頭チワワな狼に優しい葦名   作:破戒僧の右腕の袖

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あけおめって感じー?


顔が怖い仏も良いと思う。あと瓢箪の薬は甘いぞ。

木を削るような音で目が覚めた。

自分は確か、御子様を想う男に敗れて......。

 

「気が付いたようじゃな.......」

 

不意に声をかけられ、そちらを見ると、片手で木を彫るみすぼらしい風貌の男が居た。

 

「お前は.......?」

 

「目が覚めたなら、どこへでも行け」

 

男は気だるそうにそう言い、意識を木に向けた。

 

「わしは仏を、掘らなきゃならん.......」

 

仏を彫っているのか......ということはこの男は仏師か?

見渡してみると、そこには夥しい量の仏が乱雑に置かれていた。

 

「これは全て......お前が.......?」

 

「.......そうじゃ。どうしても、仏様の顔が鬼になってしまうんじゃ」

 

そう言われ仏の顔をよく見てみると、確かに怒っているような顔に見える。

普通はこんな仏には違和感を感じるものだと思うが、狼的にはあまり悪い物には見えなかった。

 

(仏も、怒ることがあるのだな)

 

そんなことが頭を過ぎった。

そこから色々な話を聞いた。自分は長い間気を失っていたこと。御子様はまだ生きておられること。御子様は体に流れる特殊な血が理由で狙われていること。そして.......

 

「この格好の良い左腕は......なんだ?」

 

そう、何やら心をくすぐるここ左腕のことを聞いた。

自分は御子様を想う男に左腕を落とされてしまったはずなのだが、何やら格好が良いからくりの左腕が付けられている。やだ、格好良い。

 

「格好の良いか......ははっ、中々面白いことを言うな.......あやつが聞いたらさぞ喜ぶだろうな」

 

「そいつはな、忍び義手。牙を折られた狼には、打って付けの牙じゃろうて.....」

 

「忍び......義手......!?」

 

響きまでもが格好良い。狼はキュンキュンしまくりだ。

 

「仏を彫るには無用でな。お前さんにくれてやる」

 

「良いのか......!?」

 

なんと太っ腹なことか。狼の中で仏師の好感度がもりもり上がっていく。そのせいか怒り顔の仏様もなんだか可愛く見えてきたぞ。

 

「寺を出て右に行ったところに、お前さんと同じような奴が居る。顔を見せてみたらどうじゃ」

 

そう言われ、早速寺を出てみると、お淑やかな女性に声をかけられた。

 

「本当に、目覚めたのですね.......」

 

女性は少し驚いた顔をして、自分の方に歩いてくる。

 

「私はエマ。薬師をしている者です」

 

女性......エマはそう言って懐から瓢箪を出してきた。

 

「九郎様から、渡し忘れたからと.......」

 

少し呆れたような顔をして瓢箪を渡してきた。何は何やら水が入っているようだった。

 

「これは.....?」

 

「私が作った、薬水の瓢箪です。中の薬水を飲めば、傷が治まります」

 

なんと便利なことか。薬師ということはお医者様なのだろうか。

 

「かたじけない.......」

 

「中は既にいっぱいにしてありますし、飲み干しても少しすればまた湧き出しますので、安心してください」

 

そう言いながら、またもや懐からなにか出してきた。

 

「丸薬です。薬水を飲むほどでも無い怪我を治すのにお使いください」

 

「ありがたい」

 

「それにお守りのおくるみ地蔵です。私が包んだのですよ?どうぞ」

 

「う、うむ」

 

「それから......」

 

このお医者様は少し過保護なのかもしれない。患者想いの良い人なのだろうが.......。

 

「少し顔を見ますね?」

 

そう言って頬に手を当て、顔をマジマジと見つめて来た。整った顔をしているなと思っていると、お医者様から質問をされた。

 

「ここの白い痣は、生まれつきではありませんよね?」

 

「白い痣があるのか......?」

 

確かに自分に白い痣があるなど聞いたことは無い。お医者様はそんなことも分かるのだな。

 

「ではやはり竜胤の影響か......あ、もう良いですよ。よくできましたね......んっ、届きませんね。少し屈んでくださいませんか?」

 

そうお医者様が言ったので、少し屈む。まだなにか有るのだろうか。

 

「よしよし。よくできましたね」

 

撫でてきた。なんだか、最近よく撫でられるなぁと思う。

しかし、この少し強引な診察......どこかで覚えがあるような.....?

 

とりあえずお医者様からの診察は終わった様なので、挨拶回りの続きをしに行くことにした。お医者に礼を言って、先程仏師殿が言っていた右の道を行ってみることにする。

 

「昔から変わりませんね。貴方は......」

 

後ろから、なにか声が聞こえた気がした。

 

 

 

右の方に行くと、顔の半分を面のような物で隠した侍と思われる男が佇んで居た。

 

「見慣れぬ顔だな......?」

 

男は自分に気づいたようだ。

 

「其処許、名はなんと言う?」

 

名を聞かれたが、あいにく自分は名を持ち合わせては居ない。何故か周りには狼と呼ばれるのだが。

あと義父上に知らない人に名前を教えちゃダメと言われているから、言わないようにしておく。

 

「明かせぬ.....」

 

「ふむ......さては忍びか?」

 

バレた。

 

「忍びの技なら......あるいは......?」

 

そう呟くと男は、刀に手をかけた。

反射的に自分も刀に手をかける。

 

「其処許よ。是非、それがしと.......立ち会ってもらおう!!」

 

男が刀を抜いて向かってくる。

やはり知らない人に名前は教えちゃダメだ。と狼は思った。




過去に何かあったのか、だだ甘なエマさんでした。
瓢箪の中身はもうタポタポです。10回使えます。
過保護過ぎない.......?
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