・今回の事もあるからな・・・アリカ」
「なんじゃ? 妾はお主以外の騎士は取らぬぞ」
「事態はそうは言っていられないだろ? 現にこれからは今まで以上に大規模に動かなければならない状態になる事が確実に出て来る。 それならばもう一人位は騎士を持って置いた方が利口だ。」
「しかし、騎士は基本的に一人しか取れぬ・・・軍の目の前でお主を騎士にすると言った手前どうしたらいいのじゃ?」
「アリカ、今はしきたりや常識等と言っている悠長な場合では無い。 黒幕たるヤツラとの戦いの時には確実に総力戦になると考えれば俺の様な人外では無くそこの赤毛の馬鹿の様な純粋な人間の方が民衆の受けも良いし士気の向上にもなる・・・些か打算的ではあるが一番効果的でもある。」
「・・・それがお主の考える最善なのじゃな?」
戒翔の言葉にアリカは一瞬だけ悲し気な表情をするも次の瞬間には王女としての表情をし、ナギに向き合う。
「で、どうするよ姫さん。 あそこから助け出したのはアイツだけど、そこら中が敵だらけだぜ?」
「王女殿下、おそれながらナギの言っている事は事実で帝国、連合と・・・殿下のオスティアでも同じような状況で最近の情報ではオスティアの上層部が最も【黒】いという噂まで上がって来ています。」
「・・・やはりそうか。」
「アリカ」
「連合に帝国、そして我がオスティアも・・・全てが敵となった訳じゃな。」
「なんだ怖気づいたのか?」
「フッ、まさか・・・妾の最強の騎士、そしてお主とお主のいる【赤き翼】・・・これだけで十分な戦力じゃ。 それにお主達は無敵・・・なのじゃろ?」
挑発的な態度のナギに対してアリカは涼しい表情で一同を見回しながら告げる。 戒翔を除く面々が呆気に取られている中でアリカは更に口を開き言葉を紡ぐ。
「世界全てが敵・・・おおいに結構。 こちらはたったの八人の兵士・・・しかし最強の八人」
涼しい表情から凛とした表情になったアリカにナギは不敵な笑みを浮かべる。
「なれば、我らが世界を救おう! 新たな騎士としてナギよ、お主には我が盾となり杖となれ。 我が剣は戒翔のみじゃ。」
「やれやれ・・・相変わらずおっかなくて無茶を言う姫様だな・・・良いぜ俺の翼と杖、あんたに預けよう。」
ナギの肩にナギから手渡された杖を使い略式であるが騎士の称号の授与を行う。
「さて、目的が明確になった訳だが・・・相手の本拠地を一気に強襲する訳にも行かないしな・・・確実なのは下部組織をある程度潰して証拠を見つけて相手の弱みを手に入れてそこから搦め手として仲間を徐々に増やして行くのが一番確実だが」
「そんなまどろっこしい事をしないで敵は全員ブッ飛ばしてやればいいんだよ。」
「まったく、やはり貴様は鳥頭だな。」
「んなッ!?」
「良いか? こればかりは単純な事では済まされない。 十分に調査を入れた上で精査し、確実だと思われる拠点及び標的だけに絞って攻撃しなければ奴等からの濡れ衣は晴らせないぞ。」
「じゃあ、どうするって言うんだよ!」
「そこは俺やガトウ、アルビレオ等の諜報に向いた者で情報を集める。 そして黒と思われる人物や拠点を教えるからそこを・・・叩き潰せ。」
戒翔の言葉にナギは反論するが、戒翔は付け足す様に紡ぎニヒルに笑う。
「さぁ・・・反撃開始だ!」