思えば、なんとも特筆することがない凡庸な人生だったと思う
貧乏でも裕福でもない家に生まれ、普通の学校に通い普通に就職し普通に病に倒れて普通に死んだ。享年は何歳だったか。途中から朧気だが、きっと30は超えられなかったと思う。
凡庸でなくなったのはその次だ。平成に産まれて平成に死んだはずなのに、気がついたら慶応だった。何を言っているのかわからないと思うが私もわからない。マジでなんだこれ。ていうか慶応っていつだっけ?ああ、明治の前か。3,4年で終わったやつ。と思っている間に明治に変わっていた。まだ産まれたばっかりなんだけど、はっや・・・。
記憶を持ったまま輪廻転生して過去に生まれ変わるなんてどこのラノベだよと思いつつ、第2の人生を歩み始めた。ここが普通の過去ではないと気がついたのは産まれてから暫く経った時だ。血濡れの剣士が我が家の門戸を叩き、両親がその剣士の介抱を始めた。我が家は藤の花の家紋を掲げており、その家紋を掲げているものは過去に剣士・・・正確には鬼狩り様に助けて貰ったことがあるから、その恩を返すために鬼狩り様を助けるのだとか。鬼狩り様とはなんぞや?と思い両親に尋ねたところ、書いて字のごとく鬼を狩るものの事らしい。へー、鬼なんているのか、怖いなぁなんて思っていたのも記憶に新しい。
鬼狩り様にも話を聞いてみた。鬼狩り様の名前は《鱗滝左近次》。名字からして格好いいし、優しげな顔も格好いい。ミーハーではないけどこれはモテるタイプと見た。因みに血濡れだったのは鬼の被害者の血を浴びたせいで、本人はほとんど無傷だった。鱗滝さん曰く、鬼を倒すには日光に当てるか日輪刀と呼ばれる特殊な刀で頸を切らないといけないらしい。炎で炙るのでは駄目なのか聞いたが、燃やしても再生してしまうのだとか。太陽だって炎なんだけど、なんでだろ?
また興味深い話も教えて貰った。鬼狩り様は呼吸と呼ばれる技術を使って鬼を狩っているらしい。鱗滝さんが使うのは水の呼吸というそうだ。先程話に出た日輪刀は、呼吸の適正によって色が変わるということも教えて貰った。水の呼吸以外にもいくつか教えて貰ったが、覚えきるのは難しそうだ。そう言うと、鱗滝さんは「お嬢ちゃんが刀を持つ必要は無い」と言って頭を撫でてくれた。まあ、ぬくぬくと育った私が刀を持って戦えるとは最初から思っていない。
まさか、私が鬼狩りどころか狩られる対象の鬼になるなんて夢にも思ってはいなかった。
この世は本当に、理不尽だ。
遊郭編にシロを同行させるか
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させる
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させない