鬼になって直ぐの頃に再会した時、鱗滝さんは私をかなり警戒していた。当たり前だ、鱗滝さんは鼻がいいから私が鬼になっていることにすぐに気がついていた。
「おじいさん、おばあさん。この人、私の知り合いの人なんだけど泊まるところがないの。泊めてもいい?」
「シロちゃんの知り合いかい?いいともいいとも。好きなだけ泊まりなさい」
「・・・ありがとうございます」
私が泊まり込みで働いている茶屋に行き、おじいさんとおばあさんに許可を取った。その間も、お礼以外は鱗滝さんは無言だった。おじいさんとおばあさんがいるとあまり込み入った話が出来ないから、おしゃべりを早々に切り上げて鱗滝さんを連れて自室として与えてもらった部屋に向かった。部屋に入り、小さなちゃぶ台を挟んで向かい合う。
「・・・久しぶりだな」
「久しぶりだね、鱗滝さん。元気だった?」
「ああ」
「昔話もしたいんだけど、うーん・・・何から話せばいい?」
「最初から今に至るまでだ」
鱗滝さんは私を見ながらも刀から手を離さなかった。きっと、少しでも怪しい動きをしたら私を切るつもりなのだろう。そんなこと、しないのに。
「藤の花を買いに行ってね、帰ったらお父さんとお母さんが鬼に食べられてて。殺らなきゃ殺られるって思って、飾ってた日本刀で頑張って戦ったの。気づいたら鬼がうぞうぞしてて、誰かが後ろにいて、振り返ったら顔を、こう、突き破られた?のかな?そしたら鬼になってたの」
どうも昔から説明が苦手だ。うまく説明出来なくて、身振り手振りが大きくなってしまう。それでも鱗滝さんは神妙な顔で頷きながら聞いてくれていた。
「空腹感が、あっただろう。その時はどうした?」
「わかんない、けど・・・多分、お父さんとお母さんを食べてた鬼を食べちゃったんだと思う。気づいたら鬼が居なくなってて、鬼の服だけ残ってたしお腹もいっぱいになってたから」
「ご両親の埋葬をしたのはお嬢ちゃんか?」
「そうだよ。そのままにしておきたくなかったから」
そう答えると、鱗滝さんは口元に手を寄せて考え込む仕草をした。私が有害か無害か考えているのだろうか?正直、鬼殺隊である鱗滝さんと再会した時点で鱗滝さんに頸を切られる覚悟はしていた。ところが鱗滝さんは私と会話をしてくれるし、ちゃんと話を聞いてくれる。私はこのまま生きていていいのだろうか。生きることを、認めてくれるのだろうか。
「正直、お嬢ちゃんについては判断に困る。鬼殺隊は鬼を狩る。しかしそれは人を喰らい害を与えるからだ。人を喰らわず害を与えない鬼の場合、勝手に判断は出来ない」
「・・・つまり?」
「今この場で頸を切ることは無い、が、裏を返せば今後切る可能性がある」
まあ、切られる覚悟はしていたし、切られる可能性があるのは百も承知だ。むしろ今ここで直ぐに頸を切るという判断にならなかった事が驚きだった。
「・・・もう行く」
「あれ、泊まっていかないの?」
「一刻も早く上の判断を仰ぐ必要があるからな」
そういうと、鱗滝さんは目にも留まらぬ速さでこの場から姿を消した。もう、おじいさんとおばあさんになんて言おう・・・。
以前語られなかった再会回
遊郭編にシロを同行させるか
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させる
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させない