頭チワワな狼に優しい葦名 作:破戒僧の右腕の袖
「これ鬼形部と戦うのどうすればええんやろうか」と悩んでいた結果、書くのを忘れて結果こんなに間が開きました....。
少しずつ更新再開します.....。
荒れ寺へ戻った狼は、ひとまず拾った忍具を手に仏師の元に向かった。
「お前さんか....何用じゃ?」
「忍具とは、これのことか?」
倒れていた忍びから拝借した手裏剣ぐるまを見せて問うと、仏師は少し表情を変えて、うなづいた。
「あぁそうじゃ。こっちへ来い。わしが仕込んでやろう」
近くに寄って手裏剣ぐるまを渡して、カリカリと義手をいじってもらう狼。手裏剣ぐるまをつけて貰って.....何やら血錆や油汚れも綺麗にしだした仏師。
「少し気になっての....」
「ありがとう仏師どの....」
「礼はいい。....それ、終わりじゃ。用が済んだならどこへとでも行くがいい」
ぶっきらぼうに言う仏師に小さくお辞儀をして荒れ寺を出る狼。早速忍び義手を軽く振るうと、ガシャンと音が聞こえて、腕の部分から手裏剣の刃が見えている。更に軽く前に振ると、勢いよく手裏剣が発射され、前の竹に突き刺さった。
声には出さないものの、狼は感動していた。とにかくカッコイイのだ。まだ扱いに慣れておらぬ故に空中で使ったりなどはまだ難しそうだが、それでも飛び道具を咄嗟に扱えることと、そして出し方がカッコイイのとで目を輝かせていた。
そんな狼の背中を、薬師は暖かい目で見守っていた。
「あとで猩々に『お茶』を差し入れしてやりましょう」
さて、改めて道を進んでいると、どこからか小さな鈴の音が聞こえてきた。見回してみると、あばら家とも言えない廃屋で、老婆が鈴を鳴らしていた。
「おい。ここで何をしている。危ないぞ」
狼が注意をしてみると、老婆がこちらを振り返り、柔らかい笑顔で喋りかけてきた。
「おぉ、倅や。よく来たのぉ.....若様はどこへ行ったのじゃろうか?」
「.....?俺は、倅ではない。」
唐突に人違いをぶちまけられ、困惑している狼だが、老婆は何も気にせず話を続ける。
「何を言うんじゃ伊之助や。またわしが狂ったというのかい?流石に、倅の声を間違えることはないよ.....。そうじゃ伊之助。この鈴を、仏様に備えておくれ。若様のために作った守り鈴じゃ。」
先程から鳴らしていた鈴を半ば強引に手に握らされる狼。仕方ないと鈴を受け取り、これ以上絡まれたくないので足早に去ろうとすると、後ろから声が聞こえた。
「おーい!母上ぇ!!はぁ....また1人で出歩きなさって....」
「おぉ伊之助や。....おや?なぜ伊之助が2人も?」
「はぁ、母上、伊之助は私だけにござりまする。
....あぁ、すまない。母の痴呆に付き合わせてしまったようだ。母ももう歳でな....。情けないことにボケてしまったのだ。」
苦労人感がにじみ出る若い侍に老婆を任せて、改めて歩を進め始める。受け取った鈴は後で仏師どのに扱いを聞こうと思いながら。
「....はて、あの忍び、どこかで見た覚えが.....」
「伊之助や、どこじゃ?」「あぁはいはい。ここにおりますよ母上。」
鬼形部の噂を聞いた場所に戻ってきた狼。大きな大手門とその前に広がる広い場所。更にそこに転がる無数の見慣れない服装の死体。ただ事ではないことが起きているのは確かである。その横にあるしっかりとした屋敷に足を踏み入れた狼。すると声をかけられた。
「ご供養、いかがかね....?」
見てみると明らかにみすぼらしい格好の商人らしきものがいた。
「ご供養....?」
「左様。死者たちのご冥福のため、品を売っておる。見たところあんたも......?いや、そんなにじゃな。じゃが、殺しておるのは確か。せっかくじゃ。ご供養、していきなされよ.....」
狼はこれまで、殺しが絶対の任務対象や、殺さなければならない状況以外での殺しはできるだけ避けてきた。この商人は何故だかそれを、見ただけで判断できるようだ。
商人.....供養衆は風呂敷を広げ、商品を見せてくれる。飴、丸薬などの中で、一際目を引くのが、赤い爆竹だ。
これは忍具に出来るかもしれないと思い、狼は値段を聞く。
「これは?」
「五百銭じゃな。」
持ち合わせに余裕があった狼はそのまま購入。仏師殿に仕込めるか聞いてみようと思った。
商人に礼を言い、横の屋敷に入ると、背の高い人物が死体の倒れる中心に立っていた。
「ネズミが、もう1匹。」
そう言い振り返る謎の人物の声で恐らく男であると気付いた狼。天狗の面を付けており、棘のような殺気を肌で感じる。
とてつもなく強い.....刃を交えることも無くそう判断できる迫力に、無意識に半歩下がりそうになる。だが踏みとどまった。もしここで下がれば、既に己は切り捨てられていただろう。
「いや、その眼....子犬か。カカッ、なんとも愛想のある目じゃ。
ふむ、ネズミではなさそうじゃ.....お主、名はなんという?」
そう言って刀を収める天狗。それを見て肩の力を少し抜いた狼は、天狗に向かって答えた。
「......知らない人に名前を教えてはならないと....義父上から習った」
「....カカカッ!!なんとも可愛らしい答えじゃ!!」
そう言って腹を少し抱えて笑いだした天狗に、少しムッとする狼。怒ってやろうと思ったら、天狗がまた話しかけてきた。
「しかしその左腕.....忍び義手とは、懐かしい。」
「仏師どのを知っているのか....!?」
忍び義手が懐かしいと言った天狗に思わず問いかける狼。天狗は「おうよ!!」と答え、旧知の仲であると語った。
それを聞いた狼は、知らない危ない人ではないと気付き、自身の名前を教えるとこれまた大声で笑われた。
「お主が狼....?くっ、カカカッ!!!狼とはこれまた大きく出たのぉ!!じゃが.....確かに、人斬りの才はある」
そう上機嫌になる天狗。また笑われたことに少し眉間に皺がよる。
「そうかなるほど.....隻腕の狼か.....気に入ったぞ!
ならば.....【隻狼】。お主をそう呼ぼう。」
「隻狼.....!!」
思わぬほど響きがカッコイイ名前を付けられ、今までの怒りが吹っ飛んだ狼。天狗は上機嫌に笑い、ネズミ狩り.....他国からの侵入者狩りを手伝えと持ちかけられた。葦名を侵略しようとするもの達を追い返す正義の味方だと言う。ルンルンな狼はこれを了承し、ネズミの特徴を教えてもらい、終わったらまた来いと言われた。狼は手を振って去ると、そのまま屋敷の正面にある大手門に近づき.....。
「我、御庭形部雅隆なり!!!大手門、この形部が通さぬ!!!」
大手門を開き駆けてくる大きな馬と甲冑を着た大きな槍を持った人が飛び出てきた。驚きながらも迫ってくる槍を弾き、見合う2人と1馬。それが続くと.....ふと、馬が勝手に狼に近づく。
「うおっ!?急にどうしたのじゃ!?」
狼に擦り寄る鬼鹿毛に驚く狼と甲冑の人....恐らく鬼形部。なんだか懐かしい感じがした狼は、ふと昔のことを思い出した。
「....お前、おにかげか....?」
思い出すのはもう10年ほど前。義父上に拾われて少し、一緒に葦名の城の酒宴に連れてこられた狼は、赤い鼻の槍を持った人や、蝶を侍らせた人、そして真っ赤に酔った父上の隙をついて抜け出し、厩でよく馬を撫でていた。まぁ、その後心配した義父上に連れ戻され、赤い鼻の人の膝で酒宴を眺めたり、出てきた料理をつまんだりするのが狼の酒宴での過ごし方だったのだが....。
その時よく構っていた馬こそがおにかげ(漢字で書くと鬼鹿毛)であった。昔より大きくなっていて分からなかったが、どうやら本人(本馬?)であった。懐かしむように唸る鬼鹿毛を撫でていると、甲冑の人が馬から降りてきた。
「お主、鬼鹿毛と知り合いのようだな....名は?」
高くて見えなかった甲冑の人の顔を見ると、先程思い出した印象的な真っ赤な鼻が目に入った。
「狼....」
知らない人では無いようなので答えると、赤い鼻の人.....鬼形部が目を見開いた。
「驚いた.....まさかお主、あの梟の倅か!?おぉ、大きくなって!!早くそう言ってくれれば斬りかかりはしなかったものを!!」
肩を叩き笑う鬼形部に、なんだか懐かしさを覚える。そういえばよく飲め飲めとお酒を押し付けられて居たような....。
「して梟の倅よ。なにゆえこの大手門に?」
「葦名の城に.....行くために。」
「そうかそうか。久しぶりに顔を出せば、一心様や弦一郎も喜ぶぞ!!....そうだ、この形部が送ってやろう!!」
そう言って馬に乗り、狼の首根っこを掴んで後ろに乗せた。
「大手門は....?」
「大事無い!!今先程近くに居たネズミ共は処理した!!少しの間なら留守にしても問題無かろう!!では行くぞ!!舌を噛むでないぞ!!」
そう言い、鬼鹿毛を走らせる鬼形部。狼は言われた通り、舌を噛まないように黙ったのであった。
葦名生存フラグその1。形部生存!!!
「大手門は開かぬ門!!!」
はい。もう本当に開きません。
更に伊之助が普通に無事....一体何が起きているのか。これどうやって収めるん?(自問自答)
久しぶり過ぎるしセリフも朧気なので、多分原作とだいぶ違う部分があると思いますが、それはまぁ、世界線の違いってことにしておいて欲しいです....。(セリフが出るとこまで原作をやるの楽しいけど疲れちゃうんです....)
後今更ながらなんでも許せる人向けです。(過去改ざんとか)色々タグに追加しときます。