しのぶさんに着いていくと返事をした直後、黒装束の黒子らしき人が現れてあれよあれよという間に手を縛られて目隠しをされた。なんなら耳栓もされている。鬼もびっくりの速さで縛られた私は誰かに背負われ(多分さっきの黒子の人)、びゅんびゅん風を切りながら何処かへ運ばれた。
おんぶなんて久方ぶりでテンションが上がっていると、私を背負っている人が足を止めた。何かを話しているのかもしれないが耳栓のせいで何も聞こえず、まったく状況を知ることが出来ない。と、思っていたら畳らしき床に降ろされて耳栓を外された。
「すみません、諸事情で耳栓以外外せないんです。目隠しと手の縄はそのままでお願いします。あ、あと、勝手に外すと敵対の意思があるってことになるので気をつけてください」
「私を背負ってくれた人?お疲れ様です、ご忠告ありがとう。お名前は?」
「・・・名乗れないんです。すみません」
「分かったわ。私はシロ。よろしくすることがあるか分からないけど、よろしくね黒子くん」
「くろこ?え、俺歌舞伎とかやってないんだけど・・・ああ、この服のせいか・・・。よろしくお願いします、シロさん」
よろしく言った後、黒子くんはブツブツ言っていたがよろしくと返してくれた。うんうん、人との交流は大事にしないとね。黒子くんって呼び名はどうかとも思うが、ネーミングセンスがないのはどうしようもないから諦めることにしよう。
ちょっと此処で待ってて下さいね、という黒子くんの言葉を最後に、周りは静寂に包まれた。黒子くんは何処かに行ってしまったらしくまったく気配がない。なんなら近くに誰もいない。どれだけ放置されるのかなーと思いきや、不意に声がかかった。
「道中お疲れ様。来てくれて嬉しいよ」
正座をしている私の10M程前、斜め上から男性の声がした。なんなくホワホワする声で、声だけの第一印象を言うなら『人心掌握が得意そう』と言ったところだ。
「こんにちは。ところでどちら様ですか?」
「ああ、自己紹介が遅れたね。私は鬼殺隊の当主、産屋敷耀哉だよ」
「鬼殺隊のご当主様が、鬼にいったいなんの御用で?」
もちろん皮肉だ。まさか本当に鬼殺隊の本拠地とも言えるところに連れてこられるなんて思わなかった。だからこその目隠しと手の縄か。勝手に解いたら駄目ということは、裏を返せば解いた瞬間に頸を切れるように戦闘員がスタンバイされているんだろう。
それを察すると同時に、雰囲気で目の前の鬼殺隊当主が笑ったのが分かった。笑ったと言うよりは口端を上げた、が正解だろうか。その後1秒、5秒、10秒ほど経ってから再度口を開いた。
「我々鬼殺隊に協力をしてくれないだろうか」
遊郭編にシロを同行させるか
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させる
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させない