少し、ここに居すぎたかもしれない。あまり同じ場所に居すぎると、私の姿形が変わっていないことがバレてしまう可能性がある。だから長い間同じ場所には居座れない。同じ場所に居られるのはせいぜい1年前後くらいだ。竈門家のみんなは好きだけど、ずっとここで守ってあげたいけど、それは出来ない。
「ええっ!?シロさん旅に出るんですか?」
「うん。元々私はいろんなところをフラフラしてるからねぇ」
「そっか・・・寂しくなるな・・・」
「ごめんね炭治郎くん。他のみんなにもよろしく伝えといてね」
俯いた炭治郎くんの頭を軽く撫でて、そのまま踵を返した。炭治郎以外のみんなに挨拶出来なかったのは心残りだけど、出るなら早い方がいい。あの家に行ったらきっと思い直して居座ってしまうから。何度経験しても、やっぱり別れは寂しいものだ。鬼になったとしても。
竈門家とさよならした後、今度は少し離れた山に来た。付近にいた人に聞いたらこの山は狭霧山というらしい。その名の通り、霧がすごい山だ。この数年は人に関わりすぎたからしばらくは1人で暮らす事にしよう・・・と思っていたのだけれど。
「わあ、罠?びっくりした・・・」
フラフラ山を登っていたら、縄のようなものに引っかかった。引っかかったと思った瞬間に石が飛んできて、とりあえずそれを避ける。この長い人生で罠にかかったのは初めてだから、周りに敵がいない状態で良かったと心底思う。今まで戦ってきた鬼の中に罠を使うものが居なくて助かった。いたらどうなっていたか分からない。
「あ、落とし穴もある」
誰が仕掛けたのか分からないけど、見たところ今は使っていないみたいだし勝手に訓練に使わせてもらおう。ありがとう名も知らぬ人!
山を駆けずり回り片っ端から罠に引っかかってみた。避けるのではなく引っかかる。最初から避けるよりも引っかかってから飛んできたものを避けたりする方がなんとなく強くなれるような気がするのだ。罠に引っかかり、避け、また引っかかり、避けることを繰り返して丸一日たった。困った。全ての罠に掛かってしまった。どれだけ罠を探しても全て私が引っかかった後だ。
「・・・また会ったな」
「天狗のお面・・・?もしかして、鱗滝さん?」
「まったく、全ての罠を壊して回るとは。着いてこい」
どうしようかなー、とボーッと突っ立って考えていたら、背後から声がかけられた。あれ、もしかして私背後に弱すぎ?・・・まあいい。そこに居たのは天狗のお面をかぶった老人だったが、覚えのある雰囲気を醸し出していた。鬼になって少ししてから会ったのが最後の鱗滝さんだ。とりあえず、言われた通り鱗滝さんについて行くことにした。最後に会った時の状況と正反対のポジションだ。
時系列的には第7話以降の話です。おそらく既に冨岡さんは鬼殺隊に入ってる
遊郭編にシロを同行させるか
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させる
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させない