「入れ」
鱗滝さんについて山を下ると、狭霧山の麓にある家に着いた。登る時には見なかったからおそらくここは反対側なのだろう。見たところ鱗滝さん以外がいる様子もないし、きっと一人暮らしだろうと推測する。さすがに配偶者とかいたら入りにくい。
「・・・鬼は、人の食べ物は食えるんだったか?」
「え?ああ、うん。栄養にはならないけど味は楽しめるよ」
ここは本当に有難いところだ。某種のように人の食べ物が全て不味く感じるようにならなくて助かった。そんなことになってたらとうに日光を浴びて死んでいる。お団子美味しい!
「そうか。以前会った時はその話は聞かなかったからな。今日の夕餉は鍋だから、お嬢ちゃんも食べるといい」
「いいの?ありがとう、鱗滝さん!」
そういうが早いか、鱗滝さんは夕飯の支度を始めた。私も手伝った方がいいかと思ったが、私が手を出したら逆に遅くなってしまうだろうと思い正座して待つ。だってほんとに鱗滝さん早いんだもの・・・私家事とか苦手だし・・・。と、意識を明後日に飛ばしていたところで支度ができたと声がかかった。
「おお、美味しそう!鱗滝さん、料理上手なのね」
「独り身だからな」
いただきます、と手を合わせてから鍋を食べ始めた。正直に言って美味しい。本当に美味しい。私の好物欄に『鱗滝さんが作った鍋』が記載されるレベルだ。美味しい美味しいと言いながら食べていたら、気づいたら鍋の中身が無くなっていた。・・・食べすぎた。
「ご、ごめんなさい・・・食べすぎちゃった・・・」
「構わん。少し多めに作っていたからな」
「うう・・・そ、そういえば昔、上の人に私について報告してたんだよね?上の人、私を倒せとか言わなかったの?」
「ああ、その件か。倒せという命令はなかったが、常に監視の目はついている。もちろん今もな」
「えっ」
監視の目?え、私監視されてるの?いつから?鱗滝さんと再会してからすぐ?それなら・・・伊之助のことも、知られてる・・・?それは困る!
「ああ、安心しろ。人を襲おうとしていないかだけだからな。日常生活で何をしていたかなんて報告はわざわざされていないだろう」
「そうなの?それなら、ありがたいんだけど・・・」
「なにか困る事でもあるのか?」
「うーん、困るって言うか、仲良くしてた子がいて・・・知らないとはいえ、鬼と仲が良かったなんて印象が悪くならないかなって心配で」
正確には知らないとはいえ、ではなく、知らなかったとはいえ、なのだが。結局自主的に離れる前に知られてしまったし。
「・・・そうか。お嬢ちゃんは昔から人の事ばかりだったな」
「そうだっけ?」
「ああ。人一倍他人を心配して、他人の事を思っていた。鬼になっても変わらないようで安心した」
私は結局翌日の夜まで鱗滝さんの家に居座り、2度目の夕飯をご馳走になってから鱗滝さんの家を出た。流石に元とはいえ鬼殺隊の人の家に居る訳にはいかない。出る時に食費として幾らかのお金を置いていこうとしたが、鱗滝さんは頑なに受け取ってくれなかったため諦めた。今度美味しいものでも持ってくることにしよう。
次は、どこに行こうかな。
栄養にはならないとはいえ、普通にご飯食べれないとメンタルにきそうだからちゃんと食べれる設定にしました。白米最高!
遊郭編にシロを同行させるか
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させる
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させない